心臓が早鐘を打っている。
夜会用の盛装を身にまとった男の長い指先が髪留めに伸び、軽い音とともにそれを外した。白いうなじから肩にかけて流れ落ちる灰銀の髪を男の指がくるりと巻き取り、口元へ運ぶ。
「誓いを」
唇が髪に触れ、サラはどきりと息を呑んだ。
「ウリセス――」
「私は生涯、あなただけを愛する。さあ、誓って、サラ。私を愛すると。そうすれば、もう誰も私たちを引き離すことはできない」
「わた、しは……」
ごくりとサラは喉を鳴らした。
「サラは、愛し……ます。ウリセスを――あなた、だけを……」
ウリセスの、若く生気にあふれた淡藤あわふじ色の瞳が月光の下で官能的に輝いた。二人は薔薇に隠されたベンチに腰を下ろしていた。宮殿では今ごろ、陛下に招かれた一流の俳優たちが煌びやかな舞台で劇を演じているはずだ。
けれど、美しいソプラノの歌声も荘厳なヴァイオリンの音色もここまでは届かない。
ウリセスはサラを抱き寄せ、向き合うように自身の膝の上に座らせると、サラの腰をそっと撫で回した。まるでそのくびれた腰の細さを手に覚えさせようとするかのような仕草だった。
「ぁ……」
大きな手に細腰をさすられ、サラはどうしてよいのかわからずに掠れた声をもらした。その初々しい反応にウリセスは満足したかのように微笑み、ゆっくりとその手を上へとずらしていく。
「っ――」
脇の下まで上がって来たウリセスの親指が際どいところを掠った。びくん、と震えるサラのいじらしい羞恥を楽しむように、彼はそっと指を動かしてサラの胸の膨らみをドレス越しに確かめた。
「ぁ……」
サラは彼の膝の上で、悩ましげに身を捩る。
ウリセスは片手でサラの腰を掴んだまま、もう片方の手を使ってそこをゆっくりと愛撫しはじめた。
「ぁ、あっ」
これまでに感じたことのない羞恥に、サラは真っ赤になって掠れた声を漏らす。
「ウリセス、待って」
「なぜ?」
ウリセスの指が次第に愛撫の強さを増していく。何度もそこを嬲られているうちに、サラは体の芯からこみ上げる見知らぬ感覚に慄いた。
「こわい、から……」
素直に告げると、ウリセスはサラを安心させるように言った。
「大丈夫、私に全てを任せて」
「あ……ッ」
びくん、とサラは喉をのけぞらせた。
柔らかな膨らみに食い込んだ男の手指が、ゆっくりと丹念に蠢く。薄い布越しのもどかしい愛撫に、サラは身を捩るようにして耐えた。
「んぁ、あ……」
「かわいいね、サラ」
微かな音を立て、ウリセスは手の中に掴み上げた白い胸元に口付ける。
「んぅ、んッ」
「ここ、感じているのがわかる?」
指の腹で膨らみの中心を擦られ、サラはたまらずに腰をのけぞらせて呻いた。屹立した胸の突起が服の布地を押し上げ、ウリセスの指に潰されては屹立するのを繰り返す。
「ぁ、やっ――」
頬を染めて首を振ると、ウリセスの愛撫はさらに激しくなる。彼はサラの体がそれを快楽だと覚えるまで、時間をかけて馴染ませた。
「ふ、ぁ」
サラは下半身の痺れを誤魔化すように腿を擦り合わせる。だが、ウリセスはその仕草を見逃さず、ずっと腰の辺りを擦っていた手を腿へと滑り落とした。
「ぁ――」
自然な手つきで脚を開かれ、サラは羞恥に掠れた声を零す。乱れたドレスの裾から白い腿が外気に晒され、夜闇のなかで光って見えるようだ。
「ウリセス、ぁ……ッ」
跨いだウリセスの腿に脚の付け根を押し付けるような体勢になり、サラは真っ赤になって喘いだ。
「や、あ――」
身じろぐ度に、そこが擦れて卑猥な刺激をサラにもたらす。
恥ずかしがるサラの反応を楽しむようにウリセスは微笑を浮かべ、のけぞった白い胸元へ食らいつくような口付けをした。柔らかい胸の谷間に顔を埋めたウリセスは掴んだ乳房を愛撫する手をとめないまま、そこを優しく吸い上げる。
思わずサラが膝に力を入れると、ベンチがぎしりと軋んだ。その卑猥な音に刺激されたのか、ウリセスの手が胸から腰、太腿へと滑り落ちてそっとドレスの中へと忍び込んでくる。
「腰を上げて、サラ」
びくん、とサラは震えた。
ウリセスの足が腿の内側を愛しげに撫でている。言われた通りにしたら何をされるのか、本能的に悟ったサラは反射的に首を振った。
「どうして? こわい?」
こくりと頷くと、ウリセスはもう一度胸元にキスをする。
「じゃあ、後ろを向いて。そう、私に寄りかかるようにして――」
ウリセスはサラの向きを変え、自分の胸に背をもたせかけるようにして座らせ直した。おとなしく従ったサラだったが、ぐいと左右に大きく腿を開かされて小さな悲鳴を上げる。
「ウリセス――、ッぁ」
はぐらかすように脇の下をくぐらせた手のひらで胸を揉まれ、息を呑む。羞恥だけではない、明らかな快楽の兆しにサラは愕然と目を見開いた。
「ぁ、あッ」
「だんだんと気持ちよくなってきたね?」
サラの吐息が熱を帯びてきたのを知ったウリセスの唇が耳朶をなぞり、きゅっと乳房を親指と人差し指で挟み込むようにして嬲った。
「んッ――」
「いい?」
耳元で囁かれ、サラはぎゅっと両目を閉じ頷いた。
許可を得たウリセスの指が、最奥までの道を阻む薄い布地の上から擦るように触れる。悲鳴を押し殺したサラは握りしめた両手を口元に当て、身を竦ませた。
どうにかなってしまいそう――。
布越しに触れられただけでサラの全身は火のように熱くなっていた。ウリセスの指がそこを行き来する度、びくびくと腰が震える。そしてそういう反応がウリセスの欲情を掻き立てるのだった。
「ゃ、あッ」
薄っすらと染みが出来上がる頃、サラは堪え切れずに掠れた嬌声を上げた。
「サラ――」
ウリセスはもう片方の手をサラの腿にかけ、大きく脚を広げ直した。
「やッ……」
「可愛いサラ。ほら、こんなに濡れてきた」
「――だめ! やめてウリセス。やっぱり、私はこんな――あなたとは釣り合わないわ。本当にあなたを愛しているけれど、花嫁になることなど――……ッ」
「もう遅いよ、サラ。だって、あなたのここは既に私を欲している」
下着をかき分け、ついに直接触れた指先の感覚に、それだけでサラは処女を喪失したほどの衝撃を覚えた。既に濡れているそこは初めてだというのに、男の指を自ら導くかのようにすんなりと花開いた。
「ぁ、あッ、あ」
「私はあなたが欲しい、サラ」
「ウリセス――だめ、やめて……!」
言葉とは裏腹に、サラの秘肉はウリセスの指をほとんど根本まで呑み込んでいた。奥で指が蠢く度、掠れた悲鳴が薔薇の園に響いた。首筋に熱く濡れた感触。ウリセスの舌がサラの肌を味わい、鬱血の跡をつける。
ウリセスの手のひらがサラの胸をすくい上げ、主張する突起を指の腹でこねる。まるで、ずっと欲しかった宝を手にしたかのような貪欲さで何度も揉みしだく。
「サラ――」
耳元で熱い吐息がこぼれた。
「サラ、サラ……愛しい人。誰にも渡さない。もうすぐ、私だけのものになる――」
くすりと欲に濡れた笑い声が耳朶に触れた途端、サラはびくびくと腰を震わせて軽く達してしまったようだった。
「ぁ――……」
ベンチの上に寝かされ、見上げた暗がりでウリセスが自分の愛液に塗れた指を舐めている光景に、サラは目もくらむような衝撃を受けた。
「わた、し――」
まるで自分が自分でなくなっていくような。
ついこの間まで、何も知らずに宮殿の奥深くに隠されていた嫁いき遅れの王女。それがサラ。それがどうして、淫らに濡れた体を投げ出して若く美しい隣国の王太子に組み敷かれているのか。
脚の間に屈んだウリセスの唇が太腿に触れ、そこをゆっくりと左右に開く。たくしあげられたドレスが花のように開いてベンチから地面へと流れ落ちた。
ウリセスの肩越しに見える窓の外は星の瞬く夜空で、サラはもしかしたらこれは夢なのかもしれないとさえ思う。
舌先がそこに差し込まれた時、押し殺した嬌声が漏れた。
なまめかしくそれが動く度に抱え上げられたサラの太腿がびくびくと震える。前の小さな突起を舐め上げられると、痺れるような感覚が下半身全体を襲った。
「ウリセス、そこ、やぁ、あッ……」
背をしならせて首を振るサラを、ウリセスは愛しげに攻め立てる。彼の肩に爪を立て、サラは激しく首を振った。
「ぁ、あッ――」
しまいには脚を閉じて、横向きに体を閉じてしまう。
けれど、ウリセスは荒い息をついてサラの腰を引き寄せると、尻を割り開くように掴んだ。
「ひ、ぁッ……!」
獲物を襲う獣のように唇と舌でむさぼられ、サラは愕然と目を見張った。がっしりと腰を掴まれている状態では逃げようがない。
「ウリセス、わたし、もうッ――や、ああッ」
もうこれ以上は伸ばせないというほど差し込まれた舌が、内部からサラを追い上げた。
「ぁ、あッ、んぁ」
びくびくと、際限なくサラの腰が微動する。
ウリセスの指が入口を押し広げ、親指で前の突起を捲り上げるように嬲った。がくがくとサラの膝が震え、力が抜ける。
「サラ……」
ウリセスは優しく名を呼び、ぐったりと横向きに倒れ込んでいるサラの体を後ろから組み敷いた。
衣擦れの音がして、サラは濡れそぼったそこに熱くそそり立った彼自身が後ろから突き付けられる感触に慄く。
「あ――」
喉を震わせるサラに、ウリセスが優しく囁く。
「あなたは私を愛すると誓った。その証をいまここで貰い受ける」
後ろから回した腕で自分の体に密着するようにサラの腰を抱き寄せ、ゆっくりと押し入ってくる彼自身の熱さに、甘い吐息が漏れる。やがてそれは一定の律動をもって動き始め、サラは奥を突かれるごとに蕩けるような快楽に堕ちていった。
(このあとは製品版でお楽しみください)