いったいどこで間違えてしまったのだろう? こんな恐ろしいことになるなんて――。
「嫌ぁ、あっ!」
豊かな金色の髪を振り乱し、寝台の上で華奢な肢体をくねらせて、エミリアは甘い嬌声を上げる。下着を剥がれた上、白絹の寝衣も脱げかかっていて、上気した肌が切なげにわなないていた。
「だめ……あ、んん」
「何がだめなんだ? こんなに悦んでいるくせに」
「い、いえ、悦んでなんか――」
「……そうかな?」
大きく開いた脚の間で、男がくぐもった声で笑った。
尖らせた舌先で髪と同じ色の下生えをくすぐられ、熱い息を吹きかけられて、エミリアの細い身体が跳ね上る。すると再び笑い声が聞こえて、剥き出しの秘処に濡れた感触が走った。
「ひぁっ!」
肉厚の舌がピチャピチャと音をたてて、敏感な花びらを舐め始めたのだ。熱いぬめりが少しずつ奥を暴いていく。
「や、あ、あんっ!」
舌が動くたびに閉じたまぶたの裏で光が明滅し、下肢が小刻みに痙攣する。淫らな悲鳴を抑えられず、涙が白い頬を濡らした。
「嘘つきだな、エミリア。いやらしい蜜がまた溢れてきたぞ」
繊細な秘裂を食まれながら囁かれると、強過ぎる刺激に肌が粟立ってしまう。
「気持ちよくてたまらない……そんな顔をしている」
どんなに否定したくても、相手の言葉に嘘はなかった。自分でも、そこがグズグズに蕩けているのがはっきりわかる。エミリアは彼に抗えないまま、あさましく反応しているのだった。
「う、うう」
責められているのは感じやすい花弁だけではない。小さな秘口にも指が二本入っていて、蠢きながら少しずつ隘路を押し広げていた。時おり中で指を曲げられ、軽く襞を引っかかれる。執拗でいて、わずかに的を外した愛撫に翻弄されて、エミリアは大きくのけぞった。
「ひっ!」
「大勢の男たちに抱かれてきたというのに……ここは処女みたいに狭いのだな」
「やめて……もう……どうか」
「いや、もっとしてほしいのだろう? 奥がもの欲しげに指を締めつけている」
「そんな――あっ!」
ふいに指が引き抜かれ、しつこく弄ばれていた箇所も自由になった。
「エミリア」
ふと相手の声音が変わり、エミリアは身を震わせる。今までとは違う穏やかな響きが、ひどく恐ろしく聞こえたのだ。
「目を開けて、エミリア」
「……あ」
エミリアは涙に濡れた菫色の瞳を開いた。
「私だってこんな真似はしたくない。だが、そうさせているのは君だろう?」
潤んだ視界の中で、無数の燭台が妖しく揺れている。快美の涙でぼやけていた瞳が、ゆっくり焦点を結び始めた。
「そろそろ質問に答えてくれないか?」
光の中に秀麗な笑顔が浮かび上がって、エミリアは小さく息を呑む。
ヴィクトール・カール・マーデン――森の奥にひっそりと建つこの館の主であり、いずれマーデン王国の君主となるはずの青年である。上体を起こしてエミリアを見つめてくる男は、こんな場合だというのに、見とれてしまいそうなほど美しかった。
「仲間はどこにいる?」
つかの間、二人の視線が交錯する。射抜かれそうな眼差しに怯えながらも、エミリアは唇を噛んで目をそらした。
「君も強情だな」
ヴィクトールは大げさに嘆息すると、艶やかな漆黒の髪をかき上げた。柔らかな笑みを浮かべていても、灰色の瞳はどこまでも冷ややかだ。
「素直に話せば、すぐにでも自由にしてやるのに」
エミリアの手足に縄や鎖はなく、狭い牢獄に押し込められているわけでもない。それどころか明るい室内は豪華で美しい調度で飾られ、身の置きどころがないくらい広かった。まとっている夜着も極上の絹で、食事の時間には手の込んだ料理が供され、身の回りの世話をする小間使いもいる。まるで貴族の令嬢のように扱われているのだ。
とはいえ、エミリアがヴィクトールの囚人であることは動かしがたい事実だった。
「なぜ、そこまで仲間をかばう? もう何日もこんな目に遭わされているのに、誰も助けに来ないではないか? 君は見捨てられたのだぞ」
「い、いません……仲間なんて……はじめから」
冷たく嘲笑されても、エミリアは挑発に乗らなかった。
それが気に入らなかったのか、ヴィクトールの顔から笑みがかき消える。
「なるほど……では、先ほどの続きをするしかないな」
次の瞬間、乱暴に夜着が引き裂かれた。夜の冷気に触れて、乳首が驚いたように硬くなる。
「あっ!」
生まれたままの姿にされたエミリアの上に、ヴィクトールが素早く覆いかぶさってきた。
「淫らなエミリア、君は男に弄ばれるのが好きなのだろう? だったら望みをかなえてやろう。仲間の行方を話すまで、たっぷり悦ばせてやる」
鍛え上げられた身体は感触も重みも心地いい。さらに強く抱き込まれて耳朶を甘噛みされると、揶揄の言葉さえ愛撫になってしまう。
そんなふうに感じる自分が許せなくて、エミリアは懸命にかぶりを振った。
「違いま――っ!」
しかし否定の訴えは唐突な口づけで遮られた。両手で顔を挟まれて舌を捩じ込まれ、丹念に口中を探られる。頬の内側や淡い色の歯茎、上下の歯列までなぞられて、とうとう震える舌を絡め取られてしまった。
「ん、ふっ!」
キスを交わしているうちに、エミリアの身体からは次第に力が抜けていった。まるですべてを彼に委ねたがっているみたいに。
――いいえ、だめよ!
このままでは自分が惨めになるばかりだ。たとえどれほど絶望的な状況でも、彼のキスがどんなに甘くても、最後まで毅然としていなければ。
だいたいヴィクトールにとっては、この接吻だってただの尋問に過ぎないはずだ。裸体のエミリアをいたぶりながら、彼自身は服を身に着けたままなのだから。
「何を考えている、エミリア?」
ふと、ヴィクトールが顔を離した。
「べ、別に……何も」
「何も?」
汗に濡れた髪をかき上げる仕草は優しい。しかし伝わってくるのは、暗く冷たい怒りだった。
確かにエミリアは罪を犯そうとしたが、そもそも存在自体が許せないのではないかと疑いたくなるほどの激情
――ここに囚われてから、その憤怒をずっとぶつけられている。
――どうしてなの? 何をそんなに怒っているの?
そんな状況に傷ついていたし、彼のことしか考えられないものの、エミリアはそうと認めたくなかった。それにヴィクトールだってそんな答えを求めてはいないはずだ。
「性悪の嘘つきめ」
ヴィクトールは冷ややかに吐き捨てると、エミリアを抱いたまま身を起こした。
「あん」
桜色の乳首が硬い胸板に当たって、思わず吐息が零れる。エミリアはそこが特に弱いのだが、ヴィクトールはそれを見透かしているらしく、いっそう強く抱き締めてきた。一方で右手を下肢に伸ばし、再び秘部をゆっくり嬲り始める。
「あ、や、やぁっ!」
もはや逃れるすべはなかった。ヴィクトールは微笑みながら花弁全体に蜜を塗り広げ、さらに小さな肉芽の包皮も剥いた。クチュクチュといういやらしい音がいっそう大きくなり、エミリアは声にならない悲鳴を上げる。
「……っ!」
「存分に楽しむといい」
器用な指先は当然のように秘玉をじっくり弄ぶ。爪で弾かれ、指の腹で擦られ、くすぐられて、どこまでも容赦なく追い上げられた。
「やめ、あっ! ああ!」
それから何度達しても許されないまま、エミリアはヴィクトールの腕の中で啼き続けた。
(このあとは製品版でお楽しみください)