書籍情報

恋は邪魔者~再就職先は元カレの腕の中!?~【書き下ろし・イラスト7枚入り】

恋は邪魔者~再就職先は元カレの腕の中!?~【書き下ろし・イラスト7枚入り】

著者:有允ひろみ

イラスト:小路龍流

発売年月日:2020年3月27日

定価:990円(税込)

琴音のここは、薔薇の蕾みたいだな……。固く閉じているのを見ると、無理矢理暴きたくなる
広瀬琴音は三年間暮らしたNYで失職後、帰国して大手不動産会社に再就職を果たす。しかし、同社社長は五年前、突然訳も言わず琴音を捨てた元カレ・森本誠也だった! 生活のために過去を封印して仕事に集中しようとする琴音に、キスをして復縁を迫る誠也。今さらそんな事を言うなんてどうかしている! ぜったいに元の鞘に納まったりしない――そう決心する琴音だったが、いまだくすぶり続けている恋心が再燃してしまい……⁉

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登場人物

◆広瀬琴音(ひろせことね)

聡明で真面目な性格の28歳。もともと臆病で控えめな性格だったが、失恋をきっかけに一念発起して努力した結果、極めて有能な秘書になった。恋人だった誠也に捨てられたのをきっかけに恋愛に及び腰になっている。
◆森本誠也(もりもとせいや)

若くして起業し、成功を収めた31歳の敏腕社長。昔は朗らかな男だったが、ある事をきっかけにほとんど笑わなくなった。訳あって琴音を捨てた事をずっと後悔しており、もう二度と恋愛はしないと心に決めていたが……。

立ち読み

「別れよう。もう一緒にはいられない」


クリスマスイブの前夜、広瀬(ひろせ)琴音(ことね)は恋人の武田誠也(たけだせいや)に突然の別れを切りだされた。


住んでいるアパートのソファに腰かけていた琴音は、信じられないといった面持ちで隣に座る誠也を見る。


言われた意味が分からず、彼の言葉を頭の中で反芻した。


「……えっ……どうして? ……だって、クリスマス……一緒にすごそうって言ってたよね?」


電気ポットが電子音を鳴らし、お湯の沸騰を知らせる。


その音が鳴り終わったあと、誠也がソファから立ち上がり、琴音に向かって深々と頭を下げた。


「ごめん。これまで琴音にした約束、もう守れなくなった。本当にごめん」


いったい何が起こったのか――。


琴音が茫然自失となっている間に彼はソファから離れ、玄関のほうに歩いていく。


頭が混乱して、どうしていいのかわからない。


だけど、誠也をこのまま行かせてはいけないことだけはわかっていた。


「ま……待ってっ……!」


琴音は、とっさに彼のあとを追い、去っていく背中に縋り付いた。


「お正月も一緒に初詣行こうねって、言ってくれたでしょう? なのに、どうして?」


「……本当に悪いと思ってる。……とにかく、もう琴音とはいられないんだ」


誠也の言葉を聞いて、琴音は頭の中が真っ白になる。


聞こえてくる彼の声が急に遠くなり、それまで立っていた床がぐらりと揺れたような気がした。


「琴音っ……大丈夫か?」


ふいに両脚から力が抜け、崩れるように床にへたり込みそうになったところを、とっさに伸びてきた誠也の手に支えられた。


覗き込んでくるその顔には、いつもと変わらない優しさが溢れている。


「……嘘……よね? そんな……冗談……だよね?」


琴音は無理に口元に笑みを浮かべた。そうすれば、彼もまた微笑んでくれるかもしれないと思ったのだ。


「冗談じゃなく、本当の話だ」


だが、見つめてくる彼の顔には、嘘偽りのない真剣な表情が浮かべられていた。


誠也は常に冷静で真面目だ。


優しくて紳士的な彼は、同時に朗らかで明るい一面も併せ持っている。


そんな彼が、これほどまで意地が悪く、タチの悪い冗談を言うはずがなかった。だから、彼が本当だと言えば、それは真実に他ならない。


彼は本気だ――。


そう理解すると同時に、琴音の目から大粒の涙が溢れだした。


「そんなの……嫌っ……。だって、愛してるもの……。心の底から愛してる……。一生そばにいるって……言ってくれたよね? なのに……もう、私のこと……愛してないの?」


流れ出る涙で視界が歪み、誠也の顔が見えなくなる。


嗚咽が込み上げ、呼吸するのもままならない。


瞬きすらできずにいると、彼の指が涙をそっと拭ってくれた。


こちらを見下ろしてくる彼の顔に、苦悶の表情が浮かぶ。


琴音は力なく首を横に振り、ただ「愛してる」と言い続けた。


「……琴音っ……」


誠也が琴音を身体ごと壁に押し付け、いきなり唇をキスで塞いだ。そして、スカートの裾をたくし上げ、荒々しくショーツを脱がせる。


激しく求められ、琴音は声を震わせて彼の名前を呼んだ。ブラウスの前を開けられ、ブラジャーをずり下げられる。胸の先を強く吸われて、快楽のあまり息が止まった。


誠也がジーンズの前を寛げる音が聞こえる。荒い息とともに彼のキスが唇に帰ってきた。


繰り返し唇を合わせ舌を絡める間に、硬い屹立が琴音の蜜窟の縁を浅く抉る。


そして、そのまま深々と挿入され、全身の血が沸いた。


「んっ……、せ……いや……っ、あ……ああっ……!」


下から強く突き上げられると、すぐに快楽の渦に巻き込まれた。息が上がり、琴音の肌が薄いピンク色に染まっていく。


「……琴音……、琴音……」


名前を呼ばれるたびに深く奥を突かれ、右のつま先が床から浮き上がった。


琴音は夢中で誠也の首に腕を巻きつかせ、続けざまに嬌声を上げる。


さっき聞いた言葉がまるで嘘だったかのように、琴音を求めるキスが降りかかる。それに応えるように、琴音も自分から唇を開いた。


「誠也……好き……。愛してる……、んっ……」


震える唇をまたキスでふさがれ、強く腰を振られた。


立っていられなくなった琴音は、誠也に縋り付きながら彼の腰に足を絡みつかせる。


「ひぁっ……!」


一段と挿入が深くなり、琴音は小さく悲鳴を上げた。


そのまま誠也の腕に両脚を抱えられ、ベッドのほうに連れていかれる。


歩くたびに身体が揺れ、琴音は強い愉悦を感じるあまり、一瞬意識が遠のきそうになった。


ベッドの上にあおむけに寝かせられ、彼のものが角度を変えて琴音の恥骨の裏を突く。


「誠也……、あっ……あああんっ!」


アパートの両隣には、同じような年齢の女性が入居している。


いつもできる限り声を抑えているけれど、今はそんな余裕は欠片ほどもなかった。


こちらをじっと見つめてくる誠也の目には、これまでにないほど激しい欲望の色が浮かんでいる。


彼は琴音の腰を持ち上げ、自分の膝の上に乗せた。そして、指先で花房を押し広げ、花芽を右手親指の腹で嬲(なぶ)ってくる。


「あぁんっ!」


途端に蜜窟が強く収縮し、屹立をきつく締め付ける。


誠也が眉間に縦皺を寄せ、低く呻いた。彼は琴音の乳先を指で摘まみ、強くねじり上げる。


「ふぁっ……あ、ひぁ……あああ……!」


感じるところを同時に攻め立てられ、あられもない声が上がる。


むさぼるように求められ、早々に絶頂に追いやられた。


琴音と同時に達した誠也が、表情を緩めながら深い吐息を吐く。


そのあと、甘くとろけるようなキスをされて、琴音は夢心地になった。


(きっと、さっきのは聞き間違い……。ぜったいに、そうに決まってる――)


琴音が快楽の余韻に浸っていると、ふいに誠也の身体が離れた。


いつの間にか閉じていた目蓋を上げると、彼が立ち上がってこちらを見下ろしていた。


「琴音……。五年間、ありがとう。心から感謝してるよ。……じゃあ――」


それだけ言い残すと、誠也は琴音の視界からいなくなった。


ドアが開閉する音が聞こえたところで、琴音はようやく我に返りベッドから起き上がった。


「まっ……待って……誠也っ……!」


急いでブラウスの前を合わせ、前につんのめるようにして玄関に駆け寄る。ドアを開けて廊下に出たけれど、そこにはもう誰もおらず、階段を駆け下りる靴音が聞こえるのみ。


琴音は裸足のまま廊下を駆け抜け、二階に続く階段の踊り場から地上を見た。


呼び止めようと手すりから身を乗り出したけれど、彼が乗った車はもうすでに動き始めていた。


「誠也っ!」


琴音の叫びもむなしく、遠ざかっていくテイルランプが、すぐに見えなくなる。


琴音はどうする事もできず、ただ車が走り去った道を見つめ続けていた。


 

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