書籍情報

淫靡な団欒Ⅱ【書下ろし】

淫靡な団欒Ⅱ【書下ろし】

著者:かのえなぎさ

イラスト:史堂 櫂

発売年月日:2015年03月06日

定価:990円(税込)

「悩みがあるなら、お兄さんが聞いてやる」廉の言葉からますます淫靡な関係が深くなっていく……。 製薬会社の社長・征司郎と秘書の高坂の関係に加わった征四郎の息子・英成は、高坂を独占できずにいる。 そんな時、はとこにあたる廉に、実の父と恋人を共有している微妙な三角関係を打ち明ける。 ところが、英成は出張先で廉とも淫靡な関係を持つようになる。 英成は高坂にも廉にも惹かれていき、征四郎を含め淫靡な団欒は続いていき……。

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登場人物

高坂 佳樹(こうさか よしき)
27歳。征司郎の私的な秘書。広い家の管理と、征司郎と英成の身の回りの世話をしている。次第に英成と親密な関係になりつつあり、恋人らしい振る舞いもするようになる。
黒岩 征司郎(くろいわ せいしろう)
46歳。製薬会社の創業者一族、現経営者。切れ者で、人を寄せつけないところがあるが、高坂と体の関係を持っているが、英成と高坂二人の関係を優先する配慮も見せている。
黒岩 英成(くろいわ ひでなり)
22歳。同族経営の製薬会社の御曹司。留学先から帰国してから、父親の征司郎と高坂の三人で暮らしている。会社内の新たな部署で廉と親交を深め、淫靡な関係を持つようになる。
榊 廉(さかき れん)
25歳。黒岩家の血筋で、英成とははとこ。受。黒岩製薬の有能な広報マン。陽性で人当たりがいい。英成のファーストキスの相手。英成とも積極的に肉体関係を結ぶ。

立ち読み

黒岩英成は、今にも暴れ出しそうな欲情を抑えながら、高坂佳樹の白く滑らかな肌にじっくりと手のひらを這わせる。
ベッドに引きずり込んだときはひんやりとしていた肌は、じわじわと熱を帯び、高坂自身の官能の高まりを知らせるように汗ばみ、呼吸が乱れつつあった。
まだ、快感は与えてやらない。心の中で呟いた英成は、高坂の引き締まった腰から腿にかけて執拗(しつよう)に撫でながら、触れる前から凝(しこ)って先端を尖らせた胸の突起に、ふっと息を吹きかけてやる。高坂がビクリと体を震わせ、短く声を洩らした。
「……なんの、つもりですか」
英成が首筋に鼻先を寄せたところで、とうとう高坂が問いかけてくる。英成は澄ました顔でとぼけた。
「何がだ?」
「いつもの……、あなたのやり方じゃない」
「いつもより丁寧に、お前に触っているつもりだ」
高坂の顔を覗き込み、髪を手荒く掻き上げる。普段は、感情がないような冷たい目をしている高坂だが、今は濡れたような艶と熱を帯びている。造りもののような整った顔立ちは、妖しい花が開花したと思わせる鮮やかさで英成の目を惹きつけ、さまざまな表情を浮かべさせたいという衝動を駆り立てる。
手のひらで包み込むように高坂の両頬を撫でると、心地よさそうに目が細められる。このまま思う様、濃厚なキスを与えたいところだが、形のよい唇を指先でなぞるだけにする。途端に高坂から睨まれた。
「だから、なんのつもりですか」
「ちょっとした、焦(じ)らしプレイ。あっ、俺に対するな。お前の肌に唇を這わせたいのを、ぐっと堪えて、触れる悦びを高めている」
高坂から思いきり冷めた視線を向けられたが、英成は気にしない。自身を焦(じ)らしていながら、実は高坂も焦らしていることになると、よくわかっているからだ。
撫で回したおかげで熱を帯びた高坂の肌に、ときおり悪戯(いたずら)に息を吹きかけると、それだけで感じやすい体は震え、悶えるように爪先がシーツの上を滑る。
英成は、静かにゆっくりと、高坂を淫らな獣へと変えていく。
両足を立てて開かせ、内腿をやや荒っぽい手つきで撫でてから、顔を寄せる。唇が触れるか触れないかのところで、吐息による愛撫を与える。
「んっ……」
小さく声を洩らした高坂が腰を揺らし、内腿を強張らせた。本人よりよほど素直な欲望が、両足の間で少しずつ形を変え、身を起こそうとしている。舌舐めずりした英成は、低く囁くような声で、五つ年上の恋人にせがんだ。
「――高坂、自分でしてみろよ。上手くできたら……しゃぶってやる」
わざと下卑(げび)た表現を使うと、高坂に睨みつけられた。英成は上目遣いでニヤリと笑い返してから、内腿に唇を押し当てる。
「高坂、早く……」
高坂の肌に唇で触れただけで、痺れるような法悦に襲われる。
高坂は、誘うような手つきで己の欲望に触れ、英成が見ている前で自慰を始めた。
「……あなたがどんどん変な性癖に目覚めているようで、旦那さまに申し訳ないんですが……」
弾む息遣いを誤魔化すように高坂が洩らす。英成は、内腿をべろりと舐め上げた。
「この状況で親父の話題を出すなんて、余裕だな」
肌にゆっくりと歯を立てると、高坂がわずかに体を強張らせる。もちろん本気で噛みつくはずもなく、あくまで甘噛みだ。その刺激を心地のいいものとして受け入れたらしく、吐息をこぼした高坂は、自慰を再開する。
英成はその光景をうかがい見ながら、高坂の肌をときおり強く吸い上げ、あからさまな愛撫の痕跡を残していく。いまだ、自分だけのものではない恋人に対する、ささやかな独占欲の主張だ。
「はっ……ん」
英成が噛みついたことによるものか、熱を帯びる自慰によるものか、高坂が切なげな声を洩らす。いつの間にか高坂の欲望の先端は、じわりと濡れていた。もうすぐ待てば、透明なしずくをこぼすだろうとわかっていながら、英成は我慢できなかった。
大きく開いた高坂の両足の間に顔を埋めると、待ちかねていたように頭に両手がかかり、髪を乱される。ゾクゾクするような興奮を覚えながら、英成は呟いた。
「焦るなよ……」
濡れた先端を舌先でくすぐると、呻き声を洩らした高坂が腰を震わせる。英成自身、気がはやって仕方なく、高坂を焦らす余裕などとっくに失っている。高坂の欲望を舐め上げてから、口腔に深く呑み込み、きつく吸引してやる。
「あうっ、うっ、うぅっ――……」
高坂の欲望が口腔で膨らみ、脈打つ。たおやかな物腰をしている高坂でも、欲情に火をつけると、驚くほど奔放に乱れ、浅ましく英成を求めてくる。このギャップを、英成は愛していた。
欲望にたっぷりの唾液を絡め、濡れた音を立てながら口腔から出し入れする。ますます高坂の欲望は熱くなる。高坂は、こんなふうに口淫されると、より感じるのだ。
「はっ……、あっ、んあっ、あっ……ん」
ときおり先端を優しく舐めてやると、一際甲高い声を上げた高坂に髪を鷲掴まれる。括(くび)れを唇で締め付け、欲望の根本に指を絡めて扱く。
英成は、男は高坂しか知らない。情熱的なキスも愛撫も、今のところすべて、高坂の快感を引き出すために注ぎ込んでいる。高坂の反応によって学習して、経験を積んでいるが、ときおりふと不安が過(よぎ)るのだ。
自分の行為は一人よがりで、本当に高坂を悦ばせているのだろうか、と。
愛撫を止めた英成は体を起こし、息を喘がせている高坂を見下ろす。濡れた目で詰(なじ)るように睨まれた。
「ぼくを焦らして、楽しんでいるでしょう」
英成は目を丸くしたあと、意地悪く笑いかける。
「その口ぶりだと、俺にもっと舐められたいと思っているんだな」
反(そ)り返った欲望の形を指先でなぞると、高坂が唇を噛む。その表情を見て、つまらないことを考えるのはやめた。そもそも、欲情が高ぶりすぎて、神経が焼き切れそうだ。
「――高坂、キス」
英成が短くせがむと、首に両腕が回され、ぐいっと引き寄せられる。貪るような激しいキスを交わしながら、高坂の両足の間に片手を伸ばす。
もっとも鋭い反応を見せる膨らみをまさぐり、二つの果実を慎重に指先で弄(もてあそ)ぶ。目に見えて高坂がうろたえ、顔を背けようとしたが、英成は許さない。
口腔深くまで舌で犯しながら、高坂の弱みを淫らに責め苛(さいな)む。次第に高坂の体から力が抜けてきて、指の動きに呼応するようにビクビクと腰が揺れる。
満を持して英成は、再び高坂の欲望を口腔に含んで吸引しながら、同時に、唾液で濡らした指をさらに奥へと這わせる。
「くうっ……」
まだ頑(かたく)なな内奥の入り口を擦ると、口腔で高坂の欲望が震える。甘やかすように優しく吸い上げ、舌を絡める。
すでにもう物欲しげにひくついている場所へと指を挿入していく。こんな狭い場所をこじ開けられて、すぐに快感が得られるとは思わないが、反応を確かめるため口腔から出した高坂の欲望は、萎えるどころか、先端からトロトロと透明なしずくを垂らした。
じっくりとその様子を眺めた英成は、舌先で掬(すく)い取ってから、そのまま感じやすい先端を執拗に攻める。
与えられるだけの快感を与えてやりたいという英成の熱意が伝わっているのか、高坂は静かに乱れていく。
「あっ、あっ、英成、さっ――、あうっ、ううっ……」
激しい収縮を繰り返す内奥に、半ば強引に指を付け根まで呑み込ませると、掻き回すように動かす。淫らな肉は従順で、食らいつくように指を締め付けてくる。
「……いやらしい奴。興奮しまくってるじゃねーか、お前の中」
だが、そんな高坂の反応に、英成は眩暈がするほど興奮する。
内奥から指を出し入れして繊細な襞(ひだ)と粘膜を擦り上げながら、高坂の汗ばんだ肌に思う様、唇と舌を這わせる。
誘うように高坂の胸の突起が色づいており、たまらず英成は口腔に含む。激しく吸い立て、舌先で弄ってから、軽く噛む。高坂が上体をしならせ、悦びの声を上げた。
「あっ、あっ、い、ぃ――……」
もう片方の胸の突起も丹念に愛撫してから、内奥から指を引き抜く。高坂の表情だけではなく、〈ここ〉も妖しい花が開花しかけているようだと思いながら、英成は、高坂の片足をしっかりと折り曲げ、内奥の入り口に昂(たか)ぶった欲望を押し当てる。
この瞬間、英成の胸の奥で吹き荒れるのは、高坂に対する狂おしい愛しさだ。その感情は、征服欲と独占欲を内包しており、英成を疾駆する獣へと駆り立てるのだ。ひたすら高坂を求める、ただそれだけの獣だ。

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