すべてが純白で統一された寝室の、天蓋(てんがい)付きベッドから垂れるビロードだけ紺碧(こんぺき)色だった。
大きな体躯に組み敷かれ、華奢なリリーシュの身体は壊れてしまいそうだ。節が太く、剣を握るために鍛えられた彼の指が、すべらかな肌を追う。
「あぁ、バルトハルト様。お許しください……」
「お前はまだ、俺のことをバルトハルトと呼ぶのか?」
深い琥珀色の瞳が、不機嫌そうに眇められた。
「バルトと呼べと言っているだろう? 親しい者は皆、俺のことをバルトと呼ぶ」
「は、はい……。バルト……様?」
「そうだ。よく言えたな」
微笑んだ彼は、朝露に濡れたバラのようなリリーシュの唇に、肉厚なそれを近づけた。
「……んっ」
キスをされ、同時に綿モスリンで作られた夜着の上から胸を掴まれる。
「あぁ、や……っ」
温かくて大きな手のひらで捏ねられると、知らずと可憐な乳首が尖り出す。
「ひゃっ……あぁ……」
きゅっと先端を摘ままれて身体が跳ねた。指先で転がされてびくびくと反応する。ベッドがぎしりと音を立てた。
バルトハルトはリリーシュの肩から夜着を引き抜くと、露わになった乳房に口づける。
「だめ……バルト様」
白くて豊かな胸を、舌で舐め上げられた。ちらりと彼に視線を向けられ、これ以上ないほど頬が熱くなる。瞳を閉じて両手で顔を覆った。
太く整った高い鼻梁(びりょう)に、折りの深い二重の目。無駄なものがないすっきりとした頬に、しっかりした顎のライン。精悍で端正な面立ちをした彼は、野生の獣を彷彿とさせる風格がある。
しかし時折見せる笑顔は少年のようで、リリーシュの胸をときめかせた。
「んんっ、やぁ……」
尖らせた舌先で薄紅色の乳輪を辿られ、リリーシュは思わずバルトハルトの頭を抱いた。獅子の鬣(たてがみ)を思わせる緋色の髪に指を埋め、逃げるように身体を捩じらせる。
「俺の頭を抱いたまま逃げようとするとは。悦んでいるのか嫌がっているのかわからないな」
クスクスと笑われて、リリーシュの顔はさらに赤くなった。耳たぶまで熱い。
しかし、心と身体が上手くかみ合わないのは仕方なかった。
リリーシュはまだ快感に慣れていない。気持ちがいいと思いながらも、時折怖くなる。底のない激しい快楽に、どこまでも落ちていきそうで……。
ちゅっと音を立てて、乳首を口に含まれた。甘く歯を立てられ、舌で転がされて、じわりと蜜が溢れ出す。もう片方の乳房も揉みしだかれ、布越しに与えられる焦れた感覚に、さらに彼の頭を抱き締めた。
「いや、いや……バルト様、身体が熱い……。身体の奥が……変になってしまいそうです」
紺碧の瞳に涙を浮かべ、左右に頭を振る。絹糸のような長い髪が、サラサラと枕から流れ落ちた。
じんじんと花芯が疼く。
子宮が切なく収縮して、彼が欲しいと訴える。
リリーシュははしたない自分が恥ずかしくて、とうとう眦(まなじり)から涙を零した。
ほんの数カ月前まで、この身体は異性を知らなかったのだ。こんな愉悦すら、一生知らずに終わる環境にいた。
それなのに、身も心も彼に作り変えられてしまった。バルトハルトがいなければ、切なさで死んでしまうほどに……。
「リリーシュ……」
顔を上げ、彼が耳元で囁く。
腰に響く心地よい低音が、さらに身体を火照らせた。
「泣くほど俺が欲しいか?」
見つめられ、羞恥よりも快感と愛しさが勝った。
「バルト様が、欲しい……。欲しいです……」
素直に頷くと、彼は意地悪く微笑んだ。
「ならば自分で夜着を脱いでみろ。俺に美しい裸体を見せるんだ」
「……っ!」
本当ならば、バルトハルトに夜着を脱がしてもらいたい。そして嵐のように抱きつぶしてほしい。しかし彼が望むのなら、なんでも応えたいと思った。
だって、この世で一番愛しい人なのだ。
自分の魂以上に大切な人。
下瞼に羞恥の涙を溜め、バルトハルトをそっと押し退ける。起き上がり、夜着の裾に手を掛けた。机に肘を突いた彼は、嬉しそうにこちらを眺めている。
「バ、バルト様の意地悪……っ」
口を衝いて出た言葉に、彼は苦笑する。
「お前が可愛いのがいけないんだ。だからいじめたくなる」
上半身を起こしたバルトハルトに口づけられて、うっとりと瞼を閉じた。
「一人で脱げるか?」
脱げと言っておいて、優しい目で心配するなんてずるい。
「ぬ、脱げます!」
強がると、リリーシュはそろそろと裾を捲り上げて、下着をつけていない裸体を晒した。
けれども羞恥は拭えず、両腕で胸を隠す。
縋(すが)るようにリリーシュは上目遣いで彼を見た。
「やはりお前は美しいな」
感嘆のため息を漏らしたバルトハルトは、肩を掴んでリリーシュをベッドに押し倒した。
胸を隠していた腕を解き、押さえつける。白い喉に鬱血の花を散らし、乳房を舐め、乳首を吸い上げる。いつしか指は秘裂を割り開き、すっかり硬くなった花芯を撫で擦った。
「あぁっ……」
背中を反らして、リリーシュは甘い刺激に耐えた。愛液を塗され、それはさらに激しくなった。クチュクチュといやらしい音が両腿の間から聞こえる。堪らなくなって腰を捻ると、秘筒に指が挿入された。
「ひ、ぅ……やぁ……っ」
激しく抜き差しされ、甘い熱が次々と生まれる。指をぐるりと回して中をかき混ぜられると、堪え切れない快感にひとりでに腰が跳ねた。
「いやぁ……あんっ……バルト、様ぁ」
ぐじゅぐじゅと蜜が溢れ出し、彼が欲しいと全身が求め出す。確かなもので満たしてもらいたくて、リリーシュは濡れた瞳で彼を見上げた。
(このあとは製品版でお楽しみください)