第2話
銀狼帝の愛囚~復讐の姫は淫蜜にまみれて~
著作:麻倉とわ Illustration:南香かをり
第2話
そこにはブロンズ製の優美な円卓が置かれていたが、シルベストルはその上に妻を座らせ、そばにあった揃いの二脚の椅子を蹴り飛ばした。
――こちらの円卓と椅子は、景色を眺めながら皇后陛下とお茶を楽しみたいとおっしゃって、陛下がご用意されたのですよ。
この離宮に来た時に侍女のソニアからそう聞かされたが、シルベストルとセラフィーナがそんな穏やかな時間を過ごしたことはまだ一度もなかった。
「シ、シルベストル様?」
体重をかけて覆い被さられ、セラフィーナは円卓に仰臥する。そこからはみ出した両脚は頼りなく宙で揺れていた。
薄物をまとっただけの身体には、ブロンズの硬く冷たい感触がひどくこたえる。それでもセラフィーナは自分にのしかかる夫を震えながら見返した。
「何をなさるのですか?」
「夫婦がすることは決まっているだろう?」
シルベストルの大きな手が絹の寝衣を引き裂き、投げ捨てる。銀色の月光の下、白い肌がさらされた。
まさかこんな場所で身体を繋げるつもりなのだろうか? 夜更けとはいえ、ここは外なのに。
あまりにあさましい行為に、セラフィーナの血の気が引いていく。
「嫌です!」
「黙れ」
細い悲鳴はたちまち口づけで塞がれた。
「ん、うう、んぅ」
まるで貪るかのように執拗な接吻が続く。
(嫌! 助けて!)
どんなに望んだところで、もちろん救いは来ない。
おそらくこの先も自分たちはこんなふうに過ごさなければならないのだろう。
これまで二人の間に渦巻いた感情は混乱と憎悪と憤怒だけ。本来なら夫婦として相手に抱くべき尊敬も信頼も、そもそも愛情さえ存在していないのだから。
いや、少なくともかつてのセラフィーナは心からシルベストルを慕っていた。優しく、あたたかい人だと信じていたのだ。こんな無体を働くとは、そしてまさかあれほど恐ろしいことをしでかすとは思いもせずに。
しかし、だからこそ今は彼が憎くてしかたがなかった。
(お恨みいたします、シルベストル様)
紫の瞳に、隠しようのない憤りが燃え上がる。ところがそんな視線に怯むような相手ではなかった。
「そそられるよ、セラフィーナ。お前は実にいい目をする。その褒美に、今度は存分に犯してやろう」
シルベストルは上体を起こすと、白い両腿に手をかけて大きく割り開いた。そのまま腰が浮きそうなほど持ち上げ、猛った雄芯を妻の中に埋め込んでいく。
「あっ、ああぁっ!」
衝撃に細い身体が大きく跳ね、かわいらしい顔が苦しげに歪む。
しかしセラフィーナが感じていたのは痛みではなかった。
「や、あうう」
先ほどまでシルベストルを受け入れていたせいだろうか。前戯もなく男根を突き入れられたというのに、セラフィーナの蜜洞は大きく張り出した先端部も、筋が浮いた長い茎の部分も滑らかに呑み込んでしまった。
満天の星空の下、荒い呼吸とズチュズチュと濡れた音が響き合う。
怒張が当たるのは特に感じやすい部分ばかりで、可憐な秘口は早くも悦びにわなないていた。
「くっ」
ほっそりした腰を押さえつけ、繰り返しセラフィーナを貫きながら、シルベストルはわずかに眉を寄せた。
「すごいな、セラフィーナ。ここは何度突いてやっても狭いままなのに、淫らに私に絡みついてくる。今にも……持っていかれそうだ」
「おっしゃらないで、そんな――あっ!」
言葉で煽られ、なおいっそう深く抉られて、セラフィーナの白い頬を涙が伝った。シルベストルを心底恨み、そのすべてを拒んでいるのに、どうしようもなく追い上げられていく。
セラフィーナはいつの間にか、自ら広い背中に腕を回して夫を抱き寄せていた。
(チェチーリア姉様! ごめんなさい)
秘裂から淫らな蜜が絶え間なく溢れ、腰が勝手に揺れてしまう。緩急をつけた巧みな抽挿に、ほてった媚肉はあさましいほど反応していた。
与えられる快感をやり過ごそうとしても、セラフィーナにはどうすることもできない。
誰よりも大切な従姉を死に追いやったのは、このシルベストルなのに――。
「嫌ぁ……あん、やぁ、あ」
やがて東の空が白み始めても、二人の交わりは終わらなかった。
猛々しい熱杭は、新妻の身体を容赦なく穿ち続ける。そのくせ頂に届きそうになると、シルベストルはわざと的を外したり、意地悪く間を置いたりした。
そのせいで極めることも、われを失うこともできず、甘い地獄から抜け出せない。
セラフィーナは涙ぐみ、上気した肢体をくねらせた。
「お願い……です。も、もう……もう、許し、て」
「私を殺めたいのだろう、セラフィーナ?」
桜色に染まった右の耳朶を甘噛みし、シルベストルは薄く笑った。
「だが……教えたはずだ。この身を傷つけるには、私の精を存分に受け入れなければならないと。これからも毎夜、幾度となく」
ふいに右脚を抱え上げられ、シルベストルの肩の上にのせられた。そのせいで完全に腰が浮いたところに、深々と剛直を突き入れられる。
「ひっ!」
「しっかり受け止めるがいい」
息継ぎする間もなく、荒々しく抜き差しされて、セラフィーナは全身を震わせた。
「やぁっ!」
蜜壷の最奥で、シルベストルの白濁が飛び散る。
とうに限界を超えていたセラフィーナは抗うすべもなく、恍惚の高波にさらわれていった。
(第3話は3月18日配信予定です)