書籍情報

キケンな恋人【新装版イラスト入り】

キケンな恋人【新装版イラスト入り】

著者:水月真兎

イラスト:みささぎ楓李

発売年月日:2015年06月05日

定価:935円(税込)

満開の桜の木の下が、オレたちの約束の場所だった―― 恐ろしいほどの美貌をもちながら、底の知れない謎を秘めた義兄・奈月。彼にベタ惚れな一己は、彼の深夜の外出が心配で仕方がない。行先を問い詰めたいのだが、意味シンな笑みではぐらかされてばかり。おまけに、一己の気持ちを知ってか知らずか、奈月は気まぐれに触れてくるので、理性を保つのもおぼつかない。そんなある日、「奈月の弟」を探す不良に、友人が襲われる。責任を感じた一己は、本気で義兄の素行を調べ始める――。

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登場人物

天宮一己(アマミヤカズキ)
剣道部に所属する高校一年生。入試時全科目満点で入学した秀才で、剣道部の新入生歓迎勝ち抜き戦で主将から「胴」をとるほどの腕前の持ち主。それなりに目立つ存在のイケメンのため、女生徒からも注目されているが、本人は同居する美貌の義兄・奈月に恋こがれている。
天宮奈月(アマミヤナツキ)
華奢な体に漆黒の髪と瞳を持つ高校二年生の美少年。一己の従兄弟にあたるが、突然の事故で両親を亡くし、三年前から一己の義兄となって同居している。引き合わされた時からお互いを意識し、ついに恋人同士となるが、真実の自分の姿を探し求めている。

立ち読み

ドキン、ドキン……──
心臓が、張り裂けそうに脈打っている。
三年間いっしょに暮らして、奈月の裸なんて見馴れてるはずだった。風呂でいっしょになることだって、けっこうあるし。
たしかに、奈月が好きだって意識し始めてからは、見るたびにドキドキしてたけど。こんなに緊張してるのは初めてだ。
奈月の体から制服を脱がしていく間も、無様なくらい指が震えた。
いつもなら、そんなオレを軽口でも言ってからかいそうな奈月が、今日に限っては不自然なほど大人しい。ぎこちないオレの手に、甘えるような仕種で身を任せきっている。
ベッドの端で、着ていた服をすべて脱ぎ落として、シーツに無防備に横たわる奈月にそっと体を重ねた。
部屋の温度は少し寒いくらいだったけれど、触れ合っている素肌は熱くて。その熱がどちらのものかもわからないほど、ぴったりと身を寄せ合う。
「奈月……」
名前を呼ぶと、潤んだような漆黒がオレを見つめて微笑んだ。
「好きだよ──」
赤面もののセリフを囁きながら、唇を合わせる。
しっとりしたその感触を味わって、濡れた粘膜を舌でまさぐる。
キスだって、オレはそんなに馴れてるわけじゃないけど。奈月と口づける瞬間を、夢見たことなら何度もある。
でも奈月の唇は、オレの想像よりももっと熱くて、甘い。
なめらかに動く舌先を、吸うようにして啄んだ。
チュッ……チュ──
艶めいた音色が洩れる。
長い睫(まつげ)が、羞恥に揺らぐ。
「一己……っ……」
ため息みたいな声に煽られながら、淡く色をおびた頬からうなじへと唇を這わせていく。
抱きしめた奈月の肌は、オレが知っている通り艶やかに張りつめていたけれど、いつもの白さがほんのりとピンクに染まって恐ろしく色っぽい。
やわらかな胸にも口づけを落とした。
薄紅色の突起は、やっぱり弱いらしくて、舌を絡めると腕の中でビクビク震える。
「気持ちいい?」
顔を上げて問いかけると、涙を浮かべた目がオレを見つめた。
コクンとうなずく、その仕種がたまらなく可愛くて。それだけで、体の芯が苦しいほど昂る。
余裕がない。
でも、自分の欲望のまま突っ走って奈月を傷つけたくもない。
男同士で体を繋ぐのにいろいろ無理があることぐらい、オレのかなりいい加減な知識でもわかっていた。
本当はもっと、キスしたり触ったりしたいけど。ちょっと性急かなとも思うタイミングで、奈月のしなやかな内腿をつかんで開かせた。
恥らうように小さく身を捩る動きを、両腕で押さえ込む。
泣き出しそうな顔がオレを見上げて、ズキンと胸が疼(うず)く。
《初めて》だという奈月の言葉を素直には信じられなかったけれど、こんな表情を見せられると憐憫がわいた。
やさしくしたい。オレにできる限り、奈月に痛い思いはさせたくない。
昂り始めている奈月に、唇で触れた。
「……っ──!」
鋭く息を呑んで、反射的に細い腰がシーツの上をずり上がろうとする。
力を込めて押さえつけたまま、オレは奈月を喉の奥まで含んだ。
「はぁ……ぁ、ん──」
ゾクゾクするような喘ぎ声がこぼれる。
爪先まで強張らせて、奈月は小刻みに震え続けた。
オレの方は、煽るような啼き声と口腔で昇りつめていく奈月の熱に、信じられないほど興奮していた。
男の体を慰めるなんて初めてだけど、まったく抵抗はなくて。咥(くわ)えているだけでイってしまいそうで、無心に唇で締めつけ、舌を絡ませる。
奈月は痛々しいほど感じて、しどけなく身悶(みもだ)え、オレの口の中に呆気なく弾けた。
甘くさえ感じる雫を飲み干して、啜り泣く奈月を見下ろした。
泣いている奈月の頭を、いたわるように腕の中に抱いた。
「奈月……奈月……オレ、今日、なんの準備もねぇけど。奈月と、最後まで、したい──」
ゴムぐらい用意しておくべきだったと、いまさらながら後悔したけど。勢いだけで、ここまできてしまったから仕方ない。
奈月につらい思いをさせることになっても、オレは奈月のすべてが欲しかった。
オレの腕に頭を乗せて、涙に濡れた目がまっすぐにオレを見た。奈月は、初めて奈月らしい高慢な笑みを浮かべた。
「いいから……一己──」
下肢にオレの体を挟み込んだはしたない格好のまま、奈月はねだるみたいにオレの背中に両手をまわした。
「一己──」
甘やかにオレを求める唇に、啄むようにキスした。
「舐めて、開くから……」
囁いて教えると、奈月は頬を薄く染めて微かにうなずいた。
秘められた狭間まで押し開く。
指先が蕾(つぼみ)の入り口に触れると、ビクンと奈月が身を竦ませた。
「怖い?」
「……大丈夫」
緊張に掠れた声が答える。
《初めて》でも、そうじゃなくても、きっとつらいだろう。
ささやかな花弁に唇を触れた。ためらいはなかった。ただ奈月が欲しくて、体が急いている。それでも、身を焦がす熱を押し殺して、オレは繊細な襞(ひだ)へと丁寧に舌を遣った。
舐めて解いていく。
「……く、ふぅ──」
噛み殺したような啼き声が洩れる。
「奈月……声、我慢しなくていいから。オレに、聞かせて──」
大胆に囁いた。
《初めて》だという言葉通り、奈月の態度があんまり可愛いから。オレは、正直ホッとしていた。
本当に《初めて》なのは、オレの方だから。男でも女でも、いまが《初めて》だから。ちゃんと奈月を感じさせられるかどうか、不安でいっぱいだった。
ヘタクソだとすごく痛いというのは、オレがテキスト代わりに読んだその手の本によく書いてある。
《初めて》なんだから当然だけど。でも奈月が上手い相手と経験があったりしたら、オレに抱かれるのが嫌になるかもしれない。
セックスだけにこだわるつもりはない。大切なのはお互いの気持ちだというのはわかるけど、だからこそ、オレは奈月と身も心も感じ合いたかった。
奈月をオレで歓ばせたい。オレの体で、奈月をたしかめたい。
想いを込めて、狭い器官を開かせる。
腰を抱き上げて、唾液を塗り込めるように中を舐めると。ひどく感じるのか、奈月は悲鳴のような声を上げた。
「いやぁ……だ、め……一己──」
身を捩って、無意識に弱々しく抗う。
くずおれそうな奈月の体を支えて、
「ごめん……ごめん、奈月……」
囁きながら、舌で潤いを与えた襞の中へゆっくりと指を沈める。
「あぁぁ……ン、一己ぃ……」
熱い──
奈月のか細い嬌声と体温を直に感じて、目眩がする。オレの体も、一気に熱を上げた。
まだ、だ。まだ……
無理やりにでも捩じ込んでしまいたい狂暴な餓えを必死に抑えて、舌と指で固い蕾を咲かせることに集中する。
さすがにオレも初めて見る奈月の蕾は、淡い薔薇色(ばらいろ)をおびていてとても可愛い。可憐な花弁が濡らされて、ヒクつきながら長いオレの指を根元まで呑み込んでいくさまは、凄まじく扇情的だった。
「一己……かずき、いやっ……あぁ、ぁ……っ」
潤みきった声は、拒むというよりも奈月の感じている官能の深さをダイレクトに伝えてくる。
やわらかな襞は、中で蠢く二本の指を搦めとって、さらに奥へ引き込むみたいに複雑に顫動した。
(すげ……)
奈月は、恐ろしく感じやすい体を持っていた。
こんな体を抱いてしまったら、溺れ込んでダメになりそうだ。
「奈月……」
透明な雫に透ける漆黒を覗いて呼んだ。
「いい、か……?」
自分の限界を意識して、そっと訊いた。
コクンと、細い首がうなずく。
その拍子にきれいに上気した頬をこぼれ落ちた銀色の粒を、オレは唇で吸い取った。
「きて……一己──」
無心な媚びを滲ませた甘い声に、もう待ちきれずに。
オレは、抱え上げたたおやかな腰へと慎重に体を進めた。
挿(はい)っていく……奈月の中に……奈月と、ひとつになる──
「は、ぁ……あぁっ……くぅ、っ──!」
耳元で聞こえる乱れた呼気と泣き声が、膨れ上がる欲望を煽る。
「奈月──っ」
汗ばんだ背中を強く抱きしめた。
しなやかな指がしがみついて、オレの肩に爪を立てる。その動きにそそられるように、小さく腰を揺すった。
「はぁ、ン……ぁ、あっ……一己……っ──」
苦痛を感じさせない、快感に蕩(とろ)けそうな声がオレを呼ぶ。
「奈月っ」
灼熱の感触を深々と穿(うが)った。
きつく締めつけられて、意識が白熱する。
「うわっ……奈月、なつき──っ」
無我夢中で突き上げた。痺れるような快楽に酔った。
オレは完全に、奈月を気遣う余裕すら失っていた。
初めて味わう強烈な感覚に、気持ちいいのか苦しいのかさえわからなくなってくる。それでも、奈月を貪る激しい動きを止められない。
「ぁ……あぁぁ、ン──かずき……ひっ!……っ、く──」
真っ白な腕が、汗に湿った体にすがりついてくる。ビクビクと、胸の中の紅潮した肌が慄く。
咽ぶような息遣いや、擦れ合う肌や、爪の引っ掻く痛みすらが刺激になって、オレの動きを執拗なものにする。
たまんねぇっ──!
もうこれ以上は届かない一番奥まで、奈月と溶け合った。
差し伸べられた指を受け止めて、乱れきったシーツに押さえ込む。
「くっ──!」
上擦った息を引き絞った。
解放感が、身を焦がす。
抱き竦めた奈月の下腹で、大きく震えて熱気が迸った。
オレは、奈月の最奥に叩きつけるように情熱を解き放った。

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