書籍情報

銀狼帝の愛囚~復讐の姫は淫蜜にまみれて~

銀狼帝の愛囚~復讐の姫は淫蜜にまみれて~

著者:麻倉とわ

イラスト:南香かをり

発売年月日:2022/3/25

定価:990

「皇后として大国レマンツェに嫁いできたセラフィーナ。しかしその心は激しく揺れていた。夫である皇帝シルベストルは狼の血を引く獣人で、もともと心惹かれていた相手だった。ところが大好きな従姉が狼になった彼に殺されたと知り、その復讐を果たすため妻になったのだ。初夜の床で刃を振るうも、取り押さえられ、離宮に監禁されてしまうセラフィーナ。新妻に裏切られ、怒りに震えるシルベストルに夜昼なく蹂躙されてしまうが――。」

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登場人物

セラフィーナ・マリア・デイ・ダンゼーレ(18歳)
 

黒髪と紫水晶を思わせる瞳。小柄で、妖精のように愛らしい王女。本来は優しく快活だったが、ある凄惨な事件に衝撃を受け、許婚で初恋の相手であるエルネストへの復讐を決意する。しかし今なお心の奥では彼を想い続けているため、恋心との葛藤に苦しむ。
エルネスト・フォン・マーデン・レマンツェ(25五歳)

プラチナブロンドと金茶色の瞳。獣人の血を引く勇猛果敢な若き皇帝。不死身に近く、狼に姿を変身できる。穏やかで愛情深い性格だが、立場と出自のせいで、孤独感に苛まれている。セラフィーナを深く愛しているがゆえに、その裏切りに驚き、深く傷つく。

立ち読み

夜半、静まりかえった室内には穏やかな寝息が響いていた。

繻子(しゅす)の天蓋に覆われた広い寝台に横たわっているのは二人――ほっそりした黒髪の娘と、戦士のように鍛え上げられた身体つきの青年だ。

ふと娘がかすかに身じろぎをして、目を開いた。仰臥したまま、菫(すみれ)色の瞳だけを動かし、青年の様子をうかがう。

蝋燭の揺らめく明かりが、月光のようなプラチナブロンドの髪を照らし出した。その横顔は何度見ても、息を呑むほど美しい。

(よかった。よく眠っておられるようだわ)

娘の名はセラフィーナ――このレマンツェ帝国の皇后になるべく、数日前に嫁いできたばかりだ。

その隣で精悍な寝顔を見せているのは、若き皇帝シルベストル。眠りが深いのか唇を引き結び、微動だにしない。

たとえるならば太陽神と愛の女神。まるで古代の神話から抜け出してきたように美しい二人だが、セラフィーナの白い顔には戸惑いと怯えの色が浮かんでいた。

(今なら――)

セラフィーナは小さく息を吸い、そっと起き上がった。

先ほどまでシルベストルの雄芯を受け入れていた身体はひどく重い。それでも行動を起こすなら、彼が眠っている今しかなかった。

隙を見て寝酒に薬を混ぜ入れたのは、二時間ほど前のこと――調合したのは祖国の王家に仕える薬師で、危急の場合に使うために持ってきたものだ。その効き目は、どんな大男でもたちどころに寝入ってしまうくらい強力なはずだった。

ところがシルベストルは今夜も、嫁いできたばかりの皇后をいつものように犯し続けた。幼いころから薬に身体を慣らしてきたセラフィーナでさえ、危うく眠ってしまいそうな量だったし、口にするところも確かに見届けたはずなのに。

しかしさすがに強力な薬効に抗い抜くことはできなかったらしい。新妻を何度も絶頂まで追い上げながらも、シルベストル自身は達しないままで寝入ってしまったのだ。

「シルベストル……あの、シルベストル様? 陛下?」

何度か呼びかけても、やはり反応はない。つい寝顔に見とれてしまいながらも、無理に視線を外して、そっと身を起こした。

(急がなければ)

セラフィーナは寝台から下り、肌を合わせる前に剥ぎ取られた寝衣を身にまとう。大理石の床は冷たかったが、かまわず裸足のまま歩き始めた。

セラフィーナが目指していたのは、広いバルコニーへと続く観音開きの大きな窓だ。

(波の音が聞こえるわ)

窓からは細い三日月と無数の星が瞬く夜空が見え、その下には荒波が打ち寄せる群青の海が広がっている。この離宮では、皇帝夫妻の寝室は大海を臨む断崖に面しているのだ。

細い指が金の掛け金をつかんだ。

あとは窓を開け、外に出て、バルコニーの端まで歩いていく。それから――。

セラフィーナは目を閉じて、深く息を吐いた。

今の状況で結婚生活を続けることはできない。かといって、もはや国に帰ることも許されない。そうなれば残された道はひとつしかなかった。

恐ろしくて足が竦むが、それでも歩き出すしかなかった。いざ身を投げてしまえば苦痛を感じる暇さえないだろうし、行き場のないセラフィーナには他に選択肢などないのだから。

(ごめんなさい、チェチーリア姉様)

瞬間、亡き従姉の笑顔が脳裏に浮かんだ。

百合の花のように気品に満ち、誰よりも美しくて、優しかった姉のチェチーリア。

前国王夫妻の娘である彼女と、母を早くに亡くしたセラフィーナは母が早くに亡くなったため、残された姉妹はずっと支え合うようにして生きてきた。

だがそんなチェチーリアもまた五年前に命を落とした。それも、このレマンツェ帝国で。

その姉の代わりとして、今度は十九になったばかりのセラフィーナがシルベストルの妻になったのだが――。

(今、わたくしもおそばにまいりますわ)

覚悟を決め、あらゆる手だてを尽くしたものの、とうとうチェチーリアの復讐を果たすことはできなかった。せめてこの命を捧げることで、許してもらえればいいのだけれど。

セラフィーナはひとつ息を吸い、よろめきながらバルコニーへ歩み出る。

(えっ!)

背後からだ抱きすくめられたのは、その瞬間だった。

「どこへ行く、セラフィーナ?」

抑揚のない冷たい声に、セラフィーナの全身が硬直する。心臓さえも鼓動を止めたような気がした。

「……シルベストル様!」

耳をそばだてていたが、確かに足音はしなかった。いや、気配さえ感じなかった。

それなのに華奢な身体は、夫であるシルベストルの腕に背後から抱き込まれていたのだ。それも身動きひとつできないほどの力で。

「もしや海が見たくなったか? 確かにここからの景色はすばらしいが、こんな夜更けでは何ひとつ見えるまい」

「あ、あの」

セラフィーナはうろたえて口ごもる。どこか楽しそうにも聞こえる口調に、かえって身が凍りそうだった。

「しかし月や星はよく見えるな。お前の目当ては海ではなく夜空だったか?」

彼の問いかけへの答えなどもちろん見つかるはずもない。こんな事態は想像さえしていなかったのだ。

「ああ、そうか。わかったぞ。身体が疼いて眠れないのだな。今夜は気を失うまで犯してもらえなかったから、どうにも物足りないのだろう?」

「いいえ。そんなことは――」

「嘘は許さない」

ふいに身体の向きを変えられ、シルベストルに正面から見つめられた。

「ひ」

鋭い視線に射すくめられ、掠れた悲鳴が漏れる。

(眠っていたはずなのに。さっきちゃんと確認したのに)

その疑問が聞こえたかのように、シルベストルが「気にしているのは薬酒のことか」と呟いた。

「えっ?」

「哀れなセラフィーナ。いったい何をするつもりだったか知らないが、私にそんなものは効かない。この身には獣の血が流れているからな」

ひどく冷ややかなのに、激しい欲情に濡れた金茶色の瞳――密林に住む肉食獣が獲物をしとめる時は、こんな視線を向けてくるのだろうか?

「さあ、安心するがいい。すぐにお前の望みをかなえてやろう」

「あっ!」

抗う暇もなく抱き上げられ、広いバルコニーの中ほどへと運ばれてしまう。

そこにはブロンズ製の優美な円卓が置かれていたが、シルベストルはその上に妻を座らせ、そばにあった揃いの二脚の椅子を蹴り飛ばした。

――こちらの円卓と椅子は、景色を眺めながら皇后陛下とお茶を楽しみたいとおっしゃって、陛下がご用意されたのですよ。

この離宮に来た時に侍女のソニアからそう聞かされたが、シルベストルとセラフィーナがそんな穏やかな時間を過ごしたことはまだ一度もなかった。

「シ、シルベストル様?」

体重をかけて覆い被さられ、セラフィーナは円卓に仰臥する。そこからはみ出した両脚は頼りなく宙で揺れていた。

薄物をまとっただけの身体には、ブロンズの硬く冷たい感触がひどくこたえる。それでもセラフィーナは自分にのしかかる夫を震えながら見返した。

「何をなさるのですか?」

「夫婦がすることは決まっているだろう?」

シルベストルの大きな手が絹の寝衣を引き裂き、投げ捨てる。銀色の月光の下、白い肌がさらされた。

まさかこんな場所で身体を繋げるつもりなのだろうか? 夜更けとはいえ、ここは外なのに。

あまりにあさましい行為に、セラフィーナの血の気が引いていく。

「嫌です!」

「黙れ」

細い悲鳴はたちまち口づけで塞がれた。

「ん、うう、んぅ」

まるで貪るかのように執拗な接吻が続く。

(嫌! 助けて!)

どんなに望んだところで、もちろん救いは来ない。

おそらくこの先も自分たちはこんなふうに過ごさなければならないのだろう。

これまで二人の間に渦巻いた感情は混乱と憎悪と憤怒だけ。本来なら夫婦として相手に抱くべき尊敬も信頼も、そもそも愛情さえ存在していないのだから。

いや、少なくともかつてのセラフィーナは心からシルベストルを慕っていた。優しく、あたたかい人だと信じていたのだ。こんな無体を働くとは、そしてまさかあれほど恐ろしいことをしでかすとは思いもせずに。

しかし、だからこそ今は彼が憎くてしかたがなかった。

(お恨みいたします、シルベストル様)

紫の瞳に、隠しようのない憤りが燃え上がる。ところがそんな視線に怯むような相手ではなかった。

「そそられるよ、セラフィーナ。お前は実にいい目をする。その褒美に、今度は存分に犯してやろう」

シルベストルは上体を起こすと、白い両腿に手をかけて大きく割り開いた。そのまま腰が浮きそうなほど持ち上げ、猛った雄芯を妻の中に埋め込んでいく。

「あっ、ああぁっ!」

衝撃に細い身体が大きく跳ね、かわいらしい顔が苦しげに歪む。

しかしセラフィーナが感じていたのは痛みではなかった。

「や、あうう」

先ほどまでシルベストルを受け入れていたせいだろうか。前戯もなく男根を突き入れられたというのに、セラフィーナの蜜洞は大きく張り出した先端部も、筋が浮いた長い茎の部分も滑らかに呑み込んでしまった。

満天の星空の下、荒い呼吸とズチュズチュと濡れた音が響き合う。

怒張が当たるのは特に感じやすい部分ばかりで、可憐な秘口は早くも悦びにわなないていた。

「くっ」

ほっそりした腰を押さえつけ、繰り返しセラフィーナを貫きながら、シルベストルはわずかに眉を寄せた。

「すごいな、セラフィーナ。ここは何度突いてやっても狭いままなのに、淫らに私に絡みついてくる。今にも……持っていかれそうだ」

「おっしゃらないで、そんな――あっ!」

言葉で煽られ、なおいっそう深く抉られて、セラフィーナの白い頬を涙が伝った。シルベストルを心底恨み、そのすべてを拒んでいるのに、どうしようもなく追い上げられていく。

セラフィーナはいつの間にか、自ら広い背中に腕を回して夫を抱き寄せていた。

(チェチーリア姉様! ごめんなさい、お姉様)

秘裂から淫らな蜜が絶え間なく溢れ、腰が勝手に揺れてしまう。緩急をつけた巧みな抽挿に、ほてった媚肉はあさましいほど反応していた。

与えられる快感をやり過ごそうとしても、セラフィーナにはどうすることもできない。

誰よりも大切な従姉を死に追いやったのは、このシルベストルなのに――。

「嫌ぁ……あん、やぁ、あ」

やがて東の空が白み始めても、二人の交わりは終わらなかった。

猛々しい熱杭は、新妻の身体を容赦なく穿ち続ける。そのくせ頂に届きそうになると、シルベストルはわざと的を外したり、意地悪く間を置いたりした。

そのせいで極めることも、われを失うこともできず、甘い地獄から抜け出せない。

セラフィーナは涙ぐみ、上気した肢体をくねらせた。

「お願い……です。も、もう……もう、許し、て」

「私を殺めたいのだろう、セラフィーナ?」

桜色に染まった右の耳朶を甘噛みし、シルベストルは薄く笑った。

「だが……教えたはずだ。この身を傷つけるには、私の精を存分に受け入れなければならないと。これからも毎夜、幾度となく」

ふいに右脚を抱え上げられ、シルベストルの肩の上にのせられた。そのせいで完全に腰が浮いたところに、深々と剛直を突き入れられる。

「ひっ!」

「しっかり受け止めるがいい」

息継ぎする間もなく、荒々しく抜き差しされて、セラフィーナは全身を震わせた。

「やぁっ!」

蜜壷の最奥で、シルベストルの白濁が飛び散る。

とうに限界を超えていたセラフィーナは抗うすべもなく、恍惚の高波にさらわれていった。

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