プロローグ
――二十三時。
私は今夜も、功史朗様の執務室、その奥の部屋へ呼ばれていた。
「下着を脱いで脚を開きなさい」
「はい、ご主人さま」
言われた通りに下穿きを下ろし、かかとの低い黒靴は履いたままベッドに腰かける。両足を開き、M字に曲げた膝に腕を回すと、スカートが太ももまでずり落ちた。
普段は布に覆われている部分にひんやりとした空気を感じる――功史朗様に見せつけるような恰好で――ここでこうして脚を開くのは何度目だろう。
いつも恥ずかしい……思わず伏し目がちに顔を横に向ける。
けれど、彼は目をそらすことを許してくれない。私の顎を指で挟み、クイッと自分の方に向けた。
「私を見ていなさい、今から絢子のここがどんな状態か、教えてあげるから」
そう言って、もう片方の手で私の秘部を撫で上げる。思わず声が漏れた。
「ァアッ! んっ……」
「絢子。お前のクリトリスはもうこんなに大きくなっているよ。どうしてだろうね?」
私と目を合わせながら、人差し指と親指で私の赤い芽をもむような動作を、ゆっくりと、功史朗様は何度も繰り返した。
「ん……ッふ、ぅ……あッ!」
呼吸が乱れて唇が開く。不安定な姿勢を保ちきれない彼の手が顎から離れ、私は膝に腕を回したまま、ベッドに背中から倒れこんだ。
黒に近い栗色の髪がベッドに広がり、天井の明かりが秘部にまともに当たる。
キッチリとメイド服を着ている上半身が、あらわな下半身の淫靡さをいっそう強めた。
功史朗様は天井を向いた私の内ももに手を押し当て、さらに脚を開かせた。
「ああ……ぬらぬらと光って、絢子のここは本当にいやらしい」
私を恥ずかしさに喘ぐ姿勢にさせて、さらに羞恥を煽る言葉を投げてくる。
「分かっているよ。いやらしい絢子はこうされるのを望んでいると」
中指と薬指を蜜壺に挿し入れ、彼は親指の腹を私の赤い芽に押し当てた。
「アァァッ!」
私がどんな声を上げようと、功史朗様は手加減などなさらない。
親指は赤い芽の上で快感を引きずり出すように上下し、中に挿れられた二本の指が規則正しく律動する。
その動きに容赦はない。まるで、機械のように。
「ん……あッ……、ッふ……っんんッ!」
「はしたない子だね、絢子。シーツにこんなシミを広げて」
低く冷たい声には少しの優しさも含まれていなくて……でも、その言葉に私は、甘いため息を漏らしてしまう。
「ハァ……ア……ごしゅじ、ん様……ご、めんなさ……ぃ」
勝手に達することは許されていない。
功史朗様のお許しがなければ、イくことは許されない。
私は右手の人差し指を口に含み、噛んだ。せり上がってくる波を押さえるために。
「ああ、また溢れてきた。昼間の絢子からは、想像も出来ない姿だよ。ここに触れられるのが、そんなに嬉しいのか?」
私を責め立てる功史朗様の指と、言葉。
彼の低い声は、優しくて穏やかな昼間の声と、この部屋で私を「教育」する時の冷たい声がある。昼間の声は好きだけれど……冷たい声で嬲られると、熱くなっていく私の身体があった。
『はしたない子』
あぁ、本当にその通りだ。だんだん意識が、功史朗様の指の動きに侵食されていく。
ふいに、功史朗様の指が私の身体から離れた。
閉じていた目を開き、功史朗様を見上げる。
「ご主人様……?」
「達してしまいそうになっただろう? 駄目だよ。絢子がイっていいのは俺が許した時だけだ。教えただろう?」
ベッドに片膝を乗せ、ベッドサイドに立つ功史朗様は腕組みをして私を見下ろしている。
「ふ……触ってもいないのにクリトリスがヒクヒクと動いているよ、指で弄って欲しそうに」
M字に足を開いたまま、どんな風になっているか言われ、恥ずかしくて息が不規則になる。
「ん? 俺にこんなことを言われて、さらに蜜を溢れさせるんだね。こんな、いやらしい身体になるように教えた覚えはないが……ああ、そうか」
功史朗様は人差し指の腹で蜜をすくいながら、唐突にぴんッ! と赤い芽を下から上へ弾いた。
「アァっうッ!」
「絢子の」
ぴんッ!
「アッ!」
「身体は」
ぴんッ!
「やぁァッ!」
「男を」
ぴんッ!
「んんッ!」
「上手に」
ぴんッ!
「んふぅッ!」
「誘う」
ぴんッ!
「くぅッ!」
「はしたなく」
ぴんッ!
「ごしゅじッ!」
「いやらしい」
ぴんッ!
「さまッ!」
「身体だな」
ぐっ、と二本の指が再び侵入してくる。さっきよりもさらに、さらに深く。
「あああぁッ!」
ぐちゅッ、ぐちゃッ、ぐちゅッ、ぐじゅッ……赤い芽を弾かれるたび溢れた蜜が、二本の指でかき出されるように前後し、シーツを濡らす。
功史朗様は、自身の指で乱れる私を冷静に見下ろし、まるで実験を施しているように痴態を観察している。
「ご……じ……さ、ま……ァ」
もう言葉をうまく紡げない。
「ん……? あぁ、クリトリスも触れて欲しいのか?」
功史朗様は天井を向いた私の内ももに手を押し当て、さらに脚を開かせる。
上唇を舌で舐め、功史朗様は赤い芽を口に含んだ。
「……っ、ん……ぁ!」
貪るように蠢く舌に触れ、急激な熱と刺激を与えられた私は思わず腰を引こうとしたけれど、上から押さえ込まれていて、まったく動けなかった。その間も功史朗様の唇と舌の動き、そして二本の指による裏からの刺激で、赤い芽はさらに大きく膨らんだ。
「ふ……ぅ、ッ……んァアッ!」
蜜壺で指が動くたび、クチュ、クチュと音を立てる。
「また、大きくなったよ。絢子はこうされるのが好きなんだね?」
「そ……んな、こ……と」
「そんなこと、何だ?」
功史朗様が赤い芽に甘く歯を立てた。
「やあぁぁぁあん!! ぃやァ……ンッ!」
強烈な快感が身体を突き抜ける。
腰をねじって逃れようとしたが、功史朗様の腕力の前では、私の抵抗はあまりに無力だった。
「嫌なのか?」
功史朗様が話すたび歯が当たり、突き抜ける快感が再び襲ってくる。
「クリトリスはもっと求めているようだぞ」
やめて、そこでしゃべらないで……!!
「ほら、また蜜がこんなに」
お願い……しゃべら、ないで……。
強烈で、みだらで、甘い快感が私を支配する。
赤い芽に舌を這わせながら、功史朗様は上目遣いで、
「いい景色だよ」
私を見ながら冷酷に嗤う。
「あ……ごしゅ…ん、ま……もぅ…」
蜜壺の中で二本の指が動くたび、クチュ、クチュと音を立てた。
こんな刺激にずっとなんて耐えられない――息も絶えだえに許しを乞う。
けれど、功史朗様による「教育」は今夜も始まったばかりだということを、私は知っていた。
(この後は製品版でお楽しみください)