「晶、俺を客だと思ってやってみろ」
「はい」
僕はわけが分からないまま彼に言われるとおり、水割りをつくる。
店の中は照明が落とされ、すでにほとんどの従業員は帰っていた。
僕たちがいるVIPルームだけに明かりがついている。
氷室さんは僕をジッと見ている。僕は緊張して水割りをつくった。
「ダブルだ」
「はい」
命じられるままウイスキーを注そそぐ。
氷を入れようとしたとき、すーっと氷室さんの手が伸びてきて、何げない仕草しぐさで僕の太股の上に乗った。
(あ……!)
僕は思わず身体をビクッとさせた。氷室さんは平然とした顔で僕の太股をさわりだす。
ズボンの上からさわられてくすぐったいが、僕はジッとガマンした。 すると彼は今度は手を後ろに回して、尻をさわりだした。
ゆるゆると尻を揉もまれ、僕は氷をグラスに入れようとしたまま固まってしまった。
「続けろ」
冷ややかに氷室さんは僕に命じた。僕は頷うなずいて氷をグラスに入れる。
だけど……。彼の手はリズミカルに尻を揉み始める。僕はだんだん落ち着かなくなってきた。
くすぐったいようなじれったいような、まだ酒が残っているせいか、僕の身体は敏感になっていた。だけど、氷室さんは平然とした顔だ。
後ろを散々撫で回した後、こんどは前をさわられる。思わずドキッとして彼を見返した。
「嫌なら俺を止めてみろ」
「え……?」
ズボンの上からそこの形を確かめるようにやんわりとなぞられ、僕は焦あせって氷を落としてしまった。
「すみません!」
「なっちゃいないな」
そんな僕を見て、氷室さんは呆れたように言った。
僕は俯うつむいて唇を噛かんだ。
すると……。
「晶」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げたら、いきなり目の前に氷室さんの端正な顔がアップになった。
(あ……!)
と思ったとき、僕の唇は彼の唇でふさがれていた。
「ひ……氷室……さん!」
慌てて彼から離れようとしたが、そのままギュッと抱きしめられて抵抗できない。
もがいても力ではかなわず、僕は何故か泣きそうになった。
そんな僕を彼はジッと見ている。メガネ越しに見える彼の目は切れ長で、冷たく光っていた。
(いや……嫌だ!)
そのうち唇を唇で無理やり開かされ、彼の舌が僕の口の中へと潜もぐり込んでくる。舌を絡からめられ、 吸い上げられ、逃げることさえできず、僕はただ彼のなすがままたった。
涙のせいなのか目の前がボーっと霞かすんできた。息が苦しい。僕は肩で何度も大きく息を吐いていた。僕の唇を奪いながら、彼の手は僕の股間をさわっている。
(や、やめてくれ……!)
僕はかろうじてそんな彼の手を押しとどめた。
だけど、彼の舌は僕の口の中を我が物顔に貪むさぼっていく。