導くように手を引く青年に従って、ヘデラはテラスへと出ていた。
胸元をはだけ、白皙に照らす半月に浮かび上がる乳房は、ぴんと乳頭を勃ち上げている。青年に促されるまま臀部を突き出し、乳房を手すりに押しつけると、冷えた感触に身体が震えた。
「寒いですか?」
「い、いいえ……ちょっと、冷たくて」
「じゃあ、大丈夫か」
そう言うと、青年はベッドでいつもするように、躊躇なくスカートをめくり上げる。
「綺麗だね、やっぱりヘデラは」
「恥ずかしい……です。それも、こんな」
細く、柔らかなふくらはぎから腿、そして青年に突き出されていた臀部の至るところまで外で露出してしまっている。あまりの羞恥に、ヘデラは頬を染めて首を振る。
「ベッドでなら、いいですから……っ」
「いつもしていることなら、外でも変わらないだろう?」
「変わります……んっ、あ、もう……っ」
「怒らないで。でもその顔もかわいくて素敵だ、ヘデラ」
「そんなとこ、汚いです……んぅ」
「ヘデラのここは、綺麗だよ」
言いながら臀部へと施されるキスが、次第に蜜洞へと下っていく。
「や、ぁ……あっ」
輪郭を撫でるように優しく触れる手のひらの温もり。すでに敏感な身体は期待に揺れ、腰はつい先日知ったばかりの快楽を求めて青年を誘っていた。
もう少し慎みを持たなければと思っても、しかし愛する人に求められる幸せを我慢できようもない。腰を振ると、彼は嬉しそうに笑ってくれる。嬌声は彼の怒張をさらに張り上げてくれる。
どれもが嬉しかった。はじめて味わう経験は、蜜よりも甘かった。
だから、ヘデラは――間違いなのかもしれない、と疑問に思う。
「もうこんなに濡れているし、準備はいいようだ」
不安げに彷徨う深緋の視線は、下腹部から顔を出す闇色の髪を捉えた。無邪気にも思える笑みを覗かせ、細める蒼の瞳の奥は、今でも何を考えているのかわからない。
いつからか人の考えが読めるようになってから――心の声が聞こえるようになってから、音に溢れた日常がヘデラの普通になろうとしていた。
一度たりとも聞こえなかったことはない。
対面していなくとも近くに誰かいれば、微かに、木の葉のさざめきのように、耳朶を震わせる声が響く。
だから、彼は特別だった。
対面しても、会話を交わしても――口から出る言葉しか聞こえなかったのだから。
「挿れてほしい?」
「んっ……はい」
腰を掴まれ、手すりに押しつけた乳房が変形する。勃起した乳首はさらに刺激され、蠱惑的な言葉に、ヘデラは漏れる息を抑えて頷くしかなかった。
「じゃあ、おねだりしてほしい」
「……え?」
しかし、期待していたものは訪れなかった。
代わりに布擦れの音とともに尻に当てられた熱塊は、溝を擦って蜜を塗りたくるだけで、それ以上の行為に及んではくれない。
けれども、ひくひくと喘ぐ蜜洞はそれを欲しがっている。
浅黒くて、太くて、硬い――青年のものを求めてしまっている。
ユースティア伯爵家嫡男ノア・ユースティアの熱杭を、今すぐにでも挿れてほしいのに。
「……ずるい」
「何か言ったかな?」
飄々としていて、しかし冷静なその蒼の瞳にはヘデラの痴態だけが映し出されている。
眼下に広がる屋敷の中庭も、周囲を彩る季節の花々も。月夜に煌く星々さえ追い出してヘデラしか見えていないように、口元に浮かぶ笑みは嗜虐的なものだ。
「ずるい、と言ったのですっ!」
だからこそ、反発する。ヘデラは、期待を裏切られたのだ。
教え込まれた快楽は身を焦がすように胎内を蠢いていた。肉襞を返され、子宮を突き上げられ、子種を注がれたい、と。
およそ出来過ぎた娼婦のような思考は、頭を真っ白に染める。けれども、それでよかった。
もうどうでもよくなるくらいには、内腿を伝って床に蜜が滴っていた。
「だったら、言ってごらん」
蒼の瞳は笑みを灯し、痴態を広げるヘデラを映している。
「口にする言葉は、わかるだろう?」
「……ん、ぅ」
こんなに懇願していても、蜜口を擦るだけでノアはその先をしてくれない。
薄い唇を噛みしめた。するとダメだとばかりに指を差し込まれ、しゃぶらされる。舌を蹂躙し、歯茎を丁寧になぞると、ノアは催促するように腰を動かした。
「あ……やっ」
「ほら、言わないならやめてしまうよ?」
「そんなこと、仰らない、で……ぇ、んっ」
「一言、口にするだけでいいんだ。挿れてください、って」
「……ん、あっ……で、でも」
自分から求めるなんて、恥ずかしい。
羞恥と期待がない交ぜになってヘデラを悩ませる。
「ノアさま……ぁ」
いつの間にか彼の名前を呼んでいた。
愛しい夫の名前を口にするだけで、下腹部が疼く。彼に教育され、ほだされてしまった膣は涎を垂らすように蜜を流し続けている。
「そろそろ限界だろう? 俺はいつでもいい。さあ、言ってごらん?」
挿れてください、と。
ノアは催促する。蜜口を熱杭でゆっくりと擦りながら、声を弾ませる。
楽しんでいる。彼はヘデラをいじめて悦に浸っている。
でも、それが――たまらなかった。
「挿れ……て、ください」
「ん、何です? もう一度いいですか?」
「っ……挿れてくださいっ」
いつの間にか口を衝いた言葉は、堰を切ったように要求に応じる。
「ノア様のがほしくてたまらないのです……だから、だからっ」
「ああ、だから?」
ヘデラは息を呑む。
もう言葉は止まらない。繁みの奥に潜む蜜洞には、すでに焦がすような熱が当てられている。
ああ、来る。
来るんだ。
言ってしまえば、来てしまう――
「わ、わたしの……っ」
それなら何をためらう必要があるのだろうか。
期待しているのはノアだけではない。わたしもそうだった。
震える唇をこじ開け、ヘデラははしたなくも臀部をノアの熱杭に押しつけた。
「ヘデラのここに、挿れて……ください……っ!」
「――よくできました」
その瞬間、下腹部を貫く衝撃に、視界が明滅した。
挿送する熱塊に肉襞がめくられ、快楽がぞくぞくとした夜の寒気と共に背筋を駆け上がる。
(嬉しい。繋がってる……ノア様とわたし、いま……)
「あっ……んあっ、ああっ!」
激しいピストンはそれから止まることがなかった。
乳房に食い込む手すりを何とか止めようと握りしめていた両手を取られ、さらに深く刺さる熱杭にヘデラは亜麻色の髪を振り乱す。
奥が押し広げられてしまう。すべてを収めることが不可能なほど大きく太いノアのそれは、追い立てるようにヘデラの両腕を引き、腰を進める彼によって無理やりにねじ込められた。悲鳴のような喘ぎも、しかし美しい月夜に聞かせるには無粋かと思って我慢するが、一突きされるたびに溢れる嬌声はやはり止めることなどできない。
「いい声で鳴くようになりましたね、ヘデラ」
「そんな、こ……んぅ、あぁっ!」
「色っぽく鳴かれたらもう出てしまいそうだ。焦らしすぎたかもしれない」
「うそ……つ、きっ」
そうは言っても、挿送を緩めてくれないノアの言葉など信じられるわけがない。空笑いに「本当のことさ」と掴まれていた両手を手すりに預けられると、乳房を両側から挟み込まれた。未だに張り詰めた乳頭は充血し、指でねじられただけでヘデラは背を反らせる。
「ここがいいのかな? っ……結構、締まるな」
「の、ノアさまぁ……ぁっ」
さらに着崩れて露出したヘデラの背筋に、ノアが口づけを落とした。
名前を呼ぶと、それに応えるように彼の指が乳房を荒く揉み込み、舌を絡め取る。交わった体液はテラスの床を汚して、月光に痴態は影絵として刻まれた。
「もうイキそうだ……っ、いいか? ヘデラ」
「わ、わたしっ、も……んっ」
手すりを掴む力が強くなる。腰を掴まれ、押し潰されて変形する乳房などお構いなしに動物のように後ろから突くノアに、ヘデラはただただ絶頂を目指していた。
臀部を押さえつける手のひらの温もりに、膣を駆け昇る熱杭に。ノアのすべてを感じながら、ヘデラは迎えそうなゴールを目の前に自らも腰を振っていた。
「いいよ、ヘデラ……さあ、受け取ってくれ……!」
「はい……っ、ノアさ――まっ……んんあっ!」
どくん、と大きく脈打って吐精するノアの怒張は、脈動を止めることがなかった。
夜空を仰ぎ見るヘデラの視界は真っ白で、音も何も聞こえなくなっていた。膣に広がる白精の感覚に、続けて襲う絶頂に、意識を保つのも難くて。
震える脚をどうにか突っ張っているのも、これ以上は限界だった。
「ヘデラ……おいで」
崩れ落ちるようにがくんと膝を折ったところで、ヘデラは逞しい腕に抱き留められていた。
筋肉質ではないけれど、女性よりも太くて硬い、ごつごつとした男性的な腕。大きな胸に抱き寄せられ、気づけば奪われた唇は、ノアに舌を差し込まれていた。
「んっ……あふぁ……っ」
舌を絡めて、ヘデラも彼を求めていた。
膝が落ちたと同時に抜けてしまった彼の怒張は立派にそそり立っていて、びくびくと震えている。蜜口を塞ぐように股の間に通されたそれの先を片手にいじりながら、時折、びくっと肩を跳ねさせるノアの反応が面白くて、口づけを交わしながらヘデラは溢れる精液の粘りを楽しむ。
「いつの間に、そんなエッチな子になってしまったんでしょう?」
「ノア様が、わたしに教えてくれたのですよ……?」
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