予期せぬ言葉に、ローズは弾かれたように振り返る。
見ると、ジュスタンが鍵をかけていたはずの扉を開けて、中へ入ってくるところだった。
「失礼。お邪魔するよ」
ベッドにもたれかかっているローズの元に歩み寄るジュスタン。就寝前なのか、その服装は素肌の上からシャツを纏っただけの非常にラフなものだった。
どうやら湯を浴びてきたらしく、身体は健康的に上気し、髪もわずかに湿っている。その様子が不思議と色っぽく感じ、ローズの心臓はどきりと高鳴った。
「あ、あの……どうしてここへ? というか、鍵は……」
混乱しながらも、ローズは何とか状況を理解しようとする。ジュスタンはなおも歩み寄りながら、笑みを浮かべて答えた。
「この城は、僕の所有物と言っても過言ではないからね。どこの部屋にも入れるように、鍵は全部所有しているよ」
ジュスタンはさらに近づいてくる。動けないでいるローズを尻目に、もはや眼前、目と鼻の先にまで迫った。
「それともうひとつ。どうしてこの部屋にやってきたのか、だけど……」
そしてジュスタンは、ローズの手を取って立ち上がらせ……。
その唇に、自らの唇を重ね合わせた。
「っ……!?」
突然のことに、ローズは目を瞠った。理解が追い付かず、頭が働かない。
その中で、触れ合った彼の唇の感触だけが、生々しくも鮮明に感じられた。
どれくらいそうしていただろうか。一瞬だったような気もするし、とても長い時間そうしていたような気もする。ほどなくして、ジュスタンの唇は離れていった。柔らかな感触が遠ざかっていく。
その後、間髪入れずに、ローズはベッドに押し倒された。
「きゃっ……」
驚いて声を上げてしまったものの、ベッドは弾力がありながらも柔らかく、痛みは感じなかった。
だが、それ以上に、男性に覆いかぶさられ、身動きが取れないという事実が、ローズを困惑させた。
ローズの腕を押さえつける、男性特有の大きくて骨ばった腕。シャツの隙間から見える鎖骨と逞しい胸板。男性に押し倒されているというのに、恐怖より先に何か別の感情を感じ、自分自身の反応に戸惑う。
燭台の灯りの乏しさのせいで、ジュスタンの輪郭がぼやけて見える。そんな中、彼の瞳だけが、獲物を狙う肉食獣のように爛々と輝いて見えた。
「僕がこの部屋にやってきた理由。それは、君の純潔を奪うためだ」
ローズの上に跨ったジュスタンは、はっきりとそう告げた。
そして、間髪入れずに再び唇を重ねてくる。
「んんっ……!?」
ジュスタンの舌がローズの唇を割り、口内へと侵入してきた。ぬるりとした暖かな舌が、ローズの口内で蠢く。
蹂躙し、征服するかのように、口内を余すことなく舌先で撫で回す。歯の一つ一つまで丁寧になぞったあと、彼の舌は最後に残された場所……ローズの舌に絡んできた。
舌先を擦り合わせるように触れたあと、一つの生き物であるかのように蠢き、ローズの舌を蹂躙する。
「んっ、ふ、んんんっ……!」
生まれてから一度も味わったことのない刺激に戸惑いを覚えるローズ。
そんなローズに対し、ジュスタンは不意にローズの胸に触れてきた。
「ふあ……っ!?」
ジュスタンの片手はローズを押さえ、もう片手はローズの胸に触れ、そして唇はローズの唇と重なっている。どうにか抜け出そうとするも、ローズの腕を押さえているジュスタンの腕は力強く、女の細腕ではびくともしない。
その間にも、ジュスタンの舌はローズの口内を蹂躙し、腕はローズの胸を愛撫していた。大きさを確かめるように下から持ち上げ、円を描くように揺らす。年齢の割に豊かに実ったローズの胸が、彼の手の動きに合わせて卑猥に歪む。
「んあっ、あ、あふ……」
ジュスタンの手がローズの胸を愛撫するたびに、何故か熱のこもった吐息が喉の奥から漏れてくる。
ジュスタンはそれを吸い取るようにキスを続け、互いの舌を絡ませ合い、唾液を混ぜ合わせては流し込んでくる。二人の唾液が混ざり合った淫猥な液体が口の端からこぼれ、ベッドに染みを作った。
やがて、ジュスタンの口がゆっくりと離れていった。両者の唇の間に唾液が糸を伝い、二人が先程までキスしていたことを誇示しているようだった。
「やっぱり、服の上からじゃ物足りないね。君もそう思うだろう?」
ジュスタンはそう言うと、ローズの上下一体型のドレスの裾に手を入れ、あっさりと脱がしてしまった。ローズは瞬く間に下着姿となる。
そのときになってようやく、混乱のさなかにあったローズは、自分達が何をしようとしているのかを理解した。
純潔を奪う……。それはつまり、子供を成すような行為をするということだ。
「ま、待ってください、ジュスタン様! どうしてこんなことを……」
やっとの思いで口にできたのは、そんな言葉だった。自らの身体を隠すようにかき抱きながら、上目遣いにジュスタンを見やる。
女性の服を剥ぎ、その相手に覆いかぶさっている状況だというのに、ジュスタンは微笑んで見せた。
「どうして? 僕らは夫婦になるのだから、これくらい当然じゃないか」
「っ……」
ジュスタンの言葉に、ローズは二の句を告げず押し黙った。
……そうだ。ローズはロズモンドとして、アスカリド王国の王子の元に嫁ぐためにこの城にやってきた。
夫婦になるということは、婚姻を結ぶだけではない。血を分けた子を成すこともまた、夫婦の務めの一つ。
そして、子を成すためには、その前に必要な行為があるのだ。
「…………」
ジュスタンがゆっくりと、焦らすようにローズの下着に手をかける。その間、ローズは強く目をつむって羞恥に耐えた。
「お、抵抗しなくなったね。受け入れたのかい?」
ジュスタンの笑い声が、今ばかりは嘲笑に聞こえた。強く結んでいた唇を開いて、ローズが答える。
「……それが、私の役目ですから」
ロズモンドの役割は、ロンズデール家の令嬢としてアスカリド王国に嫁ぐこと。
そして自分の役割は、そんなロズモンドの身代わりとなること。
ならば、ジュスタンの相手をすることもまた、ローズの役割だ。
「……そうか」
興味を失ったような、あるいは納得したような声で、ジュスタンが頷く。そして自らも服を脱ぎ捨てると、再びローズに覆いかぶさった。
「安心してほしい。女性を虐げる趣味はないからね。抵抗さえしなければ、君も気持ちよくしてあげよう」
ローズの耳元でそう囁き、ジュスタンは再び唇を重ねた。
そこから、あご、首筋を舌でなぞり、彼の唇がローズの胸にまで下ってくる。胸の頂まで到達したジュスタンは、その突起に吸い付いた。
「ひぅ……っ!」
これまでとは違う甘美な刺激に、ローズは思わず声を上げた。驚愕の声のはずなのに、その声にはどこか、甘い響きがあった。
ジュスタンは吸い付いていた突起から音を立てて唇を離すと、空気に触れた胸の突起に痺れるような甘い痛みが走った。その痛みを和らげようとするように、ジュスタンが舌で突起を舐め始める。
片方の突起を舌で愛撫しながら、ジュスタンはもう片方の突起を指でつまみ、こねくり始める。二カ所を同時に責められる刺激に、ローズは腕で口を押さえて零れる吐息を堪える。
「だんだんと固くなってきたね。感じているのかな?」
「ふっ、んん、んっ……!」
ジュスタンがからかうように問いかけてくるも、口を押さえているローズに答える余裕はない。
胸の先端にある、授乳のための器官を刺激されている。それだけのはずなのに、こんなにも身体が熱くなり、喉の奥から勝手に声が漏れる。生まれて初めての経験に、ローズはただ戸惑い、羞恥に身悶えるのみだった。
ローズの反応を楽しむように、ジュスタンはローズの胸を揺らしたり、持ち上げては落としたりと弄ぶ。まるで胸を玩具にされるような触りかたで、ローズは刺激以上に、恥ずかしさに身悶えたくなった。
「さて、いつまでも胸ばかりでは物足りないだろう? そろそろほかの場所も愛でていくことにしようか」
その宣言と共に、胸の先端に寄せられていた彼の口が離された。唇から胸まで下ったときと同じように、胸からさらに下、腹を伝ってへその横を通り過ぎる。
「ジュスタン、様……?」
下り続ける彼の舌にこそばゆさを感じながらも、ローズは戸惑いの声を上げる。彼が果たして、どこを刺激しようとしているのか、ローズには分からなかった。
やがて、彼の舌がローズの下腹部へと触れる。
その瞬間、ローズの身体は大きく跳ねた。
「っ!?」
ジュスタンの舌先が、ローズの下腹部の亀裂をなぞる。それだけのことのはずなのに、ローズは電流を浴びたように身体をのけぞらせ、快楽に震えた。
予期せぬ反応に、他ならぬローズ自身が戸惑いを露わにする。亀裂という、普段はほとんど触れることのない場所に触れられただけ。それにしたって、決して触れたことがないわけではない。
過去に触れたときは、一度もこんな感覚を味わったことはなかった。だというのに、今日に限って、一体なぜ……?
「感じているようだね、ロズモンド。何よりだ」
ローズの疑問に答えるように、ジュスタンが口を開いた。
彼が話している間は、下腹部を舐められることはない。そのことにわずかに安堵しつつローズは問いかけていた。
「感、じる……?」
「敏感な箇所を刺激されることで、快楽を覚えるということさ。その様子を見るに、快楽を味わったのはこれが初めてみたいだね?」
ジュスタンの問いかけに、ローズは頷いた。
その事実が男性をどれだけ喜ばせるかなど、生娘であるローズには分かるはずもない。ジュスタンは笑みを深めて言った。
「なるほど。ほかの男性に抱かれたことはないのはもちろんのこと、自分で慰めたこともないと。それは……僕がしっかりと教えてあげなくてはね」
そしてジュスタンは、ローズの下腹部に口を寄せると、思いっきり吸い上げた。
「ふあっ、あああああ!?」
突き抜けるような突然の感覚に、ローズは声を張り上げた。頭が真っ白になり、何も考えられなくなる。
声を張り上げるローズを無視するように、あるいはそれ以上の声を上げさせようとするかのように、ジュスタンはそれまで以上に強く、彼女の下腹部を吸い上げる。
「は、ああ、んはあっ……!」
「ほら、ごらん、ロズモンド」
ローズの下腹部を刺激していたジュスタンが、一度愛撫を止めた。乱れた息を整えながらも、ローズはジュスタンの言葉に応じ、視線を自らの下腹部へと向ける。
ローズの視線が向いたのを確認してから、ジュスタンはローズの下腹部に指を沿わせた。その刺激だけで、ローズの身体はびくりと跳ねる。
ジュスタンは下腹部を撫でた指を、ローズの眼前まで持ってくる。その指には、唾液とは違う独特の匂いのする液体がまとわりついていた。
「分かるかい? これが君の蜜だ」
「蜜……?」
「快楽を覚えると溢れてくる液体さ。君が僕の愛撫で感じているという証拠だよ」
「そ、そうなのですか……?」
感じるということがどういうものなのか、これが初めての体験であるローズにはいまだに理解しきれていない。
だが、ジュスタンがローズの身体に触れたときに味わった感覚。あれは非常に激しいものであったが、それでも言葉で表現するなら、快楽としか呼びようがないように思う。
なら、彼の言った通り、自分は感じているのだろうか……?
「理解できたようだね。でも、これはまだほんの序の口だよ。そのことを、じっくりと教えてあげよう」
ジュスタンはそう言うと、ローズの亀裂に再び舌を這わせた。再び襲い掛かる感覚に、ローズは歯をくいしばって耐えようとする。
ジュスタンの舌が、亀裂を幾度となく縦になぞる。零れる蜜をすくい取り、ジュスタンはそのたびに喉を鳴らし、ローズの蜜を嚥下した。
下腹部を舐められ、その蜜を呑まれる。それがどれほど淫らなことなのか、ローズには理解できていない。
「あ、ん……?」
先程までの強烈な刺激とは違う、緩やかな責めに困惑するローズ。てっきり、これまで以上に強い刺激を受けると思っていたのに。
ローズは恐る恐る、ひっそりとジュスタンの様子を窺う。
すると、ジュスタンと目が合った。その瞳には、喜悦の色が滲んでいるように見えた。
それと同時に、これまでにない刺激を下腹部から感じ、ローズの身体が大きく震えた。
(な、なに、今の……?)
例えるならば、普通であれば触れられることのない場所を、押し広げられたような感覚。何が起こったのか分からず混乱している間にも、同じ刺激が繰り返され、ローズの腰が勝手に浮き上がった。
未知の感覚に動きを支配されながらも、ローズはジュスタンを見やり、何をしているのかを確かめた。
(う、うそ、中に……?)
それは、信じがたい光景だった。
ローズの亀裂の中に、ジュスタンの舌が押し入っていたのだ。
「ふあ、んん、んあっ……!」
ジュスタンの舌が、亀裂の中、通常であれば触れられることのない場所に触れる。その刺激にローズは身悶え、甘い声が喉から漏れた。
「おや、蜜の量が増したね。やっぱり、感じているのかな?」
「んんっ、んく、は、あ……!」
わざとらしく問いかけるジュスタンの言葉にも、答える余裕はローズにはない。刺激を堪えようとするも、今まで味わったことがないせいでどうしたらいいか分からず、されるがままに声を上げるばかりだ。
「ふあ!? んん、ああああっ!」
ジュスタンが再び、ローズの下腹部を吸い上げた。嬌声の中に水音が混じり、広い室内に響き渡る。
蜜壺を吸い上げながらも、ジュスタンの舌は止まることなく奥へと潜り込み、ローズを刺激し続ける。下腹部から背筋まで突き抜ける激しい刺激に、身の毛もよだつような強烈な感覚を味わう。
「は、ああ、んぅ……っ」
刺激の激しさに耐え兼ね、ローズはジュスタンの頭を掴み、押しのけようとする。けれど、腕に力が入らず、彼の金髪に指をうずめるにとどまった。
ローズの想いが通じたのか、ジュスタンは蜜壺から口を離し、顔を上げる。その口元は、ローズから溢れた蜜で濡れていた。
「まったく……びしょびしょだ。そんなに気持ちよかったのかい?」
(続きは製品版でお楽しみください。)