今は邸に拘束されて、三日目だろうか。
ガウンをはだけさせて寝転がると、窓の外はすでに陽が高く上がっていた。
(ああ、お昼だわ)
少し軋む身体を起こして、メイドが用意してくれた紅茶とサンドウィッチを口に含む。
汗ばんだ身体をなんとかしたいと思うと、ノックもなしにドアがぎっと開く。
「おはようございます、アイリーン」
「おはよう、クリフ。昨夜は遅かったのに、変わらず元気ね」
体位を様々変えて交ざり合ったというのに、クリフ=パーヴィスは疲労の色さえ見せずににこりと微笑み、ベッドに腰かけた。そして、アイリーンの少し湿った髪を撫でると、小さくため息を吐く。
そのまま、肩、胸、腰とそろそろと撫でられ、昨夜の官能が呼び覚まされそうで、アイリーンは潤んだ瞳でクリフを見つめた。
「今はまだ朝食を食べているのよ」
「構わないでしょう?」
「汗も酷いわ」
「だったら、バスルームで。綺麗に洗い流してあげますよ。汗も汚れも」
するすると指先が身体を這うとアイリーンはびくっと身体を震わせて頬を染めた。
持っていたサンドウィッチをぽとっと皿に落とし、じわっと広がる蜜を感じて、どくんと胸を鳴らせる。
(夜となく昼となく抱くのが、彼の研究なんて。都合が良いわ。身体の相性は悪くないし、とてもよくしてくれるし)
うっとり彼を見つめると、そのままベッドに押し倒されて、口づけられた。
「バス……ルームって……」
「キスだけですよ。そんな物欲し気な顔をして、ガウン一枚でいるあなたを、ほったらかしにできますか?」
「んんっ……ふぅぁ……」
口腔に入ってきたクリフの舌先に、アイリーンは己の舌を絡めていく。
首に腕を回すと舌先が縦横無尽に口の中を這いまわり、べろべろと舐められる。
「んんっ……身体を……あっふぁ……洗いたいわ……」
「たっぷりと楽しみましょう」
「当然よ」
すっと横抱きにされると、部屋に併設される浴室に連れていかれる。
朝方、メイドが湯あみはどうかと訊いてきたので、用意はさせてあった。
こんな形でふたりで入るとは、と蕩けそうな頭で考えていると、タイル張りの浴室に入ってすぐ、ガウンをさっと脱がされてしまった。
クリフもさっさとシャツやスラックスを脱ぎ払うと、少しぬるくなった湯の中にふたりで入る。
先に足を入れたクリフに抱きかかえられる形で、彼の胸の中にアイリーンは収まった。
そのまま彼の指先がいたずらに膨らみを弄り出すと、思わず声が溢れた。
「あっ……」
ひくんと身体をひくつかせると、クリフの指先が尖る先端を器用に捏ね回してくる。
ピンク色になったそこをコリコリと弄られて、腰が自然と揺らめいてしまう。それだけに止まらず、反対の指先がすっと腹を撫で下りていき、茂みを掻き分けて割れ目を弄りだした。
その刺激は何度受けても甘く痺れて、アイリーンはいやいやと首を振って切なく小さな喘ぎを漏らしてしまう。
すると、クリフは膨らみも鷲掴みにして強引に胸を揉みしだいた。
先端を圧し潰し、同時に、反対の手で蜜芽を見つけだして摘まんでくる。
「あんっ……そこっ……同時なんてずるいわっ」
「こうしないと、喜んでくれないでしょう?」
「分かっているじゃない。昨日、お願いしたものね」
「あなたという人は、単なる未亡人ではありませんね。調べ通りの人です」
「いや?」
「いいえ。むしろ、その方が一層研究をしたくなりますよ。あなたの身体も、あなたのことも」
話していたと思ったら、いきなりつぷっと指を挿入されてアイリーンは背を仰け反らせる。
そのままじゅぷじゅぷと抜き差しされて、思わずバスタブの縁を掴んでいた。
「い、いきなりなんてっ」
クリフを振り返ると、にこやかな笑みに合わせて薄っすらと額に汗を滲ませる姿が映った。思った以上に色気を感じて、その先の言葉が出ない。
こんな状況で彼に恋だの愛だのと、馬鹿なことを考えいるなんて信じられない。
それに、彼は自分をそんな対象として見ていないのは明らかだ。
エヴァンスが胸の奥で未だに居座り、前に進むことができないでいる。
「そんな風に慌てる姿を見せられると、もっと意地悪をしたくなりますよ。研究としてね」
そう言うなり、彼が蜜壺を強引に掻き混ぜてくる。
身体の奥から疼いて、アイリーンは無意識にいやらしく自分の胸を揉んでいた。
「クリフのが欲しいのっ」
「駄目です」
「だって、昨日だって……」
水音だけが響き渡る浴室に、アイリーンは淫らに腰を揺らしクリフにせがんだ。
すると、今度は胸を弄っていた手が花芽を潰す。
「ひっあっ!」
「あなたも、ここは弱いのですね」
「知っているなら……。もっと喜ぶことだって分かるでしょう?」
「ええ……。あなたは私の性器を咥え込んだ時が一番幸せそうです」
熱の籠らない言葉に、アイリーンはふるっと身体を震わせて「そうよ」と頷いていた。
自分の恥ずかしい所、痴態、そんな部分は関係ない。
すでにそんなものはどこかに捨て去って生きてきたのだ。
男の欲望を内包した瞬間に何よりも幸せに満ち、全てを忘れる。
更に、熱を体内に受けた瞬間は最高の幸せと背徳感に満ちて、しばらくは放心状態になれる。だから、早く貫いてほしいのに。
「こうして焦らすということだって、大事なものなのです。それから……」
クリフは蜜壺から指を引き抜くと、脱ぎ捨てた衣服の中から小瓶を取り出し、アイリーンに見せた。
「これを飲んでください」
茶色の小瓶に思わず顔を引きつらせるが、クリフは何も説明をしてくれない。
アイリーンは色々なことを経験しているせいか、このまま殺されることだってあり得るかもしれないと、一気に身体の熱が冷めていく。
顔まで強張ると、クリフはくすっと笑って小瓶を開け、少し口に含んで飲んでみせた。
「ほら、害はない。単なる媚薬ですよ」
「媚薬……?」
「さあ、飲んだらどうなるか、教えてください」
とろんとした目つきのクリフに言われるがまま、小瓶を受け取り一気に飲み干すと、頭の中がぼんやりとして、身体中の熱がまた呼び覚まされたように熱くなった。
しかも、子宮が疼くようにじんじんして、蜜口からはトロトロと溢れるように蜜が出る。
「あ……これが……、媚薬」
「そうです。互いに飲みましたからね。私も、身体がいつもと違う反応をしています」
彼に後ろから抱きしめられた瞬間、剛直が背中をつつく。
しかも、いつもよりそそり立っているように感じるそれに、ひくんひくんと何度も突かれる。
その行為に胸が鳴って、アイリーンは浴槽から立ち上がると、壁に手を突いて尻を突き出した。
そして潤んだ瞳でクリフを見つめるとくすっと頬を緩める。
「我慢できないでしょう?」
突き出した尻を少し振ってみせると、すぐに腰を支えられた。
熱が蜜口に当たるとすぐに突き上げるように貫かれる。
「ひあっ……一気に……すごぃ……。奥まで……!」
「当然ですよ。快感を存分に味わってもらわないといけませんからね」
襞が絡むように猛りに絡み、肉壁を擦られてアイリーンは何度も仰け反る。
子宮の入り口を何度も突かれると、隘路がきゅっと収縮して猛りを咥え始めていた。
媚薬の効果のせいなのか、彼の男根はいつも以上に熱く、肌と肌が擦れる様が直に感じとれる。
体中が熱に浮かされているようにふわふわして、ぬぷぬぷと抜き差しされると愛おしくて仕方なくなる。
「もっと奥がいいわっ!」
「私だってそのつもりです」
「私の身体なんて気にしないで、壊してしまってもいいの」
「駄目ですよ。アイリーン……。うっ……くぅ……」
奥をずんずんと貫かれる度に、彼の猛りが膨張して、最奥を突くのが難しくなる。
しかし強引に隘路を開き、子宮口を攻めるように突き上げられた。
同時に、身体の中の熱が爆発しそうになって、アイリーンは声を荒げて嬌声を上げた。
「あっあっあっ! いっぱい頂戴!」
「奥に……たっぷりと……うっ……絞められて……」
「おかしくなりそうだわっ!」
アイリーンがそう叫んだ刹那、腹の中にたっぷりと白濁が飛散する。
クリフは息を荒くしながら、男根を抜かずにしばらくじっとして精を注ぎ続けている。
どくどくと熱いそれが腹の奥に吸い込まれていくと、アイリーンはぶるっと震えて余計に身体中がひくついた。
(また欲しくなってるわ。媚薬って、凄いのね)
アイリーンは顔だけ後ろを向くと、必死な形相のクリフにうっとりと呟いた。
「もっと欲しいわ」
「なんていけない人でしょう。でも、だからこそ、私はあなたを選んだ。この成果が出ることを期待します」
「成果……って?」
アイリーンが訊くと、彼は苦悶の表情を浮かべ、話を逸らすように強引に口づけてきた。
甘い吐息が漏れ、次第に腹の奥が熱を帯びると、クリフもまだ足りないというようにアイリーンを前に向かせて、強引に両足を持ち上げる。
タイルの壁に強引に押し付けられる恰好になると、空中に浮かんだ状態で抽送が再開される。
この快楽は永遠ではない。
一週間だけ、クリフの邸に入ればよいと言われていた。
しかし、三日目にして彼との繋がりに離れられないような、危険なものを感じてしまう。
でも、そんな時に限って思い出すのはエヴァンスのこと、そして娼館でのおぞましい出来事だ。
(どうして、愛されることはないのかしら)
そんなアイリーンのざわめきだった心を掻き消すように、抽送は激しくなっていった。
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