バイオリンの音色が空気を揺らした。
「あぁ……だめ、クラウディオ様……」
美しいプリマたちが舞う王立劇場の舞台袖で、アンナローザは大きくドレスをたくし上げられていた。丸くて美しい臀部を、大きな手が円を書くように撫でる。
「ほら、よく見るんだ。お前があんなにも見たがっていたコンファロニエーラ・バレエ団の舞台だ。しかも特等席だぞ」
「あ……んっ」
ガーターベルトの上から穿いた絹のショーツの中に、ゆっくりと手を差し込まれた。
「んんっ……んっ」
柔らかな下生えをかき分け、彼のしなやかな指が陰唇を割る。
「いけません! 本当に……これ以上は……!」
この次にどんなことをされるのか察したアンナローザは、慌ててこの土地の領主、クラウディオ・デ・コンファロニエーリ公爵を振り仰いだ。
「あぁぁっ……」
しかし彼はそれよりも早く、健気な淫核にそっと触れる。
「やぁ……だめっ……」
「可愛い歌姫。お前の美しい啼き声を聴いていたいところだが、ここは上映中の舞台袖だ。あまり大きな声を出しては観客に聞かれてしまうぞ? ……俺はそれでもかまわないがな」
彼に抱かれることを覚え込んでしまった淫蕩な身体は、その指使いに期待して、すでにじわりと濡れていた。
「んっ……んぅ、ううん、うっ……」
桜貝のような爪をした小さな手で、アンナローザは自分の口元を必死に抑える。
「そう、いい子だ。安心しろ。屋敷に帰ったら、嫌というほど啼かせてやるから」
剥き出しになった尻に、彼の熱い猛りを感じた。
ぐりっと押し当てられたそれは、毎夜のように行われる甘美な行為を思い出させ、アンナローザの股をいやらしく濡らしていく。
最初は優しく蜜をまぶすように……そして陰核が硬くなると、クラウディオは丁寧に真珠を撫で上げた。
「うぅ……んん……っ」
「そうだ、声を殺して……」
必死に声を抑えながらも、アンナローザの腰は彼を誘うように揺らめいてしまう。
耳元で囁かれたバリトンも、熱に濡れていた。誰かに見られてしまうかもしれないこの状況に、クラウディオも熱くなっているようだ。
そしてまた、自分の痴態に彼が興奮してくれていることに、アンナローザは悦びを感じてしまう。彼が今日のために新調してくれた、すみれ色のドレスを乱れさせながら。
「はぁ、はぁ……う、んんっ」
艶やかなショコラ色の髪が垂れる胸元に、クラウディオの手が伸びる。大きく開いた襟元から、たわわな胸が零れた。
「ダメです! クラウディオ様、本当に……これ以上は……っ」
プリマたちに向けられた眩い光の陰で、自分たちは情事に及んでいる。それだけでもたまらな背徳感があるのに、もしもこの淫猥な姿が観客に見られたら……。
アンナローザは「いけないことだわ!」と思いながら、自らも興奮していることを認めざるを得なかった。
なぜなら蜜はしとどに溢れ出し、官能がさらに熱く燃え上がったからだ。
「あぁ……! うっ、ん……っ」
真珠を弄っていた手がさらに奥へと伸ばされて、花びらを捲った。狭い筒へと指を挿入されて、背中が弓のように撓る。
「いや……クラウディオ様、いやぁ……」
「なぜ、嫌だと言うんだ?」
ゆるく首を振ると、耳たぶを食まれながら訊ねられ、アンナローザは譫言のように答えた。
「気持ちいい……気持ちいい、から……いけません……」
「お前は本当に面白い娘だ。気持ちいいのなら、そのまま快楽を甘受すればいい」
「あぁっ……」
アンナローザは眦に悦楽の涙を溜め、再び頭を振った。
「お許しください……もう、もう……」
「……もう、俺が欲しくなったか?」
熱く囁かれた言葉に、アンナローザは驚いて振り返る。
「ほ、本当にそれはなりません! どうかお許しを……っ!」
舞台袖に人影が見えて、クラウディオはアンナローザをさらに幕の奥へと連れ込んだ。
黒い垂れ幕を一枚挟んで、プリマたちが袖裏に引っ込んでくるのを足音から察する。
(本当に、本当にこんなところではダメよっ!)
必死に身を捩り、しなやかで力強いクラウディオの腕の中から逃げようとしたが、余計に強く抱き込まれてしまう。
そして……。
「あぁぁぁんっ!」
必死に声は抑えたものの、小さな喘ぎが口の端から漏れた。
「お前の中はいつ入っても最高だな。温かくて締まりがいい……」
荒くなった呼吸を整えるように呟いたクラウディオは、そのまま背後からアンナローザの華奢な身体を突き上げた。
「んっ……んんっ、……ん、ぅ……」
アンナローザの押し殺した喘ぎに、クラウディオの腰つきはどんどん速度を上げていく。
冷たい壁に縋りながら必死に声を抑えたが、最奥まで貫かれた時、とうとう甘い嬌声が漏れた。
「やぁぁ……あぁぁぁん」
ぽろりと涙を零しながら背中を反らせると、クラウディオの大きな手が、アンナローザのあかい唇を覆った。
「そんなに可愛い声を、俺以外に聞かせるんじゃない。もう少しだから、我慢しろ」
強制力がありつつも甘い言葉に、心まで快感に痺れる。
「ふ……、うんっ、んんっ……ふ、あぁ……」
衣擦れの音と、ぐちゅぐちゅという蜜が溢れる卑猥な音が、アンナローザを耳からも犯していく。
「あぁ……あぁ……あぁぁっ」
内腿が痙攣し、目の前で火花のような快感が散った。
それと同時に、膣壁の最奥に熱い迸りを受けて、アンナローザは豊かな胸を振るわせながら、蕩ける絶頂を味わった。
「……いい子だ、俺の歌姫」
頽れそうになった身体を片腕で支えられ、そのまま背後から抱き締められた。
憧れだったコンファロニエーラ・バレエ団の舞台を、特等席から観せてやると言ったのはクラウディオなのに、こんな風に抱かれては、舞台に集中することなど一切できない。
「クラウディオ様の意地悪……」
未だに潤んだ瞳で睨みつければ、彼はくすくすと笑った。
「俺が意地悪なんじゃない。お前が魅力的なんだ」
少年のように笑った彼に、胸がときめく。
第二幕の準備で忙しくなった舞台裏を、彼に横抱きにされてアンナローザはあとにした。
彼と自分が、この先どんな運命に巻き込まれるかも知らず、ただアンナローザは初めて覚えた甘酸っぱい感情に、胸を高鳴らせていたのだった。
(続きは製品版でお楽しみください。)