下腹で揺れている、艶やかな黒い髪が見えた。
時おり、信じられない美貌が硬くそそり立つ肉棒を呑み込んでいくのが見える。
「……っつ──」
無意識に、快感に喘いでいた。
(何もんだ、こいつ?すげー、上手いっ──!!)
セックスがいいだろうというのは、漠然と予感していた。
しかし、現実の感覚は曖昧な想像など軽く凌駕してしまう。
正直に脳裏が灼けた。
頭の芯が真っ白にスパークする。
ためらいも分別もなくして、やわらかな喉の奥まで狂暴に腰を突き上げたくなるほど、直截な欲望を煽られた。
「おいっ!」
みっともなく上擦った声音で呼んだ。
熱心な仕種とは裏腹の、睨むような目つきが楔を咥えたまま涼次を見上げる。
まるで邪魔をするなと怒っているみたいだ。
「おまえ……ゆうべから、そればっかりだな──俺は、『おい』じゃない。『加納京夜』という名前がある」
今夜初めて、男の口から正気らしい言葉を聞いた。
どうやら酔いは醒めたらしい。
醒めたとしても、その瞳は別の陶酔に潤んでいる。
妖しげに濡れて煌く。 京夜は名乗るなり、また猛々しい昂りを喉の奥まで咥え込んだ。
「わかったっ。わかったから、加納京夜っ、それを離せっ!」
涼次は、精いっぱいの声で叫んだ。
「嫌だ……」
素っ気ない答えといっしょに、ぺろりと敏感な先端を舐める。
目に映る朱い舌の色とその感触だけで、いきなり達しそうになった。
秀麗な美貌に向けた暴発を、奥歯を噛み締めてかろうじて堪えた。
魔性みたいな漆黒の双眸を見た瞬間、喰われそうだと思ったのは、あながち間違いじゃなかったらしい。
「強姦(レイプ)する気か?」
唸り声を上げて訊く。
「強姦?」
京夜は、クスクスと楽しそうに笑った。
「俺が?おまえを?」
問いかけて、シーツの上の細い腰を奔放に浮かせる。
京夜自身の熱も、はっきり涼次の目に入る。
どれほど欲しがっているのかわかる。
京夜は、躊躇もなく涼次の引き締まった腹を跨いだ。
白い指が、反り返った凶器に絡みついてくる。
まっすぐに芯へと宛がう。
蕩けそうな肉に触れた。
「ちょ……待てっ!」
見事な腹筋の上に手をついたしなやかな腕を、涼次は強く握りしめた。
「俺は……金なんか持ってないぞ──」
念のために確認した。
こんな男とやろうとしたら、いったいどのくらい取られるんだろう?
(女なら、ある程度想像もつくが……)
妙な疑問が、ともすれば霞みそうになる頭の隅をよぎる。
漆黒が悪戯っぽく輝いた。
「別に……いらないよ──欲しいなら、俺が払う……」
信じられない言葉を口にして、昂りの先端を軋ませるように腰を落とす。
ゆっくりと、沈み込む。
(熱い……こいつ──)
艶っぽい双眸は、欲情を隠さない。
そらすことなく涼次を求めるまなざしに、挑発される。
とっくに止められなくなっていた。
つかんだ腕を、積極的に引き寄せた。
「っ……あっ──!」
京夜は苦しそうに喘ぎながら、それでも根元まで全部呑み込んでしまう。
(俺のを……マジか?)
さすがに驚いた。
女でも、最初は大きすぎて苦しがる。
まして男は、いきなりすべてを受け入れられたのは京夜が初めてだ。
頬を伝っている涙に気づいた。
「おい……じゃねえ、京夜。大丈夫か?」
よほど馴れているにしても、壊してしまわないかと心配になった。
「んっ……」
こくりと、幼いような仕種でうなずく。
「凄い……いいっ──」
掠れた音色の甘さに目眩がする。
無理に華奢な腰を上下に揺すろうとするから、痛々しくてつい手を伸ばした。
けれど、涼次もそれが理性を保てる限界だった。
「俺だって──堪らねーっ……」
呻くように囁いて、腹筋を使って上体を起こす。
くずおれそうな背中を抱き取ってやる。
我慢できずに夢中で腰を突き上げた。
「あっ……ひっ!ひぃ……っ」
色っぽい嬌声を上げて、腕に抱いたなめらかな胸が仰け反る。
狭い内壁を、猛った楔で掻きまわした。
ぐちゃぐちゃ──と、なまめかしく湿った音が響いてくる。