「ぁ、――」
びくん、と背をのけぞらせると、細いがしっかりと筋肉のついた青年の腕にきつく腰を抱き寄せられた。
淫らに濡れた下半身を裳で覆い隠したまま彼を受け入れる李麟と同様に、海璃もほとんど服を乱してはいなかった。
それは、この逢瀬が人目を忍ばなければならない行為ゆえのことだろう。
「海、璃……」
彼のものを体内に受け入れた李麟は、痛みと背徳感を越える恍惚に身を委ねた。壁に背を預けたまま腰を下ろす海璃の上に座り込む格好で、二人は抱き合っている。
「いったのか?」
海璃の指先が李麟の頬に優しく触れた。
「よく、わからない……」
首を振ると、海璃は「なら」、と腰を突き上げた。
「ぁ、っ」
「もう一度いけばいい」
「でも、人が来たら……あっ」
李麟の心配をよそに、彼の楔はさらに張りを増す。
ここは李麟に与えられた公主用の殿だった。
その、めったに人が立ち入ることのない物置部屋に二人はいた。人目を避けるため明かりはなく、庭から窓の格子を挟んで差し込む灯籠の光だけが頼りだ。
李麟は海璃の包帯に覆われた肩を心配そうに見つめ、尋ねた。
「それに、あまり動くとあなたの怪我が開かないか心配で……」
「俺の心配?」
くすり、と海璃が笑った。
「今さらだな。この状況で止める方が体に悪い」
「――、ぁ」
不意に彼が腰を揺すったので、李麟は声を震わせた。
「ま、だ?」
頬を染めて、李麟は掠れた声で尋ねる。
彼に抱かれることを望んだのは自分だから、どのような辱めを受けようとも耐えるつもりではあった。だが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
海璃は李麟の頬を手で包み、重ねた唇から舌を差し入れる。
「んっ……」
「分かるだろう、あなたの中で屹立している俺のものが。あなたがいっても、俺はまだ達していない」
甘い声色で囁き、海璃は李麟の胸を服の上から嬲った。
「ぁ、っ」
羞恥に李麟は息を呑む。
だが、抵抗はしなかった。
耳まで朱に染めつつ、ただ顔を背け、耐える。
「なぜ顔を逸らす?」
「は……恥ずかしいわ」
「胸を触れられるのが?」
耳元で囁かれて、李麟は更に恥じらった。
「もっと恥ずかしいことをとっくにしているじゃないか、李麟?」
出し抜けに下から突き上げられ、李麟はもう少しで甲高い嬌声を上げるところだった。大きな声を出せば、守衛に聞こえてしまうかもしれない。
しかし、そうやって必死に堪えれば堪えるほど、海璃の嗜虐心を煽ってしまう。
「ぁ、あっ、ぁ……!」
どれだけ顔を背けても、海璃の上に座り込んでいる体勢では完全に顔を隠すことなどできはしない。彼の輝石のような瞳に見つめられると、それだけで顔が熱くなる。
「李麟……」
海璃は知ったばかりの名を呼びながら、李麟の腰に手を伸ばした。
「いい名前だな。麟……伝説の神獣を名に抱く公主、か」
帯が解ける衣擦れの音がした途端、腰回りを締め付けていた衣の緩まる感覚に李麟は激しい羞恥を覚えた。
「か、海璃……」
すると、彼は「しっ」と自分の唇の前で人差し指を立てた。
「黙って」
「っ……!」
再び蠢き始めた海璃に合わせて、がくがくと李麟の腰が震える。ただ揺らされるままでいると、不意に濡れた感触を胸に感じて、李麟は目を見開いた。
「――っ」
目の前には海璃の艶やかな黒髪。
彼は緩まった李麟の襟からこぼれる胸元に顔を伏せ、そこに口付けたのだ。一瞬にして、李麟の頬が朱に染まる。
「ぁ、っ……」
気を紛らわそうとしても、下から突き上げる楔にすぐ意識を引き戻される。
濡れた舌が胸の突起を舌から舐め上げ、つん、と尖らせた先でつつかれる。丁寧に吸われ、嬲られるとじんわりとした痺れのような感覚――最初、下半身に起こったのと同じようなそれが胸からも生じた。
「ん、ん……っ」
喉をのけぞらせ、李麟は必死で淫靡な感覚をやり過ごす。
海璃は右の乳房を吸いながら、反対側を手で弄ぶ。指の形に合わせて形を変える柔らかな少女の乳房は男の劣情を煽り、貫く楔がさらに怒張する。
「あ、ぁっ!」
掠れた微かな喘ぎが李麟の喉をついた。
もどかしく腰を揺らすと、海璃は微かに笑って李麟の尻を掴み、ぐっと自分の腰に押し付ける。そのままぐるりと腰を回すように突き上げ、羞恥に乱れる李麟の表情を見つめたまま、尋ねる。
「感じるか、李麟……?」
懸命に喘ぎを呑み込み、海璃の与える快楽に耐えていると、彼は切なげに囁いた。
「俺は感じている。きつく俺を飲み込んで離さない、あなたのここを――」
海璃の指先が下に移動して、二人の繋がる部分をそっと撫でた。
「――っ」
最も敏感になっている部分を刺激されて、李麟はその瞬間、「あっ」と軽く達していた。
「ぁ、ん――!」
「ここがいいのか?」
前の突起をきゅ、とつままれて、李麟はあまりの恥ずかしさに両目を閉じて首を横に振る。その仕草を可愛く思ったのか、海璃は李麟の腕を自分の首に回させると、体を倒して床に押し倒した。
「ん――……!」
全身で海璃の体を受け止める李麟は、ぐっと深く突き刺さった海璃の感触に一瞬、気が遠くなるほどの衝撃を覚えた。
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