「いい機会だ。わたしと深く関わろう。わたしなら、君を上手く導いてあげられる。――たくさんの悦びへと」
優しく唇を吸われながら、スラックスと下着をわずかに下ろされ、芳時のてのひらに包み込まれたペニスを扱(しご)かれる。愛撫は緩やかだが、与えられる感覚は強烈で、亜紀人の視覚に鮮やかな閃光が飛び交う。
芳時から与えられるキスが深くなり、逃げ惑っているうちに舌を捉えられる。促されるままにおずおずと舌先を触れ合わせ、搦め捕られていた。引き出された舌を、濡れた音を立てながら吸われ、甘噛みされる。
亜紀人が熱い吐息をこぼすと、芳時が低い声で囁いてくる。
「怖くないだろう、わたしは。君が素直に反応してくれるなら、絶対に怖い思いはさせない。だから、君のすべてが見たいな」
囁きと愛撫、酔いのせいもあって、亜紀人の思考は蜜を絡めたように鈍くなっていた。どう返事をすればいいのかと考えようとするのだが、思考がまとまらない。もっとも芳時は、亜紀人の返事など本当は求めていなかった。
「……嫌と言わないということは、いいってことだね」
都合よく解釈をした芳時の手がスラックスにかかり、亜紀人は咄嗟に制止しようとする。芳時は安心させるかのように微笑み、亜紀人の腹部に恭しく唇を押し当ててきた。
「体から力を抜いて。君の体をじっくり見たいんだ。そして、悦ばせたい」
まるで自分の印を刻みつけるように、芳時は何度も肌に唇を滑らせ、吸い上げてくる。そのたびに亜紀人は、芳時が言っていることは本当なのかもしれないと思うようになる。
ヘソに唇が押し当てられ、舌先でくすぐられると、微かに声を洩らして腰をもじつかせる。スラックスと下着を引き下ろされ、足から抜き取られるときに、一緒に靴下も脱がされていた。
亜紀人は、抵抗らしい抵抗もできないまま、身につけていたものすべてを芳時に奪い取られたのだ。
「思った通り、きれいな体だ。素直で、反応もいい。触れているわたしも、楽しくなってくる」
感嘆したように話しながら、芳時は体中のあちこちに触れてくる。膝や腿に唇を押し当ててきたかと思うと、突然、肩先に軽く歯を立て、そのまま腕から指先へと舌先を這わせてくる。そして次に、腰から脇腹を舐め上げられ、たまらず亜紀人は身を捩る。
「――さあ、亜紀人くん、またキスをしよう」
芳時に名を呼ばれ、そのことに違和感を覚える前に、唇を塞がれる。
唇を吸われて、素直に心地いいと思った。口腔を舌でまさぐられるのも、舌先を触れ合わせるのも、緩やかに舌を絡め合うのも、もう抵抗感がなくなっている。それどころか――。
「んうっ、んっ……」
芳時の手に包み込まれた亜紀人のペニスは、形を変えていた。与えられる愛撫を快感として認識しているのだ。指の腹で先端をくすぐられ、濡れていることを知る。身を焼きそうな羞恥に、慌てて芳時の手を払いのけようとしたが、ペニスを握る手にわずかに力を込められる。
「怯えたら、怖いことをすると言っただろう?大丈夫だから、体から力を抜いて、すべてわたしに任せてごらん。とてもいいことをしてあげるから」
これは淫(みだ)らな恫喝(どうかつ)だ。芳時のキスに応えながら、亜紀人はおずおずと下肢から力を抜く。芳時が胸元から腹部、腿へと唇を這わせていき、膝に手がかかったとき、まるで魔法でもかけられたように、両足を開いていた。
恥ずかしい、と感じることすら咎(とが)められているように思え、必死に意識の外へと羞恥心を追い払う。
「――ようやく、ここにキスができる」
芳時の呟きが耳に届いたとき、亜紀人は全身を貫くような快美さに襲われた。身を起こしたペニスの先端に、芳時が唇を押し当てたのだ。
亜紀人は大きく息を吸い込んで、背を反らし上げる。芳時の手によってさらに足を大きく広げられ、羞恥に満ちた姿勢を取らされるが、芳時に逆らえない。
「あっ、あっ、やめ、て……くださ……」
「ダメだよ。わたしがしたいんだ。君を快感で泣かせたい。ここから、たくさん蜜を出せるだろう?」
舌先で先端を突かれて、上擦った声が出る。括(くび)れまでを熱い口腔に含まれて、舐られるだけではなく、吸われ、そっと歯を当てられたところで、亜紀人は愛撫に理性を溶かされる。
「はあっ……、んくっ、んっ、んんっ、くうっ……ん」
浅ましく腰が揺れるのを、自分では止められなかった。芳時は、そんな亜紀人を煽(あお)るように、ペニスの根本を指で擦り上げてくる。
「ひあっ、あっ、あうっ――」
堪える術もなく、亜紀人は奔放(ほんぽう)に乱れる。生まれて初めて、快感で我を失っていた。だからこそ芳時の次の行動にも、まったくの無防備だった。
片足を慎重に抱え上げられ、尻の肉を揉(も)まれたかと思うと、双丘の間をくすぐるように指が行き来する。
「あっ、な、に……」
違和感に亜紀人が身じろごうとすると、芳時にペニスを口腔深くまで呑み込まれ、湿った粘膜に包まれる。亜紀人が快感に溶けると同時に、アナルを指でこじ開けられていた。
信じられない場所で異物が蠢く感覚は、生理的な嫌悪感を催した。しかし、亜紀人が示した反応は、芳時の口腔に精を放つというものだった。
自分でも何が起こったかわからず、呆然(ぼうぜん)とする。しかし、優しく穏やかな物腰でありながら、容赦ない芳時は、下肢から力が抜けたのをいいことに、アナルを指で犯し続ける。
「……君の蕾が、発情してきている。赤く色づいて、少しずつ綻(ほころ)んで、ヒクヒクと蠢いて……。こうも素直だと、苛(いじ)めたくなるね。こうして――」
アナルから一度指が引き抜かれ、すぐにまた挿入されてくる。指の数を増やして。
「ううっ、うっ、うあっ」
思いがけない行為に、亜紀人の体は驚いていた。意思とは関係なく、アナルがきつく収縮を繰り返し、苦しいのに指を締め付けてしまう。芳時は、その様子をじっと見つめていた。これ以上なく羞恥を刺激される部分を、眼差しだけではなく、指でも犯され、亜紀人は惑乱する。
「あっ、嫌……、見ないで、ください……。もう、許してくださいっ……」