陽の光ですら飲み込んでしまうような、深い瞳が細められた。
普段は落ち着いて、その知性の高さを感じさせる灰色の視線は、今や隠せないほどに色濃い欲望の色に彩られている。
「さぁ、リアレイン」
優しく低い声は、この屋敷の主であるアルフレッドのものだ。
柔らかなベッドに腰掛けたアルフレッドは、自らの膝の上で顔を赤くさせる新妻に囁きかける。
向かいあった体勢でアルフレッドの剛直を咥えこんだ少女――リアレインは、その声を聞いただけでふるりと背中を震わせた。
「ねだってごらん。お前のその声で、俺にだけ聞こえるように」
「っふ、ぁ……」
しっとりと、艶やかな声がリアレインの鼓膜を犯す。
それと同時にゆるく腰を打ちつけられて、リアレインはあえかな声を漏らした。
アルフレッドによってすっかり衣服をはぎ取られた彼女は、羞恥で顔を真っ赤にしながら夫の体にしがみついた。
「あ、あまり……意地悪を、しないでください。アルフレッド様……」
「意地悪? 意地悪などした覚えはないが」
クッと低い声で笑うアルフレッドの胸を、リアレインが軽く叩く。
普段は喪服のような色合いの衣服ばかりを着ているから細く見られがちだが、服を一枚脱げば、その均整の取れた筋肉が露わになった。
「意地悪です。こんな……あ、灯を消してくださいと、お願いしたのに」
「こうすれば、お前の顔がよく見える。こうして――羞恥に赤くなるところも、快楽に悶えるところも」
「ひぁ、ァ……ッ! はっ、ぁあ」
夜が更けているというのに、二人の寝室はまだしっかりと灯がついていた。恥ずかしいと言っても、やめてくれと言っても、アルフレッドはいっこうに聞き入れてはくれない。
むしろ面白がって、そのままリアレインの衣服を脱がせて行為を始めてしまったのだ。
「は、ぁあっ……! い、やです。恥ずかしい……こ、こんなところを見られる、なんて」
「こんなところ? ……いや、もっとだ」
ちゅ、と軽くリアレインの唇を吸ったアルフレッドが、片手でほっそりとした腰をなぞった。くすぐったいようなその感触に声を上げると、彼は空いたもう片方の手で柔らかい乳房に触れる。
「や、ぁ――」
骨張った指先が、まるで確かめるようにリアレインの乳房をなぞる。
たわわに実った左の果実をやわやわと揉みしだかれる度に、彼女の体からは力が抜けていく。先端の蕾を人差し指で押し込まれると、その場所から淫らな刺激が広がっていくようだった。
「ぁああ……ッ! っあ、はぁっ」
刺激を与えられると同時に、逞しい肉楔を埋め込まれた胎内が収斂する。
きゅうぅぅっ……と切なげに疼くその場所を、アルフレッドは何度も攻め立てた。ぐぷぐぷと音を立てながら抽送が行われると、水っぽい音が頭の中に響いていくのがわかる。
「ッは、あっ……そ、んなッ……激しく、し、ないで」
「それは……難しい」
ほんの少し、困ったような声が頭上から降り注ぐ。
その声につられてリアレインが視線を上げると、普段は言葉数も少なく、さほど表情にも変化がない彼の顔が、赤く上気していた。
(感じて、くれてる……旦那様が、わたしで気持ちよくなってくれているんだ……)
いきなり膝の上に座らされ、服を脱がされたときは、一体なんの拷問かと思った。
煌々と灯をつけたままで向かいあい交わるという経験は、彼の妻となってから一度もなかったのだ。
「んっ、んぁ、アルフレッド、さま」
「ん……」
上下に揺さぶられ、まろい乳房が跳ねる。汗ばんだ体を密着させて抱き合ったまま、二人はどちらともなしに唇を重ね合わせた。
「んぅ……ふ、む……ぁっ」
上唇を舐められ、熱い舌はリアレインの歯列をなぞる。唾液を絡ませた先端が蛇のように動いて、彼女の舌を追ってきた。
「ぁ、んんっ……ちゅ、ァあむ……ふぁっ、あ……」
ちゅぷちゅぷと水音を立てながら、アルフレッドはリアレインの咥内を蹂躙する。甘く濃厚なくちづけを繰り返されているうちに、リアレインの頭はじんわりと痺れだし、恍惚とした気分が胸の奥から湧き上がってくるのがわかった。
「旦那様……あ、アルフレッド、さま」
「うん……?」
「お腹、が。なんだか――苦しくて」
くちづけから開放されたリアレインは、ふ、と息を吐くと、金色の髪を揺らして目を細めた。苦しい、と告げるとアルフレッドがわずかに表情を曇らせるが、痛いわけではないと付け足す。
「どこが苦しい? 気分が悪いのか?」
「ここ、です。旦那様の……が、奥まで、入ってて」
とん、と、自分の腹部を押さえたリアレインは、目許を赤く染めてそう告げた。
座ったまま向き合った形で抱き合うと、普段よりも奥の方まで彼を感じることができる。
そう告げると、アルフレッドも同じように目を細め、かぷりとリアレインの鼻先に歯を立てた。
「ぅあっ……」
「あまり、可愛いことを言ってくれるな。止められなくなる」
「えっ……ァあっ、ン、ああっ!」
艶めいた声でそう告げられた瞬間に、抽送がより激しさを増した。
とろとろと蜜を湛える秘処に突き立てられた肉棒が、切なく収斂を繰り返す媚肉を何度も穿つ。
「あぁっ……は、ァ……! やっ、もぉっ……」
背中に腕を回され、きつく抱きしめられながら、リアレインはただ彼の膝の上で声を上げるしかできない。
戯れに乳房に触れられ、勃ち上がった蕾を吸われるともうだめで、下腹部の刺激とはまた別の快楽が体じゅうを走り抜けていくようだった。
しかも、その間にも抽送は続けられる。
丸い先端が、ずぶずぶと奥を貫き、秘された扉をこじ開けようとして何度もキスを繰り返してきた。
「ァあ、ふ、奥ッ……あぁっ……奥、だめです」
「だめ? お前は、とても感じているように見えるが――」
だめなのか?
そう囁かれると、子宮の辺りがじん……と疼くのがわかった。
アルフレッドの落ち着いて聞きやすい声は大好きだったが、情事の際は彼の声で乱されてしまうことだって少なくない。
それに、低く静かな声音で囁かれてしまうと、彼の言葉になんでも従いそうになってしまう。
「……だめ?」
念を押すようにもう一度尋ねられて、今度はそれを否定できなかった。
「だめじゃ……ない、です。でも、その……あまり激しくされると、こ、声が」
こぼれ落ちてしまうはしたない声を、抑えることができない。
顔を真っ赤にさせたリアレインがそう呟くと、アルフレッドは彼女の額にそっとくちづけを落とした。
「それは、心配ない。俺はもっとお前の声が聞きたいのだから」
「え――あっ、あぁ……ッ!」
ズンッ、と一層重い衝撃が、リアレインの体を下から突き上げてきた。
そうされると、繋がった場所から淫蜜がトロトロとこぼれ落ちてくる。更にそれを攪拌されるような動きをされ、部屋の中には耳を塞ぎたくなるような水音が響き渡った。
「あぁっ……は、ァんっ……! あ、あっ」
「そう。よく啼いて、俺にもっと――もっと、声を」
普段は言葉数が少ないアルフレッドが、情事の時は少しだけ饒舌になる。
リアレインはそれがとても好きだったし、普段聞けないような彼の言葉が聞けるのは、素直に嬉しかった。
だが、そういう時の彼は、往々にして少し意地悪だった。
「あっ、あ、やぁっ」
深い場所を先端で何度も擦られ、肉楔は弱い場所を探り当てながら容赦なく突き上げてくる。
溢れ出そうとする快楽の奔流に耐えようと、リアレインはアルフレッドの胸に縋りついた。
「顔を、あげて」
命じられて、逆らうことはできない。
言われるがままに顔を上げたリアレインの唇を、アルフレッドはぱっくりと食べてしまった。キスというよりも、激しいそれは捕食に似ている――このまま、彼に食べられてしまうのもいいかもしれないと思うほど、そのくちづけは甘く心地が良い。
「ぁく、んっ……んぅ、う」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて唇を吸われながら、リアレインはうっとりと目を閉じた。繰り返し与えられる刺激が、徐々に彼女を絶頂の極みに追い込んでいく。
「ァ――ふ、ぅうっ……ン、ん、うっ……あっ、ァ、旦那様っ……」
「……リアレイン」
掠れた声が、普段より熱を帯びている。
律動が激しさを増す瞬間に見た、彼の灰色の瞳は、明らかな情欲の色でリアレインを求めていた。
「ぁあっ……! やっ、も、アルフレッドさま」
ぐぷぐぷと何度も弱い場所を擦られ、ぞわりとした感覚がリアレインの背筋を駆け上がっていった。
何度も、彼の手によってもたらされてきた法悦――頭の中が真っ白に塗りつぶされる感覚を予感して、リアレインは細い背を反らした。
「ぁふッ、あ、あっ」
「リア――お前を」
少しうわずったアルフレッドの声が、鼓膜に注ぎ込まれる。
それと共に胎内で爆ぜた熱を感じながら、リアレインもまた快楽の階を上りつめたのだった。
(このあとは製品版でお楽しみください)