「……! い、いやッ、やめ、あァッ……!」
「黙れ」
エメラルドグリーンの瞳を見張り、フランチェスカが必死にあげた声を、アシュラフはこの上なくきっぱりと拒絶した。
一糸まとわぬ全裸の彼女は、今、絹のシーツが敷かれた広大なベッドに横たえさせられていた。長い金色の巻き毛が、腿の辺りまでとき流されている。そのほっそりとした両手首は、緑の絹に金糸を施した優雅な細身の飾り帯で縛られ、さらに、繊細に彫刻を施されたベッドボードに繋がれていた。
そうして拘束されているため、無防備にさらけ出された彼女の身体の上に跨がる形で、アシュラフがのしかかっていた。アラブの大国、タルスクの若き国王、アシュラフ・アルド・タルスクである。彼もまた、身にまとっていた黒の民族衣装を脱ぎ捨て、全裸だった。
フランチェスカは震えながら、彼の顔を見つめた。少し長めの流した漆黒の黒髪。こちらを凝視している切れ長の瞳も同じ漆黒。高い鼻梁に、引き締まった、微かに笑みを浮かべた唇。端整な、見とれてしまうような顔立ちだった。十七歳のフランチェスカより五歳上のはずだから、二十二歳のはずだが、それよりも年上に見える。
──まさか、こんなことになるなんて……──
けれど今、震えながら彼を見つめるフランチェスカの心は、ただ恐怖で一杯になっていた。
彼女は今、性奴隷として、アシュラフに献上された身なのだ。まだ乙女の、そしてローマ建国以来の古い王国イリリアの侯爵家の子女として育てられた彼女にとって、それは耐えがたいどころか、考えてもいなかったことだった。
タルスクの王宮の中でも、最奥に位置するアシュラフの寝室のベッドに、フランチェスカは拘束されていた。ベッドサイドに置かれた大きなランプが、二人の姿をほの明るく照らし出している。金髪に白く透き通るような肌、ほっそりとした身体をなすすべもなくさらしているフランチェスカと、その上にのしかかる、長身で日焼けした強靱な筋肉に覆われたアシュラフは、恐ろしいほどに対照的だった。まるで、どう猛な黒豹が、獲物の美しい白い牝鹿を食らおうとしているかのようだ。
そして今、フランチェスカはまさに獲物の牝鹿も同然だった。
「──っ……!」
アシュラフの両手が、むき出しにされたフランチェスカの胸の膨らみを捕らえている。アシュラフはフランチェスカの淡い薔薇色の突起を、指の間に挟み、わしづかみにしたかたちで、そのまま、円を描くようにゆっくりと揉みしだいていった。その指先が、フランチェスカの乳房に食い込み、指の節が胸の突起を両側から擦って刺激する。
「あぅ、ンッ、……!」
フランチェスカの唇から、思わず声がこぼれた。
これまで感じたことのない、信じられないような心地よい感触と、自身の唇から漏れた声の甘さ、淫らさに呆然とする。それだけでなく、彼に触れられている全ての部分から強い快感が沸き起こってくる。それは一旦、下半身の、背骨の付け根の辺りに集中し、それから全身に行き渡っていく。
特に下腹部の辺りが疼き、強く反応した。秘部の、花びらに包まれた花芯がひくつき、じわりと蜜をにじませるのがわかる。
──そんな、私……!──
濡れた感触に、思わずエメラルドグリーンの瞳を見開く。こんな経験は初めてだった。
何故、このような淫らなことをされて、自分はこれほどに感じてしまっているのか。先ほど口移しに飲まされた、薬入りの酒のためだろうか。
「本当に、思った以上に反応がいいな。薬の効きがいいのか、それとも……」
さらに唇を歪めて胸から手を離すと、無造作に、フランチェスカの両手首を拘束している布を掴み、引いた。ギシリと布が軋み、手首が締め付けられて、彼女はびくんと身を震わせた。
「あぅッ、……!」
けれど次の瞬間、さらに息を呑んだ。アシュラフは、今度は彼女の身体の下へと身をずらし、軽くその足を片手で広げたのだ。そして両足の間に手を滑り込ませてきた。
「……! な、何、を……」
「濡れているな……」
びくりとし、思わず顎を引くようにしてそちらを見たフランチェスカに、アシュラフは笑い、さらに続けた。
「しかも今、新たに、それもたっぷりと蜜が溢れ出してきている。お前はこんな風に拘束されると、さらに感じてしまう体質のようだ」
囁きかけ、フランチェスカに視線を注いだまま、両足の間の花びらをゆっくりとかき分ける。恥ずかしさのあまりフランチェスカは耳を塞ぎ、何とかして足を閉じたくなった。だが両手首を拘束されているこの状態では、そのどちらもままならなかった。身をよじり、悶えるが、あっけなく足を押さえられて抵抗を封じられてしまう。
「ひァッ……!」
──とたん、露わにされた花芯に、ゆっくりとアシュラフが指先で触れてきた。フランチェスカはびくん、と、激しく身をしならせた。腕を拘束している布が、両手首で軋み、ピンと張る。彼女のそこは、今までの行為でもう既にぐっしょりと濡れそぼち、特に花芯は切なげにひくひくと震えていた。
「やめ、あ、ぁンッ……」
「じっとしていろ」
自分でもあまり触れたことのないその部分に、男の指が撫でるように這う。指先で花芯をつつき、円を描くようにして蜜を絡める。そして花芯を包む花びらを、指で挟み、内側を撫で上げる。それは意外な程優しく、そして繊細な仕草だった。
──え、ぇッ……?──
「あ、あァッ……」
最も感じやすい部分をアシュラフの指先で直に嬲なぶられる。そうされるたびに、じゅん、じゅん、と淫らな、熱く濡れたような心地よい感覚がそこから沸き起こってくる。その感覚は全身を駆け巡り、フランチェスカの身体をかっと熱くした。胸の脈打ちが早くなり、胸の突起が、今は触れられていないのにピンと固く尖るのが感じられた。
けれどアシュラフは嬲る手を止めようとはせず、さらに執拗に攻めてきた。視線は変わらず、こちらに注がれている。いや、先ほどよりも強くフランチェスカの顔に視線を向けている。唇の笑みは消えて、ひどく真剣な眼差しになっていた。
そうしながら、指先が先ほどより強く花芯を擦る。花芯はさらに大きく震え、ひくつき、蜜を止めどなく溢れさせている。くちゅくちゅと、淫らな音がそこから聞こえてきた。
「あ、ァッ……」
その音が耳に届き、恥ずかしさのあまり全身がさらに熱くなった。頬が火照り、胸の鼓動が早くなる。そうすると、その脈打ちとともに全身を快感が駆け巡り、身体中が炎に包まれたかのようになって、一層感じやすくなるのがわかった。
「あ、ッ……!」
その時、花芯にアシュラフの指が強く押し当てられた。そして次の瞬間、フランチェスカの花芯は淫らに開いて、彼の指を震えながら呑み込んだのだった。
「い、いやッ、……! あ、ンッ……」
思わず声を上げるが、新たに与えられた感触に呆然とする。そして、唇からは、またしても淫らな声が漏れ始めた。
「いい反応だな。その声も、ここも」
アシュラフは再び微かに笑みを浮かべ、ゆっくりと中に指を差し入れてくる。視線は変わらず、フランチェスカに注がれたままだ。花芯に繋がる細い茎が、押し広げられるのがわかった。内部の、しっとりと濡れた肉襞を擦られ、ぞくぞくと新たな、そしてこれまでに無く強い快感がこみ上げてきた。
「あッ、あ、ひッ……」
フランチェスカは弾かれたように身を竦めた。布がまた軋み、身体が波打って、白い足の指がひくりとのけぞる。彼の長い指で奥まで探られ、蜜は溢れて、その為に淫らな音はさらに大きくなった。くちゅり、くちゅりと粘液質の音が響く。
指先が動くごとに翻弄され、身悶え震えながら、フランチェスカはアシュラフを見やった。
アシュラフは、そんな彼女をずっと視線を逸らさずに見つめ続けている。指だけが、まるで別の生き物であるかのように、フランチェスカを執拗に攻め続けていた。
こんな淫らなことをされて、身悶えて感じてしまう自分を見られるのが恥ずかしくてならなかった。それに何故か、その漆黒の、黒曜石のような瞳で見つめられると、一層身体が感じてしまうような気がする。
「……!」
思わず目を逸らそうとした時、フランチェスカは、また、彼が微かに笑みを浮かべるのに気付いた。羞恥に頬を染めながら、彼女は唇を噛んだ。
──どうせ、こんな恥ずかしい姿を見られてしまったのなら……──
せめて言うべきことを言わなくては、と、彼女は懸命に心を奮い立たせ、アシュラフを見つめ返した。その視線を受けると、彼は笑みを消し、やや驚いたように目を見張った。
「お願い、です。アシュラフ陛下。私は、どうなっても構いませんから……。どうか、イリリアをお救い下さい……!」
喘ぎながら、潤んだエメラルドグリーンの瞳で、懸命にアシュラフを見つめる。その瞳の中には小さく彼の姿が映り込んでいた。
そう、このことだけはきちんと告げなければ。私はその為にここに送り込まれたのだから……。
「──ふん」
その時、また、アシュラフが笑った。唇を歪めた、皮肉な、そしてどこか面白がっているような笑みだった。
「そうして欲しいなら、お前は私に、相応の対価を払うがいい」
そして彼は、ゆっくりと彼女の足を開かせ、その身体に覆い被さってきた。
「ひッ……!」
フランチェスカは、思わず小さく声を上げた。足の間の、柔らかな膨らみや、内股の辺りに、彼の雄根の感触が、はっきりと伝わってきたからだ。
それは、アシュラフのこれまでの冷笑的な態度とは裏腹に、恐ろしく固く、精悍に、そして熱く脈打って怒張していた。
──そんな!──
経験のなかったフランチェスカでも、この後何が起こるかは見当がついた。恐怖で身体が凍り付く。
だがそんな彼女を見ても、アシュラフは全くためらう様子が無かった。彼の手がその太腿にかかり、有無を言わせぬ仕草で、大きく開かれる。フランチェスカは自身の身体が震え、瞳に涙がにじむのを感じた。
この、わずか二週間ほどの間で、彼女は、今がこれまでの人生の最悪の時だ、と何度も思うような目にあっていたのだ。しかも回を重ねる度に、その悪さが酷いものになっていくような気がする。
──一体、どうしてこんなことになってしまったの? 私や父様が、どんなに悪いことをしたというの……?──
かぶりを振り、思わず目を閉じる。悪夢のような記憶が、脳裏に一気によみがえってきた。
(このあとは製品版でおたのしみください)