プロローグ
春の温かな陽光が吹く風を穏やかにし、庭にある梅の花も満開になりつつある。
「今年も綺麗に咲いたなぁ。……あ、そうだ」
夜食用のおにぎりを作っていた阿子(あこ)は、ふと思い立って勝手口の扉を開けて庭に出る。
咲いている梅の花びらを一枚取り、急いで台所に戻った。
淹れたての梅茶にピンク色の花びらを浮かべ、おにぎりと一緒にお盆の上に載せる。
(ふふっ、これでよし……っと)
それを持って足早に縁側を通り抜け、いそいそと直人(なおと)がいる書斎に向かう。
開け放したままのドアの内側で足を止めて中の様子を窺うと、直人が椅子に座りながら大きく背伸びをしているところだった。
「トントン、直人さん。お夜食ができましたよ」
阿子がそう言うと、直人が椅子をくるりと回転させてドアのほうに向きなおった。
彫が深く絵に描いたような美男子である彼を見ると、阿子はいつだって胸がドキドキする。
それをどうにか押し殺し、何でもないふうを装って口元に笑みを浮かべた。
「ああ、ありがとう。今日は何のおにぎり?」
「塩昆布のマヨネーズ和えと明太子です」
「塩昆布とマヨネーズ? また微妙な具だな」
直人が少々困惑したような表情を浮かべる。そんな彼を尻目に、阿子は持っていた盆を窓際の長テーブルの上に置いた。
「美味しいんですよ、これ。騙されたと思って食べてみて――あんっ! な、直人さんっ……」
阿子が振り向こうとした途端、うしろからやってきた直人にバックハグをされた。
抗う暇もなくネグリジェの裾をめくられ、胸元をまさぐられる。
正直なところ、こんなふうにされるのを期待していなくもなかった。
しかし期待はあくまでも期待であって、直人の仕事のじゃまをするつもりなどあるはずもない。
「ちょっ……直人さん……お、おにぎり――」
「もちろん、いただくよ。だけど、まずは阿子を食べてからだ」
「わ、私を……?」
直人の手が、阿子が穿いているショーツの腰ひもを解いた。
明るい蛍光灯の下で、むっちりとした尻肉があらわになる。右手でヒップラインを撫でられ、左手で胸を揉みしだかれた。
スリッパを履いた足がつま先立ち、早々に目が潤んでくる。
「そ……そんな……お茶……せっかく、梅の花びらを浮かべたのに……冷めちゃう……ひっ!」
乳先を指先でキュッと摘ままれ、思わずしゃっくりのような声が零れ出た。
身体中の肌が敏感になり、脚の間が早々に潤ってくる。
「ノーブラ、紐パンでうろついてる阿子が悪い。これじゃあ、襲われないほうがおかしいぞ」
「あっ……だ、だって……そういう格好しろって言ったのは直人さんで……あんっ!」
直人の手が、阿子の花芽の先に触れた。そこから一気に滑り降りるように花房を割られ、中をクチュクチュと愛撫される。
「そうだったかな? いずれにしろ、もうびしょびしょじゃないか。いったい、いつからこんなに濡らしてたんだ? おにぎりを作りながら、いやらしいことでも考えてたのかな?」
耳元で意地悪く囁かれ、阿子は頬を真っ赤に染めて首を横に振った。
直人に顎を掴まれ、壁際に設えてある姿見のほうを向かされる。いつの間にかネグリジェの裾は肩の上にたくし上げられ、ほとんど全裸に近い状態になっていた。
「か、考えてなんかいませ……ん、ん……」
否定する唇をキスで塞がれ、あっという間に腰が砕けた。身体がくるりと反転し、直人と向かい合わせになる。
「はい、バンザイして」
「え? バ、バンザイ……」
戸惑いつつも言われた通りにすると、すぐにネグリジェを脱がされて丸裸にされた。
「エ、エッチッ!」
「エッチなのは阿子のほうだろ。忘れたのか? もともと、俺を誘惑してきたのはそっちだってこと――」
直人が阿子のネグリジェをテーブルの上に置いた。
確かに――。
否定できない阿子は、唇を噛んで直人を見る。
「俺をこんなふうにしたのは、阿子――おまえ自身だ。今さらもとの聖人君子に戻れって言われても、ちょっと無理な相談だと思わないか?」
腰を抱かれ、テーブルの上に座らされる。両脚を大きく広げられ、そのまま左右の踵をテーブルの縁に固定された。
直人が阿子の濡れた蜜窟を、まじまじと見つめてくる。
あまりにもふしだらな恰好をさせられ、阿子は恥じ入って下を向いた。
視界の端に、直人がいる。
うつむいてはいても、つい横目で彼の姿を追ってしまう。
直人が指先で阿子の乳先を捻りながら、ガウンの前を寛げる。
勃起した男性器があらわになり、阿子は無意識に小さく舌なめずりをした。
「ほら……今のしぐさは、なんだ? 何も知らない聖女のような顔をしているくせに、実際はやたらとエロい小悪魔なんだよな、阿子は――」
直人が阿子の左胸に唇を寄せ、熟れた果実にかぶりつくように乳房をやんわりと齧ってくる。
「ち、違っ……あんっ……あ……」
「どこが違うんだ? そんな艶めかしい声を出すなんて……。俺を誘惑しようとしてるなら、大成功だな、阿子――」
ずちゅ、という音がして直人の屹立が阿子の蜜窟の中に沈んだ。身体全体が熱に浮かされたようになり、挿入の悦びに身体中が震えた。
阿子は咄嗟に直人の肩にしがみつき、掠れた啼き声を上げる。
中がものすごく熱い。
彼のものがどんどん硬くなり、蜜壁の敏感なところを繰り返し攻め立ててくる。
「な……直人さ……あっ……ん、そ……なに、動いちゃ……ダメっ……」
挿入後、すぐにリズミカルに腰を振られ、阿子は瞬く間に強い快楽を感じた。膝がガクガクと震え、今にも絶頂を迎えてしまいそうになる。
「どうして動いちゃいけないんだ? 阿子……嘘をついちゃいけないな。口ではダメだと言いながら、本当はもっとしてほしくてたまらないって顔してるぞ」
「やっ……! あんっ……あ――」
快楽に耐えられなくなった阿子は、壁に背中を預けながら自分の両膝を腕に抱え込んだ。
秘所を前に突き出すような格好になり、挿入がいっそう深くなった。
耳の奥で内奥を掻き回される音が聞こえる。
淫ら過ぎる水音が、たまらなくいやらしい。
最奥がキュンと窄まり、小さな絶頂の波が阿子の全身を粟立たせる。
「ああ……いい気持ちだ……」
直人が低い声で呟き、阿子の顎を片手で掴んできた。唇が重なると同時に、直人が阿子の腰を強く引き寄せて内奥の膨らみを切っ先で愛撫してくる。
「ぁ……っ……あ……」
呼吸が途切れ、阿子は恍惚となりながら目を閉じて快楽に身を任せた。
愉悦の波に全身をさらわれると同時に、視界がぱあっと明るくなる。
阿子は嬌声を上げながら、自分の下腹に手を置く。
そして、直人の熱い脈動を掌に感じながら、彼の腰にきつく脚を絡みつかせるのだった。
(このあとは製品版でお楽しみください)