プロローグ
「やっやぁ……」
一色(いっしき)のどかは恥ずかしさと懸命に戦いながら、ベッドの上で足を広げて、夫の速水(はやみ)仁(じん)に向けてあられもない姿を見せつけていた。
のどかの黒髪は艶やかで腰ほどまであり、くりっとした目や雰囲気は少し幼さが残る。小柄な身長ではあるものの、女性らしい柔らかい雰囲気が漂っている。
「もっとこっちに見せつけるようにしないとダメだよ、のどか」
「でも、そんなはしたないことっ」
「一人で気持ちよくなれないなら、ちゃんと俺の言うことを聞かないと……」
「速水さんの言うことなら……」
のどかは潤んだ目で速水を見つめた。
結婚して一ヶ月経つ彼とはまだセックスをしたことがない。
のどかが怖くて出来ない状況を察してくれ、こんな風に一人エッチを速水が『手伝って』いる状態だ。
速水は甘い低音で、のどか一人では考えられないような恥ずかしい格好をしろと命令してくる。
少しきつそうな眼差しだが、この時間だけは優しそうに見つめてきて、のどかは嬉しかった。
(こんな格好、結婚した友達はみんなしてるの?)
のどかは蜜をじわじわ溢れさせながら、体をひくつかせた。
中学から大学まで女子校で、婚約者は卒業と同時に速水をあてがわれ、他の男を誰も知らない。
仲のいい友達も同じような感じで、セックスについては無知なまま社会に出たり、婚約者と結婚したりしていた。
「ほら、余計なことを考えない。自分で弱いと思うところを触って」
「こ、こ……ですか?」
速水は指一本触れず、ベッドサイドに座り、のどかの自慰を見つめるだけだ。
「んっ」
「じゃあ、少し自分で焦らすようにいじって」
「は……い」
蜜が溢れ出して下着を濡らし始め、指先が汚れていく。
しかし構わずにのどかは恥ずかしい部分を見せつけながら、いじり続ける。
「んっあっ」
「声も我慢しなくていい。俺と二人きりなんだから」
「でもっ……」
のどかは頬を真っ赤に染めた。
快感に悶える声など他人に聞かせたくない。
「俺が聞きたいんだよ、のどか」
「本当……ですか?」
「そう。のどかが満足してるか知りたい」
速水がにっこり微笑むので、のどかは緊張していた気持ちが解けていく。
恐る恐る弱い部分の刺激を強めて、下着越しに蜜芽を摘んだ。
「あああっ!」
「可愛い声だね、のどか」
「本当……に?」
「もっと聞きたい。他のところも弄れる?」
のどかは恥ずかしさが収まらずに、思わず足を閉じた。
「もう、限界です」
「まだイケてないけどいい?」
「だ、だって。今日は声をちゃんと出せたから」
「のどか……」
のどかは恥ずかしさがいっぱいで顔を逸らした。
すると、速水がそっと頬を撫でてくる。
「じゃあ、少し俺が触ってもいい?」
「え……?」
「そろそろ、その先も教えたい」
のどかは困惑しつつ、胸を高鳴らせた。
一人エッチをただ見てるだけの状況を、速水がどう思っているか考えたこともなかったのだ。
(おあずけ状態だったってことでしょうか。だったら、少しは……)
のどかが静かに頷くと速水はにっこり微笑んだ。
「少し触れるだけだよ。のどかが怖いと思ってることはしないから」
「速水さんが強引なことをするとは思わないので」
のどかは胸を高鳴らせながらも、少し恥ずかしくなって速水から顔を逸らした。
すると、速水がベッドに乗ってきてのどかを押し倒してくる。
「速水……さ……」
「キスくらいはいいかな」
「……はい」
のどかは目を固く瞑ってキスを待った。
すると、速水が触れる程度のキスをしてくる。
温かい感触と他人と触れ合う感覚に慣れず、のどかは息が詰まる思いだ。
息を止めていると、速水がするすると指を伸ばして上半身の寝巻きを脱がし始める。
「まっ……」
「待たないよ、のどか」
脱がされると、ブラがあらわになる。
そこへ速水がふわりと胸に手を置いて揉み始める。
「ンンッ」
「声は我慢しないって約束だったろう?」
「だめっ……恥ずかしいですっ」
胸を丁寧に揉まれて、感じたことのない甘い感覚が頭の先まで支配していく。
先端を扱かれると、敏感に反応して体が跳ねてしまう。
「やあっ」
「のどか、怖がらなくても平気だ」
「私……まだちゃんと応える自信がありませんっ」
のどかは速水を突き飛ばしてしまうと、毛布を引いて包まった。
「のどか?」
「こ、こんな恥ずかしいことばかりするなんて……」
「今日も上手に出来てた。のどかは何も知らないから怖いって思うだけだ」
「他の女性はみんな楽しめているんですか?」
その言葉に速水は一瞬戸惑うような顔をした。
「そうだね。それなりに」
「速水さんと付き合った過去の女性は、みんなお上手でしたか?」
「そういう問題じゃないんだ。気持ちの問題でね?」
「じゃあ、もっと頑張ります。明日の夜も一人エッチの続きを教えてください」
のどかは速水に背を向けながら、なんとかそう言うと自分が下着姿だったことを思い出してまた恥ずかしくなってくる。
(こんな格好じゃ眠れない)
「のどか、寝巻き。もう触らないからこっち向いて」
「はい……すみません」
のどかは必死に笑みを見せながらも、速水に申し訳ないことをしているんじゃないかと思えてきた。
「ちゃんと、できるように頑張ります」
「そうだね。ゆっくりでいいよ」
のどかは寝巻きを着ながら、速水が寛大な心の持ち主で良かったと胸を撫で下ろした。
(続きは製品版にてお楽しみください)