アーヴァイン……フォスター王国の第一王子。そして幼い日に定められたクリスの許婚。十六歳の誕生日を迎えた翌日の夜、クリスはアーヴァインの部屋に招かれた。アーヴァインが、狂おしい眼差しを向けてきたから、いよいよだと思い覚悟を決めた。
初めて誘われたベッドは絹の質感がなめらかで最高級の素材が使われていた。二人寄り添い合うと衣擦れの音がする。覆い被さる影が、月明かりに映っていた。アーヴァインと心でつぶやいて、彼のキスを受け止めた。
自然と重なったキスは、次第に熱を帯びていく。何度も唇をついばみ吐息が夜に溶ける。厚い舌がもぐりこんできたので、びくりと背筋を震わせた。
彼の大きな手が華奢な背中を撫でる。
「怖い?」
「いいえ……」
反射的に首を振っていた。ぎゅっ、と首にしがみついてキスの続きをねだる。煽られたのか舌が荒々しく絡む。舌をすぼめて口内を突く。身をすくめると腕の力が強まった。
「かわいい」
間近で見つめられ、アーヴァインの瞳に映る自分の姿を見た。炎のような眼差しが全身を焼き尽くそうとしている。縦横無尽に動く舌が意識を濁らせていく。彼は深く甘いキスをしながら、ナイトドレスを脱がせていった。お互いに入浴済みだ。
肌に塗られた香油に気づいたのか鼻息が首筋をかすめる。そのまま舌が首から鎖骨をたどり柔らかな膨らみへと向かっていった。アーヴァインの骨張った指先がそこをかすめた時、鼻から息が抜けた。何も身につけていない肌が彼に晒されている。頂に唇を寄せられて瞳をつむっていた。
「……んっ」
彼が舌で触れるほどそこが硬さを帯びる。大胆な指先がふくらみを揉みしだき始めた。大人になる手前で控えめだが小さいというほどでもない。この日のためにというわけではないが普段から手入れしていたから肌のきめ細かさには自信があった。
「やわらかい……」
恍惚とした声がする。アーヴァインの大きな手の平の中で、形を変える胸。細かな喘ぎが恥ずかしくて唇を噛もうとしたがキスがそれを防いだ。何度か舌を絡めた後唇は離れた。こちらを気遣ってくれる優しさに酔いしれてしまう。キスは膨らみの周りをたどりゆっくりと硬くなった実を舌で転がした。
「んんっ……」
唾液でまみれるほど敏感に反応してしまうのは何故だろう。頂ごとふくらみを唇にふくまれ、腰がのけぞる。はしたないと思っても止められなかった。
「だいじょうぶ。いろんなクリスを教えて」
アーヴァインの声は魔法だった。頂に舌を巻きつけては離す。一方では指先で弾いていた。
「アーヴァイン様……」
吐息が夜の闇に溶ける。三歳年上の彼は、こういうことに慣れているようだった。嫉妬など起きようはずもないが、経験値の差は思い知らされる。恥じらうのは当然だがその慎み深ささえ彼は全部かき消してしまうのだ。音を立てて啜られる頂。肌はどこもかしこも熱を帯びていた。時々、甘く噛まれるのを繰り返される。痛かったのは一瞬であっけなく気持ちよさに変わった。
「んん……ふあっ」
ちゅっ、と音を立てる。硬く尖った頂へのキス。くびれた腰を手の平は撫でていく。腹部から、太もも、足先まで撫でられて背筋が粟立った。今度は唇が全身をたどる。くすぐったくて、腰をくねらせたらお腹のあたりに小さく歯を立てられた。
痛みはなく、性感だけ。震える指先でシーツを掴む。アーヴァインが上衣と下衣を脱ぎ捨てる。月影のシルエットを呆然と見ていたクリスは、覆い被さってきた大きな体に抱きしめられる。硬い胸板は、彼が男性だと指し示していた。滑らかな背中に手を伸ばす。肩甲骨のごつごつとした感触に不思議な色香を感じた。
髪を撫でられ、うっとりと目を細める。アーヴァインの指先は秘められた場所を暴こうとしていた。両脚を押し開かれ、大きな手が割り込んでくる。
「アーヴァイン様……っ」
「だいじょうぶ」
アーヴァインは空いていた方の手でこちらの手を握った。下腹に滑らせた指を上下に往復させこちらの反応を確かめる。
「ああんっ……」
アーヴァインが指を動かすとそこからは湿った音がした。たしなみ読本を脳内に思い浮かべる。男性を受け入れるために、女性の体は濡れるらしい。
「どうしてそんな反応するんだい?」
「……私がアーヴァイン様をお慕い申し上げているから」
「そう。素直なクリスが大好きだよ」
「ん……」
軽く唇をはまれる。アーヴァインの指先は、溝をなぞり時々その上にある蕾を押した。ぐにっとひねられると恐ろしいほどの快感が背筋をかけのぼった。擦られては捏ねられる。次第に水音が大きくなっていく。
「確かめさせて」
アーヴァインはそう言うと両脚の間に頭を埋めた。
「っ……は」
舌が蕾を舐め転がす。溝に触れて大きな声が出そうになり口元を押さえてしまう。アーヴァインの舌が動くと蜜の音も大きくなる。ついに胎内に指を入れられた。浅い場所を行き来し蜜を掻き出している。
「何だかおかしくなりそう……怖い」
「おかしくなっていいよ」
アーヴァインの指が、最奥を突き上げる。甘い悲鳴を上げて墜ちていた。
肩で息を整え、うっすらと瞼を開けると真上から見下ろされていた。月明かりの中、アーヴァインの瞳が強い光を帯びている。胎内の入り口に触れるモノは限界まで張り詰めていた。愛おしくて仕方がなくなったクリスは彼の頬に指を沿わせると頷いた。
今までにないほど強く抱きしめられる。
「クリス……」
名前を囁かれた瞬間、貫かれていた。
「ああ……」
指とは比べものにならない圧迫感。身が引き裂かれるように痛いが、瞼を震わせて堪えた。
心配そうな彼がはらはらとこちらを見つめている。
「大丈夫。来てください」
さっき、大丈夫と言ってくれたアーヴァインに同じ言葉を返す。ぐっ、と押し開かれ、最奥まで彼自身が辿り着いた。全部を受け入れられた安堵と痛みで瞳に涙の粒が浮かぶ。
「ひとつになれたね」
アーヴァインの息も乱れていた。
「ついに結ばれたんですね……」
心身共に満たされている。うっとりとしていたら、彼が動き始めた。
「もっと、知りたい……君を」
「ああんっ……」
押し込んだあと、引く。たかぶりが抜け出る感触にぞくりとする。その動きは次第に早まり視界が、揺れ始める。潤んだ瞳、唇は薄く開かれている。最奥を大きく突いて揺れた膨らみを乱暴に揉む大きな手。左手に指を絡められ、不安を遠ざけようとしてくれていた。
この人はこんなに優しかっただろうか。この行為よりそのことが怖い。
「クリス……クリス」
耳元に息が吹きかかる。ぱくり、と耳たぶを食まれ耳の外側を舌がなぞる。耳殻を甘噛みされナカにいる彼自身を締めつけてしまった。
「ご、ごめんなさい」
「クリスが求めてくれたってことだろ?」
骨張った指先が髪を撫でる。指先に絡めた一筋に口づけられた。
「素敵な誕生日を迎えられました」
甘い息を吐きアーヴァインの肩口に頬を埋めた。その瞬間、奥にいる彼自身が跳ねた気がした。
「っ……駄目だ」
「あっ……やあ」
いきなり鋭く突き上げられる。脳内で光が散る。
(いや……こないで)
背中にしがみつく。最奥を何度か擦られるとめまいがした。くったりとシーツに身が沈む。抜け出た彼自身が、欲を散らすのを感じた。くったりと覆い被さってくる体を抱きしめ瞳を閉じる。
「……アーヴァイン様」
気がつけば横を向いた体勢で抱きしめられていた。行為のけだるさ、胸の高鳴り。結ばれたのは嘘じゃない。腹部にあたる彼自身の大きさにおののいてしまう。満足していないのだろうか。よくなかったのかと不安になった。
「抱いたらもっと欲しくなるね。それはクリスが好きだからだよ」
言い切ったアーヴァインに組み敷かれる。両手をつなぎ合わせ、体も繋げてきた。
「あああっ」
いきなり入ってきた彼自身は、さきほどよりも大きく感じた。重い衝撃に脳内で光が飛び散る。ずんずんと突いて、ぐるっと腰を回す。先程はまだ本気じゃなかったのだと思わされた。
腰を引いては、再び突き上げる動きに翻弄される。
彼と同じ動きで返そうとしてもできない。頬にかかる髪をなでてくれる。ふくらみの先を甘噛みされた。きゅ、とナカが収縮する。
「あんっ」
上品で端正なアーヴァインからは想像がつかないほど激しく雄々しい。たくましいモノがクリスのナカを押し広げ彼の形にしていく。
丸い先端で浅い場所を突かれ、息を詰める。
「かわいい……好きだよ……クリス」
掠れた息で言葉を紡ぐアーヴァイン。肌をすりあわせるとこのまま溶けてしまうのではないかと思う。
「アーヴァイン様……ああ」
大きく突き上げられ最奥が彼で満たされる。達してしまった体が弛緩しても胎内は未だにざわめいていた。ぬるりとした感触が太ももに触れ、彼が出ていく。肌を綺麗に拭ってくれているのを意識の端にとらえ、腕をシーツに投げ出した。
次に目が覚めた時、彼が大きな手でふくらみを揉みしだいていた。あれだけ触れたのにまだ触れてくれている。胸がきゅんと疼いた。
「ん……っ」
ちゅっ、と頂を吸う。その間も彼はこちらを見ている。アーヴァインの頭部を抱きしめて胸元に引き寄せた。
「なんて素敵なんだろう」
全身を撫であげたあと、彼は離れた。目を覚ました時アーヴァインの腕の中にいた。腕枕をされ胸元に抱き寄せられている。そして、クリスの首元には何かの感触があった。指先で触れると、しゃらり、と金属の音が鳴る。
「クリス、誕生日プレゼントだ」
「ありがとうございます」
感極まって泣き出したクリスの背中を撫でてくれる優しい手。惹かれてしまうのはしょうがないのだと言い聞かせる。影が重なりキスを交わす。甘く切ないキスに身を震わせながら、好きとつぶやいていた。
(この後は製品版でお楽しみください)