「……悪い、羽里。久しぶりのセックスで我慢ができない。取りあえず一回、挿入(そうにゅう)させてくれ」
「……って……」
柳眉(りゅうび)を寄せて頼まれても、羽里としては困る。まだ、挿入する箇所(かしょ)は挿入するための何の準備もしていない。
「じゃ、じゃあ指で……っ」
慌(あわ)てて自身の指を挿入して入り口をほぐそうとすれば、水知の手によってそれは遮(さえぎ)られた。
「え……? 水知?」
「多分……大丈夫だから」
「って……っ、あ……っ!」
いきなり、勃起(ぼっき)した熱棒を羽里の奥へと押し込んでくる。
急に訪れた圧迫感に羽里は思わず吐息(といき)混(ま)じりの声を上げたが、予想していた痛みはなかったことに驚いた。
しかも、痺(しび)れるほどの快楽が圧倒的に体躯を貫いていて、大きく震えてしまう――無意識に、繋がった秘所(ひしょ)を締(し)め付けてしまった。
それでも腸壁(ちょうへき)を激しく擦(こす)って上下に蠢(うごめ)く内部の異物に、全神経が集中してしまう。
「な……んで……っ」
――痛く、ないのだろうか。
久しぶりのセックスなのに――何の準備もしないで、いきなり奥まで押し込まれて。
何も考えられないほどの快楽が、羽里の脳を支配している――
意識の全てが、繋がった秘所と突かれている最奥(さいおく)に向いている。
じんじんとしていて、疼(うず)いていて――最高に熱い。
「き……もち……い、い……っ」
「――だろうな」
激しく突かれ、つい口から漏らした言葉に、水知がシニカルに笑(え)む――その自信の意味も判らない。
いや、確かに水知はセックスは上手だが――こんなセックスをしただろうか?
(以前の……水知は……っ)
薄れる意識の中、快楽に支配されつつも脳の隅でぼんやり考える。
(もっと、静かなセックスだった……こんな、いきなり快楽を頂点まで高めようとするようなことは……)
――考えていれば、腰を掴まれ体躯を上に持ち上げられると、一気に深く腰を鎮めさせられた。
「あああ……っ」
「―――――っ」
快楽に、堪(たま)らなく羽里の果実が白い蜜を放射してしまう。同時に、羽里の最奥を侵し続けていた熱(ねつ)根(こん)の先端からも欲望の証(あかし)が溢れ出たのが判った。
「……あ……ふぅ……」
「――――確かに、手術台はやりにくいな」
水知の呟きに、思わず顔を上げた。
「……え?」
羽里はまだ息が整っていないが、水知はまるで疲れた様子もない。
考える間もなく、水知は羽里を手術台に押し倒した。
「……え? 水知……?」
「今度は、オ―ソドックスに正常位でやる」
「は?」
「言ったろ? 最初はさっさと挿入させてしまい申し訳なかった、と。次からはゆっくりと、羽里を何度もイかせてやるから」
「って、ちょ……っ、あ……っ」
驚く羽里だが、拒絶を示す前に水知がセックスを始めてしまう――今度は乳首や羽里の快楽に沿(そ)って愛撫をされ、再び快楽が羽里を包み込んでいった。
(あ―もう……)
――早々に、セックスだなんて。
羽里としては、水知がいない間のことを話したり、普通に心の交流をしたかったのだが……。
(でも――確かに)
愛撫に酔いつつ、思う。
(恋人同士なら……これが、正しい姿……かも……?)
羽里は、水知しか知らないから。〝世の中にいる、久しぶりに会った恋人同士が最初に行(おこな)うこと〟なんて知らないけれど。
(案外、セックスという人は多いかも知れない……)
そう思うことにして、羽里は水知から与えられる快楽に身も心もゆだねることにした。