プロローグ
狭い座席、揺れる馬車。ルークは膝の上にロゼを乗せ、その唇に唇を寄せていた。舌を追いかけられるようなキス。必死に逃げて、捕らえられ、舌に舌を這わせてくる。それだけでロゼは背中がぞくぞくするのを感じた。
(初めての時と、何か違う)
ロゼの腰を抱いているのとは違う手で、ルークは器用にロゼの胸元のリボンを解いていく。今日は背中ではなく、前にリボンが並んでいる服を着ていた。夕焼けの赤に、サテンのリボンがちらちらと光を放っている。続いて、下着の胸のリボンも外して、ロゼの胸元を明るみに出した。
「やっ……こんな、窓も開いて、こんな場所で……」
ロゼが身をよじらせて言うと、ルークは唇を離さないまま、馬車のカーテンを引いた。夕焼けの光はもう入って来ない。イヤリングの揺れる耳元に軽い口づけをしながら、あらわになったロゼの胸の尖りを指で弄んだ。
「あっ、やっ……」
「貴女の体は賢いですね。もう快感を拾うことを覚えています。ほら、口づけしただけでもう背筋が蕩けています」
ふにゃふにゃになった体が、ルークの腕に支えられている。口づけを受けただけでこんな風になるなんて、体がどこかおかしいと思いながらも、力が入らない。自分で腰を支えることともできない。そのくせ、ルークの唇が胸を這うとびくびくと力が散ってしまうのだ。
「あっ……そこ、は……」
胸から手を離したルークがスカートを開いて、下着の横から指を滑らせてきた。ルークは何もしていないのに、馬車の振動で、指は内壁を撫でている。
「うう、んぅ……」
それだけじゃ足りない。どうしてそんなはしたないことを思うようになったのだろう。ルークに愛された体はロゼの言うことを聞いてくれなくなっている。くちゅくちゅと水音が立つのを、馬車の音が少し緩和してくれていた。それでも聞こえてしまう水音が、ロゼの鼓膜を舐めているようだった。
「……動かしてほしいですか? 中を、かき回しても?」
いつの間にか涙が浮かんでいて、ルークの顔がぼんやりとしか見えない。こくりと頷いてしまったのはどうしてだろう。下腹に広がる甘い快感のせいだろうか。
ロゼが頷いたのを受けて、ルークの指が激しく動いた。同時に鼓膜をこする水音が大きくなっていく。
「んっ……んんっ……」
大きな声を上げると御者に聞こえてしまう。他人にこんな甘い嬌声を聞かれるなんて思うだけで、ロゼにたまらない羞恥心を抱かせた。
「シルクの靴下のレースを汚して、あなたのものが染み込んでいっています」
「嫌で、す……もう……」
ルークに、もう何も言ってほしくなかった。何か言われるたびに、ロゼは恥ずかしくなってくる。ルークはロゼの胸の尖りに舌を這わせながら、器用にロゼの下着からレースの靴下ごと、脚を抜かせた。片脚にひっかかっている下着はそのままだ。ロゼの秘所にはまだルークの指がある。馬車が荒い道を通るたび、その振動で声を上げそうになっていた。
「ロゼ。もっと大きい声を出してよいのですよ。御者には石を踏む音しか聞こえていません。中で何が起こっていようと、彼には届きませんから」
そんなことを言われても、この行為自体に慣れていないロゼが、心の中から羞恥心をはがすのは無理なことだった。
「私が聞きたいと言っても、声を聞かせてくれませんか?」
「だって……そんな、無理です……こんな、人がいるところで」
ロゼが蚊の鳴くような声で言っている隙に、ルークは下衣の前を寛げていた。見るのは初めてではない。怖いと思ったこともあるのに、今は下腹に広がる快感がもっと深く、ロゼの頭の中を支配したような気がした。ルークがいつものルークではないような、どこか怖いような顔で笑って、膝に乗っているロゼの脚を割り開いた。そして、自らの脚を屹立の上へと跨らせる。ロゼにはどうしたら良いのかわからなかった。
「ここに……座って下さい。貴女の中に、入れながら……」
荒い息の隙間でとぎれとぎれの言葉を口にするルークに、体がぶるりと震えた。
「む、無理です、そんなことっ……」
慌てて片脚を上げて逃げようとするロゼをぐっと押さえて、腰を捕まえるられた。影を落とす青い前髪の下に、いつもとは違う青い目がぎらりと光っていた。
「大丈夫。場所なら、私がわかっています……ロゼは私についてきてください」
セリフと同時に、ロゼの秘所に熱を持ったものがあてがわれる。言葉通り、ルークはロゼの場所を知っている。ロゼの腰を持つルークの両手が、一気に引き下げられた。
「きゃっ……!」
知らず、大きな声が出て、ロゼは口元を両手で押さえた。
「まだ……途中です」
あらわになった胸元に頬を寄せ、目はロゼに向いていた。合わせるのも怖いような視線だ。
「後は貴女が自分で、腰を下げて下さい」
「そんな……」
「できるでしょう?」
ルークは体を支えていたロゼの両膝を軽く持ち上げた。重心が腰に移り、ルークのものが自分の体重で深く深く、突き刺さってきた。
「あ……あ……嫌、怖い……」
「嘘。そんなこと、思っていないでしょう」
少し体勢を整えて、今度は下から突いてくる。ロゼの下腹が急に熱を帯びて、それは全身に広がっていくようだった。ルークの手がロゼの腕を取って、自分の首の後ろへと誘った。
「しっかり……支えていて下さい。私を、放り出さないように……」
「え……」
涙声のロゼは次の瞬間、息をするのもを忘れてしまう衝撃を受けた。ルークの腰が動いて、下から突き上げてくる。
「や、めてぇっ……」
もはや、ロゼの声など届いていないようだった。カーテンを引いた馬車の闇の中、ロゼは声を振り絞って鳴いていた。ルークの肩にすがるしかなくて、声を隠すのにその肩の肌に歯を立てた。ルークの肩に、自分が流した涙が伝い落ちていく。
「んんっ……んあっ……」
肩から口を外すと声があふれてしまう。永遠に続く、甘くて苦しい夢だと、揺すさぶられながら、ロゼは思うのだった。
(このあとは製品版でお楽しみください)