「降ろして。まだ、求婚もされていないし、デートも今日が初めてよ!」
「でも、君からのアプローチは散々受けた。好きだろう、俺が」
(からかって……るの?)
ずんずんと足を進めて、ティールームを抜けてしまうとローランドは廊下を抜けて一番奥にある客間のドアノブに手を掛けた。一瞬ぐらりとしてローランドにしがみつくと、ぐっと抱き寄せられる。
「いや……ローランド……」
「どうして? エステルは望んでいたろう?」
「でも……いや……。こんなの嫌よ」
耳朶で囁く甘い低音は、子をあやすように優しいのに、酷く冷たい言葉を放っている。
求婚前に純潔を奪われれば、一生結婚など出来ない。
ローランドはまだ求婚をしてくれていないし、愛してるという言葉も心がこもっていないように感じる。そんな彼が、丁寧に結婚まで話を進めてくれるとは思えない。
(私、弄ばれるのね……)
脳裏に両親の忠告が蘇る。
出来るだけ浮かれないように距離も取っていたし、帰るつもりでもいた。
金のネックレスを渡された時に、用事があると言って帰ればよかったのだ。頭の中でぐるぐると考えると、涙が頬を伝い落ちてしまう。
「俺が嫌いなのか、エステル」
「嫌いじゃないわ。でも、今日抱かれても捨てられるだけなんでしょう?」
「そんなつもりはない。大切に愛してやる」
「うそ……。うそ……」
泣きながら訴えるが、ローランドはベッドまでゆったりと歩くとそのままエステルを下ろした。
そして、エステルの上に覆いかぶさるように組み敷くと、エステルに口づける。
「んっ……んっ……」
「泣いていると、酷くしてしまいそうだ」
「い……や……」
ローランドを押し戻そうとするが、強引に舌先を割り入れてくる。
好きでたまらない相手だったし、こうされることも望んでいた。
時期がくれば、きっと嬉しいと素直に受け入れたろう。
でも、彼が取っている行動は、エステルを大事にすると言いながらも、本気なのか分からないのだ。求婚の言葉も、ひとつもない。
口腔に舌先が捻じ込まれると、エステルは息が出来ずに口を開けるしかない。
すると口内を丁寧に舐められる。
歯列をなぞられ、舌先を絡めとり互いの唾液を混ぜるようなキスに、エステルはくらくらして抵抗の言葉が出てこない。
大好きなローランドが、まるで獣にでもなったかのように感じられてエステルは涙が止まらなかった。すると、ローランドは指先でその涙を拭い「可愛いな」と、耳朶で囁いたのだ。
(泣いている私が……可愛い?)
ローランドのことがますます分からないと、エステルは逃げるように身を捩る。逃がさないとばかりに腕を固定されるように握り締められてしまう。
片腕だけでも凄い力で、腕が痛む。ローランドは無謀備になった胸元に口づけ始めた。
ちゅっちゅっという音が奏でられ始めると、エステルは羞恥で心が壊れそうになる。
「や……やぁ!」
「まだ、気持ちいいとか、感じてしまうとか、そういうことは分からないだろう。でも、じきにそうされたくてたまらない身体になる。安心して、俺の妻になれ」
(妻……)
これが求婚なのか。
それとも、ただのからかいなのか。
ベッドの上では分からないとエステルは目を思いきり瞑った。
するとちゅっという音が耳朶に響き、余計に淫猥だ。強引に胸元をずり降ろされると、胸が露わになってしまう。
目を開ける勇気もなく瞑っていると、ひんやりとした感触を先端に感じた。
そこをペロペロと舐められたり吸われている。舌先が這う度に、甘い感覚に襲われながらも、エステルは懸命に堪えた。快楽に服従するものかと気持ちを律する。
しかし、ローランドは舌先でころころと先端を転がし、エステルはたまらず息を弾ませ始める。
「怖いか、そんなに」
「……ローランド……どうして?」
「愛しているからだ。エステル。こうしてふたりで愛し合うんだ」
(嘘よ……こんな風に教えられてない)
侍女や母から教わることは、こんな強引なやり方ではなかった。
確かに、詳しいことは教えてもらっていないが、ただ眠っていれば終わるという心安らかなものだ。今の状況は、眠るどころか悪い何かをエステルの内側から呼び覚ます為の儀式にすら感じられる。
ローランドはエステルの先端がツンと尖るのを確認すると、今度は指先で摘まみ始めた。
「あっ……いやぁ」
「こうされると、気持ちいいだろう?」
エステルは首を振り、違うという意志を示した。
しかし、ローランドは満足そうに口角をあげて両方の柔らかい丘を揉み始める。
形が変形するほど強く揉むと、ローランドはドレスが邪魔だと思ったのか強引に引きちぎった。
「……っ!」
その力と考えに、エステルは恐怖して身体が硬直してしまう。
言ってくれればドレスだって脱いだし、言われるままにした。
それを、無言で引きちぎるなど――。
上半身がボロボロの布に覆われた状態になると、それをどかすようにローランドは払いのけ、エステルの胸に顔を埋めた。
先端をちゅっちゅっと吸われてエステルは声が出ない。
「ローランド……あっ……あっ……」
「こうされたいだろ」
(違うわ。こんなのおかしい)
互いが夫婦であったとしても、こんなやり方を認めるなどあってよい筈がない。
ローランドはこんな風に振る舞うことを教えられたのだろうか。
(オルブライト家はそんな卑しい家なの?)
エステルは朦朧としながら考えた。
すると、ローランドが反応の鈍くなったエステルに気が付いてまとわりついていたドレスを剥ぎ取る。
「あまり感じないか?」
不機嫌そうに漏らされた言葉に、エステルははっとした。
すでに裸にされた状態で、自分がローランドを満足させるという考えなど全く考えも及ばなかった。
この状況でどう振る舞えばいいのか、いまだに思考停止状態だ。
エステルが困惑していると、足が大きく開かれた。
驚いて小さな悲鳴をあげると、ローランドが秘丘に指を滑り込ませる。
そして、あまり濡れていないことを確認すると、指先を往復させ始めた。
「こっちか。エステルの好きなところは」
「やっ……あぁ! あぁ!」
「こっちだな」
さっきの快楽より勝るものが押し寄せ、身をくねらせる。何も考えられなくても、快楽という感覚だけはエステルを支配していく。
しかも、なぜかそれは急速に身体を蝕み、ローランドへの想いを重ねさせた。
(ローランド……ローランド……どうして……?)
切ない気持ちで満たされながら、蜜芽を摘ままれたり潰されたりされると、たまらずに嬌声をあげていた。
それが部屋中に響くとローランドは満足気にエステルに口づける。
「こっちか。エステル。よくほぐしてやる」
「そこ……やぁ……!」
「ここだろ……? 気持ち良さそうな顔だ」
言われて、自分が淫靡な顔になっていることに気が付いた。
力が抜けてとろんとした表情になってしまっているし、さっきの恐怖よりも、快楽が勝っている。指が花芽を弄る度に体がとろとろにされてしまうほどに、悦楽を感じてしまう。
だめだと言い聞かせてみても、彼の太く長い指がと考えてしまうと、余計に鋭敏に反応していた。
さっきまで拒絶感しかなかったのに、今度はローランドの身体に感じている。
(どうして……こんな、こと……まだ、望んでないのに)
蜜芽から指先が蜜壺に侵入すると、ゆっくりと抜き差しが始まる。
ちゅっぷちゅっぷというはしたない水音が奏でられると、エステルは耳を塞ぎたくなった。
信じられないと目を固く瞑っていると余計に羞恥は煽られるばかりだ。
内壁を擦りあげられると、ぞくぞくとした甘い感覚に身を震わせる。
「あっ……いや……やぁ……やめ……て」
「こっちは凄い。とろとろに蜜が溢れている。気持ちよくなっているんだろ」
「違うの。そんなの嘘よ」
「でも……さっきよりもずっと顔が卑猥だ」
そう言われて、エステルは息が詰まるような思いになる。
自分は目を瞑っていたが、ローランドはエステルをじっと観察するように見ていたらしい。そう考えると、たまらずに腰を引いた。
しかし、すぐに腰を支えられて掻き混ぜられる。
激しい水音と共にエステルは背を仰け反らせると、抗えない快楽に身をゆだねそうになっていく。
「果てそうか。だったら、もっとしてやろう」
「んっ……あぁ! ……あぁ……やぁ……それ以上……もう……っ!」
「気持ちよくて、どうにかなりそうなんだろう? 俺の前で、もっと見せてみろ」
「ひぅあぁ……あぁ……!」
腰が揺らめき、足がぴくぴくとひくつきながらエステルは体中を強張らせて頭の中が真っ白になった。身体がしばらく硬直していたが、やがて脱力すると、今度は息がはあはあと弾む。エステルは自分の状況が理解出来なかった。
「イッたな。初めてだろう。もっとしてもいいんだが、早々に快楽を覚えてしまうと、困るからな」
「どういう……」
「……黙って俺に身をゆだねていろ」
きつく言われると、エステルは少し正気に戻った。
足を閉じようとしたが、ローランドはそこに割り入り今度はスラックスをくつろげている。
そして、ゆっくりと男根を引き抜きエステルの前に出した。
猛るそれを見たのは初めてで、エステルはぎょっとして目を見開き逃げたくなった。
赤黒くそそり立つそれが体内に入るとは思えず、腰を引くとローランドが腰を落とす。
そして、蜜口にあてがうとゆっくりと挿入し始めた。
「あっ……!」
「痛みは我慢しろ。初めてなら仕方ないことだ」
隘路が音を立てて広がる感覚に、エステルはシーツを掴み涙を流すしかない。
ゆっくりと挿入されているというのに、痛くてたまらない。
「泣くほど痛いか」
「もういや……ローランド……やめて」
「次は欲しくてたまらずに、俺の名前を呼ぶだろう。今日は我慢しろ」
(ひどい……)
悲しみに満ちて、ローランドへの想いが消えそうになる。
けれど、彼を想っていた時間は長くそう簡単に恋心が消えるわけもなかった。
これは偽りで、何か事情があるはずだとこんな状況でも思ってしまう。
「痛っ!」
エステルの叫びに、ローランドが挿入を止めた。
「ここまでか。強引にでもと思ったが……。狭いな」
「痛くて仕方ないわ。もうやめて」
「初めてだからだ。エステルが純潔だったという証でもある」
「……」
「嫌なのか」
エステルは涙目になりながら、ゆっくりと首を振った。こんな状況だから拒んでしまうだけで、甘く抱かれていれば、きっともっと好きになるはずだったろう。
大好きなローランドに抱かれている事実は変わらないはずだ。
どこか寂しさと悲しさ、それにローランドへの不信感を抱きつつ、受け入れるしかないのだと思った。彼がそれを望んでいるなら、自分はそうするしかない。
「好きよ……ローランド……」
「エステル……」
繋がる状態のまま、ローランドは満足気にキスを落としてくる。
ゆっくりと腰を使われて、エステルは痛みを堪えつつ息を荒げた。
「ああ、エステル……もっとこうしていたい」
「ローランド……?」
些細な呟きに、エステルは戸惑いを隠せなかった。
こんなにも獰猛なのに、まるで子供が母親に抱かれたいかのように、安堵を求めてくるようだ。
抽送もゆっくりとしていて、内包されることを望んでいるように感じる。
猛りは次第に膨れあがり、エステルの腹の中で爆ぜた。
「あ……う……」
ローランドの切ない吐息を聞きながら、エステルは初めてを終えた。
痛みばかりで、何もわからないし、身体が思うようにいかないがローランドが満たされているのだけは分かった。
思わず抱きとめ、頭を撫でるとローランドははっとした顔をして、エステルに口づける。
「次は、もっと気持ちよくしてやるから」
「私は、これ以上……」
「愛してる……エステルが欲しいんだ」
(この続きは製品版でお楽しみ似ください)