書籍情報

どSなバーテンダーとバリキャリOL~上手にできたらもっとHなご褒美をあげるよ~

どSなバーテンダーとバリキャリOL~上手にできたらもっとHなご褒美をあげるよ~

著者:叶 マリン

イラスト:みささぎ楓李

発売年月日:2022.12.30

定価:990円(税込)

IT企業で働く二十代後半のOL、唯が、仕事帰りに時々ふらりと立ち寄るバーのオーナーバーテンダーの川上さんと親しくなり、「二人で二軒目に行きませんか?」と誘われるところから始まるお話。そして会社では、わんこ系イケメンの一之瀬が、何かと唯に声を掛けてきて…。ある日、仕事上のミスを修正するため徹夜覚悟で唯が仕事をしていると、助け舟を出してくれたのが一之瀬で…。恋にも仕事にも手を抜かず、真摯に向き合うバリキャリOLの恋愛模様。

お取扱店

登場人物

中原 唯(なかはら ゆい)

IT企業で働く二十代後半のOL。開発職で男性と同じように働き、リーダーとして、チームからの信頼も厚い。ひとり暮らしで、仕事に大幅に時間を割く生活をしているので、たまに川上の店に飲みに行くのが唯一の息抜きになっている。
川上朔也(かわかみ さくや)

唯が時折通うバーのバーテンダー。自分がオーナーのバーなので、店の定休日以外も突然、臨時休業にしたりする。外見と声に惹かれる女性が多いが特定の女性がいるという話は無い。人当たりは良いが、プライベートは謎。

立ち読み

「オススメは、何ですかー?」

「唯(ゆい)さん、アルコールあまり強くないでしょう。店の二杯で酔ってきてる」

店でよくやるやりとりを再現したが、ろれつが怪しい。それを知ってか、川上さんが目を覗き込んでくる。

急に顔が近い! 思わず目を逸らしてしまう。

「……名前、教えましたっけ?」

「いつもカードのお名前を拝見していますから」

「やだそんなとこ見てたんですかー? やらしー」

名前を呼ばれた気恥ずかしさと、顔の近さに赤くなっていることを隠したくて、上体を少し離して、川上さんを指差しながら軽く咎めるように言った。

すると、その手を川上さんが掴んだ。

「!」

とっさに腕を引こうとしたが、掴まれたまま外せなかった。

川上さんはそのままゆっくりと、テーブルの上に腰を下ろし、足を組んだ。

すぐ目の前に彼のシャツから下だけが見える。

顔が赤いのを見られたくなくて、見上げることが出来ない。

「唯さんも見てたでしょう? 俺が指を舐めたの」

私を見下ろす位置から声が聞こえ、掴まれたままの手の人差し指に、川上さんの息がかかる。

指先にヌルリとした生き物のような舌を感じた。熱と粘性が指の根元まで絡みつく。

身体の奥がきゅうッ、とまた締め付けられる。

――だ、ダメ。

「や、めてください……」

目をつぶって、そう言うのがやっとだった。

右手の指だけのはずなのに、全身を川上さんの舌がなぞっていくような感覚。

「ずっと俺の手を見てたよね。なんで見てたの?」

私を見下ろしながら、川上さんが話す。

指からはねっとりと舐る舌の感触が続いている。

気づいてたんだ……。

「だからわざと舐めた。見たいなら見せてあげようと思ってね」

「私は……き、れいな指……だなって、見て……ただけ……」

「そう? そのキレイな指でどんなことをしてほしいって思った?」

手のひらを、舌先がなぞる。

声が出そうになって必死に首を横に振った。

「ハハッ、言えないようなことしてほしいんだ?」

そう言いながら川上さんは、私の指を自分の口から離した。

顔を上げて、違うと言おうとしたら、今度は彼の左手人差し指を口に入れられ、話せなくなる。え、と思っているうちにもう一本、中指も口に含まされていた。

初めての彼氏に自らのM志向を指摘されて以来、彼氏にペットのように、あるいは奴隷のように扱われると、指示に従うことに快感を覚えるようになっていた。

川上さんは彼氏じゃない――けれど、酔いとは別の陶酔感が頭のなかに広がる。

「ほら、舐めてごらん。上手に出来たらごほうびをあげるよ」

舐めてごらん――その言葉を合図に、彼に従順に従うことが自分の喜びとなった。

目を閉じ、彼の手に両手を添えて、丁寧に二本の指を舐め上げる。ぴちゃ、ぺちゃ、と舌が音を立てる。

指を一本ずつ舐めたり、二本を口に含んで顔を上下に動かしたりして、夢中で舌を使った。

「フ……いい子」

低音で呟くと、彼は私の髪をゆっくりと、右手で撫でた。愛犬を愛でるように。

「最初に店に来た時に分かったよ。唯はこうされるのが好きなんだよね。唯がされたいように、かわいがってあげるよ」

そう言って私の口から出した指を顎に添え、上に向かせた私に口づけた。

指を取り上げられた半開きの口からのぞく舌に、彼の舌が絡みつく。

私の意思はもう、彼からの指示にしか向けられていなかった。

部屋に二人の息づかいと唾液が跳ねる音だけが響く。

ようやく舌を離してくれた川上さんを、私はトロンとした視線で追う。

「おいで」

そう言って私の手を取って連れ、ベッドに腰掛けた彼の足元の絨毯に、私は当然のようにペタリと座り込み、餌を待つ犬のように川上さんを見上げた。

「いい子だね、唯。唯は俺のことをなんて呼びたい?」

頭を撫でながら見下ろし、彼がたずねる。

が、自由意志を尊重しての言葉ではなかった。答えは最初から決まっているから。

「ご、しゅじんさ、ま――」

よく出来ました、という笑みを浮かべて彼は言う。

「いいよ。ご主人さまとして、唯が言うことを聞けたらごほうびをあげよう」

彼が私の頬を手の甲で撫でると、その手に顔を傾けて目を閉じる。

「さっき上手に俺の指を舐めることが出来たから、早速ごほうびをあげようね。立ってごらん」

言われた通り、彼の前に立った。

「服を脱ぎなさい。全部」

「……ハイ」

ごほうびをもらえると思って立ち上がったら、思わぬ指示に少し戸惑ったけれど、身体は素直だ。おずおずとブラウスのボタンを外し、タイトスカートのファスナーを下ろしていく。

スカートが足元へ落ち、ブラウスを肩から下ろすと、下着とキャミソールとストッキングという、人にはまず見せることがないアンバランスな格好になった。

麻痺しかけている感覚に、恥ずかしさが混じる。

ストッキングを急いでくるくると脱いでいく。

視界の端には、常にベッドに掛けて黙する彼の視線が、私をとらえている。

ブラジャーを外し、胸を片手で隠しながら、とうとう最後の一枚だけの姿になってしまった。

容赦なく彼は指示をする。

「全部」

自分の意思とは関係がないかのように、手はするするとショーツを身体から剥ぎ、絨毯の上に落とした。

「いい子だね。こっちに来てベッドに横たわりなさい」

やっぱり恥ずかしくて、腕で前を隠すようにして歩き、言われた通りに寝そべった。

手で胸を隠し、足は少し交差する感じで無意識に前を隠そうとする。

太もも横あたりにあらためて座り直した彼がグ、と私の右足首をつかみ、足を肩幅より少し広めに広げさせた。

私が一番隠したい箇所へ、彼の右手が差し込まれる。

……悲鳴とも嬌声ともとれる声が部屋に響く。

「ああ、濡れているね。どうしてこんなに濡れているのかな?」

中指と人差し指、そして親指が突起に絡みつく。三本の指が独立した生き物のように動くたび、クチュ、クチュと音がする。

その指の動きは、わずかに残る正気を奪っていく。

「あ、……ァ……ッ!」

彼の指の動きが止まった。

もう少し……だった。昇り詰める寸前で波を止められ、身体の奥のうねりだけが取り残されたまま熟れていく。

指の動きに呼応して身体をくねらせて喘ぐ様を、彼は無機物を眺めるかのような冷静な目で見ていた。

肩で息をしてなんとか身体を治め、機嫌を伺うように川上さんを見上げる。

彼の顔はどこか喜色を含んでいるように見えた。

「苦しい?」

乱れた髪を指でなぞりながら、たずねてくる。ベッドをきしませて、私の広げた足の間に移動した彼は、返答を待たずに両脚を持ち上げた。

膝を彼の肩にかける形で、広げた脚を固定される。

彼の視界の真下に、熱を帯びて濡れた部分がつまびらかにされた。

「やッ……!」

本能的に脚を閉じようとするが、彼の力の方が圧倒的に強く、つま先が揺れただけだった。

一番恥ずかしい部分に、彼の顔が近づく。

「あぁ、こんなに赤くふくらんで。後ろまで濡れてしまっているね」

息がかかるほど近いのに、彼は触(ふ)れてくれない。

すると、私が恥ずかしさのあまり顔を隠していた右腕をつかまれ、そのまま指先を赤く膨らんだ突起の上におかれた。

「さぁ、ごほうびだよ。見ていてあげるから、自分で達しなさい」

自分で? 見られながら!?

でも、身体の中でうねる波をどうにかしたい。

どうにか……でも、見られながら?

指を少し動かせば身体の熱はきっと治められる。

でも、どうしても。

「ダメ……恥ずか……、しぃ……」

彼が、小さく息をついた。

「中指で撫で上げてごらん。ご主人さまの言うことなら聞けるだろう?」

ご主人さまの指示――素直に身体は動き、私は中指で自らの欲望の肉核を撫でた。くちゅ、と音がしてからは、

「は……ア……ッ」

一度触れた中指はもう、勝手に快感を生み出す動きを続ける。

「ん……ふ……ぅ、……ッ」

「ああ、唯はそこがいいんだね。そんなに濡らして……人差し指も使いなさい」

一切乱れのないシャツの肩に私の汗ばんだ脚をかけながら、彼はなお指示をした。私のしている様を真上から眺めている。

「はい……ご主人さま……ぁ……」

くちゅくちゅと音を立てながら二本の指で触れると、腰が勝手に動いてしまう。

私の脚を折り曲げて耳元に顔を寄せ、低い声で彼がささやく。

「達する時はちゃんと言いなさい」

「ご主人さま……あ、もう……もう……」

自分の指の動きで羞恥のタガが外れていく。

真上から眺める姿勢に戻っている彼に見られながら、私は――

「い……き……ますぅ――んんッ!」

両脚をつかまれたまま、身体が弓なりに反り、息が止まるほどの強い快感が脳を支配する。

どれほど乱れようと、彼は変わらず冷静に、見下ろしていた。



両脚をつかみ、広げたまま。

「ああよく見えるよ。ヒクヒク痙攣してるね。自分でしたのが、そんなによかった?」

少し嘲りが混じったような口調が、真上から響く。

「チョイ悪?」と軽口を叩いた時の、あのワルそうな笑みを浮かべながら。

でも、聞かれても、自分が今どんな状態なのか、彼からどんな風に見えているのか、そんなことに構う余裕は今はなかった。

ゆるやかに弱まっていく快感の波と共に、意識がだんだん底に沈み、身体から力が抜けていく。ここじゃないどこかに飛ばされそうで……思わず、私は彼に向かってふらふらと手を伸ばしていた。

「キス……を……」

少し目を見開いた川上さんは、しかしすぐいつもの柔らかい笑みを浮かべてくれた。

脚から離した腕を私の頬の左右に添わせて、唇をついばむようなキスをする。

優しく、愛おしむようなキス。

額や頬、まぶたにも、柔らかいキスが降る。何度も、何度も。

深い満足感と幸福感を感じながら……眠りに落ちた。

 

(この後は製品版でお楽しみください)

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