書籍情報

黒き隠者の褥~処女騎士は淫らに啼く~

黒き隠者の褥~処女騎士は淫らに啼く~

著者:麻倉とわ

イラスト:龍 胡伯

発売年月日:2023年9月29日

定価:990円(税込)

十九歳のエレノアは王立騎士団の副官を務める美貌の少女で、謎に包まれた隠者を見つけるよう密命を受ける。病に苦しむ王太子を救うためだった。エレノアは不思議な力を持つ黒衣の美青年ユリウスを探しだすが、依頼を受ける条件として純潔を捧げることを求められる。しかたなく身体を重ねたものの、いつしか彼に惹かれていくエレノア。しかし王太子が健康を取り戻すにつれ、ユリウスは衰え、さらに陰謀の嫌疑までかけられて——。

お取扱店

登場人物

エレノア・マリア・フォン・リーヴェルト(十九歳)

金髪で緑色の瞳の美少女。伯爵令嬢だが、王立騎士団の一員で、剣の使い手。優しく、一途で芯が強い。双子の妹アメリアの婚約者である篤実な王太子アーネストに昔は淡い恋心を抱いていたが、今では尊敬の対象だ。
隠者ユリウス(二十八歳)

森の奥深くに住む謎の男。異能の術者である父の血を引いている。実在を疑われていたが、エレノアが見つけだす。漆黒の髪と銀の瞳の美青年。本来は愛情深いが、異能の一族出身のため、感情を見せない。

立ち読み

何もかも信じられないことばかりだった。

初夏の空は夕方でもしばらく明るいはずなのに、部屋の中ばかりか開け放った窓の外までもが夜のように暗い。いつもなら耳に入る風の音やざわめき、小鳥の囀(さえず)りも聞こえなかった。まるでこの場だけが現実から切り取られているみたいだ。

(……どういうこと?)

エレノアは翠玉の色をした目を見開き、視線をさまよわせた。

自分が置かれている状況が理解できず、無意識に何度もかぶりを振る。そのたびに金糸のような長い髪が顔の下で揺れるのが見えた。いつもつけている金の十字架も同様だ。

(だめ! しっかりするの!)

とにかく落ち着くよう、唇を噛みしめて自分に言い聞かせる。今は何としても冷静でいなければならなかった。

たとえ一糸まとわぬ姿にされ、自由を奪われていようとも。剥き出しになった乳首や陰部が淫らな熱を帯びて、ジンジンと疼いていようとも。そしてそんな様子を射抜かれそうなほど鋭い視線で見つめられていようとも。

エレノアは懸命に自分を励まし、なんとか言葉を紡いだ。

「いったい……どういうおつもりですか? なぜこんなことをなさるのです?」

羞恥に震えながら問いかけても、答えは返ってこない。いくら待っても、無情な沈黙が続くだけだ。

どうしてこんなことになったのだろう? この部屋に入った時はもちろん服を着ていたし、念のために護身用の剣も持っていた。決して油断してもいなかったのに――。

それでもここで取り乱したら負けだと思った。

エレノアは伯爵令嬢でありながら、ペルジャンドル王国を守る王立騎士団の一員として活躍している。剣の腕が立ち、有能さを認められて、大勢を束ねる副官のひとりにも任じられた。過酷な状況に陥ったのは今回が初めてではないし、命を落としかけたことさえあるのだ。

だが、今はどうしたらいいのかまったくわからない。

というのも、縛られているわけでもないのに、エレノアの四肢は大きく広げられたまま、まったく身動きできなかったからだ。あられもなく秘処をさらした恰好は、全身から火が噴き出そうなほど恥ずかしい。

しかし何より信じられないのは、その華奢な身体がうつ伏せの状態で宙に浮かんでいることだった。

床からの高さは小柄なエレノアの背丈とほぼ同じくらいだが、支えとなるものは何ひとつない。まるで見えない縄で吊りさげられているかのようだ。

しかも時おり、羽根のような何かが乳房や淡い下生えをからかうようにくすぐっていく。手足を動かせないので振り払うこともできない上、それもまたエレノアの目には捉えられなかった。

(ありえないわ……こんなこと)

まるで夢を見ているようだが、全身のあさましい反応が現実であることを無慈悲に告げている。

上気して汗ばんだ肌、痛いほど尖った二つの乳首、そして淫らに充血して、ヒクヒク痙攣する蜜洞。

十九年の人生で身に着けた知識も経験も、すべて粉々に砕け散っていくような気がした。それでもなんとか気を取り直そうと、目を閉じた時だ。

「くっ!」

ふいうちで秘裂を撫で上げられ、白い肌が粟立った。

「あうぅ!」

そのまま無防備な女陰をまさぐられると、自分のものとは思えないような甘い嬌声が零れた。

「ん……んぅ、やぁ」

いくら拒みたくても、愛撫に慣らされた身体はたやすく心を裏切ってしまう。すでに潤んでいた花芯から、トロリと淫蜜が溢れ出るのがわかった。

だが、最も感じる秘芽にはまだ触れられておらず、欲望は募るばかりだ。

いっそ夢ならいいのにと思いながら、エレノアは目を開けて前方に強い視線を向ける。たとえどれほど弄ばれようと、相手に屈したくはなかった。

「お願い……です……どうか」

ゆらめく蝋燭(ろうそく)の明かりの中、黒髪の青年が粗末な木の椅子に座っていた。荒縄で身体を縛りつけられながらも、銀色に輝く瞳は冷ややかに、それでいて食い入るようにエレノアを見つめている。

長めの漆黒の髪と黒衣のせいで、青白い顔だけが宙に浮かんでいるかのようだ。その面差しは目を奪われるほど端麗だが、まったく感情が読めない。もっとも彼はいつだってそうなのだけれど――。

「お答え……ください、ユリウス様」

エレノアが知っているのは、ユリウスという彼の名前だけだ。他には年齢も出自も教えられていないが、もしかしたらそれさえ偽りかもしれなかった。

「どうしてこんなことを――」

エレノアは掠れた声で、もう一度問いかける。

自分はずっと彼に対して誠実だったし、最善を尽くしてきたはずだ。その求めに応えて、大切に守ってきた純潔さえ捧げ、幾度となく犯されても耐え続けた。今さら、こんな暴挙を振るわれるいわれはないはずだ。

確かにユリウスが激怒するのも当然だろう。不当に拘束され、こんなところに閉じ込められているのだから。

とはいえ、エレノアひとりが悪いわけでないことはわかっているはずだ。それなのにこれほど辱められる理由があるとしたら、せめてそれを教えてほしかった。

「ユリウス様!」

「これは罰だ」

思いがけない返答に、エレノアは目をしばたたく。

「……罰?」

エレノアを断罪しながらも、ユリウスの表情に変化はなく、低い声も落ち着いていた。

「俺をたばかったな、エレノア?」

「いいえ、わたくしはそんな――ひうぅっ!」

いきなり両方の乳首を弾かれ、華奢な身体が跳ねた。鮮烈な快感が、閃光のようにエレノアの背筋を走り抜けていく。

さらに二つの肉粒はしなやかな指に挟まれているかのように、グニグニと潰され、自在にこねられた。同時に見えない手がエレノアの背後に回って、まろやかな臀部を撫でまわす。優しく、それでいていやらしく。

両方の乳房をまさぐられ、下肢の狭間も執拗に弄ばれて、エレノアは愉悦の波に翻弄される。しかし息が上がるほど喘がされても、そこで終わりではなかった。

「やあっ!」

今度は愛撫で尖った二つの乳首が、あたたかく湿った何かに包み込まれたのだ。ちょうど唇に含まれたかのように。さらに舌で舐め回されるみたいに、じっくり転がされると、もう歯止めがきかなくなった。

じれったいほど優しい動きに、腰がものほしげに揺れ、淡い色の陰唇がヒクヒクと痙攣する。もっと強く、もっと感じるところを弄ってほしかった。

「やめ……お願い……もう」

貴族の誇り、騎士の矜持――これまでエレノアを支えていたすべてが、風に飛ばされる砂のように消え去っていく。

それなのに目前のユリウスは縛られたまま、微動だにしていなかった。こんなにも自分を追い上げているのは彼に他ならないのに――。

(……どうして?)

ありえない状況で絶え間ない快感を与え続けられ、今やエレノアの理性はグズグズに崩壊しかけていた。

「本当に淫らな身体をしているな、エレノア」

「ち、違う、そんな――」

「いや、今にも達してしまいそうだ。イキたいのだろう……いつものように?」

「やん、あ、ひぃっ!」

どんなに堪えようとしても、嬌声が抑えられない。

「誰だ?」

「だ、れ……って?」

エレノアはうつろな声で問い返した。

「君の心にいる想い人は誰だ? そんな相手はいないと、前に言っていたはずだが」

「おもい……人?」

「約定を結ぶ際、誓ったはずだ。君の身も心も、俺に捧げると」

「わたくしは……偽りなど……申しておりま……あ、あう、ん!」

いくつもの見えない何かが、なおも乳房や秘処を甘く苛み続ける。そんな答えではとうてい納得できないというように。

それでもエレノアは懸命に呼びかけた。

「ユリウス様、どうか――」

なんとか誤解を解きたかった。容赦ない蹂躙以上に、ユリウスから疑われていることがなぜかひどく堪える。

確かにあこがれている相手はいたが、心を寄せていたのは過去のことだ。もちろん今でも主として敬愛してはいるけれど――。

「……強情な」

舌打ちの音が聞こえ、ふいに見えない戒めが解けた。

(落ちる!)

思わず身を竦めたが、次の瞬間、エレノアはたくましい腕の中にいた。抱きとめてくれたのは、縛られて動けないはずのユリウスだった。

拘束されていてもエレノアの自由を奪って嬲り続け、今度は落下しないよう手を差し伸べてくれた。いったいいつの間に縛めを解いたのだろう? 彼が不可思議な力を持っていることはよくわかっているつもりだったけれど――。

「ユリウ――」

そのまま何も言えなくなったのは、彼の表情が目に入ったからだ。

恐ろしいほど美麗だが、怒りを孕んだ冷ややかな面差し――ところが銀色に輝く瞳ばかりは、どういうわけかひどく悲しげに見えたのだ。

その気になれば何でも望みをかなえられるのに、今のユリウスは寄る辺ない子どものようで、エレノアの胸が疼く。思わず「大丈夫よ」と声をかけたくなるくらいに。

だが、彼はふと視線をそらすと、エレノアを床に横たえ、覆いかぶさってきた。

「そろそろ限界のようだな」

落ちてきた声は平板で、先ほど見せた憂いなど露ほども感じさせない。見上げた顔には冷笑が浮かんでいた。

「俺が欲しいのだろう、エレノア?」

「あぅっ!」

ふいに、長い指で両脚の狭間を探られた。先ほどまでとは違い、今度はユリウス本人が花弁をグチュグチュとかき回す。本物に弄られていると思うと、いっそうたまらなくなった。

「や、ん」

「犯してほしくてしかたないはずだ。君のここは恥ずかしいほど濡れて、いやらしくヒクついているからな」

エレノアを嘲りながらも、彼の指は優しかった。そして冷たい石の床に仰臥(ぎょうが)させられているのに、その感触は上等な羽根布団のように柔らかで心地いい。

ユリウスと出会ってからというもの、奇妙なことばかり続いているが、もはやエレノアはそれをおかしいと思う余裕さえ失っていた。

「脚を開け、エレノア」

ユリウスに誘われるまま、エレノアは自ら大きく脚を開く。羞恥も屈辱も、誇りさえ忘れてしまうほど、今はただ彼が欲しかった。

「よし。いい子だ」

腰を引き寄せられ、猛った男根が押し当てられる。それだけで背中が大きくしなり、エレノアは軽く達してしまった。

「ひぁっ!」

そのまま狭い蜜口に亀頭を突き入れられ、敏感な柔襞をゆっくり抉られる。凶暴な熱い肉杭を、エレノアは全身を震わせながら受け入れた。

「あう、う……んぅっ!」

嬌声を口づけで封じ、ユリウスはさらに腰を進めてきた。浅く深く、自在に抜き差しを繰り返され、何度も絶頂へと追い上げられてしまう。

――君の心にいる想い人は誰だ?

さんざん喘がされ、気が遠くなりかけた時、頭の中でユリウスの問いかけが響いた。

(想い人……わたくしの……想い人)

自分にそんな相手はいないのに――。

なおも大きく揺さぶられながら、エレノアの心に浮かんだのは今も自分を苛んでいるユリウスその人だった。

(この後は製品版でお楽しみください)

お取扱店