書籍情報

白薔薇王女は政略結婚で恋をする【書下ろし・イラスト10枚入り】

白薔薇王女は政略結婚で恋をする【書下ろし・イラスト10枚入り】

著者:杉浦明日美

イラスト:弓槻みあ

発売年月日:2016年03月25日

定価:990円(税込)

ラマ神聖王国は未曽有の大災害に見舞われ、第一王女のシェリナは、復興資金を得るためにハンルーザ商人同盟の首領、ルフト・アッカーマンと政略結婚させられる。そのお見合いの席で、ルフトは結婚に乗り気ではないと宣言する。破談にされたら、国は滅びてしまう。ルフトを説得するために、シェリナは見合いの席で純潔を捧げる覚悟をする。

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登場人物

◆シェリナ(シェリアーナ・フェデ・マリアナ・ラマ)
ラマ神聖王国の第一王女。長い銀髪と菫色の瞳を持ち、その気高い姿は白薔薇姫と呼ばれている。
◆ルフト・アッカーマン
ハンルーザ商人同盟の首領。凄腕の商人で、野性味溢れる顔立ち。

立ち読み

シェリナは薄手の夜着を身に付け、寝台に腰掛けていた。
ルフトを待っているのだ。
(さすがに緊張するわね……。もうすでに経験したことではあるけれど……)
これが幾度となく床入りした恋人同士というのならともかく、シェリナはこれが二度目で、しかも一度目は激しくイレギュラーな状況だった。
(ふつうに初夜を迎えるよりは、気が楽だとは思うのだけれど……あのルフトですものね)
扉の外に人がびっしりいる状況で自分にあれほどの狼藉を働いた男が、花嫁に何をしてもいい状況で自分にどんな事をし、どんな事をさせるのかと思うと気が滅入る。
やがて入ってきたルフトは、即座にシェリナを押し倒す――のではなく、シェリナの隣に座った。
そのまま、何もしゃべらないのでシェリナも黙っていた。
不愉快な人物と進んで会話をするほどシェリナはできた人物ではない。
薄闇の中、沈黙がつづいていく。
とうとうルフトが口火を切った。
「姫さん」
「はい」
もう、姫ではないのだけれど――と思いつつも、返事をする。シェリナは結婚と同時に王室の籍を離れ、王女の位を失った。降嫁というのはそういうことなのだ。
「なんで黙ってる?」
話したくないから黙っていた、という本音を見栄えのいいオブラートに包んで答える。
「夫に求められない限り黙っているのが良い妻ですので」
「すんげー仏頂面(ぶっちょうづら)なんだが」
シェリナは呆れた。さっき自分に何をしたのか忘れたのかこの男。
「それはすみませんでした」
言い返さず、シェリナは淡々と頭を下げた。その態度はまさしく慇懃無礼の生きた見本である。
「さっきはあれだけニコニコしてたくせに」
「……あら。商人の方にそんなことを言われるとは思ってもみませんでしたわ」
「なに」
「必要とあらば愛想もへつらいもする、様々な顔を相手によって自由に使い分けるのが良き商人というものでしょう。違いまして? それと同じです。わたくしは、場所をわきまえず我が儘に振舞うほど愚かではありません。時と場所に応じたまで。それが何か」
招待した参列者、祝福にかけつけた民衆の前でこんな顔をするはずがない。
あの満面の笑みに騙された人間の中には、ルフトも含まれていたようだ。
ルフトは獰猛な獣のように唸った。
「あんたの笑顔という笑顔を、俺は一生信じられなくなったぞ」
「むしろ、騙されるほうが愚かというものでは? あんなことがあった後で、相手の男に屈託なく微笑める女がいるはずがないでしょう。いるとしたらそれは演技だということは自明の理ではありません?」
二枚舌三枚舌は当たり前。騙し合いが日常の商人にしてはあまりにも洞察力がないとシェリナは暗に言う。
ルフトはもう一度唸った。
「姫さん、あんたな、俺は女に暴力をふるうほど腐っちゃいないが、俺の忍耐がいつまでも続くとは思うなよ」
ルフトに手首をつかまれ、シェリナは悲鳴をあげた。
「いたっ! ルフト様、どうか手を……、緩めてくださいませ」
悲鳴に、反射的にルフトは手を緩めていた。
だがシェリナの感じた痛みは健在で、まだ鈍い痛みがあった。痣(あざ)になるかもしれない。
「ルフト様は、女性に暴力をふるわれるのですね」
シェリナはついそんな小憎らしい言葉を吐いてしまう。
それがルフトの機嫌を損ねたのは明らかだ。ルフトの目が険しくなって、シェリナを見下ろす。
ほんのわずかな薄衣(うすきぬ)だけを身に纏った姿だ。引き締まった胴と、反対につんと突き出た胸が男の欲望をそそるだろう。
シェリナはルフトの視線に気づいたが、体を隠そうとはしなかった。彼女としても、この場がどういうものかぐらいわかっている。むしろ、こう言った。
「あの……脱いだほうがいいですか?」
シェリナが着ているのはワンピース型ではなく、前であわせるローブ型の薄衣だ。繰り返しのルフトの狼藉に、少しでも脱がしやすい方がいいだろうという涙が出るような侍女の配慮だ。
「ああ。脱いで、足を開いて寝るんだ。仰向けにな」
想像しただけで顔から火を噴きそうになる格好だ。でも、今日の昼にさせられたことを思えば、まだいい。
シェリナは寝台から立ち上がり、腰紐をほどくと薄布を下に落とす。
美しい肢体が余すところなく男の視線にさらされた。
瑞々しい肌は弾けんばかりの若さを主張している。侍女が毎日丹念に手入れしている肌には黒子(ほくろ)の一つもなく、日々厳重に陽に焼けぬよう配慮されてきたので白い肌につきもののシミもない。豊かな乳房の膨らみの先端は薔薇色に色づいていた。
毎日ダンスに礼儀作法の練習にと励む彼女の体は引き締まり、母譲りの豊かな胸は張り出し、胴は綺麗にくびれていた。
芸術品のような雰囲気すら漂う。欠点が見当たらない素晴らしい肢体だった。
服の上からでもシェリナのスタイルの良さは分かっていたが、ルフトは目を見張って言う。
「姫さん、ちょっとその場で一回転してくれ」
「え……はい」
言われた通り寝台に横たわろうとしていたシェリナはくるりと一回転する。
「もう一回、ゆっくりと」
「はい……」
言われるがままゆっくりと回る。それはつまり、全方位からまじまじとルフトの視線にさらされるということだ。
ねだられるまま回っていると肌に視線が食い込んでくる。段々と小さな白い顔がうつむいていき、とうとうシェリナは真っ赤な顔を隠すように頬に手を当て、頼んだ。
「あ、あの……恥ずかしいのですが……あまり、見ないで……ください……」
「は? 姫さんと俺は何しに部屋にこもってるんだよ」
それを言われると何も言えなくなってしまう。
「姫さん、綺麗だわ。こんなの初めて見た……っていうかびっくりした」
寝台に座ったままシェリナを見上げたルフトは彼女の腰を抱くと、そのまま後ろに倒れた。シェリナごと。
「ん……」
深く唇を重ね合わされ、後頭部に右手を廻されているので顔をずらすこともできない。
そうでなくともシェリナに逃げる気はなかったが……そうも言ってられなくなった。
(い、息ができない……っ!)
長い口づけに呼吸がもたず、肩口の辺りを叩いて解放してもらう。
「い、息ができなくて……すみません」
ひとしきり空気を補給した後、気分を害しているだろうルフトに謝る。と――いまだ腰に回されたままの、柔肌に食い込むルフトの指に力がこもった。
「なあ、姫さん……」
「はい?」
「ひょっとして、口づけしたこともないのか?」
シェリナは正直に答えた。
「もちろん、ルフト様以外ありませんが?」
「……口づけのときは鼻で息をするんだ」
こんな風に、とルフトは実演で教えてくれた。
それはいいのだが……口づけの間、腰に廻されていたルフトの左手が下がって、双丘に悪戯を仕掛けた。
臀部のかたちを好き勝手に変え、それでも飽き足らず双丘の間に割りこんでくる。
焦らすように入口を指が行き来する。
唇を噛んでその感触に耐えながら、シェリナはルフトの背に廻した腕に力を込めた。
花びらをかきわけて、花芽を指で円を描くように刺激され、シェリナは体の中心が溶け出しそうになった。
異物感と痛み。膣口に指を入れられ、口から洩れそうになる声をルフトの肩口に顔を押し付けることで何とかかみ殺す。
「っ、ん、……っ」
やんわりとルフトはシェリナの手を外すと、彼女を仰向けに寝台に横たえた。
気がつけばルフトの目が真正面からシェリナを見ていた。
「なんてゆーか……姫さんってほんとにお姫さま、なんだな」
「え……」
「何にも染まってない真っ白。男心をそそる。男が、自分の色に染め上げたくなる。――痛いだろうけど我慢してな」
膣口にルフトの熱が当てられ、一気に貫かれた。
躊躇や痛みが少なくなるよう一息に奥まで納めると、ルフトはすぐに動き出した。
腰をつかまれ、揺さぶられながらシェリナは哀願する。
「ル、ルフト様……。どうか、もうすこし、ゆっくり……」
ルフトは痛みに顔を悲痛に歪めている姫君をちらりと見やると、そっけなく告げた。
「無理だ。少しの間、我慢してろ」
シェリナはそれ以上いう事をあきらめ、ただ耐えた。
そうしているさまは、ルフトが我を忘れるのも無理はないほど扇情的だった。
白薔薇姫。そう謳われた美しい少女が全裸で寝台の上で長い銀髪を乱れさせ、男に犯されながら眉をひそめ唇を噛んで、自分に与えられる暴虐にただ耐えているのだ。
男の嗜虐心(しぎゃくしん)をこれ以上ないというほどそそる姿である。
もっとも、シェリナにとっては苦痛の時間でしかなかったが。
体内で自分を苛む凶器が往復を繰り返すたび、シェリナは体の奥にナイフを入れられ、それが回転しながら内部を抉っていくような気持ちになる。
いつか、この行為が心地よく感じられる日が来るのだろうか。世の多くの女性がそうなるというのなら、是非ともそうなってほしい。
ルフトの表情を見れば、彼はとても気持ちよさそうだった。
シェリナにとっては快楽どころか苦痛でしかないけれども、いつかはなるのだろうか……。
そんな物思いに沈んでいると、猛ったものが中で精を吐き出したのがわかった。
やっと終わるかと一瞬安堵したのも束の間、たわわに実った乳房を男の手が捏(こ)ねるように揉んでいく。
乱暴な手つきに、快感は遠いものでしかない。
自分で見ていても卑猥な光景だった。白い乳房が骨ばった男の手によっていいように変形し、肌の表面にほんのりと赤い痕を残し、それがまた新しい痕によって上書きされていく……。
「あ……あの」
「なんだ?」
「ルフト……さまが、また……」
体内で、萎えたものが再び質量を増していくのがわかる。
「ああ。姫さんがあんまり具合がいいものだから」
「具合……? 体の具合は良くないですが……」
「……訂正する。姫さんのここが俺にしがみついて離してくれないものだから」
ルフトが指先でちょんといまだ雄が収まったままの部分をつついたので、それがどこのことかシェリナにもわかった。
「そんなこと……!」
「そうか? お姫さんの口は、俺をまだまだ離したくないってさ」
ルフトが少し体を離す。体内に突き刺さった剣がすこし引かれ、シェリナは内側で響いた痛みに顔をしかめた。彼女の蜜壺はいまだ狭く、動きには痛みが伴う。
「姫さん、もう少し足を広げな。ん、それでいい」
言われるがまま足を広げると、ルフトは胸を弄っていた手を下にさげ、胴体にうっすら浮かび上がる肋骨を指の腹でなぞった。
肋骨の上に薄くのった皮膚。そこをなぞられて、シェリナ自身思ってもみない声が出た。
「あ……っ」
「ふーん? 姫さんはここが弱いのか」

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