書籍情報

快楽主義者の淫らな戯れ【書下ろし】

快楽主義者の淫らな戯れ【書下ろし】

著者:かのえなぎさ

イラスト:史堂 櫂

発売年月日:2015年12月11日

定価:990円(税込)

「今、おまえの花が物欲しげに動いた。誰が欲しい? 俺か、パトリックか-」 野心家でやり手の銀行経営者ヴァルターは、名門ホテルを営むハインミュラー家に昔から出入りしていた。美しい容貌の跡取り息子カミルに魅了されていたのだ。カミルが20歳、ヴァルターが28歳のときに一度体の関係をもつ。ヴァルターはカミルの快楽に貪欲な本性を見抜き、ひたすら彼を求めるがカミルは拒否続ける。それから12年の月日が流れた。カミルは、ホワイトターフの美人騎手パトリックとヴァルターとの三人淫らな関係に溺れていくが……

この本を買った人はこんな本も買ってます!

お取扱店

登場人物

パトリック・メイスン
26歳。若き天才騎手として活躍中。ホワイトターフに初めて出場する。自信家だが、子どものように屈託がなく、甘え上手。魅力的な外見の持ち主で快楽主義者。
カミル・ハインミュラー
32歳。名門ホテルの若きオーナー。冷たく見えるが、美しい容貌の持ち主。古くからの知人ヴァルターと体の関係を一度だけ持つ。騎手のパトリック情熱的に求愛され、ヴァルターとの関係も変化し、それぞれと関係を持つ。
ヴァルター・ベルトラム
40歳。やり手の銀行家。美しいカミルを見初め、カミルが20歳のときに身体の関係を持って以来、熱心に口説き続けている。

立ち読み

ホワイトターフも終盤に差し掛かる中、三人は残された時間に急きたてられるように、淫らな関係を深めていった。 カミルは、ヴァルターとパトリックに同時に求められ、愛されて、ヴァルターが言うところの〈花〉を閉じる暇さえ与えられず、二人の蜜を与えられ続けていた。
カミルの目覚しい開花ぶりを、ヴァルターとパトリックは愛でていた。自分たちが開花させたという自負が、興奮にも繋がっているのかもしれない。そんな二人の興奮に、カミルは容易に感化され、より深みを増していく快感にのめり込んでいく。
「うあっ、あっ、あっ、ああっ」
上体を揺らしたカミルは緩く頭を左右に振り、無意識に片手を前方に伸ばす。すると、すぐにその手をきつく握り締められ、指を絡め合う。しかし、それだけでは支えとしては心もとない。カミルはもう片方の手を、引き締まった腹部にそろそろと這わせた。
「……くすぐったい」
笑いを含んだ声を洩らしたのはパトリックだった。
ベッドに仰臥したパトリックの腰の上に、カミルは跨っていた。そして、繋がっている。
アナルに深々と穿たれているペニスは力強く脈打ち、カミルの官能を内から容赦なく刺激してくる。最初は半泣きで、こんな体位は無理だと訴えていたのだが、気がつけば、自ら腰を揺らし、快感を得る部分を模索していた。
「カミル、動いてください。もっと気持ちよくなりたいでしょう」
「無理、だ……。これ以上は、自分では――」
「だったら、俺が動いていい?」
絡めていた指を解き、パトリックがカミルのペニスに片手を伸ばす。さきほどからカミルのペニスは反り返り、先端から尽きることなく透明なしずくを垂らしていた。
「んっ」
先端を指の腹でくすぐられて、ビクリと腰を震わせる。同時に、呑み込んでいるパトリックのペニスをきつく締め上げていた。それがパトリックに心地よさを与えたらしく、それでなくても引き締まった腹筋がぐっと硬くなる。カミルは逞しい感触を愛でるように、撫でていた。
しっかりと腰を掴まれ、下から小刻みに突き上げられる。カミルは背をしならせ、送り込まれてくる快感に恍惚とする。顔を仰向かせ、うっとりと目を細めていると、いつの間にか傍らにやってきたヴァルターにあごを掴まれ、貪るように激しく唇を吸われた。
さきほどまで、カミルとパトリックの交わりを楽しげに眺めていたのだが、少し目を離した隙に姿が見えなくなり、またこうして戻ってきたのだ。
「……何を、してたんだ」
唇が離され、カミルは息を喘がせながら問いかける。肩先に軽いキスをしたヴァルターは、あるものを見せてくれた。
「鞭だ」
答えたのはパトリックだ。騎手として見慣れたものらしいが、カミルとしては、今のこの状況で、こんなものを見せられる理由がわからない。
「鞭の種類なんて俺は知らなかったが、パトリックの話だと、短鞭というそうだ。これは、先は柔らかな皮でできていて、いい音がするが、馬への刺激は少ないらしい」
ヴァルターが軽く鞭を振り、自分のてのひらを打ってみせる。その行為でカミルは、ヴァルターがこれから何をするつもりなのか悟った。
「嫌だ、ヴァルター……。痛いのは、嫌だ」
「ああ、お前を痛めつけたりしない」
優しく笑いかけてきたヴァルターが、カミルの背後に回り込む。ベッドに乗り上がった気配を感じ、本能的な怯えから振り返ろうとしたが、パトリックに大きく腰を突き上げられ、今度こそ前のめりに上体を倒れ込ませていた。
パトリックの青い瞳が嬉しそうに輝いている。
「カミル、実は期待していますか?あなたの中、今、すごく興奮しています。俺のものを、ものすごくきつく締め付けて、ヒクヒクと震えている」
パトリックの両手が尻にかかり、繋がっている部分をまるでヴァルターに見せ付けるように、強い手つきで揉んでくる。
「パトリックっ……」
なんとか上体を起こそうとしたとき、背に軽い衝撃が走ると同時に、鋭い音がした。
「ひっ」
声を上げたカミルは反射的に体を強張らせる。鞭で打たれたのだと理解した次の瞬間には、再び背に衝撃が走った。今度は少し強めに。
痺れるような感覚のあと、一気に肌が熱くなる。カミルは震えを帯びた息を吐き出し、すがるようにパトリックを見つめる。
「……痛いから、ヴァルターをやめさせてくれ……」
そこにまた、背を打たれる。パトリックは首を横に振った。
「うそですね。痛くはないでしょう。体がびっくりしているだけで、すぐに、よくなりますよ」
「そんなこと――」
今度は立て続けに打たれ、カミルはビクビクと体を震わせる。パトリックは、カミルの体の強張りを解くように、ゆっくりと腰を使ってアナルを突き上げてくる。きつい収縮を繰り返す部分を逞しい感触で擦られ、背への注意が逸れる。その瞬間を見逃さず、鞭で打たれる。
「ううっ、あっ、あぁっ――……」
パトリックの律動と、ヴァルターが振るう鞭の動きが、淫らなリズムを刻む。カミルはうわ言のように痛いと繰り返していたが、次第に甘い呻き声を洩らすようになる。
「カミル、気持ちいいですか?」
パトリックに髪を撫でながら問いかけられ、意識が朦朧としかけていたカミルは、数秒の間を置いてから、なんとか首を横に振る。しかし、うそをつくなと責めるように、一際強く背を打たれ、カミルは陥落した。
「ひあっ」
パトリックの引き締まった下腹部から腹部にかけて、精を飛び散らせる。パトリックが軽く眉をひそめ、凄絶に色気の漂う表情を見せたあと、大きく腰を動かした。アナルの奥深くに、今日二度目となるパトリックの精を注ぎ込まれる。
ぐったりとして逞しい胸に上体を預けると、そんなカミルを慰撫するようにパトリックに肩や腰を撫でられる。背には、柔らかな感触が触れる。
「――少しだけ騎手の気分が味わえた」
背に唇を這わせながらのヴァルターの言葉に、カミルは小さく洩らす。
「失礼な男だ」
「お前だって、同じじゃないか?もっともお前が乗っているのは、馬じゃなくて、騎手だが」
意味を理解し、今になって羞恥で全身が熱くなる。
「品のない冗談だな、ヴァルターっ……。だいたい、馬扱いしたら、パトリックに失礼だろ」
「俺は気にしませんよ。馬のほうが、騎手を自由に扱えるというのは、非常に新鮮だし、興奮しました」
汗に濡れたカミルの体に二人のてのひらが這わされ、まだ情欲を煽り立てようとする。もう無理だとカミルは弱々しく首を横に振ったが、背骨のラインに沿ってヴァルターの舌に舐め上げられると、アナルに収まったままのパトリックのペニスを、柔らかく締め付けてしまう。
耳元でパトリックに囁かれた。
「もう少し待ってくださいね。すぐにまた元気になりますから」
「なっ……」
「残念だが、次は俺の番だ。パトリック」 背後から強引に腰を掴み上げられ、繋がりを解かれる。アナルからペニスが引き抜かれる衝撃に、カミルは咄嗟にパトリックにしがみついた。
「ヴァルターっ……、まだ待ってくれ――」
「ダメだ」
パトリックの精を注ぎ込まれたばかりで、喘ぐようにひくつくアナルに、ヴァルターの高ぶったペニスを捻じ込まれる。
「うっ、ううっ、くうっ……ん」
腰を揺すられながら、驚くほどスムーズにアナルの奥深くまでヴァルターのペニスを受け入れる。見境がなくなっているカミルの体は、再び愛されることに歓喜していた。
パトリックの体の上で高々と腰を突き出し、ヴァルターに背後から攻められる。パトリックの精に塗れ、蕩けるほど柔らかく、敏感なっている襞と粘膜は、今度はヴァルターの精を求めて妖しく蠢く。
「んあっ、はあっ、あっ、ああっ――」
「くっ、カミル……」
乱暴に腰を突き上げられて、一瞬息が詰まる。アナルでは、ヴァルターのペニスがますます逞しさを増していた。
背後から揺さぶられながら、カミルは押し寄せてくる愉悦に酔う。身の内で感じるヴァルターの熱さだけではなく、上体を受け止めてくれるパトリックの体温も気持ちいい。
「カミル、とてもいい顔をしていますね」
囁いてきたパトリックが額にキスをしてきた。
ヴァルターの動きが激しさを増し、カミルは必死にパトリックの肩にしがみつく。
「ああっ、ああっ、あっ、ヴァ、ルター……、もう少し、ゆっくり……」
アナルから溢れ出してきたパトリックの残滓が、内腿を濡らしていく。淫靡な湿った音が室内に大きく響き渡り、そこに三人の息遣いが重なる。一番切迫して苦しげなのはカミルで、ヴァルターの呼吸も荒い。達して間もないパトリックもまだ興奮が続いているのか、いくらか乱れている。
目も眩むような快感と息苦しさに、知らず知らずのうちにカミルの目から涙がこぼれ落ちる。それに気づいたパトリックに舌先で舐め取られた。
「……あんまり仲がいいと、妬けるな」
本気とも冗談ともつかない口調でヴァルターが呟き、パトリックが澄ました顔で返す。
「ええ、妬いてください。嫉妬は、愛情における最高のスパイスだと、俺は思っているんですよ」
「それは、セックスでも同じことが言えるな……」
アナルの奥深くを重々しく突き上げられ、数瞬、カミルの意識は飛んでしまう。気がついたときには、ヴァルターのペニスがドクッ、ドクッと震え、精を吐き出していた。
全身に甘美な感覚が行き渡るのを感じ、カミルは背をしならせ、吐息を洩らす。
ヴァルターに精を与えられた代わりに、残っていた体力のすべてを奪い取られたようだった。指を動かすこともできず、体を離すと、カミルはうつ伏せでベッドに横たえられる。
まだほんの数日の間、体験しただけだが、ヴァルターとパトリックと一緒に行為に及ぶと、カミルの負担だけがとにかく大きい。二人とも容赦なく貪り尽くしてくるのだ。加減してくれと訴えてはいるのだが、十分していると言われて終わりだ。
大きな獣が二頭、交互にのしかかり、食らいついてくる映像が、カミルの脳裏に浮かぶ。もちろん、自分を痛めつけようとしているわけではないことは、よくわかってはいるのだ。
「――カミル、水飲むか?」
ヴァルターに問われて頷くと、慎重に頭を抱え上げられ、ボトルを口元に当てられる。カミルは喉を鳴らして水を喉に流し込んだ。するといくらか生き返った気持ちになった。
ほっと吐息をこぼして、クッションに頭を預ける。このまま眠ってしまいたくなったが、大きな二頭の獣は、まだカミルとじゃれ合いたいらしい。
するりと隣に身を滑り込ませてきたパトリックが、甘えるように肩先にキスをしてきた。身じろいだカミルはクッションから頭を上げると、なんとか手を動かして、乱れている金髪を撫でてやる。
一方のヴァルターは、さきほどの続きとばかりに、カミルの背に丹念に舌を這わせてくる。
「傷にはなっていない。一日もしないうちに、赤みは取れるはずだ」
そう言ってヴァルターが、強く肌を吸い上げる。鞭で打った跡はすぐ消えるので、その変わりに愛撫の痕跡を残すつもりのようだ。
くすぐったさに口元を緩めると、誘われたようにパトリックがますます顔を寄せてくる。
ヴァルターとパトリックが〈グル〉だったと知らされてから、パトリックの人懐こさは演技も入っていたのだろうと考えたカミルだが、すぐにその認識を改めることになった。
カミルがすべてを知ったことに安心したのか、パトリックは無防備に甘えてくる。これはもう、人懐こいというより、まるで甘えたがりの子供だ。そのくせ本人は、非常に色気のあるハンサムな青年で、性的な好奇心も旺盛だ。
甘えてきながら、カミルを容易に蕩けさせ、理性を陥落させてくる。ほんの何日か前まで、色事を遠ざけてきたカミルには、知り合って間もないパトリックは、ヴァルターとは違った刺激の強さがあった。
間近から覗き込んでくる青い瞳に見入っている間に唇を塞がれ、口腔に舌が侵入してくる。まるで張り合うようにヴァルターが肩に軽く噛みついてきて、結局カミルは、ベッドに仰向けで押し付けられて、二人がかりで体中に唇と舌を這わせてくる。
さすがにこれでは身がもたないと、カミルが本気でベッドから抜け出そうとすると、ヴァルターは苦笑を浮かべ、パトリックはひどく残念そうな顔をして諦めてくれた。

お取扱店