ベッドの上で息を切らして、三峰(みつみね)千早(ちはや)は嬌声に達した。
地肌にまとわりつく長髪を面倒だと耳にかけ、長身の男に抱きついては甘い声をあげてしまう。
信じられないことがいくつも重なり、受け止めきれない状況だからでもあった。
一つは、人気上昇中のアイドルグループ『U』、そのリーダーである早乙女(さおとめ)大雅(たいが)が血の繋がらない弟になったこと。
一つは、そんな彼と、恋愛ごっこをして付き合うことになったこと。
そして今、恋愛ごっこだというのに、旅行先でたっぷり甘やかされ、彼に翻弄されていること。
「あっああっ!」
「そんな甘えた声出して。さっきまでしれっとした態度だったくせに」
「そんな……ことっ……あああっ!」
最奥を刺激されて、千早は今にも果ててしまいそうだ。
これ以上動かれたら、大雅の前で思い切り果ててしまう。
(これ以上……こんな恥ずかしい姿なんて……)
懸命に我慢していると、大雅が耳元で囁いた。
「我慢してる?」
「ちが……っ」
「さっきから弱いところ刺激してるはずなんだけどな。もう少し刺激してほしいってこと?」
「だめっ!」
「そんなこと言われてやめるワケないでしょ?」
クスッと笑われて、千早はどきりとした。
世間が認めるアイドルであり、沢山のファンを持つ大雅が自分にたっぷり尽くしているのだ。
信じられない思いの連続で、夢なんじゃないかと思えてくる。
けれど、甘い痺れのような快感を与えられるたびに現実なんだと思うしかない。
大雅の切長の目を見ると、思わず顔を逸らしてしまう。
(こんなわけのわからないこと、どうして……)
弟であり、アイドルである彼が、何の取り柄もない一般女性と擬似恋愛する。
しかも、セックスまでとなると、楽しむほどの余裕なんてない。
大雅はするすると膨らみを揉み始めて、先端を摘まんだ。
「あっ!」
「さっきもたっぷりいじったけど。まだ足りないだろうから」
「だめっ……それ以上、され……たら……」
千早は言葉にならなくなった。
ムニムニと捏ねられて、蜜が溢れ始めている。
大雅が腰を使うと、くちゅくちゅと音を立てて悦んでいるのがバレてしまう。
「ンンッ! はあっ……あっ……」
「我慢はよくないよ」
最奥の熱が暴走するかしないかのところで、大雅は理性を保って千早を翻弄して楽しんでいる。
すぐに唇が塞がれると、千早は甘く喘いだ。
「ンンッ……ふあぁ……」
舌を突き入れられて、口内を舐られる。
「だ……め……」
息を絶え絶えにしながら、千早は喘ぐしかない。
次第に頂きを昇り詰め、ゾクゾクした甘い痺れに体が支配されてゆく。
大雅は呼応するように腰を使い始めて、千早はまるで玩具のように体を揺さぶられた。
「はあっはあっ!」
たわわな胸を揺らしながら、最奥の熱が暴走しそうになっているのを感じる。
そして自身も、耐えきれない快感へまっしぐらだ。
最奥を突き上げられて、千早は思い切り喘いでしまう。
「あああっあああっ!」
あられもない声をあげてしまうと、大雅は満足そうに目を細めた。
「やっと素直になったね。もっと早くさらけ出せばいいのに」
「だって私……あなたのお姉さん、なのに……」
「そんなこと気にしてるの? だったら、もっと追い詰めてあげるよ」
クスッと笑みをこぼされて、美麗な顔が僅かに歪んだような気がした。
腰が絶え間なく動き、止まることのない嬌声が部屋に響く。
「あっああああっ!」
「お姉ちゃん……このままイってもいい?」
「大雅? 何……を?」
「思い切り出すよって意味」
その意味が分からないわけじゃない。
慌てたが、もはや快感でわけが分からなくなっている。
「あっああああっ!」
「そんなに悦んで。きっと、元彼より僕の方がいいんだろうね?」
千早はシーツを引いて、チラリと大雅を睨んだ。
今は元彼の話題はなしにしてほしい。
やっと何もかも忘れられそうだったのに、絶頂の寸前で現実に引き戻された気分だ。
「ごめんごめん。ほら……もう限界でしょ?」
ぐいっと弱いところばかり突かれると、千早は目を剥いた。
「んあっああっ!」
もはや我慢できず、息をするのが精一杯になってしまう。
すると熱が膨張してきて、腹の奥が圧迫された。
「あっあああっ!」
「僕も……限界」
その刹那、大雅はたっぷりと奥に白濁を放った。
何が起きたのか分からないでいると、大雅はクスッと笑う。
「恋人ごっこって言っても、かなり本格的にしたいんだよ」
「そんな……だって、私たち姉弟なのに」
「そうだね。でも、血の繋がらない姉弟は結婚出来るらしいし、千早は僕のことを彼氏として全然必要としてくれないから。ちょっとお仕置きしたくなっちゃったんだよ」
「それとこれとは話が違う……」
たらりと垂れてくる白濁にぞくっとしながら、千早は大雅との恋愛ごっこが思ったよりも深い沼のような気がして、胸を静かに鳴らしていた。