第二話
著作 ひなた翠 Illustration 龍 胡伯
第2話
ルーカスの意思は固い。どれだけ困った顔をしたところで、気が変わる気配が一切ない。だからといって説得するにも思考力は足りなくて――折れたソフィアは、ルーカスの腕から手をゆっくりと離した。
承諾を得たことで、ルーカスは嬉々としてソフィアの夜着を脱がした。心の準備もままならない状態で裸となり、羞恥心と一緒に胸と下腹部を両手で隠すソフィアに、満足げな顔のルーカスは優しくその手に触れる。
「隠さないで見せて」
「ルーカス様も一緒に脱いでくださったら……」
(一人だけ裸なのは嫌です)
「わかった」
ルーカスは身体を一度起こすと、自らの夜着を脱いでベッド下に落とした。先に脱がしたソフィアの夜着の上に、ふわりと重なった。
「脱いだよ?」
ほら、手を外してと言わんばかりの表情を彼にされては、ソフィアも従うしかない。約束は約束だ、何度も駄々をこねるわけにもいかない。ソフィアは隠している部分を露わにして、橙に染まった顔を反らした。
「やっぱり恥ずかしい」
「綺麗だよ。もっと見たい。見せてほしい」
(綺麗? 私が?)
ソフィアはルーカスの言葉を反芻した。
すると、ルーカスが優しく抱きしめてきて、首筋に優しく口づけをする。
「……んっ、あ」
彼の優しいキスは鎖骨から胸の頂まで続き、さっきよりも硬く尖った先端を甘噛みした。
軽い痺れがソフィアの身体に走る。甘い疼きを腹の奥で感じつつ、ベッドに座る態勢があっという間に崩れ、横になった。
「下もいい?」
「下……ですか?」
「ここ」
固く閉じていたソフィアの秘所を長い指先でさした。
「足を広げて」
「こう、ですか?」
「もっと」
ソフィアは膝を掴まれて、ぐいっと足を広げられる。
「待って! ここはっ……」
(他人に見せるようなところではないはず!)
慌てて秘部を手で覆い隠す。
他人の前で足を広げるのは下品だと教わっているソフィアには、ルーカスの行為に軽くパニックを起こす。
そんな彼女に、なだめるようにしてルーカスは言い聞かせた。
「夫の前だけならいいんだ。ここを広げてくれないと、俺はソフィアを抱けない」
「そうなんですか?」
「最初は痛いかもしれない。できるだけ痛くしないように努力はするけど……我慢できないようだったら教えて?」
「……はい」
ソフィアの返事を聞いてから、ルーカスの指が動いた。
誰にも見せたことも、触られたこともない繁みの奥に指が入っていく。くちゅっと水音がすると、初めての刺激に背中が弓なりに反った。
「ああっ、んぅ」
「痛くない?」
「痛くは、んんっ、ないです……あっ、指、動いて……あっ、あ、んっ」
ナカで指が動き出すのがわかる。ゆっくりと内壁が擦られるたび、感じたことのない感覚に腰が捻じれてしまう。
何度も擦られてナカから溢れ出す何かが、ソフィアの太腿を濡らしていく。ぐちゅぐちゅと指が動く音が卑猥で、恥ずかしさが増した。
「この音……止めてください」
ソフィアは真っ赤に染まった顔を手で隠して、ルーカスにお願いをした。
「もっと濡れないと痛いよ?」
「恥ずかしいんです」
「俺は嬉しいよ。ソフィアが感じてくれてるっていう証拠だから」
にっこりと微笑みルーカスは指を抜くどころか、もう一本増やした。
ナカが広げられる感覚に、思わずまた腰を捩ってしまう。
(おかしくなりそう)
「んぁ、あっ」
「痛くない?」
「大丈夫、です」
心配そうな表情をしながら、ルーカスがゆっくりと指二本を動かす。
(痛くないけど、変な感じ)
言葉に表せない感覚に身体が支配されているのを感じる。
彼は時間をかけて、ソフィアの膣道を解してくれた。指が三本入るころには、ソフィアの羞恥心も薄れ、強ばっていた両足からも力が抜けている。
その様子を確認したのか、ルーカスはソフィアのナカから指を引き抜いた。
「そろそろ入れてもいいかな?」
「入ってますよ?」
「指じゃなくて……」
ルーカスは言いにくそうに視線を下に落とした。ソフィアも彼が見つめる先を確かめて、「あっ」と小さく声を漏らす。
彼の男根が、天に突きあげられるようにいきり立っていたのだ。先端からは汁が零れ、びくびくしているのがわかる。
「ルーカス様の……入れてください」
「痛かったら、すぐに言ってね?」
ソフィアは静かに頷くと、彼にわからないように深呼吸をした。
指三本よりもはるかに太い剛直に、怯んでしまった心を落ち着かせたい。
大丈夫だろうか。本当に入るのだろうか?
ルーカスがソフィアの膝裏を掴み、今まで以上に大きく足を広げると、グッと蜜口に押し当てた。
「ん……ああっ、んぅ」
濡れそぼった口が開き、ルーカスの熱を受け入れていく。痛みよりも皮膚が限界まで引っ張られるのがわかった。
(ルーカス様のが熱い)
指のときよりも慎重にナカへと進んでいくのがわかる。最奥まで達したところでルーカスに求められるまま口づけを交わし、たぐり寄せるように手を繋いだ。
「ソフィア、痛くない?」
「痛くないです」
まったく痛みがないわけではないが、我慢できる痛みだ。ルーカスの幸せそうな表情を目にしたら、痛いからやめてとは言えなくなる。
多少の痛みなど無いに等しいと思えた。
「ルーカス様は、痛みはありませんか?」
「ないよ。気持ちよくて、暴発しそう」
「はい?」
「なんでもないよ。気にしないで。動くよ」
ルーカスの腰が動き出し、ソフィアの奥を突いた。
「んっ! あっ……あっ、あ、んんぅ」
より敏感になっている奥を突かれて、ソフィアは身体が震えた。
「痛い?」
「ちがっ……奥に当たると身体が勝手に……」
「ここ?」
「ああっ! んっ、あっ。駄目……奥ばかりは、ゾクゾクする」
何度か奥を突かれて、ソフィアは背中を反り返らせたまま震えた。
この感覚が気持ちいいのだろうか? お腹の奥がきゅっと締めつけられて、強い衝動から逃げたいのに、逃げると寂しくなってしまう。
「ソフィア、気持ちいい?」
「わかん、ないっ、あっ、ああっ、奥、何か……んぅ、きそう……ああっ!」
抗えない強い波にのまれたソフィアは、悲鳴のような声をあげて腰を大きく跳ねさせると痙攣を起こした。ナカが何度も収縮をして、ルーカスの大きい男根を締め付けてしまう。
そのたびに彼の眉間に皺がより、「くっ」と何かを我慢させるような声が聞こえた。
「ごめんなさい……私、急に……痛くなかったですか?」
「大丈夫だけど、大丈夫じゃないかな。ソフィアが気持ちよさそうにイッてくれたのは嬉しいけど、俺ももう余裕ない」
苦しそうな表情のルーカスが、腰の振りを速めていく。浅く早い呼吸で、さらに深く腰を打ちつける彼の声が低く呻いた。
「ソフィア」
何度も繰り返し名前を呼ぶルーカスは、ぐっと最奥まで突き上げた後、爆ぜた。それと同時に、ソフィアも一気に高みに昇りつめて、絶頂の渦に飲み込まれる。
「ああっ! ……ん、ああああっ」
強くルーカスに抱き着いて、ソフィアは真っ白になった世界を味わった。
お腹の奥に熱いモノが流れ込んでくると、幸せな感情に包まれてぐったりと四肢をベッドに投げ出した。