書籍情報

欲望という名の情熱【特別版イラスト入り】

欲望という名の情熱【特別版イラスト入り】

著者:妃川 螢

イラスト:史堂 櫂

発売年月日:2015年04月03日

定価:935円(税込)

うんと甘やかしてやる ――溢れる愛情のままに 人気タレントの藤崎悠は、溢れる涙を拭おうともせず、雨のなかを彷徨っていた。そんな悠を、何も聞かず温かく癒してくれたのが、小さな中華料理屋の店主・海堂航介だった。子供のように愛を貪る悠に、航介は尽きることのない情熱を与え、想いのままに身体を重ね合う。静かに激しく燃え上がる互いの恋情。だが、悠の過去がスクープされたことから、住む世界の違いが現実となって二人に降りかかり……。料理人×芸能人の、切なく甘い年の差ラブストーリー。情熱と欲望が束縛の鎖……。

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登場人物

藤崎悠(フジサキハルカ)
週に本のレギュラー番組を持つ人気タレント。整った顔に白くしなやかな身体の癒しキャラだが、男にだらしない母親を見捨てて死なせてしまった過去を持つ。15歳で芸能界入りして以来、自分の居場所を捜し続けている。
海堂航介(カイドウコウスケ)
中華料理店「海堂」の店主兼料理人。思わず見惚れてしまうような精悍な顔と料理人とは思えない逞しい身体の持ち主。フランスで修業を積み天才若手シェフとして脚光を浴びるが、陰湿ないじめが原因で居場所を失う。失意のまま帰国して亡くなった父親の中華料理店を継ぐ。

立ち読み

「ん……あ…ぁ……っ」
航介の長くて器用な指が、悠の肌に悦楽の炎を点(とも)してゆく。
「綺麗だな……吸いつくような手触りだ」
「や…めっ……なんか……オヤジくさい…よ……っ」
悦楽に潤んだ瞳で睨むと、指先で弄っていた胸の尖りをきゅっと抓(つね)られる。
「やぁ……っ」
「そんなイイ声で哭(な)くから……苛めたくもなるさ」
もう片方の突起をペロリと舐め、それから、チュッときつく吸われて、悠はビクンと背を撓(しな)らせた。
決して貧弱ではない、しなやかな筋肉のついたスレンダーな肢体が、徐々に朱に染まっていく。
うっすらと汗を浮かべ、細い腰を燻る情欲に淫らに揺らし、そして、赤い舌の覗く濡れた唇を、誘うようにわずかに開いて……白い喉を仰け反らせ、喘ぐ。
どんな美女も舌を巻いて逃げ出しそうなほどの、壮絶な色香。計算のない媚態。甘く掠れた吐息が絹擦れの音に混じって、ふたりを煽る絶妙なスパイスになっていた。
赤く色づいた突起を舌先で転がしながら、航介の大きな手が、悠の脇腹を撫でる。細い腰をビクンと揺らして、悠は擽ったそうに首を竦めた。
「航介……さ…ん……」
甘えを滲ませた声で悠がその先をねだっても、航介は胸にばかり愛撫を繰り返していて、先ほどから航介の逞しい腹筋に擦れて切なげに雫を零しつづけている欲望には、気づかぬふり。
そのくせわざと身体を揺らして、先っぽの敏感な部分を何げに刺激してくるのだから、意地が悪い。
「あ…ぁ……っ」
堪りかねた悠が自ら手を伸ばして欲望を慰(なぐさ)めようとすると、それを許さず、両手首を纏(まと)めて頭上に拘束してしまった。その仕打ちに悠が涙を滲ませても、航介は脇腹から臍(へそ)の周り、皮膚の薄い内腿ばかりに愛撫の手を這わせ、肝心の場所には触れようとはしない。
その間も、航介の舌は悠の胸を弄りつづけている。敏感になりすぎたその場所が、ジクジクと疼くような痛みさえ伴いはじめて、悠は懸命に身を捩った。
「も……や…ぁ……っ」
ついにはボロボロと泣き出してしまった悠に、航介はやさしく涙の雫をキスで吸い取りながら、その耳朶に囁きを落とす。 「後ろなら弄らせてやってもいい」
言いながら、そっとその入り口を指先で擽る。前から滴(したた)った蜜液に濡れて、クチュッと厭らしい音をたてた秘孔は、触れただけの指先にも、ヒクヒクと淫らに蠢いてみせた。
「や……そんな……」
「ここだけでイける身体にしてやる。男が欲しくて堪らない身体に」
いつもは口数少ない男の見せる、恐ろしいほどの征服欲と独占欲。そして、想像もつかないほど激しい欲情が、悠の恐怖心に火をつけた。
「いや……やめ…て……っ」
悠の抗議の声など聞かず、グチュッと濡れた音を立てて、航介の長い指が秘孔に挿し込まれる。容赦なく内部(なか)を掻き回されて、悠が悲鳴にも似た嬌声を迸(ほとばし)らせた。
「あぁっ!は…ぁ……あぁっ!」
的確な刺激に、悠の欲望が弾け、咥(くわ)え込んだ航介の指を、きゅっと切なげに締めつけた。ヒクヒクと収縮を繰り返して、航介の指に秘肉が厭らしく絡みつく。
過ぎた喜悦に泣く悠を、啄ばむようなキスで宥(なだ)めながら、しかし航介の愛撫はやまない。
「イイ表情(かお)だ……もっともっと苛めたくなる」
「や……ひど…い……」
「感じてるんだろう?何が酷いんだ?」
笑いを含んだ言葉に、悠は「だって……」と涙に濡れた瞳を上げて、恋人の仕打ちを責める。それがより航介を煽る結果となって、悠はますます哭くハメに陥った。
力の抜けた下肢を淫らに開かれ、まるで赤ん坊がオムツを取り換えているときのような、恥ずかしい恰好を取らされる。航介の視界にすべてを晒されて、悠はヒクッと喉を喘がせた。
太腿の付け根を強く吸われ、薄い皮膚に鬱血が浮かんだところに歯を立てられる。ゾクゾクと背を突き抜ける快感に、悠はイヤイヤと頭を振って身悶えるしかない。
やがて、真っ赤に充血した入り口に舌を這わされて、耐え難いほどの羞恥と悦楽に、細い背を弓なりに反らせて善(よ)がり狂った。
「あ…ぁ…っ…やぁ……ダメ……ダ…メぇ……っ!」
蕩けた秘肉を割って侵入してくる濡れた感触に、肌が粟立ち、瞼の奥が熱く焼けつく。
ピチャピチャと濡れた音が響いて、その淫猥さに、眩暈(めまい)がした。と同時に、どうしようもなくもの足りなくて、腰が揺れていることにも気づいてしまう。
――欲しい……っ!
身体の、奥まった場所が疼いている。
灼熱の杭に貫かれたくて……熱い情欲を注ぎ込まれたくて……航介のすべてを、その身の内に受け入れたくて……。
突いてほしい。
奥まで。
奪ってほしい。
すべてを……!
「き…て……」
喉を震わせる喘ぎの合間に、訴える。
「はや…く……挿(い)れて…よ……っ」
限界だった。
どんなに執拗に嬲(なぶ)られても、その場所を埋められなくては、この渇きは癒されない。
男のすべてを受け入れなくては、あの狂おしいほどの情欲を、感じることなどできないのだ。
「悠……」
額に両の瞼に、そして唇に、触れるだけのキスが降らされる。
覆いかぶさってきた男の身体を受け止め、その逞しい首に両腕を回しながら、悠はうっすらと微笑んだ。
ひとつに、なりたい。
一番深い場所で、繋がりたい。
甘い声にねだられて、細い腰を抱えなおすと、航介はゆっくりと猛った欲望を、蕩けた秘孔に埋め込んでいった。
濡れた音を立てて、秘肉が牡を咥え込む。淫らに蠢いて、熱い肉棒に絡みつく。
その筆舌しがたい喜悦に小さく呻(うめ)いて、根元まで埋め込んだところで、航介はいったん動きを止めた。
「狭い…な……」
どんなに慣らしても、もともとその機能を持たない器官は、すぐにその口を閉じようとする。それを半ば無理やり馴染ませて、航介はやがてゆっくりと腰を揺らしはじめた。
「航介…さ……」
朦朧(もうろう)とした瞳で見上げながら、悠が航介の背を必死に掻き抱く。
足元からジワジワとせり上がってくるような快感に、どうしようもなく怖くなって、責める男の名を呼んだ。
「大丈夫だ。ずっとこうして抱いててやる」
生理的な涙を零しつづける眦(まなじり)に口づけながら、やがて大きなストロークで腰を使い、航介は悠を絶頂へと導いてゆく。
「あ……あぁ…っ……イイ…っ……」
汗に滑る指先が、広い背に爪を立てる。もっともっと、一部の隙間もなく心も身体も繋がりたくて、声にならない声を零しつづける唇で、キスをねだった。
「ん…っ……は…ぁ……んっ」
濡れた音を立てて舌が絡み合い、紡ぎ出される濡れた吐息ごと、すべてを奪い尽くそうとするかのような航介の唇が、息もつかせぬ激しさで、悠を翻弄する。
最奥を穿(うが)つ切っ先は容赦なく、悠の感じる場所ばかりを的確に責めつづけて、絶頂の予感に、白い太腿がぎゅっと航介の腰を締めつけた。
「も…と……もっと…ぉ……っ」
しかし、あと少しというところで、航介は動きを止め、ギリギリの場所まで抜いてしまう。
「あ…ぁ……いや…だ……やめな…い…で……っ」
上体を離し、喜悦に揺れる細い腰をシーツから浮くように抱え上げると、膝裏を支えて、胸につくほどに両足を押し開く。その状態で、入り口あたりの浅い場所を掻き回す。
奥まった場所を突かれるのとは違う、しかし、感じる場所がある。甘く痺れるような喜悦を生み出す場所。だが、今の悠には、切ないだけの快感でしかない。
「や…ぁ……ちが…うっ……もっと……っ」
腹筋につくほどに反り返り、白濁した蜜を零しつづける自身の欲望を宥めようと伸びてくる悠の手を払いながら、航介が意地悪く問い返した。
「もっと?どうしてほしいんだ?」
「……っ……ひど…い……っ」
ヒクッと喉を喘がせながら、涙に濡れた瞳が切なさを訴える。
「もっと…奥……そこじゃ…な……っ」
凶器のような航介の欲望で、最奥の一番感じる場所を突いてほしくて、淫らな言葉が零れ落ちた。
「こう、か?」
ぐぐっと欲望を埋め込んで、航介が尋ねる。しかし、それにも悠はプルプルと頭を振って身悶えてみせる。
「もっと……」
その声に誘われて、さらに繋がりを深くすると、「あぁっ」と満足げな溜息を吐きながら、悠の身体が弛緩(しかん)した。身体を拓き、深く深く航介を迎え入れる。
「もっと……もっと……っ」
根元まで埋め込んでも、悠はまだ足りないと、囈(うわごと)のように喘ぎながら、航介に向かって手を伸ばしてくる。
果てのない、欲情。
いつもは奥まった場所にひた隠して、決して表には出さない、秘めた情熱。
本能に突き動かされて、理性という名の砦(とりで)から、隠されていたものたちが解き放たれる、快感。
航介しか知らない。
こんな淫らな自分。
今まで、誰にも曝(さら)け出せなかった、深層の欲望。
「もっと、哭けよ……っ」
どんなに乱れてもいいのだと言うように、航介が上から突き下ろすような勢いで、抽挿を再開する。
淫らに開かれた下肢の狭間に、充血した肉棒が出挿りするさまが、涙に濡れた視界にも、はっきり見て取れた。
「こ…すけ…さ……航介…さん……っ」
愛しい男の名を呼びながら、悠の思考がスパークする。
「あぁっ!あ…あぁ――――――――っ!!」
瞼の裏が真っ赤に染まるような強烈な快感に、一瞬視界が真っ白になって、次の瞬間、悠は意識を飛ばしていた。
気がつくと、ベッドの上で、後ろから抱き締められていた。
気だるく重い腕をやっと動かして、胸の前に回された逞しい腕にそっと触れると、首筋に口づけられる。
何度も何度も、啄ばむように触れるそれがくすぐったくて身を振ると、今度はいまだ尖ったままの胸の突起を捏(こ)ねられた。
「ん……っ……も、無理だよ……っ」
まるで獣のような激しい先の行為で、身体はクタクタだ。
下半身は感覚がないほどに痺れていて、肌は熱く火照ったまま。
なのに航介は、悠の胸を弄る手を止めず、それどころか、もう片方の手を双丘の隙間に滑らせてくる。
クチュッと濡れた音を立てて指が挿し込まれ、やわやわと掻き回されると、先ほど注がれた蜜液が、トロリと流れ出してきた。
その、あまりに淫らな感触に思わず首を竦めた悠の耳朶に、いまだ欲情を孕(はら)んだ男の声が落とされる。
「俺のでいっぱいになってるな。女みたいにぐっしょり濡れて……溢れてるぞ」
カッと朱に染まった耳朶に歯を立てながら、クツクツと笑う航介のスケベオヤジぶりに、悠は涙を浮かべて身を捩った。
力の入らない身体で腕をつっぱり、なんとか航介を押し退けようとするものの、しかしあっという間に、再び広い胸に抱き込まれてしまう。
それでも必死に睨み上げてやると、航介はやさしい笑みを浮かべて、乱れた髪を梳き、そして露わになった額に口づけてくれた。
「エロジジイっ」
疲れ切っているのにどうしてくれるんだ!と、先ほどの戯(たわむ)れるような行為だけで昂(たかぶ)ってしまった身体を、逞しい腰に擦りつけて甘える。
「とんだ淫乱だな」
抱き寄せた腰を撫でながら笑う航介に、「誰のせいだよっ」と毒づきながら、喜悦に瞳を潤ませた。
抱き合った身体の間で、昂った欲望同士が擦れ合って、クチュッと濡れた音を立てる。航介の硬い切っ先が、悠の鈴口をグリグリと責め立てて、細い背中が喜悦に震えた。
そのまま果ててしまいそうになって、しかし、ついさっきまで感覚をなくしたように痺れていた奥まった場所が、再び淫らに蠢いているのを感じて、悠はカッと頬を朱に染めた。
後ろだけでイける身体にしてやると言った、航介の言葉が蘇る。
後ろだけで……じゃなくて、後ろでしか……の間違いなんじゃないかという気がしてきて、恥ずかしさに居たたまれなくなってくる。
そんな悠の焦りを知ってか知らずか、航介の悪戯な指先が、内部を蠢きはじめて、思わず満足げな吐息を零してしまった。
半開きになって熱い吐息を吐き出す唇に、戯れるようなキスを仕掛けられ、そっとシーツに背を押しつけられる。しかし、悠は抗わなかった。
グチュッと厭らしい音を立てて、航介の欲望が侵入してくる。
「あ……んっ」
そのときになってはじめて、悠は自分の身体が、まだまだ足りないと飢えを訴えていたことに気がついた。
――あんなに抱き合ったばかりなのに……。
羞恥に頬を染める悠に、宥めるようなキスを施しながら、航介がやさしく抱き締めてくれる。
「悠……」
真摯な声に呼ばれて、情欲に濡れた瞳を上げた。
「愛してる」
なんでもないことのようにサラリと告げられて、悠は長い睫(まつげ)を瞬(しばたた)かせる。
わずかな、瞠目(どうもく)。
喜悦に痺れた脳が、その言葉の意味をやっと理解して、悠は見る見る涙を浮かべた。
「俺……俺の…こと……?」
「おまえ以外に誰がいる?」
笑いながら、涙に濡れる頬に口づけられる。
「悠じゃなくて……俺…が……?」
不安げに大きな瞳を揺らしながら、悠が何かを確認しようとする。
「悠?」
「テレビのなかの俺じゃなくて……?俺…いつもの……」
それに少しだけ驚いた顔をして、しかし航介は、すぐに破顔した。
「どっちも、おまえだろう?」
「でも……っ」
タレント「藤咲悠」になってからは、それがどういう意味であれ、「悠」を欲しいと言ってくれる人がいた。しかし、それ以前の悠には……「藤咲悠」ではない悠には、そんなことを言ってくれた人間は、ひとりとしていなかったのだ。
「俺の店で、俺の料理を美味そうに食べてくれる。それが俺の悠だ」
「航介さん……」
「だが、テレビで見るおまえも、同じ悠だ」
あんまりいい気持ちはしないけど……と付け加えた航介に、悠が「?」と不安げな顔をする。
「俺はそんなに心の広い男じゃないぞ」
「……?」
「鈍いやつだな」
困ったように笑って、航介がキスを落としてくる。そして、唇に直接告げられた。
「妬いてるんだよ。テレビの向こうの一億数千万人に」
自分だってついこの間までは、その「その他大勢」のなかのひとりだったくせして、そんなことを言う男の独占欲に、悠は今まで感じたことのないほどの、幸福感に満たされる。
「俺も……っ」
震える唇で必死に紡いだ言葉は、しかし、濃密な口づけに、攫(さら)われていった。

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