「だめぇ――っ!……だめ、朱牙ぁ」
「こんなにべとべとに濡らして……いやらしいな青華。貴い青い血の王族の、これが本性か?」
「嫌っ……」
言わないでと、悲鳴のように叫んだ。
朱牙に辱められれば、胸が締めつけられるように痛む。なのに、かえって妖しく潤み、溶けていく、淫乱な体がいとわしかった。
いくら嘘をついても、自分がどれほど汚れているか、ごまかしようもない。でも、朱牙に軽蔑されたくない。
「あぁっ、もうっ……!」
「いけよ。俺の手で弄られて、尻を舐められながら、いってみせろ」
「朱牙ぁ……あっ、あぁっ……あぁぁぁ――っ!」
見られたくないのに、耐えられずに欲望が薔薇色に染め上げた肌に散る。頭の中は真っ白に溶け、一瞬、錯乱した意識も遠ざかった。
「こんなに飛ばして……餓えていたのか?」
揶揄するような声音に、涙で霞んだ瞳をぼんやりと見開いた。青華のこぼした精液に濡れた指を舐めながら、朱牙が見下ろしている。
「……いやぁ!」
自分の体液を、朱牙が舐めている。それだけでも、この場から消えてしまいたかった。行為を無理強いする弟より、彼にそうさせてしまった自分の罪のほうがずっと重い。
「まだ、こんなものでは許さないぞ。おまえは俺に復讐されたいのだろう?」
あくまでもこれは復讐なのだと言い聞かせて、乱暴に青華の顎をつかんだ朱牙は、青い虹彩を覗き込んだ。
「うつ伏せになって、尻を掲げろ。『突いてください』と哀願しろ」
暴力で犯されるほうがよかった。復讐なら、まだ安心できる。すでに朱牙の力に反抗する気力もなく、青華はのろのろと夜具にうつ伏せになった。
小さな白い尻を朱牙によく見えるように掲げて、自分の屈辱的な姿に涙があふれてくる。
「ほら、青華?」
「突いて、くださいっ……」
強制されるままに、あさましい言葉を口にした。そのせつな、じんと激しい痺れが体の奥を震わせ、どうしようもない自分の欲に細い泣き声が洩れた。
「ああ。たっぷり突いてやる」
朱牙の所作は乱暴ではなかった。けれど、その分もわざと時間をかけ、高い熱と質量を覚え込ませるようにじりじりと挿入され、夜具をつかんで咽び泣かされる。
「あっ……あぁ――っ、あぁ……っ」
「いいか?」
「あ、いいっ……朱牙ぁ……」
体の中を満たしていく快楽以外、何も考えられなくなる。甘くしゃくり上げながら、知らず知らずしなやかな腰が揺れる。 「ゆっくりだ。青華……息を吐いて、全部呑み込め」
「くっ……ふ、はぁぁ――んっ……」
「今度は締めつけてみろ」
「あんっ、あ、ああ……朱牙っ」
内壁でみっちりと包み込んでいるものをゆるやかに抜き挿しされ、その感触に痺れたように四肢がひくついた。
(戻れなくなる。闇に、堕ちていく……)
こうなることを恐れながら、どこかで待っていたのだろうか。本当に死にたかったのなら、自分で自分に手を下すこともできたはずだ。でも、青華にはそれができなかった。
未練があったとすれば、朱牙にほかならない。幸せを祈るふりをしながら、ともに堕ちることを望みはしなかっただろうか。
「いいぞ、青華。上手いな。俺も……堪らなくいい」
「朱牙っ……あっ、あっ……あぁっ、あぁ――っ」
背中から抱きしめてくる腕に、すがりつくように爪を立てた。
夢中になって華奢な腰を振り、激しく打ちつけ始めた荒々しい情熱に、青華はいつの間にか意識をさらわれた。