「クリスタル……」
彼の長い指がクリスタルの唇をそっと撫でる。薄く開く桜色の唇。そして、重なってくる熱い彼の唇。
「……っ」
唇から溶けてしまいそうなほどの彼の熱。指を絡め合い、頬を重ねて、ただ口づけに酔う。初めてのキスは驚くほど熱く、長いものになる。幾度も角度を変え、お互いの唇を舌で愛撫し、そして。
「……ん……っ」
少し開いた唇から彼の舌がゆっくりと滑り込んでくる。小さく怯えるクリスタルの舌を探し当て、熱く絡んでくる。髪を撫で上げる指が熱い。背中を抱く腕が熱い。何もかもが熱くて、クリスタルは無意識のうちに、ナイトドレスのリボンを解いていた。ふわりと解けたドレスからこぼれた素肌がひんやりとしたシーツに触れて、少しだけ涼しくなる。でも、その素肌も、すぐに彼の掌に包まれて熱くなる。
「クリスタル……」
彼の濡れた声が髪を揺らす。
「愛している……あなたを……」
「私もよ……アレクシス……私も……愛してる……」
彼の開いたシャツの胸元に手を当てて、クリスタルは囁く。
「あなたの胸……とてもどきどきしてる」
「あなたもだ」
彼の掌が優しく、クリスタルのまだ堅い処女の乳房に触れた。白いふっくらとした乳房の先に、淡いピンク色の蕾が震えている。その蕾に、彼がそっと口づけた。
「あ……っ」
ナイトドレスからこぼれた二つのふくらみを、彼が優しく撫で、そっと指に力を込めて、手の中に包み込む。
「あ……ああ……ん……」
思わずこぼれてしまったはしたない声に、クリスタル自身がびっくりしてしまう。でも、その驚きもすぐに、まだ未熟なふくらみから伝わる官能の疼きに包み込まれてしまう。
彼がそっと指を動かすたびに、優しく蕾を吸うたびに、身体の奥が疼く。お腹の奥がずうんっと重くなって、思わず身体を縮めてしまいそうになる。少しだけ怖い。感じたことのない感覚に、少しだけ怖くなって、彼を抱きしめる。
「あ……っ」
いつの間にか、薄いナイトドレスはベッドの下に滑り落ち、その上に彼のシャツが重なった。初めて感じる人の素肌の熱。さらさらと乾いた素肌の温かさが触れあって、しっとりとした熱に変わっていく。
「あなたは……とてもきれいだ……」
彼が素肌を重ねて囁く。
「何もかもが……美しい……」
滑らかに張りつめた彼の美しい褐色の素肌。金色の髪を指に絡めて、クリスタルは小さくため息をつく。美しい私の獣……私だけのもの……。
「……あ……っ」
彼の掌がするすると滑り、クリスタルのシルクのような肌をなぞっていく。まろやかな肩、ふっくらとした乳房、ほっそりとした腰、そして。
「……クリスタル……」
「……あ……あん……っ!」
彼の長く滑らかな指が、クリスタルのしっとりと温んだ花びらをくぐった。まだ頑なな処女の泉をゆっくりと優しい指先で撫で、温かな蜜を溢れさせていく。
「あ……ああ……あ……ん……ん……っ」
恥ずかしい声がこぼれる。ただ彼の胸に顔を埋めて、身体の奥から溢れ出す声に翻弄されていく。
「ああ……私……私……どうし……たの……」
身体がしびれたようになって、力が入らない。彼の指がゆっくりと、でも確実にクリスタルの中に入ってくる。
「……怖がらないで……」
彼が少しつらそうに囁く。
「お願いです、クリスタル……僕を……怖がらないで……」
怖くないと言ったら、それは嘘になる。この疼きも、不規則に乱れる胸の鼓動も怖くてたまらない。でも、なぜか、彼を抱きしめる腕をゆるめようとは思わなかった。なお、彼の胸に深く顔を埋め、そっと首を横に振る。
「怖くは……ないわ……」
顔を上げ、彼の少しかげりの見えた瞳に微笑む。
「あなたが一緒なら……怖くないの……」
「クリスタル……」
再び唇をかわす。甘いキスに心が解ける。優しくベッドに沈められ、彼に抱きしめられる。
「怖かったら……嫌だったら……僕を突き放して。もう……僕は僕を止められない」
彼の囁きに頷く前に、クリスタルは嵐に巻き込まれていた。とてもとても熱い嵐に。
「あ……っ」
唇を触れ合わせたまま、彼がクリスタルを怖いほどの力で抱きかかえた。自分の身体でくるみ込むようにして、優しいが容赦のない力で抱きしめ、身体をたわめていく。
(私……どうなるの……)
怖い気持ちと好奇心がない交ぜになった気持ちで、クリスタルは彼の背中に腕を回す。彼の体温を感じていれば、怖くない。この静かな夜の中で、二人きりでいても、少しも怖くない。
「……っ」
温かく潤み始めていた花びらに、ふいに熱いものが押しつけられた。花びらがとろけ落ちてしまいそうなほど熱いもの。
「あ……」
微かな声をあげてしまう。彼が少しつらそうに吐息をついた。クリスタルは首を横に振り、腕に力を込める。
「……怖くはないの……」
離さないでと指の力で囁く。
「あ……ん……っ」
「……っ」
熱い痛みが身体の真ん中を突き抜ける。その熱にどっと蜜が溢れだし、花びらをしとどに濡らす。
「……ん……んう……っ」
「……身体に力を……入れないで……」
「あ……ああん……っ!」
自分でも驚くような声が響いた。熱い高まりが身体の内側を焼いている。身体の奥から溢れる蜜が高まりをよりいっそう熱くして、二人の体が溶けるように一つになっていく。
「あ……あ……ああ……ん……っ!」
「……クリスタル……っ」
激しくなっていく衣擦れ。互いを呼び交わす熱い声。夜の空気を震わせる悩ましい音が、美しく生けられている薔薇の花びらを散らす。ふわふわとこぼれ落ちる花びらにも、二人は気づかない。
一つになっている。二つ身になっていたものが、一つに溶ける。彼がクリスタルの中に入り込み、奥底で一つに溶けた。
「あ……ああ……ああ……ん……っ!」
「もっと……聞かせて」
アレクシスが熱く囁く。
「クリスタル……その声を……もっと聞かせて……」
「熱い……凄く……熱い……の……っ」
『聖なる娘』のいつも落ち着いている声が高くうわずる。考える間もなく、言葉が溢れだし、声がこぼれる。
「あなたが……いるのね……ここに……いるのね……」
「ああ……クリスタル……っ」
「離さ……ないで……あ……あん……ああ……っ!」
強く揺さぶられて、びくんっと身体が震える。身体の奥が溶けてしまいそうに熱い。痛みよりも熱さが強い。痛みに震える間もなく、身体が彼の熱に溶かされてしまった。身体の中で、熱い嵐が起こっていた。戦士の強靱(きょうじん)な身体に抱きすくめられ、射抜かれて、クリスタルの処女の身体が姿を変え始めている。自分でも驚くほどの滴が溢れだし、熱く太股を濡らす。恥じらっていた身体は、彼の下で柔らかくしなり、彼の力に応える。彼を包み込み、激しく愛する。彼の熱を注ぎ込まれて、乙女の城が扉を開く。
「あ……ああ……アレクシス……っ!」
震えながら、彼の名を叫ぶ。
「アレクシス……アレクシス……っ!」
彼の力強い腕が、クリスタルを抱え上げ、強く抱きしめる。
「あ……ああ……っ!」
「クリスタル……っ!」
吐息の勝った二人の声が窓を震わせた。
一つに溶けて、白いシルクのシーツに金と銀の髪が乱れる。お互いの指を結び合わせて、二人はただ一つに溶ける感覚の中に漂う。
「……離さないで……」
囁く声。震える声。
「どこへも……行かないで……ここに……いて……」
ここにいて。
私の中に……ずっといて。