「お酒頼もうか。ワインでも」
夏恋は頷くと近藤はウェイターを呼んで適当にワインを頼んでくれる。
お酒はそんなに飲めないと言うとロゼのグラスワインを用意してくれ、その手際の良さにも相変わらずうっとりさせられる。
すぐにワインと前菜がテーブルに運ばれてくると、ふたりでグラスを鳴らした。
「月間優秀賞、おめでとう」
「ありがとうございます」
「次は俺だからな」
「私だって、負けません」
くすくすと笑い合いながらお酒を呑むと、ふわりとした心地になる。
前菜を食べながら、近藤の話に相槌を打っていると心地よさにとろんとした眼差しを向けてしまった。
「酔った?」
「すみません。疲れたせいか、少し」
「そう」
ふわふわした心地の中、近藤の手がすっと伸びてきて夏恋の手をぎゅっと握ってきた。
これもいつものスキンシップだと思っていたが、手が離れることがない。
上目で見つめると、目を細めて幸せそうな眼差しを向けられる。
「もっとこうしていたい。今晩もずっと」
「……私も……」
(遂にこの時が――)
恋に疎い夏恋だって、予感が分からないわけじゃない。ネットで検索しまくり、近藤が自分に少なからず好意があるのではないかと思っていた。
夏恋にしてみれば断る理由はなく、こんな日が来たらいいなと妄想する日々で、二カ月が過ぎていたのだ。近藤からの好意なら尚更受け取りたい。
そんなことを考えながら、ふたりで料理を食べ終えると胸が高鳴り始めた。
近藤が先に席を立つので、俯きがちに付いて行く。そして、チェックインの手続きを済ませる為一度フロントまで降りると、余計に胸が鳴りだした。部屋に着く頃には、耳朶を染めて部屋から見える夜景を堪能する余裕もない。
「時間があったら、ちゃんとした部屋が取れたのに。悪いね」
「いえ、あの……私なんかでいいんですか?」
「どうして?」
俯きながら入り口に立ち尽くしてしまうと、そっと顎を掬われて口づけられる。
「んっんっ」
初めて感じる温もりに抵抗しつつ、腰を引き寄せられると身体中の力が抜けてしまった。
「ふぁぁ……」蕩けた顔を見せてしまうと、口内を猛然と舌が這いまわる。
感じたことのない快感に身体を震わせつつ、はしたない思いから羞恥を煽られる。
啄むようなキスをされると、今度はちゅっと音を立てて繰り返されて耳に響いてきて頭がくらくらしそうだった。
息をするのも辛くなるほどの猛然としたキスを受けて、はあはあと乱れていると、そのままベッドに横抱きにされて連れていかれる。
そっとスプリングの上に降ろされると、わずかに沈み込んだ。緊張感で満ちていくと着ていたブラウスのボタンを丁寧に外される。
恥ずかしさと戦いながらその様子を見ていると、近藤はくすっと笑う。
「嫌がらないね」
「だって……好き……だから」
思わぬ言葉を口走るものの、酒のせいだと自身に言い聞かせた。近藤だって聞き流してくれるだろうと大胆になっていく。するとブラ越しにたわわな胸を鷲掴みにされる。
「あっ!」
「こんなことされる日が来ると思っていたとか?」
「……近藤くんなら……嬉しいなって」
「ふーん。俺なら?」
「そう。エッチが初めてでも、いいですか?」
「いいよ」
羞恥に満たされながら、ありのままの自分を受け入れてくれたようでまた満たされていく。二十五歳で処女を少し恥ずかしく思っていたのだ。
近藤なら優しく受け止めてくれると思ったから素直に言えた。
ブラ越しに揉まれると、布が先端と擦れてそれだけでも官能が呼び覚まされる。
男性の少し強い力に翻弄されるように、身体もゆらゆらと揺さぶられ、されるがままだ。
「あっあっ」
「そういう声で求めてくるんだ……高木さん」
「知らな……ふぁっ……んっんっ……あっ!」
「全部教えてほしい」
口づけされると、さっきよりも鋭敏に反応して腰がひくひくと跳ねた。
口内に唾液が満ちてくると丁寧に舐め取られて、ちゅっと吸い付かれる。
今まで知らない世界が一気にこじ開けられていく恐怖もあるが、近藤といると幸せにすぐに変換されていくようだった。
いつの間にか首に腕を回して甘えていると、うなじにキスを落とされ痕を残される。
一瞬のことに戸惑いつつ、会社のことを気にする余裕もない。
するっとスカートが脱がされてしまうと、下着が蜜で湿っていることを指先で確認される。足をすぐに広げさせられて、思わず手で秘部を隠した。
しかし手を払われて、布越しにぬちぬちと蜜玉を刺激される。
「ふあぁっ!」
「初めてなんだよね?」
「そう……なの……ごめんなさい。ちゃんとしてなくて」
「いいよ。俺が好きにできるんだから」
「ありがとうございます」
快楽に翻弄されて涙目になりつつ、下着がするっと脱がされると蜜が溢れて糸を引いた。
脱がされると、今度は長い指先が蜜玉を転がし始める。
「あっあっ! やぁっ」
「ちゃんとしないと、入らないから」
「で、でもっ……。こんなの……耐えられな……っ」
「感じやすいね。蜜も溢れて止まらない。肌も白くていつも見てるのに飽きないな」
優しく蕩けるような声に夏恋はふわふわした心地で指先を受け入れる。
ぬちぬちと圧すように捏ねられ続けると腰が勝手に揺れて、次第に指が蜜壺に入り込んだ。いきなりの圧迫感に驚きつつ、感じたことのない膣での快感に身体中が震えた。
「あっあぁ! それっやぁ!」
「どうして?」
「こんな姿見たら、嫌いになるでしょ?」
「ならないよ。高木さんでも、そんな風に腰が揺れちゃうんだなって。じっくり見させて。ほんと……思ったよりずっと、身体の感度がいいよね」
「そんなつもりなくて……」
「いいよ。俺が教える。気持ちよくて怖いだろ?」
こくこくと頷くと、指の抜き差しがいきなり速くなった。
激しい水音が部屋中に響いて辛うじて働いていた理性が吹き飛び、あられもない声で喘いでしまう。腰ががくがく揺れて、近藤の指を咥えるように蜜壺に呑み込んでいく。
さらに指が増やされて、めちゃくちゃに掻き混ぜられると、もはや意識が蕩けて力なくシーツを引くだけだった。
「やぁ……近藤さ……見ないで……こんなの……」
「全部見てる。こんな風になってるところ、俺しか知らないだろ」
「やぁ……」
「俺ならいいだろ?」
観念して頷くと近藤が股の間に顔を埋めてきた。
信じられない光景にもはや軽くパニックになりそうだ。
「な……に?」
「ちゃんとするって言ってる」
ちゅぱちゅぱと音を立てて蜜壺に舌を突き入れられて舐められると、もはや何も考えられない。近藤からここまでされるとは思わず、想像もしていなかったせいか、羞恥はさらに掻き立てられる。
隘路に舌が這いまわると、腹の奥がジンジンと切なく疼いた。
もはや、夏恋自身が彼の熱を欲していることを自覚してしまう。
けれど焦らされるように花芽を舌先で転がされて、腰が跳ねた。高い声で啼いてしまうと、近藤の舌先が更に蠢き耐えきれなくなって身を捩って逃げる。
すると身体を押さえられて強引に花芽を摘ままれた。
「あっあぁ!」
「だめだよ。まだだ」
何度もシーツを握り直して快楽から逃れようとするが、抗うことも出来ずに舌先が這いまわる。すると意識が遠のいていき、真っ白な世界に包まれた。
「あっあああ!」
初めて果てたという背徳感に後ろめたさを感じているが、近藤はようやく身を起こしてスラックスをくつろげ始める。目の前に見せられた猛りに戦きつつ、ようやく楽になれるのだと安堵した。
だが、その大きさを確認してしまうと思わず近藤を見つめてしまう。
「大丈夫、力抜いて」
覆いかぶさられて、思い切り開脚させられると恐怖がまた襲ってくる。
蜜口にあてがわれて、ゆっくりと侵入されると熱がダイレクトに伝わることにはっとする。
同時に痛みが走り思わず近藤の背中に爪を立てた。
「痛かったか?」
「まだ、大丈夫です」
「じゃあ、もう少し」
ずるっと奥に入るが、脈打つさまが腹の奥に伝わる。
(コンドーム……してない?)
当たり前のことだと思っていただけに、慌ててそのことを訴えようとした。まさか近藤が避妊を怠るとは思わずもがくと、顔を見つめられた。
「どうかした?」
「あの、避妊……」
「ああ。ごめん」
直接言うのは猛烈に恥ずかしかったが、付き合ってもいない状況で避妊具なしはあり得なかった。
そしてずるっと抜かれると、ゴムをポケットから取り出して装着し直す。熱が籠って忘れていたのかと思い、夏恋はまた身をゆだねた。
ゆっくりと挿入されるとまだ痛みが少し残る。
そのまま侵入してくるがすべて受け止めきれずにまた「痛い」と呻いてしまった。
「じゃあ、今日はここまでかな」
「でも、途中じゃ」
「強引にやると身体に負担がかかるから」
近藤の優しさに甘えてうなずくと、ゆっくりと猛りが引き抜かれる。
剛直なそれはまだ熱を残していて申し訳ない思いになるが、近藤は淡々と背を向けてシャワーを浴びに行ってしまった。
残された夏恋は備えつけのガウンを着て、そのままベッドに寝転んだ。
初めてを近藤に捧げたことが信じられず、頭が冴えてしまう。
そのまま起きていると、近藤がシャワーから出てきて下半身にタオルを巻いて筋肉のついた綺麗な上半身を見せた。見惚れそうになると、近藤からそっと頭を撫でられる。
「早く寝た方が良い。今日は少し無理したんだろうから」
「はい。シャワーは明日浴びます」
撫でられただけでウトウトしてしまい、そのまま目を瞑ってしまうと、夏恋は意識を手放した。
朝の陽ざしで目が冷めると、一瞬、見知らぬ天井に驚きつつすぐに隣を見つめた。
しかしそこにいるはずの近藤がいない。
「近藤くん……?」
思わずベッドから降りて部屋を探し回っても、近藤の姿はなかった。
チェックアウトしてしまったのだと気が付いたのは、スマホのメッセージに気が付いたときだ。
『用事を思い出したから、先に帰る。この埋め合わせはするから。ごめん』
その言葉を見てほっとするものの、初めて泊まったシティホテルに置き去りにされて心細くなる。シャワーをすぐに浴びて慌てて着替えを済ますと、簡単にメイクをしてすぐに部屋を後にした。
一瞬、近藤が何を考えているのか分からず不安がよぎったが、書き置きのようにくれたメッセージを思うと、深い意味はないのだろう。
寂しくなってしまって帰りは気晴らしにウィンドウショッピングをするのだが、昨夜の熱烈に求められた夜を思うと、なかなか気持ちが切り替わることがなかった。
(このあとは製品版でお楽しみください)