「女に裸エプロンをさせたことすらない俺としては、どういうふうになるのか、その構造を知りたいんだよ。だから、もっとゆるめろ」
「で、でも…」
「それとも、あれか、おまえの乳首は人に見せたくないような変な形状してんのか。男の乳首なんて、ただの飾りだろ。泳ぎに行ったり、温泉に行ったりしたときに隠すのか?隠さねえだろ。だったら、もったいぶってないで、さっさと見せろ」
そう言われてみれば、そうだ。女の子の乳首とはちがう。龍和だって、別に七斗の乳首に興味はない。
ただ、どこまでゆるめればかがんだときに見えるのかが知りたいだけだ。
ドラゴのためだ。
七斗はそう思いながら、また紐をほどいた。どのぐらいゆるめればいいのかわからないので、紐は持ったままだ。
「とりあえずかがんでみるから、見えたら教えて」
そのゆるさで縛り直せばいい。
七斗はゆっくりと前にかがむ。紐を持っていた手を前に出すと、エプロンの胸の部分がたわんできた。
「お、そこだ。縛れ」
龍和に指示されて、七斗は紐を縛った。
「手を前に出して、なんか洗ってるみたいにしろ」
龍和に言われたとおりにポーズを取る。もっとかがんでみたり、手を水道に伸ばしたり。
「よし、いいのが撮れた」
龍和が七斗にデジカメの画面を見せた。そこには、エプロンの横が弧になって、そこから乳首がのぞいている七斗の姿。自分でやっていてなんだけど、裸エプロンって、男でもなかなかにエロい。
恥ずかしい。
それが写真を見たときの最初の感情。だけど、それとは別にもうひとつ。
もっと撮ってほしい。
どうしてかわからないけど、そう思ってしまった。そして、その気持ちのほうが強いように思える。
「けど、これだけじゃ、まだ弱い。ちょっと手を入れるぞ」
「…え?」
どこに、手を入れるんだろう。
その疑問は、すぐに解決した。たわんだエプロンの間から、龍和の手が入ってくる。
「ちょ…」
七斗は体をよじった。そのせいで、龍和の指が、七斗の乳首に、ちょん、と当たる。
「ひゃっ…」
七斗は、おかしな声をあげてしまった。
「どうした」
龍和が、七斗の顔をのぞき込む。
「な、なんでもない」
七斗は首を振った。でも、なんでもなくない。龍和の指が触れた部分が、じん、としびれたみたいになる。いままで、乳首が気持ちいいなんて、思ったこともないのに。
まるで、龍和の小説みたいだ。
「そうか」
龍和は、それ以上、追及せずに、手を入れた写真を撮り始めた。かすかなシャッター音がするたびに、乳首の奥がうずく。 乳首が立ってないだろうか。
そのことが気になってしょうがない。
「ここまで楽に入るなら、いたずらもできるな。ところで、七斗。乳首、感じるのか」
七斗は目をぱちぱちとさせた。質問されている意味も、意図も、まったくわからない。
「さっき、あえいでただろ」
「あえいでないよっ!」
七斗は慌てて否定した。
「あと、写真撮ってるうちに、とがってきてたぞ。自分で触ってみろ。硬くなってる」
「そんなことないっ!」
「証拠、見せてやるよ」
龍和はデジカメを七斗の目の前に持ってくる。
見たくない。目をそらしたい。
…なのに、できない。