ちゅ、ちゅくと室内にキスの音が響く。
顔の半分が仮面で隠れているガレットの上に跨り、東雲(しののめ)希(あか)星(り)は慣れないキスを繰り返した。ベッドに座っている彼のキスは優しくて甘い。心地よくて強請るように彼の唇を名残惜しく追いかけてしまう。
キスをするガレットは、誰よりも希星に優しく触れてくれる。
初めて彼を見た時は、怖い人だと思った。仮面の下に光る鋭い眼光が、まるで切れ味のよい刃のようで委縮してしまった。
思い返せば『魔女』と騒ぐ兵士からも、王妃の憎しみに満ちた言葉からも、希星を守ってくれた。ガレットなら信じられる。異世界にきて、わずかな間だが、彼についていこうと思えた。たとえ、元の世界に戻れなくても彼の妻として生きられるなら……と。
「アカリ……横になって」
聞き心地のいい低音ボイスに促され、希星はベッドに横たわる。
鍛え上げられたガレットの身体が視界に入るだけで、期待と緊張で胸がバクバクと早鐘を打つ。ブラウンの前髪をかき上げる仕草さえも恰好良く見えてしまう。
「ガレット様、仮面は取らないのですか?」
「ああ。取らない。幼い頃に大病を患って、人に見せられるような肌ではなくなった」
ガレットが希星に口づけをしながら、羽織っていたガウンを脱ぎ捨てた。絹の夜着、一枚になると彼女の身体中にキスを施していく。
首筋、鎖骨、胸へと。
穢れを知らない希星の滑らかな肌は、軽いキスでさえも赤く色づいて花開く。
「ん……んぅ」
と、抗えない快感に身を捩る希星に、ガレットの指が動いた。二つの突起を夜着の上から軽く摘まみ上げる。最初は柔らかい先端もすぐに、コリっと硬さを増した。
「あ……やっ」
背中にゾクッと何かが走り、抓まれている部分がくすぐったいような、そうでないような感覚でじっとしていられなくなった。
「綺麗だよ、アカリ」
「んぅ……あ、ん」
聞きなれない言葉を耳元で囁かれ、希星は頬が上気した。『綺麗』とは見目美しい女性に対して、使うもの。凡人の容姿の希星には当てはまらないのに。
(恥ずかしい)
夜着越しに触られているのに、甘い声が漏れ、快感で身を捩ってしまう自分がはしたなく感じてしまう。
お腹の奥がムズムズしてきて、じっとしていられなくて足先を擦り合わせた。
「夜着を脱いで」
「ガレット様も」
「ああ、一緒に脱ごうか」
希星もガレットも、夜着を脱ぎ捨て裸になった。騎士団長の役職についている彼の身体は、引き締まっている。腹筋も六つに割れ、胸板も厚い。目のやり場に困るくらい理想の体型だ。
視線を下にずらし、いきり立つガレットの雄の熱を前に、希星は顔が真っ赤に燃えあがった。
(お……大きい)
「あの……これ……」
耳まで赤く染め上げた希星は、視線で彼の熱量をさした。見慣れない立派な大きさに、狼狽してしまう。
「いきなりは入れない。少しずつ慣らしてから、な」
「つらく、ないですか?」
「つらい。だからってアカリを苦しませたくない」
ガレットの手が誰も触れたことのない繁みへと到達する。
「アカリ、足を開いて」
「こう、ですか? あっ、んっ!」
繁みの奥にある真珠を見つけられ、指先で弾かれた。表しようのない快感が背中に走り、希星の声が甘く反応する。
「ほんの少し触っただけで、蜜が溢れてきた。すごい、トロトロ」
「ガレット様が触るから」
「私に触られるのがいいのか?」
希星は首肯した。
誰にも触られたことのない場所は、ガレットしか知らない。
「可愛いことを言うと、我慢がきかなくなるだろ」
くすっと笑うとガレットの指がさらに奥へと侵入していく。くちゅっと音が鳴るのと同時に、希星は「ああっ」と強い快感に声をあげた。
秘裂の合間に指が入ったようだ。すでに愛液で満たされているナカは、ガレットの指一本を軽く飲み込んだ。
ゆっくりと抜き差しされるたびに、希星の嬌声が漏れる。自然と出てしまう声が恥ずかしくて、両手で口を押さえた。
「声、我慢しないでいい。聞かせて」
「でも、あっ……んぁっ、ん、や。指が」
「二本に増えたよ。あと一本、増やしたら……私のを入れるから。早く慣れて」
不思議と痛みはなかった。もっと痛いものだと思っていたのに。
ガレットの指は優しく蕾を掻き混ぜて、花開くように柔らかくなるまでに慣らしてくれる。
ぐちゅぐちゅと鳴る卑猥な音が、さらに希星の羞恥を煽った。
(自分が出している音だと思うと……恥ずかしすぎる)
一度、ガレットの指の動きが止まると、さらに蜜口が大きく開いた。もう一本、指が増えたのだとわかる。
「んんっ、あ……っ」
「痛い?」
「大丈夫、です。痛いというより、ナカが熱いんです」
ジンジンしている。
奥まで突きさして欲しいような気がする。
「ヒクついてるね。指に絡みついてきて、私も早く入れたくなる」
「なら……入れてください。ほしい、です」
「そういうお強請りは嫌いじゃない。痛かったら言って」
ずるっと指を引き抜かれて、希星はなんだか寂しい気持ちになった。だがそう思ったのは束の間で、すぐに指とは比べ物にならないほどの熱量が希星の蜜口を大きく開かせた。
「あっ……ああっ。すごっ」
限界まで膣を広げているのではないかと言わんばかりの大きさに、希星は涙が零れた。痛いというよりも、裂けてしまいそうで怖いという感じだ。
「痛いか?」
「大丈夫、です。あっ……んんぅ。くるしっ、です」
「深呼吸をしろ」
希星は言われるがまま、深呼吸を繰り返した。息を吐くたびに、ガレットが少しずつ奥へと入っていく。
全部、収まるころには希星とガレットは手を強く繋ぎあっていた。
「大丈夫か?」
「はい」
「動くぞ」
ゆっくりとガレットが腰を動かし始めた。ぐちゅっとナカから愛液が漏れ出る音がする。
(ちょっと痛い、かも)
奥まで入り切った男根が動きだすと、痛みが走った。我慢できない痛みではなくて、ピリッと何かが切れたような熱い痛み。
それよりも指のときは違う快感の大波に、希星は溺れそうになった。
指では届かなかったジンジンと熱を孕んでいた部分が、ガレットの熱で刺激される。降りてきた子宮の入り口に先が当たるたびに、ナニかが弾けるような感覚が込み上げてくる。
「あっ……あああ、ナニか……くるっ」
「ん? イキそうか?」
「わかんない……ああっ。ああ、奥が熱くて、ジンジンするんです……あっ、だめっ……んぅ、ああああ」
視界が真っ白になり、希星の腰が大きく揺れて痙攣した。
「あっ……くっ、締めつけるな、アカリ……」
「そんな、こと……言われても」
(身体が勝手に)
ガレットの剛直を、強く締めつけて絞りとろうと膣壁が収縮を繰り返す。
「悪い。イッてる最中かもしれないが……こっちも我慢できない」
希星と繋いでいる手を離すと、ガレットが腰をぐっと掴んできた。
敏感になっている膣壁に激しく抽送を繰り返す。
「あ……やっ、壊れっ……んぅ、ああ。またぁ……ナニか……きちゃうから」
「……ん、くぅ」
ガレットは奥まで突きさしたあとに、すぐに希星のナカから撤退する。白濁の熱を希星のお腹に吐き出した。
「ナカには……?」
「出さない。妊娠したら困るのはアカリだろ? 今は魔女の力がないという証明さえできればいい」
「ガレット様、お心遣いありがとうございます」
「言っただろ? この身、滅びるまでそなたと共に生き、守り抜こう、と。今、欲望のままに子を宿したら、今度はアカリとその子の命を危険に晒してしまう。今日は大変な一日であっただろう? ゆっくり休め」
ガレットが希星の額に、軽いキスを落とした。
お互いにベッドに横になると、一枚の布団をかける。
大好きな祖母の家が取り壊されるっていうから、最後に思い出のある大鏡を見ようと思って田舎に来たはずだった。
異世界に飛んで、魔女扱いされて、騎士団長の妻になるなんて思いもしなかった。寝て起きたら、祖母の家の縁側でうたたねしていた……という現実だったらいいのに。
希星は重たくなる瞼を閉じると、すぐに夢の世界へと旅立った。
(このあとは製品版でお楽しみください)