ベッドに優しく乗せられ、ジョーンは顔から火が吹き出しそうになっていた。
誰かに抱きあげられるなんて初めての経験だ。心臓が激しく鼓動を打って止まない。
天蓋付きのベッドにゆっくりと身体が沈んでいく。部屋の明かりはベッド周りとソファにある燭台のみでほのかに明るいだけ。
男性に抱きあげられて移動するのは、初夜では当たり前なのか。それすらもわからない無知な自分が、これからどうなってしまうのか。緊張と不安で眩暈を起こしそうだ。
「緊張してる?」
「い、いえ……っ」
ベッドにあがってくるカイトに、ジョーンは首を振る。しかし、身体は正直だ。緊張を和らげようとしてか微笑む彼の優しさに、頬はさらに火照ってしまう。
「じゃあ、脱がすよ」
視線を逸らすジョーンに囁きかけ、カイトは夜着の胸もとにある紐に指をかけていた。シュルリと結び目を解かれ、緩む襟元から胸のほぼ半分が露わになってしまう。
「えっ、あ、やっ……んっ」
(なにっ! ……この声っ――)
布越しに右胸に触れられると、声が溢れていた。細長い指は胸の突起をいじり、手の平で優しく転がす。すると柔らかかった先端は軽い刺激で固くなり、ピンと張りだしていた。
キスの時とは違う、ゾワゾワした感覚が身体に走る。
自分では聞いたことのないような甘い声が続き、ジョーンは慌てて口元を押さえた。こんな声、知らない。何で出てしまったのか、わからない。
クスっと喉の奥で笑うカイトが、今度は左胸の突起を摘まんでくる。
「んぅ!」と押さえる口から声が漏れてしまう。
「ジョーン、声出していいよ」
「やっ、でも……こんな声、知らない」
(私の身体、どうなってしまったのっ?)
「いいんだ。こういう時にだけ出る声だから」
胸から手を離したカイトが、身体を少しだけ起こして両手首を掴む。口を押さえていた手をゆっくりと剥がされ、ベッドに押し付けられた。
「さっきのキスをしよう。好きな人同士のキスを」
優しく微笑んだカイトの唇が重なった。
薄く口を開けると彼の舌が割って入り、お互いの舌が絡み合う。
キスの合間に「ジョーン」と何度も名前を呼ぶ彼の喉仏にかかる低い声が、下半身を疼かせる。くすぐったいような、そうではないような。表現しがたい疼きが訪れ、腰が人知れず浮き上がってしまう。
「陛下、身体が……なんか、おかしいんです」
糸を引きながら唇同士が離れていく。
「どこがおかしい?」
「あの、ここが」
とジョーンは恥ずかしそうに足を少しだけ広げ、恥部を指で指し示す。
「もっと、足を開いて」
「え……もっと、ですか?」
「そう。ちゃんと俺に見えるように」
低いボイスで耳元に囁かれ、ジョーンは羞恥を耐えながら少しずつ足を広げる。
「……まだ、ですか?」
「ああ、まだよく見えないな」
秘処をカイトに見られている。それだけで羞恥を燻いぶされ、ジョーンは小さく呻いてしまう。ついには夜着の裾を捲り上げ、足の間に膝をついて座って、カイトはじっくりと見物し始めていた。
「あの……あまり見ないで、ください」
「いや、無理だよ」
視線はジョーンの潤む繁みに固定したまま、カイトは答える。
「こんなにも美しい神秘を、どうして見過ごせると思う?」
「いえ、陛下……そこは、汚くて……っ」
「いや、美しいとも。見つめれば、見つめるほどに蜜が溢れてくる。このままいけば、エリザベス王妃から聞いた夜伽のための準備が整うだろう」
「でも、恥ずかしすぎます……!」
「子を作るためだ、我慢しなくては。とはいえ、これは王妃が求める男児をただ産むための行為じゃないんだ、ジョーン。いいかい? 好きな人と愛を確かめ合う行為でもあるんだよ」
「愛を、確かめ合う……ん」
カイトの言葉を繰り返すジョーンに、彼はふっと微笑む。
「だから、子作りについては何も考えなくいい。今は俺だけを考えて」
「でも私は男の子を……ひゃ、あっ、ああ」
「うるさい子には、少し手を貸そうか」
そう言うと、膣口に指先が触れた。
指がクチュと音をたてて、口を押さえて喘ぐジョーンの中へと入ってくる。
「あ……ああ、やっ……んんぅ」
(やだっ、なにこれっ……気持ちいいっ、かも)
ジョーンはカイトの指から逃げようと必死になって身体をよじるが、そうはさせまいとカイトにウエストを掴まれ、動けなくなる。
「ああ、やっぱり狭いな」
カイトの指がゆっくりと動くたび、水音が響く。膣口の入り口で、指が出たり入ったりするだけで、ジョーンは知らない快感にじっとしていられなくなる。
「やぁ、変に……なり、そう」
「奥までいい?」
「え……? あっ……ぃ、あ」
腰をくねらせるジョーンの奥に、カイトがグッと指を押し入れてくる。
「ああっ!」
さらに強い快感がジョーンを襲い、頭が真っ白になった。
何かにすがりたくて空をきる両手は、腰を掴んでいるカイトの左腕に触れると、ぎゅっと握りしめていた。
「大丈夫、怖くはないよ」
カイトが少し前に動いて、腕にしがみつきやすいように位置をずらしてくれた。心地よいカイトの体温は快楽だけでなく、ジョーンを満たしていく。
「じゃあ、動くよ」
「や……ま、待って……ん、ぁあっ」
指がゆっくりと前後し、少しずつ速くなった。次第に激しく響く水音に耳まで犯されている気になってきたジョーンは、すぐそこまで迫る快癒の波を感じていた。
おかしいとは思っても、しかし身体には力が入らない。身の丈を越す荒波は、カイトの指に連れて迫り――瞬間、目の前が真っ白になった。
「やだ、どうし……やめ、なんか、くるっ。あああああっ」
身体の芯から何かが湧き上がってくるような感覚のあと、ジョーンは身体をビクビクと痙攣させた。視界が明滅し、呼吸が激しく乱れる。
「指一本でイクとは。随分と、敏感だな」
「え? イクって……?」
とろんとした瞳になったジョーンは、全身の力を抜いてぐったりとしていた。味わったことのない疲労感に、何も考えられそうにない。
「気持ちが良かったっていう証」
「気持ち……良かった……証」
「俺のが入るまでに、ジョーンは何回イクんだろうな」
くくっとカイトが悪戯な笑みを浮かべた。
(え? 何回って? 入るってなに?)
内壁がぐっと押し広げられた感覚で、ジョーンは「あっ」と声をあげる。すっかり愛液で濡れたジョーンの蜜壺の中は、いつの間にか増えた指をすんなりと受け入れ、呑み込んでいく。
「あったかいな、ジョーンの中は。早く入れたいが、無理はさせたくない」
指が動くと同時に、クチュと水音が鳴る。カイトの指が奥を突くたび、快感でおかしくなる。
「あ……やっ、もう……」
やめてほしい、と口にしたいのにジョーンにはできなかった。湧き起こる全身の痙攣を、ジョーンは抗うことなく受け入れた。肩が大きく上下し、腹部の奥がヒクヒクとする。
「さあ、次だ」
「え? あ、陛下、ちょっと待って――ひゃあ!」
ください、と言い切る前に、「駄目だ」と一気に指が引き抜かれる。
「悪いが、俺ももう我慢がききそうにない。もう少し耐えられるかと思ったのだが」
「ま、待って……ッ!」
抵抗も空しく、ジョーンの両足は今まで以上に大きく開かされた。恥ずかしくて閉じようと太ももに力を入れても、カイトの身体に阻まれて閉じれない。
「すまない、待てそうにない。少々痛いかもしれないが、我慢できなかったら言ってくれ」
「え? あの……え? あっ、ああああっ、んあ!」
ぐっと膣口が押し広げられる感覚に、ジョーンは声をあげた。指のときとは違う。一気に押し開かれ、何か大きいものが入ってくるのがわかった。
「ジョーン、息をして。ゆっくり。そう吸って、吐いて」
カイトの言葉に合わせて息を吐きだすと、さらに奥まで入ってくる。ジョーンは悲鳴のような声をあげた。
「痛いか?」
「少しだけ。でも大丈夫です……あっ、んん」
痛いのは一瞬だけだ。ピリッと痛みが走っただけ。あとはカイトの指が入っていたときみたいな快感に満たされ、痛みは彼方に消え去っていく。
「ジョーン、待て。そんなに……締め付ける、な」
「締めつ……なんのことで、すか?」
カイトの顔が歪んでいた。
「ん」と彼が声を漏らすだけで、ジョーンの身体にゾクッと、快感が走る。
なにを言っているのかわからなくとも、それが拒否でないことは理解できた。繁みの奥に受け入れた彼の大きなモノが、嬉しそうに飛び跳ねているのだ。気持ちいいのだろう。自分の身体が痙攣した時と同じだ――しかし、このまま彼に気持ちよくなってもらいたい反面、ジョーンは少しでも動かれたらどうにかなってしまいそうな状態だった。
動いてほしくないけれど、動いてほしい――相反する感情が身体を支配していく。
「もう、もたないな」
「……え、ぁんんっ」
カイトの呼吸が乱れ始め、頬に一筋の汗が流れた。
すると、今まで以上にジョーンの腰を強く掴み、腰を打ちつけてきた。
「あ、あ……あっ」
脳天を突き刺すような刺激に嬌声があがった。奥にカイトの熱があたるたびに、身体がビクッと反応してしまう。
「やぁ、また、くるぅ」
「俺もだ。一緒に……!」
とカイトの動きが早くなった。身体の奥から湧き上がる感覚に、目の前が白くなっていく。
彼の首に腕を回して抱き着くと、ジョーンは「ああああ」と声をあげて全身を痙攣させた。カイトの動きも最奥で止まり、「くっ」と声が漏れる。
「ジョーン、すごっ。中の収縮が……」
彼の声が耳の近くですると、治まりかけた痙攣の波がまた強くなって、腰が自然に揺れた。
「立て続けに2回もイクとは」
「陛下の声がずるいんです」
「俺の声?」
優しく抱きしめて首筋にキスをするカイトに、ジョーンはくすぐったそうにして答える。
「耳元で言うから。身体が勝手に」
「この声? ジョーンには弱いのか」
「あ、もう……っ」
わざと耳元で囁いて、「やっ」と身を捩るジョーンの姿を見るカイトはくすくすと笑った。彼の声が耳朶に触れるだけで、頬が熱く火照ってしまう。
「お戯れが過ぎますよ、陛下……っ」
「ははっ、無理させて悪かったな。お互いに夜着も脱がずに」
むくれるジョーンの中から、彼の屹立が出ていく。
少し寂しさはあっても、白精の温もりがジョーンを満たしてくれる。
ジョーンの癖毛に指を絡ませ、彼はフッと笑った。
(この続きは製品版でお楽しみください)