俺は夜風に涙と汗が散っていくのを感じながら、思いっきり喘いでいた。
「あぁ……っ!うっ!」
快感に潤んだ目で見上げると、上空の月がさらにまがまがしく輝いて見えた。
日常のすべてから解放され、ただ彼が与えてくれる快感だけしか見えなくなる。
溢れ出す欲望に身を焦がし、彼にすべてを捧げる。
「甲斐さん!」
俺は夢中で彼の名を何度も呼んでいた。
そのうち彼の指がそこを宥めるようにほぐし息も絶え絶えになったとき、そこに硬い昂ぶりを感じた。
「入らないだろうが、力を抜いていろよ」
彼はそう言って俺の背中を優しく撫でる。
そして鋼のように硬い楔(くさび)をそっと突き入れてきた。
「あ!」
俺は思わず背中を仰け反らせて、反射的に逃げようとした。
だが、彼に引き戻される。
彼はそのまま俺の中に押し入りながら、反対の手で俺の衝撃で萎えたペニスを扱きだした。
「あ!うっ!やぁ!」
突き上げられ身体をすくませるとキュッとそこを扱かれる。
思わず喘いで身体を揺らすと、さらに奥へとねじ込まれる。
それを何度も繰り返されて、俺はその間中、悲鳴を上げ続けた。
最初の衝撃をやり過ごすと、思ったよりもすんなり俺の身体は彼を受け入れた。
痛いには痛かったが、それでも引き裂かれるような激痛はほんの一瞬だけで、後はむず痒いような疼きがそこから生まれてくる。
慣らされたそこはそのうち彼の塊に慣れ、それが襞を擦って奥へ入っていくたびにその部分から痺れたような快感が湧き上がってくる。
中で彼を感じた。
硬い鋼のような彼の昂ぶりはますます強くなっていく。
「あ……っ!やぁ……!はぁ……っ!」
さんざん俺を喘がせて、彼はすべてを受け入れさせると、中が慣れるのを待つようにそのままジッと動くのをやめる。
そして、汗で濡れた俺の背中にゆっくりキスを繰り返した。
いったん萎えた俺のペニスは彼の手で扱かれて、再び力を漲(みなぎ)らせて張りつめてくる。
先端から雫が溢れ出し、ダラダラと漏れている。
絡み合う息、擦れる肌。そのすべてが俺を淫らにしていく。
ただの獣に変えていく。
炎がそんな俺たちを赤々と照らし出していた。
俺はそのうち焦れったくなってきた。貪欲に欲望を求めて身体は猛りだす。
そんな自分を俺はもてあまし始め、そっとねだるように尻を振った。
すると甲斐さんはギュッと腰を引く。
「嫌ぁだ!」
思わず喚く。
すると彼はもう一度中へ勢いよく突き入れる。
中は緩やかに開いて彼を呑み込んでいく。
彼がグンと力を漲らせるたびに、俺は無意識に尻を振っていた。
「あぁ……っ!」
「気持ちいいか?」
言葉では返せず頷くと、彼は俺の身体をそのままグイッと持ち上げた。
「甲斐さん!」
焦って止めようとしたが、彼の力には勝てず、そのまま彼の膝の上に持ち上げられてしまう。
そして中に入った物が自分の体重でさらに奥へと潜り込んでくる。
「やぁ!」
感極まって俺はすすり泣きだした。
「嫌ぁ……!もう、許してくれ!甲斐さん!」
「いい子だから、あと少しだけ我慢しような。もっと気持ちよくなるから」
甲斐さんは諭すようにそう言って、泣きじゃくる俺の顔を自分の方に向かせる。
そして、噛みつくようなキスをする。
俺は繋がったまま夢中で彼の肩に腕を回してしがみついた。
「あ……っ!はぁ……ん!やぁ……!」
涙と汗でグチャグチャだった。
泣きじゃくる俺にキスをしながら、彼は片手で俺のペニスを扱き、もう一方の手で胸の乳首を弄りだした。
乳首をつねられ、前を弄られる。
そのまま唇を重ね、身体中が彼に満たされていく。
どうしようもなく気持ちがよくて、おかしくなりそうだった。
俺は淫らに身体をくねらせ、彼の愛撫を全身で受けた。
俺のペニスからは彼の手を濡らして、雫が勢いよく噴き出した。
それは、炎の中へと飛んでいく。
俺はキスを交わしながらそれを目の端で見た。
自分の中にこんなにあさましい感情があるなんて思いもしなかった。
それでも、もう身体は止められない。
淫らに尻をくねらせて、中の彼を締めつけてしまう。
すると彼が低く呻いて眉をひそめる。
(痛い?)
と目で聞くと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
ブルーの瞳が鮮やかに揺れる。その瞳に赤い炎が映っている。
その瞳の中に俺もいた。
ゾクリと身体の芯から新たな快感が突き上げてくる。
今、放ったばかりだというのに、俺は再び猛りだしてくる。
もっと触ってほしい。もっと強く吸ってほしい。
欲望という快感が俺を淫らにしていく。
俺は噛みつかんばかりのキスを彼に返すと、我慢できなくなって自分で尻をそっと持ち上げ、そのまま彼の太ももに両手をついてゆっくりと身体を支える。
中の楔がズルズルと抜き出される。ギリギリまで引き出すと、今度はゆっくり腰を落とした。
楔が俺の中ヘグイッと入ってくる。
(あぁ……!)
あまりの気持ちのよさに俺は歓喜の声を上げた。
「直人、君はとても素敵だ」
甲斐さんは上ずった声で囁く。
「Je t’aime」
「甲斐さん!」
彼はいきなり俺の腰を掴んだ。そして力任せに俺の身体を乱暴に揺すり始めた。
「か、甲斐さん……やぁ!」
俺はそのまま彼に翻弄され続けた。
彼の楔が俺の中で暴れだす。
「はぁ……っ!あぁ……!やぁ!甲斐さん!」
身体がバラバラになるかと思うほど激しく揺すられた後、彼は俺の身体をギュッと抱き締めた。そして、低く岬いた瞬間、俺の中に勢いよく放ったのだった。
彼の熱い昂ぶりが俺の中に注ぎ込まれていく。
(あぁ……くる!)
それを身体の芯で感じて、俺はゆっくりと意識を手放した。
そんな俺の耳に彼の囁く声が聞こえてきた。
「Je t’aime」