薄闇の中で、ぎしっと寝台が音を立てた。
「あ、あ……あ、あ……ああ」
その音に、女の嬌声が混じる。まるでうたうようなその声は、あまりにも艶めかしく部屋に響いた。
「んぁ、あ……あ、……あ、ん、んっ」
「洵華(じゅんか)」
男の声が、そう呼んだ。まるでなにかを促しているかのようだったが、洵華はそれを無視した。与えられる快楽を貪ることだけに集中する。
「いぁ……あ、あ……、も、っと……」
洵華は、男の下半身にまたがっていた。ふたりの下肢はぴたりと繋がっていて、男と女が深く交わっている最中であることを示している。
「も、っと……深く。ちょうだい……?」
「欲しがりな女だ」
洵華が交わっている男は、この稜国(りょうこく)の皇子だ。街の踊り子にすぎない洵華には、あまりにも不釣り合いな相手だった。そんなふたりが、なぜ交わりを持つに至ったのか。
「おまえが、これほどに好き者だとは……思わなかったな」
「あ、あ……あ、あ……あ、ああっ!」
彼女は大きく腰を跳ねさせた。繋がった部分がぐちゃりと音を立て、その淫らな音がますます女を追い立てる。
「あ、ふ……、っ……ん、ん……、っ……」
洵華は両足を曲げた。しゃがむような格好を取ると、接合がますます深くなる。
「ああ……あ」
「おまえの中が、熱くなった」
皇子は、愉しげにそう言った。
「感じたな? もっと、もっとと欲しがっている」
「あなたが、教えたくせに……」
恨みがましく洵華が言うと、皇子はくすくすと笑った。
「ああ、そうだな」
彼は言って、洵華の臀に指を絡ませる。そのまま持ちあげ、落とされると深く貫かれて目の前に星が飛んだ。
「おまえのこのような姿……私が、教えたことだ。私が教えなければ、おまえはこんなことは知らなかった」
「ひ、どい……」
洵華の瞳が、ぶわりと濡れた。涙が溢れる。それが頰を伝うのを皇子が見て取って、指先で拭ってくれる。
(こんな、優しさが)
洵華は、きゅっと唇を噛んだ。しかし涙に溺れている余裕は与えられなかった。突きあげられる。かきまわされる。指がすべってきて秘芽をつままれ、力を込めて捻られた。迫りあがる感覚に、ひっと息を呑む。
「いぁ、あ……あ、ああ、あ!」
踊るように腰を捩る。洵華の体は柔軟に反応し、受け止める感覚はますます深く、激しくなった。
「あ、は……っ、ん、んっ、ん……」
男の腕が、洵華の背にかかる。ぐいと引き寄せられて、唇を押しつけられた。
「ん、ん……、っ……」
「素直でない唇だ」
皇子は、不満げにそう言った。
「私を、愛しているだろう?」
「な、にを……」
洵華が戸惑うことを、彼は言う。
「愛していると、言え。おまえの、素直な気持ちを」
「や、ぁ……、っ、……っ」
彼の逞しい胸筋に、乳房が擦れる。乳首が刺激されて、それにも感じさせられた。全身が彼を求めている。男の体の厚みが、たまらない刺激になる。
「言え……、洵華」
「っあ……あ、あ、……、っ……!」
腰を大きく突き出した体勢で、立て続けに何度も突きあげられた。内壁がじゅくじゅくと擦られる。敏感な部分を乱暴に刺激され、悲鳴をあげる。しかしそれは甘い叫びで、洵華はとらえられたかのように何度も自ら腰を動かした。
「だめ……、っ……ん、っ、ん、んっ」
「洵華」
男は、執拗に洵華を呼んだ。彼がなにを求めているのかはわかっている。しかし洵華はそれに応えない――応えられない。
腰を高くあげていると、突きあげられる感覚が強く伝わってくる。蜜肉はかき乱され、ひときわ強く擦られて、それを心地いいと感じている自分がいる。もっと、とねだる意識がある。
「んぁ、ああ……あ、あ……、っ……」
「言え、洵華」
皇子は、執拗にそう促した。しかし洵華は、惜しみない嬌声は聞かせても、その言葉だけは決して口にしないのだ。
「あ、あ、あ……ん、っ……、っ……!」
洵華は唇を噛んだ。そして胸のうちで、そっと呟く。
――愛しているなんて、言わない。決して。
(このあとは製品版でお楽しみください)