プロローグ
初春を迎えて、晴天になるとたっぷりの陽光が『門井カフェ』の店内を明るくしてくれる。
近頃は、昼になると陽ざしとともに気温もぐっと上がり始める。
午前中、カフェにはまだ人がおらず、静かなジャズが流れているだけだ。
突き抜けるような青い空を窓から一瞬だけ見ると、門井(かどい)華(はな)はオープンしたばかりの門井カフェのキッチンに逃げるように退散していた。
キッチン入り口横にあるカウンターからは、夫の門井(かどい)新(あらた)が戻れとばかりに華を見つめてくる。
コーヒーを淹れたりケーキを用意したりするところだが、ふたりにとっては少し違う目的のために使われることも多い。
「ん……んんっ……」
膣の中には夫の新から寝起きに仕込まれた遠隔操作式のローターが、ずぶずぶと入っていて、さっきからじわじわと追い詰められている。
「んっ……はぁ……」
こんな声を漏らしていては店の中を歩けないというのに、新は、
「ちょっといいだろ? いつもと違うことしたそうだから」
と言って、するんとローターを挿入してしまったのだ。
寝起きで無防備だった華の下着を脱がすなど簡単だったろうし、いつも朝は新とキスをしたり身体を触れあったりしているから、てっきり今日もそうだと思っていた。
(お客さん、来ちゃう。とって、新……)
目で訴えても、新は知らん顔でおいでと手招きするだけだ。
じわじわと動いているローターの振動を感じ、もじもじしながら、カウンターに逃げるように滑り込むと、新がくすっと笑った。
「逃げることないだろ」
「だって、こんなことできない」
「じゃあ、隣にいろよ」
そう言うなり、ローターの振動が一気に激しくなる。
「ふあっ!」
いきなりのことでしゃがみ込むと、新の大きな手の中にコントローラーを見つけて取り上げようとする。すると、新は「だめだろ」と言ってそのまま華を抱きかかえる。
幸いなことに客はおらず、新と不自然にくっついていても違和感はない。
けれど、いつ人がくるか分からないし、膣の異物を取り出すためにトイレにだって行かないといけない。
新が素直に取り出して良いと言うとは思えないし、このまま仕事なんてことだってありそうだ。
「おきゃくさん……」
「腰支えるから」
そう言われた途端に、履いていたジーンズを脱がされて蜜芽を摘ままれる。
「あっああっ!」
「そんな声だして。もう店は開店してるぞ?」
「あらた……」
物欲しげに見つめてしまうと、腹の中でローターが動きだす。
機械音が、静かなジャズが流れるだけの店内に淫らに響いてきて、明らかにおかしいと分かるほどになる。
膨らみの先端がツンと立ち上がってしまい、ブラと擦れて勝手に蜜が溢れだす。
こんな焦れた状態で仕事をしたら、頭の中が新でいっぱいになって失敗しそうだ。
新が後ろから覆いかぶさってくると、エプロン越しに先端を摘まんだ。
「あっあんっ!」
「今日はこのまま入れておこうか。物足りないと思ったら、俺の隣においで」
「だ、だめ。今だってフロアに聞こえてる」
「じゃあ、ちょっとフロアの音量あげようか。それから無理もさせない」
腹の奥のローターが途端に静かになっていく。それと同時に華は物足りない思いでいっぱいになって新を見つめた。新は分かっているとばかりに、露わになっている蜜壺に指を突き入れてくる。
「ふあんっ!」
蜜でたっぷりと濡れたそこを掻き混ぜられると、カフェとは思えないはしたない水音がフロアに広がる。
くちゅくちゅ、くちゅくちゅ、と華の悦びのままに音が奏でられていく。
新の長い指先はぬっぷりと第一関節まで入り込み、内壁を丁寧に擦ったり、掻き混ぜたりを繰り返した。
指が二本に増やされると、さすがに華もはっとして新を見つめる。
「仕事中……。人が来たら」
「開店と同時に来たことないだろ?」
「でも……」
ときどき気まぐれに人は来る。カウンターでこんなことをしていたら、入って来た客だって驚くだろう。
華の困惑をよそに、ローターを咥え込みながら指でめちゃくちゃにされていると、ドアがカランとベルを鳴らして開いた。
新がすっと身体を離して、脱がしたジーンズや下着を元に戻す。
「いらっしゃいませ。空いてる席にどうぞ」
息を乱れさせる華をよそに、新はにこやかに応対し、突き入れていた指を洗い流す。
けれどローターは膣の中だ。
「華。メニュー聞いてきて」
「は、はい」
よたつきながらカウンターから出ると、蜜がじわじわと溢れだしているのを感じる。
中途半端な状態のせいで、お腹の奥がジンジンしてたまらない。
カウンターから遠い窓際に座るサラリーマンを見ると、どきっと胸を鳴らしてしまう。
こんな痴態がバレたら、店に悪い噂が立つ。
それに、新以外の男の人に変な声を聞かれたくない。ずっと追いかけてきた新に他の男性に色目を使っているなんて勘違いされたら大変だ。
「ご注文はお決まりですか」
腹の中で静かに蠢くローターを感じると、なぜか新から後ろで見張られているような錯覚を起こす。しっかりしないと新に嫌われそうで華は努めて笑みを見せた。
「こちらのモーニングセットがおすすめです」
そう言った刹那、腹の奥のローターが大きく蠢いた。
「……っ!」
サラリーマンも音が聞こえているのか、辺りをきょろきょろしている。
(このままじゃ、知らない人の前で……イカされちゃう)
新の性格は良く分かっている。
華が困ったり戸惑ったりしているのを楽しむのが好きなのだ。そして、華もこの状況が嫌いじゃない。むしろ、新からの『ご命令』を心の奥では楽しんでいた。
この後にはご褒美が待っていることを知っていて素直に応じ、新の悪い癖を助長させている。
「メニューがお決まりでなければ――」
「あ、じゃあ、モーニングセットでコーヒー」
「かしこまりました」
頭を下げると、逃げるように華は退散してカウンターの中にいる新の横に立った。
そしてもじもじしながら、呟いた。
「今すぐ、新の指で最後までしてください」
「良い子だね。でも、仕事があるだろ?」
「はい……」
そう言われても、身体の奥が熱くてたまらない。
「じゃあ、あの客が帰ったらね」
華は恍惚の表情を浮かべてしまう。
ちらりと新の指を見れば、長く細く、想像するだけでもたまらない。
「華。今日はこのプレイで遊ぼうか」
新からの要望に華はこくんと頷いていた。
(この続きは製品版でお楽しみください)