長い指先が、白く柔らかな内腿に伸びた。
むっちりとした内腿は軽く力を込めるだけで形を変えて、なんとも言えない弾力で男の手を悦ばせる。
「や、んっ……た、環希(たまき)さん――」
触れられるのは、嫌いではない。むしろ彼に触れられている瞬間は、咲(えみ)李(り)にとってとても幸せなものだった。
だが、それでも限度はある――具体的に言えば、もう少しこの格好はなんとかならなかったのか。そんな考えが頭をよぎるが、それもすぐにかき消されてしまった。
「咲李さん。そんなに緊張しないで」
「で、でもっ……」
志(し)津野(づの)環希――先日結婚したばかりの咲李の夫は、いつだって彼女に優しい笑みを向けてくる。それは、ベッドの中でも変わらない。
シャツを脱ぎ捨てて上裸の環希は、薄暗がりの中で顔を赤くする咲李をじっと見つめて微笑んでいる。
「この格好……は、恥ずかしい、です」
「その割にちゃんと濡れてるけど……ほら、ショーツまでぐちょぐちょだ」
秀麗な顔立ちを笑みの形に歪めた環希は、咲李の足をぐっと開くと足の間に顔を寄せた。
咲李はスカートとショーツだけを身にまとった状態で、大きく足を開かれている。下着に包まれた秘部を見せつけるような体勢は、大いに彼女の羞恥心を煽った。
「ぁ、んんっ……や、あっ――環希さ、んっ……」
下着の上から色の変わったクロッチ部分を舐められて、下腹部に熱がわだかまる。
足を閉じたくても、環希の手がしっかりと腿を押さえているのでそれもできなかった。
「ッひ、ぁ――だめ、っ……き、たなっ……」
「汚くないよ。……ほら、いっぱい溢れてきた――気持ちいいね、咲李さん?」
ずち、と音を立てて、舌が布越しの淫裂をなぞる。ゾクゾクと下腹部から湧き上がる喜悦に身悶えした咲李は、薄く開いた唇からあえかな声をこぼした。
「ァ、んんっ……んぁ、あっ、あ……」
優しく、けれど的確に与えられる甘美な刺激は、咲李の理性を甘く蕩かしていく。
彼の手で快楽を教え込まれた体は従順で、ほんの少し触れられただけでも艶めかしく腰が跳ねてしまう。
環希もそんな咲李のことを知り尽くしていて、わざと焦らすような動きを繰り返すのだ。
「や、ぁあっ……も、環希、さっ……」
尖らせた舌の先で、たっぷりと水分を含んだショーツを舐られる。
溢れ出してきた愛液と彼の唾液が入り混じる淫靡な音が、鼓膜まで犯してくるようだった。
「やだ、もっ……これ、とってぇっ……」
「――いいの?」
あまりのもどかしさに声を上げて懇願すると、環希は首を傾げながら下着に指をかけた。
こくこくと頷くと、水を吸って重くなったショーツがずるりと抜き取られる。
「ぁう――」
「わ、すごい……ぐちょぐちょだ。音聞こえる?」
たっぷりと愛液を湛えた蜜壺に、環希の長い指先が挿入される。わざと音を立てて膣内を攪拌されると、咲李はもう羞恥でどうにかなってしまいそうだった。
「やぁっ……そ、そんなっ……あ、ぁっ……」
「すぐに挿入(い)れても、大丈夫かな――ここまで濡れてたら、苦しくはないと思うけど……」
は、と息を吐いた環希が、おもむろに履いていたスラックスの前を寛げた。
取り出された肉茎は腹につきそうなほどに反り立っていて、凶悪なまでの質量を感じさせる。
限界まで膨張したそれは、咥えこむだけでも一苦労なほどに長大だ。だが、咲李は彼に与えられる愉悦の大きさを知ってしまっている。ゆえに、屹立した剛直から目が離せなかった。
「挿入れても、いい?」
こんな時でさえ、彼は咲李に許可を得ようとする。
咲李がそれに否と答えられないのをわかってやっているのだとしたら、彼は相当な策士だ。
「……は、い」
けれど、わかっていてもそれを拒むことはできない。優しく腰を撫でてくる手つきと、優しげな顔立ちからは想像もできないほどに凶悪な肉杭――彼との結婚を決めてから繰り返されてきた行為で、咲李は肉体的な快楽を与えられる悦びを知ってしまったのだ。
「きて、ください……環希さん――」
ごくりと喉を鳴らして、咲李が懇願する。
唾液と愛液でぬるついた蜜口に先端を押し当てた環希は、そのままゆっくりと腰を押し進めてきた。
「んぁ、ああっ……! や、あんっ、ぁ、たまき、さんっ……!」
容赦なく突き立てられる肉楔に、咲李の唇から喜悦の声が漏れる。
求めていた熱を与えられたことで、薄い下腹部が波打って悦びを伝える――それを見下ろしていた環希も、満足そうに目を細めた。
「ッは――ナカ、狭いね……気持ちいいよ、咲李さん……」
うっとりとそう囁きながら、小刻みな抽送を開始する。その間も、環希は妻のことを気遣うかのように腰を撫でていた。
「あ、ぁっ……奥ッ……はげ、しっ……」
「ごめん……あんまり、加減できないかもしれない」
薄く笑いながらも、環希は力強く腰を打ちつけてくる。ぬかるんだ膣内を蹂躙し、うねる媚肉を刺激するような動きに、甘い声が零れ落ちる。
「ひぁ、あっ……やぁあっ!」
「ん――咲李さん、可愛い……」
快楽に翻弄される妻の顔を見た環希が、うっとりと呟く。
「――大好きだよ、咲李さん」
その言葉に、熱に浮かされた頭の中がスッと冴えていくのがわかった。
環希のことは大好きだ。咲李だって彼を愛していると胸を張って言える。
だが――この甘い生活にも、いつか終わりが訪れるのだ。
(だって、最初からこの結婚は……)
震える唇で返そうとした言葉は、とうとう吐息になって霧散した。
絡みつく憂鬱を振り払うかのように甘い声を上げても、胸に巣食った影はなかなか消えることはなかった。
(この後は製品版でお楽しみください)