書籍情報

大正濡恋譚~閨の生徒は年下子爵~

大正濡恋譚~閨の生徒は年下子爵~

著者:麻倉とわ

イラスト:小路龍流

発売年月日:2022.12.30

定価:990円(税込)

大正十二年――伯爵家の令嬢・鞠子は家の借金のため天部子爵家の使用人となり、三歳年下の英国から戻ってきた天部家の次男・謙二郎の家庭教師となる。幼少期に交流のあった幼馴染である二人は、互いに成長した姿に惹かれあう。「どうか教えてください、先生。日本では、男女がどんなふうに愛し合うのかを」。鞠子は謙二郎に交際経験がないと打ち明けられ、跡継ぎとして問題ないように男女の営みを教えることになり――!?

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登場人物

高館鞠子(二十四歳)

透き通るように色白で、気品ある美貌の伯爵令嬢。たおやかな見た目に似合わず、前向きで柔軟な性格。才媛として知られ、語学も堪能。 亡父が残した借金と病弱な弟のために不本意な勤めに出るが、逆境にあっても華族の誇りを失わない。
天部・チャールズ・謙二郎(二十一歳)

子爵家の次男。長身で凛々しく、西欧の血を感じさせる端正な顔立ち。母は天部家の家庭教師だった英国人女性。 母方の祖父母に預けられていたが、病に倒れた兄に代わって爵位を継ぐことになり、天部家に呼び戻された。以前は素直で快活だったが、自身の出自や兄への遠慮に悩み、心を閉ざしている。

立ち読み

序章

カーテンの隙間から覗く空が少しずつ明るくなっていく。

スタンドの淡い灯りの中、全裸で絡み合う二人の姿がぼんやり浮かび上がって見えた。

「やぁ、あ、あ」

寝台がギシギシと軋み、荒い呼吸と掠れた嬌声が淫靡な空気に溶けていく。

大正十二年の八月――。

夏とはいえ、軽井沢の朝はかなり涼しい。山からひんやりした朝霧が下りてきて、庭も、その先の木立も、ヴェールのように覆ってしまうのだ。

上着が手放せないし、素肌をさらせば粟立つほどだ。すでに秋の気配を感じる日さえある。

それなのに今、鞠子(まりこ)は裸身をくねらせ、聖母のようだと称される美貌を淫らな熱で桜色に染めていた。

「やめ、んぅ――」

拒絶の言葉を口づけで封じられ、鞠子は空しくかぶりを振る。その華奢な肢体を組み敷く青年の肌もまた汗に濡れていた。

彼の名は謙二郎(けんじろう)――華族の間でも存在感のある天部(あまべ)子爵家の次男で、二十一になったばかりの若者だ。鞠子より三つ下だが、わずかに眉を寄せた横顔は大人びていて、視線を外せなくなるほど端麗だった。

透き通るように色白で艶やかな黒髪の鞠子に対して、謙二郎の肌はやや浅黒く、髪は鳶色で、ゆるく波打っている。瞳の色も明るく、明らかに異国の血を感じさせる顔立ちだ。

二人が繋がっている部分からは、濡れた音が絶え間なく響いていた。時に優しく、時に激しく、謙二郎は蜜洞への抜き差しを繰り返す。

「あ、ひっ!」

彼から与えられる快感が強過ぎて、鞠子は呼吸さえままならない。思わず押しのけようとすると、その手をつかまれ、罰するように指先を甘噛みされた。

「あ、ん、もう……もう……許して」

さんざん喘がされて鞠子の声は嗄れかけている。しかし謙二郎は細い腰を引き寄せ、自身の欲望をさらに深く突き入れた。

「いいえ、先生。だめですよ」

「ひゃうん!」

身体を震わせた瞬間、中で謙二郎の質量が増した気がした。それに応えるように、男根を咥えている部分がキュンと収縮する。

「ああ、中が締まった。感じてくれたのですね」

「ち、違い、ま――」

慌ててかぶりを振ったものの、謙二郎の言葉は嘘ではなかった。何度も極めて、とうに限界を越えているはずなのに、鞠子の全身はなおもあさましく反応している。

青い筋が浮いたたわわな白い乳房も、その先端にある鴇色の肉粒も、大きく割り開かれて謙二郎に貫かれている隘路も、彼に犯される悦びにわなないていた。

だが、これほど快感に溺れていても、この別荘に来るまでは接吻さえ知らなかったのだ。今はこうして息を乱し、愛蜜をタラタラ零しながら腰を揺らしているけれど。

「隠さないでください。気持ちいいのでしょう?」

「い、いえ、いいえ! 違います!」

「本当に覚えが早いですね。男を知ったばかりなのに」

謙二郎の長い指が、汗に濡れた鞠子の髪を掻き上げてくれた。

「大好きですよ、先生。あなたは本当に……かわいらしい」

「やめて。そんなふうに呼ばな――あうっ!」

ふいに熱塊を引き抜かれ、つい追いかけるように腰を突き出してしまった。鞠子は思わず唇を噛む。

こんなことは望んでいないし、もちろん許されるはずもなかった。謙二郎には許婚となるはずの相手がいる。そして自分は彼を教え導くためにここに来たはずだ。

それなのに、どうして?

けれど、答えを探そうとしても、謙二郎がそれを許さなかった。

「やうっ!」

膝裏に手をかけられ、腰を高く持ち上げられたのだ。間髪入れず、身体が二つ折りになるような体勢で再び剛直を突き入れられた。

その熱さと硬度に、鞠子の背中が大きくしなる。そのままズチュズチュと蜜壁を擦られ、全身に痙攣が走った。

「あ、は――」

「僕の大切な先生」

深い角度で挿入されながら、ほころんだ秘裂も指で探られる。小さな肉珠を摘ままれると、一気に高みへと追い上げられてしまった。

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「や、嫌ぁ、あ!」

こうしている間も謙二郎が繰り返し「先生」と呼ぶのは、自分を追いつめるためだろうか? 年かさで彼を指導する立場にありながら、あさましく抱かれている自分を――。

しかしなおも続けざまに穿たれて、鞠子の意識はおぼろに霞み始めた。もう何も考えられず、大きく揺さぶられながら、ただ肉の喜悦に酔いしれる。

「やめ、あ、あ、気持ち……いい」

「そう、それでいい。もっと、もっと僕に溺れてください。決して離れられなくなるくらい」

謙二郎の口調は決然として、迷いがない。しかし一方でその声はひどく切実で、いっそ悲しげにさえ聞こえた。

「あなたを愛しています……この世の誰よりも」

けれどもわれをなくしかけている鞠子には、彼の囁きはもはや届いていなかった。

(この後は製品版でお楽しみください)

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