書籍情報

初恋ピアノ協奏曲~奥手な王子と秘蜜のレッスン~【書下ろし・イラスト10枚入り】

初恋ピアノ協奏曲~奥手な王子と秘蜜のレッスン~【書下ろし・イラスト10枚入り】

著者:御子柴くれは

イラスト:龍 胡伯

発売年月日:2016年09月30日

定価:990円(税込)

「ねえっ……わ、私っ……あなた、を……感じたい、の……!」 
サン・マロ国の王女・オデットは、ナゼール国の王子・パトリックと強引に婚約させられ、婚姻の習わしとして愛を奏でる演奏会を開くことに。三回にわたるピアノの演奏会、一回目が終わると不満を抱いたパトリックによって彼の弟・セドリックが講師につけられる。幼い頃から競っていたセドリックとの練習を喜ぶも、次第に心惹かれていく自分に気がつく。やがて夜想曲に合わせて始まった夜の指導が、二人を禁断の関係へと導き……!

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登場人物

◆セドリック・ラ・ファイエット
ナゼール国の第二王子でパトリックの弟。白に近いプラチナの髪に、右目がブルー、左目がグリーンのオッドアイ。穏やかな性格で誰に対しても敬語を使い、恋愛には奥手である。ピアノの天才児と謳われる音楽の申し子で、兄の命令でオデットにピアノを教えることに。
◆オデット・レ・ミュッセ
サン・マロ国の第一王女。蜂蜜色の髪にヘーゼルの瞳をもつ。ナゼール国の第一王子、パトリックと婚約しているが、本人は乗り気ではない。王女としての覚悟はあるものも、頑固で一途。何よりもピアノが好きで、サン・マロ国随一の演奏者である才女。

立ち読み

「本当なのっ……私のピアノはあなたがいて、初めて本物の曲になれるのだわ……!」
「オデット――」
それは落胆するような声に聞こえた。
腰に回されていたオデットの腕が、セドリックの手によってそっと解かれた。それだけで、オデットの心は失望の色に染まっていく。
しかしこちらを向き直ったセドリックの顔は、まるで果敢に己の感情を押し殺しているように、ひどく悲痛に歪んでいた。
だからオデットは、現実を目の当たりにしてしまう。
「でも……私は明日、パトリックのために、またピアノを弾くのだわ」
「知っています」
真夜中の大聖堂では、月の光だけが不器用な男女を照らし出していた。
突然、セドリックがぎこちない動作で、ぎゅっとオデットの手を握った。それぐらいであれば許される、許してほしいとでもいうように。
驚きに一瞬だけ怯んでしまったオデットだったが、すぐにその温もりに安心して握り返す。
ピアノで鍛えられたセドリックの手は、思った以上にしなやかだった。
セドリックの顔が、わずかにほころんだような気がした。
オデットは勇気を出して、セドリックの真摯なオッドアイを見つめる。
「ねえ、お願い。お嫁に行くまでの、最後の時だけでいいから……どうかセドリックと一緒にいさせてちょうだい」
オデットの切実な訴えに、しかしセドリックは懸命に首を横に振る。
それが意味することが、これまでのような微妙な距離を空けたピアノの練習などではなく、たったひとつの行為を指していたからだ。
「いけません! もしオデットが、既に純潔を散らしていたと兄さんが知ったら――」
「わかってるわ!」
オデットの方がセドリックより声を荒らげ、いやいやするように強く首を振る。
「もしもの話なんて聞きたくないっ……私、あなたが好きよ、セドリック!」
オデットは瞳を潤ませた。
ようやく愛する男性に、ピアノ以外で率直な気持ちを伝えられたのだ。どういう結果になろうとも、もう後悔はない。
セドリックは苦しげに眉根を寄せ続けていたが、ついに最後の堤防が崩れてしまったのだろう――やがて諦めたようにゆっくりと言葉を継いだ。
「僕も……君が好きです、オデット」
「セドリック……!」
思わずその胸に跳び込むオデットを、セドリックは強く抱き留めた。
「ずっと、ずっと君が好きでしたっ……!」
セドリックの声は、オデットよりも泣きそうに揺れている。
セドリックの温もりをじかに感じながら、オデットは切なすぎて心臓が壊れてしまうような気がした。
ピアノの練習中、セドリックに触れたいと願ってやまなかったから、夢が現実になったことがまだ信じられず、今はただただ離れないよう、彼を抱き締め返していた。
ふわりと香るセドリックの整髪料が、オデットの鼻孔をくすぐる。彼の汗と混じった濃密な匂いに、思わずくらくらとした。
オデットは、もっとセドリックを近くに感じたいと思った。
互いの顔が見えるよう、少しだけ身体を離すと、セドリックも同じ衝動でオデットを見つめていることがわかったから、オデットは思いきってそれを口にした。
「セドリック、キスして」
「……っ」
それは――と言いかけたセドリックの唇を、それ以上は言わせないとばかりにオデットは、己の細い指先でそっとなぞった。
ぞくりと震えが走ったのはセドリックだったのか、それとも自分自身だったのか。
セドリックがその手を優しくつかみ、自身の方へと引き寄せる。
そうしてふたりは、口づけを交わした。
触れ合うだけの柔らかいキスは、オデットの心を締め付けた。
初めてのキスがパトリックに奪われたことを、思い出してしまったのだ。
オデットはセドリックと甘く唇を重ねながら、静かに涙をこぼす。
冷たい水滴の感触が頬に当たったのか、セドリックが唇を離して聞いてきた。
「オデット、どうして泣くのです?」
「なんでもないわ」
とても言えなかった。
だけどセドリックも譲らない。
「何でもなくありません。好きな人の涙は見たくない」
初めて強く主張され、オデットはためらいがちに、パトリックが今、サン・マロ国に来ていることを告げた。
「兄さんが――? では、もしかして……」
先を紡げずにうつむいてしまったオデットを気遣うように、セドリックがそっと彼女の顔をのぞき込む。
「オデット、こっちを向いてください」
「……?」
居たたまれない気持ちで顔を上げると、セドリックが再び口づけてくる。
先ほどと同じぐらい優しかったが、今度はずっと深く、長い。
「んっ……ふぅ……」
そして唐突に唇を割って舌を入れられ、オデットは苦しげに息継ぎするしかない。
「兄さんは、こんなふうにしましたか?」
歯列をなぞられ、口腔を探られながら、セドリックが器用に聞いてきた。
「う、んんっ……!」
こんな淫らなキスは知らないと、オデットは必死に否定する。
「ではオデット、君のファーストキスは僕ですよ」
そう言ってセドリックが笑い、さらに深く舌を絡めてくる。
「ふぁ……うっ……ん……」
ねっとりと互いの唾液が混じり合い、口の端からつうっと糸を引く。
鼓動が早くなるにつれ、呼吸が浅くなり、オデットははあはあと荒い息を吐いた。
下肢からはなぜか、心地のよい痺れが突き抜ける。
やがてセドリックの唇は、オデットの唇から顎のラインを辿り、頬、鼻、額へと移ると、最後にはまなじりに残るしずくを吸い取ってくれた。
オデットがくすぐったさに吐息を漏らすと、セドリックが微笑む。
いつもみたいに、なだめるように頭をなでると、いとおしそうに蜂蜜色の髪を一房すくい、そこにもキスを落とした。
パトリックがオデットにしてきた何もかもを、セドリックによって上書きされたようで自然、オデットの胸はきゅっと痛む。
でも、この痛みは心地よかった。
心臓の鼓動はもう限界まで高鳴っている。
もっと、もっとセドリックを近くに感じたい。
だからオデットは、別の〝初めて〟を彼に要求した。
「セドリック、私を抱いて」
「――!?」
セドリックは驚きのあまり、ブルーとグリーンの瞳を大きくみはった。
「お願いよ……私の初めては、あなたがいいわ」
強引なパトリックの姿を思い出し、オデットの目は再び潤む。
パトリックのことが嫌いなわけではない。いずれ、結婚もする。
けれどセドリックを愛していたから、そんな結末が、無性にやりきれないのだ。
それを上回る、確かなものが欲しい――。
泣き顔でも懸命に笑ってみせるオデットの姿があまりに痛々しかったのか、セドリックは再び彼女に口づけた。
「はっ……んぅ……」
セドリックのキスの仕方に慣れたオデットは、彼のリズムに合わせて角度を変えていく。
夢中になって唇をむさぼり合い、激情に似た興奮が、互いの心を震わせる。
けれどいつまでもキスをしていることで、逆に止めどない焦れが生じてしまう。
もどかしくなったオデットはセドリックの手を取ると、自ら疼いていた胸元へと導いた。
セドリックは最初、ためらいがちに、しかしすぐに柔肌に手を這わせていった。
「ああ……っ」
ドレスの上から胸の膨らみをなでられ、オデットが甘く喘ぐ。
その間にもキスの嵐がやむことはない。
呼吸の浅さから、息継ぎのために、何度も何度もついばむような口づけが繰り返された。
やがてオデットの背に回されたセドリックの手により、ドレスのホックが外され、乳房があらわになる。
ひやりとした夜気も一瞬のこと、すぐにセドリックの温かな腕に抱き留められた。
「セドリック……セドリック……っ」
セドリックが唇を離したので、ひたすらに名前を呼ぶと、今度は膨らんだ先端に舌があてられる。
声を出す間もなく、セドリックに先端をなめられてしまった。
しごくように吸い上げられ、背筋を駆け抜ける痺れと共に、次第に硬くとがっていく。
ぞくりとした初めての感覚に、思わず背中が弓なりに反った。
しかしセドリックに優しく胸をもみしだかれ、硬くしこった赤いつぼみをほぐされていくと、開花していくみたいに、気持ちがよくなっていくのがわかった。
甘ったるい愛撫に、ゆるゆると身体を弛緩させると、セドリックが情欲を織り交ぜた声で切なげにつぶやく。
「オデット……ずっと、こうして君に触れたかった……」
セドリックの吐息がかかるたび、下腹部の辺りが熱くて仕方がない。
その理由がオデットにはわからず、もどかしげに太ももをすり合わせるだけだ。
「セドリックっ……私も、私もよ……!」
セドリックはそのままオデットを抱え、鍵盤の上に座らせた。
瞬間、不協和音が大聖堂に反響したが、ふたりにとってそれは、なぜか扇情的な響きにしか聞こえない。
セドリックは立ったまま、オデットはピアノに腰かけているという傍から見れば奇妙な体勢で、ふたりは再び愛し合い始めた。
セドリックは前触れなく、オデットに覆い被さってくる。
首筋に吸い付かれると、オデットの口からは、さらに甘やかな声が漏れた。
「セドリックっ……胸が、胸がっ……苦しい、の」
「僕も同じですよ、オデット」
ただただセドリックを強く感じたいということ以外、オデットの思考はまったく働いてくれなかった。
セドリックの言葉でさえ、どこか遠くから聞こえるようだ。
そこで初めてオデットは、音でも言葉でもなく、セドリック自身が欲しいのだということに気づく。
純潔の姫としては、あるまじき浅ましい欲望なのかもしれない。
それでもオデットに、この熱情を止めるすべなど思い至るはずもなく、そうしている間にも、セドリックの手は胸から腰、腰から太ももへと移り、ついに狂おしいほどに疼いていた足の間に触れる。
きゅんとした感覚が、下肢から脳髄まで一気に駆け上がっていく。
「息が……息が、できないっ……」
「今だけです」
下着をずらされ、これまで一度も他人に見せたことのない、秘められたひだをなでられる。
熱くて仕方なかった箇所では既に、じっとりと湿り気を帯びた蜜がにじみ出ていることが、自分でもわかった。
敏感な花芯をそっと押し上げられ、ぞくぞくと走る快感に、オデットは乱れる。
「はあっ……そ、そこは……ああ、あ――!」
淫猥な水音がしたことに羞恥を覚える暇もなく、セドリックの長い指先が、蜜壺の中をゆっくりと暴いていく。
たまらずに、オデットは嬌声を上げた。
「好き、好きっ……セドリック……!」
「僕も好きですよ、オデット」
最初は秘所を確認するような手付きで触れられていただけであったが、次第に最奥に向かって出し入れを繰り返されるようになった。
そのたびにオデットの意思に関わらず、蜜孔からはどぷりと愛液が溢れ出てくる。
乙女の大事な場所が、早く男根を受け入れたいとでも言うように、ひくつくのを感じる。それに応えるように、セドリックは丁寧な愛撫をさらに深くしていった。
オデットはセドリックの首に腕を回し、与えられる快感に、ただもだえるしかない。
「あ、あ……ああっ……」
臀部の方にまでしたたったオデットの蜜が、ドレスをしとどに濡らしていく。
「はぁ……お、お願いっ、セドリック――」
焦らされている気さえして、もう耐えられないとばかりに、オデットは泣きそうな目でセドリックに懇願した。
たとえクロエに、それが姫としてどんなに恥ずかしいことであるかと叱責されようが、今のオデットにはまったく構わない。
それだけでは足りないのだと、下肢が疼いてたまらないのだ。
早く、早く自分を穿って欲しい。全てを満たして欲しい。
既に病の域である。
セドリックにしか治せない厄介な病に、オデットは罹(かか)ってしまった。
オデットがそのような状態になるまで、セドリックも我慢していたのであろうか。
快感からなんとか意識を引き戻したオデットの瞳に、彼の苦しげに歪められた顔が映る。
そして乞われるがまま、セドリックは自身のバックルに手をかけた。
かちゃかちゃという金属音に、いっそう期待が強まるが、下ろされたズボンから現れたセドリックのモノのあまりの大きさに、オデットはこくりと喉を鳴らしてしまう。
さらにセドリックのそれは既に隆起しており、はちきれんばかりの膨らみを持っていたのだ。
「オデット……」
身体が寄せられ、そっと耳元で名をささやかれた瞬間、オデットの濡れそぼった秘所に、セドリックの熱源があてがわれた。
痛みを覚悟してきゅっとしがみつくオデットを、いとおしげに支えながら、セドリックが媚肉を割って押し入ってくる。
「ん、あっ……あああっ……!!」
オデットのまぶたの裏では、火花が散っていた。
あまりの圧迫感に呼吸すらままならなくなるも、セドリックからの愛ゆえに開かれた身体がそうさせるのか、限界まで引き伸ばされて受け入れているというのに、痛みはまるでない。
「ひっ……あぅ……ああっ……!」
代わりに、どうしようもない快感ばかりが与えられ、オデットの息は余計に乱されるばかりだ。
好きな人とつながるという行為が、こんなにも充足的なことだとは思わなかった。
「はあ、はっ……ふ……うぅ……んっ……」
セドリックの動きに合わせ、自然と喘ぎが漏れ出てしまう。
セドリックは片手でオデットの足を持ち上げ、反対の手でピアノに手をかけながら、腰を動かしていた。
最初は痛かった背中にあたる硬質な感触も、ほてったオデットにとっては突き上げられるたびに、快感を増す材料にしかならなかった。
何度も何度も、ふたりが交わるごとに、ピアノからは重厚な旋律が紡がれていく。
「セドリックっ……んあ……はぁ……あ、愛して、る?」
セドリックの先端でいちばん敏感な箇所をすられ、つい問わずにはいられなくなった。
「っ……オデット、はあ、はあ……あ、愛して、ます……!」
やや間を置いてからセドリックは答え、さらにオデットを揺さぶり続けた。
オデットの顔には、激しく動くセドリックの汗がいく粒も、彼の顎を伝って落ちてきていた。
その水滴に、あまりの情欲をそそられ、オデットは両手で彼の頬を挟んで引き寄せる。
自らセドリックに口づけると、瞬間、下肢ではセドリックのモノがどくりと脈打った。
「はあ……あ……オ、オデット……もう、僕はっ……」
「ええ……いいのっ……いいのよ……お願い、このまま……っ」
オデットの懇願に、困ったように眉を下げたセドリック。
これだけは聞き入れられないと、セドリックは即座に身体を引こうとしたが、しかし彼をどこにも行かせないようにするためか、オデットの腕と足が、腰に回されてしまう。
「ねえっ……わ、私っ……あなた、を……感じたい、の……!」
オデットも限界だった。
やがて絶頂を迎えたオデットの中は、セドリックを呑み込むように、きゅうっと蠕動運動を繰り返す。
その刺激に、ついにこらえきれなくなったセドリックが、そのまま熱を解放する。
身体の内側が愛する人の白濁に満たされ、オデットはその心地よい感覚に身を任せると、セドリックを抱き締めながら、うっとりと瞳を閉じた。
ふたりが奏でる協奏曲――これが、禁断の初恋の始まりだった。


(このあとは製品版でお楽しみください)

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