「リリー! 風呂が沸いたぞ! 入ってこい!」
バスルームからフィリップに叫ばれ、リリーはひゅっと声にならない声を漏らした。
フィリップは本気だ。本気でリリーとともに風呂に入ろうとしている。男性を前に裸になるなんて、ベッドの上以外考えられなかったリリーは、ついもたもたしてしまう。
「遅いっ」
フィリップがドアから顔をのぞかせ、苛立たしげに言った。袖をまくり上げた彼の腕は筋肉が隆起しており、普段よく鍛えているだろうことがうかがえた。
「なんだ、まだ服を着ているのか。俺が脱がしてやろうか?」
にやにやとフィリップが笑うものだから、リリーは慌てて首と手をぶんぶんと横に振った。
「だ、だ、大丈夫です! すぐ行きますから、脱ぐところをご覧にならないでください!」
「わかった、わかった。早くしろよ」
フィリップはそう言うと、バスルームに戻っていった。衣擦れの音がするから、どうやらフィリップも夜着を脱いでいるらしい。リリーの心臓は口から飛び出しそうなほどばくばくと脈打っていた。
殿下とお風呂、殿下とお風呂と、頭の中で念仏のように唱えながら、リリーはエプロンドレスを脱ぐ。シュミーズひとつになり、心許なさに両腕を抱えた。さすがに裸体で殿方のいる風呂に入ることはためらわれ、リリーはそのままバスルームに向かう。
「フィ、フィリップさま」
ドアに隠れるようにして、おそるおそる顔をのぞかせると、フィリップが裸身をさらして湯船に浸かっていた。
「やっと来たか。ほら、入ってこい」
「は、はい……」
リリーが全身を見せると、途端にフィリップが落胆したような溜息をついた。
「誰が下着をつけてこいと言った?」
「だ、だって……恥ずかしいです!」
顔を真っ赤にするリリーを前に、何を思ったのか、フィリップは手招きしてきた。
「わかった。いいぞ、そのまま湯に浸かるんだ」
なぜ命令形になるのかわからなかったが、とにかくシュミーズを身につけていてもとがめられなかったので、リリーはほっと胸を撫で下ろした。
バスルームのタイルに足を踏み締め、ゆっくりとバスタブに近づいていく。立ち上る湯気がフィリップの姿を覆い隠していた。これならばリリーの姿もあいまいになり、恥ずかしい想いをしないで済むかもしれない。
ちゃぷんと音を立て、足先から湯船に入っていく。少し熱い風呂だったが、浸かっていれば慣れるだろうと思われた。肩まで浸かったとき、隣のフィリップが声をかけてくる。
「湯加減はどうだ?」
「はい。温かいです。フィリップさまも使用人がする仕事をなさるのですね」
「意外か?」
「ええ、まあ――」
自分も実家では使用人の手伝いをしてきたのだとリリーが言うと、唐突に腕を引っ張られ、気づけばフィリップにうしろから抱きすくめられていた。
「フィリップさま……?」
きょとんとしながら振り返るリリーの頬に、フィリップはいとおしそうに口づけた。ちゅっと甘やかな音が鳴り、リリーの鼓動は覚えず速くなっていく。密着した体勢だったから、心臓の音がフィリップに聞こえてしまわないか、リリーは不安になる。
「お前は実家で苦労してきたんだ。城では自由にしてくれ。庭いじりをしても構わないし、菓子作りをしたって構わない」
「フィリップさま……」
リリーはフィリップを振り仰ぎ、感涙を瞳ににじませた。
「私は幸せ者です。こんな私を婚約者にしてくださって、本当にありがとうございました」
そしてだいたんにもリリーは湯から身を乗り出し、フィリップの頬にお礼とばかりにキスをした。
驚きに目をみはるフィリップだったが、次の瞬間にはもういつもの余裕綽々な彼の表情に戻っていた。その視線がリリーの顔から首、鎖骨から下へと移っていく。
「なあ、リリー」
「はい」
「いい雰囲気のところ申し訳ないのだが、お前の胸が透けていて気が気ではない」
「えっ!?」
ぎょっとして下を見れば、リリーの乳房は湯によって肌に張りついたシュミーズのおかげで透けており、慎ましやかな丸い乳輪と桜色をした先端のとがりがわかるほど扇情的になっていた。裸より淫らな姿かもしれない。
「あ、や、見ないでくださいっ」
慌てて胸元を隠そうとするも、うしろから両腕をつかまれてしまう。
「フィ、フィリップさま!?」
「隠す必要はない。見せてみろ」
「ええっ!? で、でも――あっ……!」
下からすくうように、唐突に乳房を持ち上げられ、リリーが高い声を上げる。
「このぐらいで感じるのか?」
にやりと、フィリップが笑う。それとともにぎゅっと乳房をわしづかまれ、ぴりりとした痛みが走った。淫らな展開の予感に、リリーは慌ててフィリップの胸板を押し返した。
「フィ、フィリップさまっ、ここはお風呂場です!」
「だから?」
しかしフィリップはまったく動じずに、リリーの乳房に触れてくる。豊満な白い胸に指が埋まるぐらい強く揉みしだかれ、リリーは覚えず甘い声を出していた。
「あっ、んんぅっ、あ、ダメ……!」
「リリー、お前がずっと欲しかった」
うしろから抱きすくめられ、首筋をいたずらにぺろりと舐められる。
「ひぅっ」
フィリップの一挙一動に反応するたびに、湯が波立ち、ちゃぷんと音を立てた。
「あ、フィリップさまぁ……っ」
「こうしたくてたまらなかった」
フィリップの片手が再び乳房をつかみ、もう片方の手が腰の辺りを滑っていく。微弱な電流を流されているようにびりびりと身体が痺れ、リリーはわなないた。
「はぅ、あ、そこは――」
フィリップの手がシュミーズをめくり上げ、足の間をさまよう。太ももを撫でさすられていると、次第に股間が熱くなり、むくむくとした得体の知れない欲求が湧き上がってきた。
顔を真っ赤にしたリリーが必死にフィリップの手を押さえるも、彼の手はリリーの秘められた部分に近づいていく。下着の上から花びらに沿って、くにくにと指を動かされる。
「やぁ、あんっ、ああ、はんっ」
「湯の中が熱くてよくわからないが、お前のここも熱くなっているのか?」
「そ、んなこと、わかりま、せんっ」
はあはあと息を切らせ、リリーは首を振る。湯に浸かった長い髪が頬に張りつき、水滴が首筋に伝っていく。下肢ではフィリップの指がうごめいていた。
フィリップは硬くしこった乳首をつまむと、人差し指と親指でこりこりといじり始めた。
「こっちは反応してるようだな」
「ああ、そんなにしちゃ――ん、んぅ、あっ」
フィリップのいたずらを止めようとした手には、既に力が入っていない。敏感な乳頭を引っ張ったり弾いたりされていると、なぜか反抗する気が霧散してしまう。
「フィリップさまぁ……」
もう許してほしいと訴えるが、フィリップにはまったく伝わらない。それどころか下肢を撫でさすっていた彼の片手が、下着の中に滑り込んできた。
「ああ! ダメ、そこはっ!」
「熱いな」
フィリップの吐息が首筋にかかり、リリーはぶるりと身を震わせた。
「だが、濡れているのかわからん」
リリーの陰部を確かめるように、フィリップが指で探っていく。花びらをかき分け、包皮がむけた淫芽をつついた。瞬間、電気が走るような衝撃に襲われる。
「んぁあっ、あ、ああ、やぁっ」
「気持ちいいのか?」
ここでうなずけばフィリップの思うツボだと、リリーはまたしても首を横に振ったが、彼はやめようとはしなかった。乳首にそうしているように、つんととがった花粒もくりくりとしごく。
「ああっ……フィリップさ、まぁっ、ダメ、ダメぇっ」
身体の内側から愉悦が込み上げ、リリーの頭は快楽のほか何も考えられない。
フィリップは乳房を揉みながら、もう片方の手でリリーの陰部を刺激し続ける。とろりとした何かが膣を伝って落ちていく気がして、リリーはいやいやした。
「や、出ちゃう、出ちゃうっ」
「出て構わない。お前の蜜を舐めたい」
フィリップはそう言うと、下肢で動かしていた指をリリーの秘孔にゆっくりと挿し込んだ。蜜がにじんでいたためか、湯の中がそうさせるのか、するりとスムーズに入っていく。
「あ、ああ、あ……そんなにしたらぁ――」
「リリー、中はぐしょぐしょだぞ」
淫らな言葉を耳元でささやかれ、くすぐったさと気持ちよさにわけがわからなくなる。
フィリップが指を出し入れするたびに、ちゃぷちゃぷと湯が波立ち、浴室に反響する。
「う、んぅっ、あ、ああっ、んぁっ」
一本だった指の挿入が二本に増やされ、圧迫感が増した。同時に快感も倍になり、リリーが大きく仰け反る。
「そんなに指を締めつけるな」
「だ、だって……あ、あんっ」
身体が熱い。湯の中にいるせいか、いまにものぼせそうだ。
「フィリップさまっ、もうダメっ……熱い、ですっ」
おもむろに浴槽から上がろうとするが、フィリップの手がそれを許さなかった。うしろからリリーを抱え込み、無防備な尻を包むドロワーズを引き下ろす。
「ああっ!? ダメぇっ」
慌ててうしろを振り向けば、立ち上がったフィリップと視線がぶつかり、次いで彼の下肢から伸びる剛直が目に入った。
「――っ!」
そのあまりの太さと長さに、リリーは大きく目を見開いた。こんなものが狭いリリーの中に入っていたなんて、にわかには信じられない。
「驚いたか? お前に触れていただけでこのありさまだ」
苦笑するフィリップを前に、リリーが緊張にごくりと喉を鳴らす。
「そ、それはさすがに無理です、フィリップさま……」
そろそろと逃げようとするも、腰の辺りをつかまれ、うしろに引き寄せられてしまう。
「あぅっ!?」
「このときを待っていた。リリー、お前がほしい」
「フィ、フィリップさま……」
震えるリリーの尻を撫でさすりながら、フィリップは自らの肉棒をつかむと、蜜が垂れる秘部にあてがった。
「や、あっ……ダメ――!」
ぶんぶんと首を振るリリーに構うことなく、フィリップが腰を押し進めてくる。ず、ずずっと、蜜に濡れた媚肉が押し広げられ、膨れた陰茎が中を満たしていく。
「くっ――きついな」
フィリップの眉が寄せられる。狭い秘孔を穿ち、奥を目指して突き進む。
「あ、ああっ、んぁあああ!」
ずんっと、最奥まで熱杭に埋められ、リリーは身体の内側が焼ける想いがした。
「はぁ、あ、リリー……っ」
フィリップがぴったりと身体を密着させ、揺れるリリーの胸をうしろからつかむ。すっかりとがった先端をこねられ、リリーは甘く啼いた。
「あ、あんっ、や、んぁっ、ああっ」
「リリー、動くぞ」
「あ、待っ……あ、ああっ」
間断なく腰を動かされ、灼熱の楔が前後に揺すられる。くちゅ、ずちゅっと、結合部から淫らな音が漏れ出て、耳まで犯されているような気になってしまう。
「フィリップさまっ、あ、苦しっ、ああっ」
リリーは浴槽の縁をつかみ、必死で身体を支えていた。
大きくて硬い肉の塊がリリーの内側を穿ち、何度も何度も媚壁をこする。その感覚がどうしようもなく気持ちよくて、リリーは嬌声を上げ続けた。
「んぅっ、あ、うぁっ、はんっ、あっ」
「ああ……リリー、リリー」
腰をつかむフィリップの指の力が強くなる。それほど興奮しているのだろうか、最初ほどの余裕は感じられず、急いたように腰を動かしている。
ぱん、ぱんっと、激しく肉が打ちつけられる音が浴室内に響き渡る。
「あ、ああっ、ダメ、なんか、きちゃい、ますっ」
身体の奥から湧き上がる快感が頂点に近づき、リリーはぶるりと身を震わせた。
「まだだ、リリー、前を向け」
「ま、前……?」
はあはあと乱れた呼吸で振り向くと、情欲に濡れた瞳でフィリップがこちらを見つめていた。
フィリップはいちど秘孔から己の分身を引き抜くと、完全に人形然としているリリーに前を向かせ、浴室の壁に背中をもたせかけた。それから大きく足を開かせ、前から花筒に向かって漲りを挿入していく。
「うぅん、あ、ああっ」
リリーの膣はフィリップの形を覚えており、二度目の挿入はスムーズに進んだ。あっという間にフィリップを呑み込んだリリーは、彼の首に腕を回し、快感に耐えた。
「あぅっ、んんぅっ、あ、は、ああっ」
「リリー」
フィリップが顔を近づけ、リリーの唇を奪う。すぐさま舌を挿し込まれ、リリーの口腔内は蹂躙されていく。くちゅくちゅと唾液がかき混ぜられ、リリーの口角から溢れ出た唾液がつうっと頬から顎へと扇情的に伝っていった。
「淫らだな」
くくっと喉を鳴らしながら、フィリップが唾液の筋を辿ってキスを散らした。甘やかな口づけの刺激と下肢から伝わる快感に、リリーはどうにかなってしまいそうだった。
「んぁっ、あ、フィリップさまぁっ、あ、ああっ」
「もっとだ。もっと俺の名を呼べ」
生理的な涙をにじませるリリーに、フィリップが命じてくる。
リリーはこくこくとうなずくことしかできず、ただただ愉悦の波間に彼の名を呼んだ。
「フィリップさま、フィリップさまぁっ」
ずっくずっくと、フィリップがリリーの中を穿つ。リリーの秘孔からは蜜が溢れ、太ももを濡らし、湯の中に溶けていく。蜜溜まりがぐちゅぐちゅと音を立てた。
「俺がほしいか?」
「ほしいっ、ほしい、ですっ、もっと、ああっ」
もはや何を口走っているか、自分でもリリーにはわからなかった。快感が再び頂点を目指し、リリーの下肢を疼かせる。
「俺が好きか?」
「好きっ、好きぃっ」
リリーの反応に気をよくしたのか、フィリップが激しく突いてきた。
「あぅっ、ああっ、激しっ、あっ、ああっ」
「そんなに俺のものに絡みついてくるな。限界が近いっ」
「私もっ、私もですっ、フィリップさまぁっ」
フィリップに抱きつき、必死で快楽をこらえるリリー。
フィリップはがつがつと最奥をこすり、リリーを頂点へと押し上げていく。
「あ、ああっ……も、もうダメ――!」
「俺もだっ」
瞬間、フィリップががつんと腰を強く打ちつけた。
リリーの中で快楽が弾け、びくびくと膣を収斂させ、フィリップをきゅっと締めつける。
「くぅ――!」
フィリップが顔をしかめ、リリーの子宮に向かって吐精した。びゅくびゅくとほとばしる白濁が膣から漏れ出て、太ももをつうっと伝い落ちていく。
「はぁ、はぁ、フィリップさま……」
快感の余韻に身を任せるリリーの中で、フィリップが再び硬度を取り戻していった。むくむくと持ち上がる剛直の感覚に、リリーがぎょっとして目を見開く。
「二回戦だ、リリー」
にやりと、フィリップがいじわるく笑った。
(この続きは製品版でお楽しみください)