昼間から何をしているんだろう、葵(あおい)はソファでゆったり座る夫の一ノ瀬(いちのせ)竜(りゅう)のジーンズをくつろげて、男根を引き抜いて舌先で舐めていた。
竜のために、下着を新調して黒のベビードールのみをまとっている。
時間を見れば昼の一時五分過ぎ。夜中とはわけが違って、誰か来るかもしれないのに葵はこの状況を作り出さないといけなかった。
夫の困惑とも悦びともとれるせわしない息遣いにほっとしつつ、室内の明るさと自ら奉仕する行為に背徳感が満ちていく。
後悔はないつもりだし、ここまで尽くさないといけないと思ったからやっている。
舌先で丁寧に裏まで舐めると、ぴくんと男根が口の中でひくついた。そのままゆっくりとだが起き上がりそうになる。
「あっ……気持ちいいですか?」
「……葵がしてくれることなら、なんでも」
「そうですか?」
竜が恥ずかしそうに言うので、葵はくすりと笑みを零した。たしかに結婚しなければ、こんな風にセックスを楽しむ仲でもないし、恋人同士でもなかった。竜とはただの幼馴染だ。
なんでも嬉しいと言われると素直に嬉しいし、頑張っている甲斐がある。
竜の為に、ラブグッズを買って実践さながらに練習した甲斐があった。竜には絶対に言えないことだが。
口に含んで口内で舌先を動かすと、竜が切なげに呻く。
「うぁ……葵……ま……まって……くれないか」
「まだまだです。全然足りてませんよ」
「いや……うぁ……あぁ……」
ふにゃんとした男根を必死に舌で扱いていくと、少しだけ立ち上がり葵はほっとした。
自分に魅力がないせいと、これという性のテクニックもないせいで、竜が仕事を理由にセックスから永遠に逃げてしまいそうで怖かった。互いの年齢も二十六歳。葵の方は性欲ならあるし、テクニックを勉強すればするほど楽しいと思えていた。でもそれは葵ひとりだけである。
上目で見つめると竜は恥ずかし気に顔を逸らして頬を染めた。
「やめ……葵……エロ過ぎて……はぁはぁ……」
竜はだらしなくソファに身を預けて、葵の頭を押さえようとした。
一瞬奥を突かれて苦しくなりつつ、葵は上目で見つめて答える。
「エロ過ぎですか?」
そんなわけがないと、口内で抽送を早くし、必死に男根を咥えて更に力強く立たせようとする。まだ足りないとばかりに芯に力がこもらない。
次第に唾液に塗れて男根がぐちょぐちょになり、葵の口もべっとりとしてきた。
光が煌々とリビングルームに入る中、葵の恰好と行為だけが卑猥だ。
一瞬、今誰か来たらどうしようかと考えそうになり、下着がじゅっと濡れる。
途端に葵の身体もじんじんと熱を帯びてしまい、必死に手も使い男根を上下に動かす。
すると、ぴくんと反応して力なく口内で立ち上がりそうになる。
葵は舌先でなめまわし、上目で言った。
「あの……胸でするのは好きですか?」
「え?」
「胸で挟んで」
葵が頬を赤らめて言うと、竜の顔が真っ赤になり同時に猛りが力強く立ち上がる。
「少し、します」
「ま、まて、まって」
(初めて……だけど。これくらいしないと。可愛いとか綺麗とか、美人とか言われないから)
葵はそっと胸を露わにして、猛りにあてがう。すっと胸でなぞることしかできないが、身体に押し付けた。
「んっ」
身体が触れ合うだけでも、葵にとってはひりひりするような感覚がして潤んだ眼差しを向けてしまう。
「まだ、頑張ります」
「はぁ……はぁ……もう……大丈夫だから」
ソファに座らされて足を広げられると、下着をそっと剥ぎ取られる。やっとこの時が来たと葵は恍惚の表情で迎えてしまった。それまでどんなに自分で自分を慰めようとも、本物が体内に侵入したことは、まだ一度だけ。やりきれない気持ちでおもちゃを買い込み、練習して誤魔化した。新婚だというのに、葵は竜とひとつになるのは今日で二度目だった。
もう、一緒に住んで半年になる。
卑猥な恰好も、葵の胸を高鳴らせている一因に過ぎない。
「好きです。竜のこと」
「好きだよ、俺も、好きだよ。好きだ。好き。好き」
「ありがとう。その言葉、凄く聞きたかった」
セックスの最中の告白は当てにならない、そんな情報が頭を掠めるものの嬉しさに満ちていた。結婚は済ませたが、面と向かって告白をされていなかったと思う。
猛りが蜜口にあてがわれると、ゆっくりと侵入してきて今までに感じたことのない痛みを感じる。散々おもちゃで自分を嬲っておきながら、本物の熱は大きく、受け入れるのが辛かった。
けれど、次第に身体が慣れてしまう。
「あっあぁ」
「葵の中……だあ」
「はい……。たっぷりください」
やっと繋がれたのだから、子供が欲しいと葵は無意識に思ってしまった。
けれど、竜は顔を真っ赤に染める。
「葵って……そういうこと言えるんだな」
「はい。竜だけ」
ひくっと竜の顔が強張り、すぐに逸らされる。代わりに突きあげられて痛みと共に快楽が押し寄せてきた。
隘路がまだ狭く、受け入れるのが辛いのだが、熱が最奥にぶつかりそうでぶつからない焦れた感じが、葵を悩ませる。
「あっあっ!」
たわわな胸が揺れて、布が擦れるだけでもまた喘ぐ。身体中が研ぎ澄まされたように反応して、身体中が戦慄いた。
切なくもどかしい思いがあるのは、葵が淫乱なだけだろう。そう自分に言い聞かせて腹の奥の切なさに耐え、はだけて見えた胸をいじられないことに我慢する。
「うっうっ……葵……葵……」
葵は荒い息を吐き出しつつ、満足気な竜とどこか満たされない自分にズレを感じて、自分の性欲の強さを知ったような気がしてイヤイヤと首を振った。
(このあとは製品版でお楽しみください)