【第四話】
著者:百門一新 イラスト:森原八鹿
「は、はい……」
見つめ合いぼうっとしているうちに、彼の上にまたがらせられた。
ヴィクトルがズボンの前をゆるめ、オフィーリアの尻を両手で引き寄せる。
「あ、ン」
下着越しに秘所を、トラウザーズを押し上げる固くなった男根に押しつけられた。
そこは、既に膣奥から溢れ出した愛液で湿っていた。
「恥ずかしがることはない。私も同じだ」
言われたオフィーリアは、思考を読まれていたことに余計恥じらった。滾った男の猛りの熱を感じただけで、秘部は甘く疼き、いやらしい湿り気を増す。
ヴィクトルが、オフィーリアの腰を動かし始めた。
「ふ……っ、あ……あぁ……」
ゆるゆると互いの性器を擦り合わされて、心地良い快楽が起こり始める。
じゅわりと奥から蜜がこぼれて、あっという間に下着は濡れきってしまった。柔らかな割れ目にそって、彼の固い欲望がぴたりとはまっていた。
「オフィーリア。なんて素晴らしいんだ。とても気持ちがいいよ」
感極まった息をヴィクトルが吐く。
名前を呼ばれただけで、オフィーリアも秘部が震えた。
「触れ合っているだけなのに、まるで君と繋がっているみたいだ」
彼の手に力が入る。強く性器同士を押しつけられて、オフィーリアはびくんっと背をのけぞらせた。
「あ! はぁ……っ」
ひくひくと奥が収縮を始めて、蜜壺の中がかぁっと熱くなった。
快感が高められて、頭の中まで甘く痺れてくる。
「それ、だめ、です、ああっ、熱くなって」
解された蜜口が、くちゅくちゅと不埒な音を立てるのもオフィーリアを煽った。
腰が勝手に揺れ始める。疼きが膨れ上がるたび、もっと奥を、内側に響くくらいに刺激が欲しい……と、ヴィクトルの固いモノに自分を擦りつけてしまう。
「ああ、もう我慢できない。こんなにもたまらないものだとは」
片腕で肩を抱かれて唇を奪われた。
「んっ、んんっ」
すぐに舌が侵入してきて、息を吐く暇もなく口内を味わわれる。
ヴィクトルが、急く手付きでトラウザーズからペニスを出した。オフィーリアの濡れた秘所に手を伸ばし、下着をどけて中へ指を滑り込ませる。
「んぅっ……ふ、ん、ん……っ」
ぐちゅりと浅い部分をかき混ぜられて、イきそうになる。
「まだイくのは早い」
オフィーリアが達しそうなのを察し、ヴィクトルが指を引き抜いた。
「もっと気持ちのいい方でイくといい」
興奮した吐息で囁かれ、蜜口にくちゅりと彼自身をあてられる。
「あっ、陛下――あぁぁ!」
柔らかくなった秘部は、呆気なく剛直を飲み込んだ。
体重がかかって一気に膣奥まで突き刺さる。それは強烈な快感で、オフィーリアは軽く達してしまった。
力が抜けて、ひくんっと腰をはねさせながら彼の方へ倒れ込む。
「そのまま身を預けていていい」
ヴィクトルが耳元で熱く囁き、ペニスで奥を突き上げ始めた。
「あっあ、あんっ……あぁ……あっ」
下から子宮を突き上げられ、中を擦られるオフィーリアは、体ごと揺らされて甘い声が止まらなかった。
初めて交わって感じ合った時よりも気持ちがいい。
滾った剛直が奥へと進み、そして出ていく感触にさえ快感が増す。
「君の声は、とても腰にくる」
蕩けた嬌声を聞いたヴィクトルが、嬉しそうに抽挿を速めた。
「あぁあぁ! へ、いかっ、そこ、だめぇっ」
「そうか、ここが気持ちいいんだな」
オフィーリアの反応を確認しながら、ヴィクトルの腰が乱れていく。
「あっあっ、あ、あっんん――!」
一番感じるところを執拗に打たれたオフィーリアは、またしても奥で快楽が弾けた。
子宮がぶるりと震えた。締めつける膣壁が引き続き擦られ、熱くなった最奥を突き上げられておかしくなりそうだ。
「オフィーリア」
近くでヴィクトルと目が合った。
そこには燃えるような欲情が宿っていた。強く射抜かれたオフィーリアは、彼もそろそろなのだと知った。
でも、だめだ。中にだけは――。
「あぁ陛下、どうか、ひぅっ」
ヴィクトルが両手で抱き寄せて、オフィーリアの膨らみにかぶりついた。
じんっと甘い刺激が走り抜け、中のペニスを締めつける。
「全て受け止めてくれ」
快感でまた高みに近付いた時、彼が腰の動きを更に速めてきた。
大きな絶頂が迫っている。ぶるりと子宮が震えたのを感じたオフィーリアは、頭を振って悶えた。
「あっ、あ、だめ、またイ……あっあっ……ああぁっ!」
最奥がきゅぅっと締まった瞬間、ヴィクトルが膣奥を激しく突き上げてきて、オフィーリアはたまらず達した。
同時に彼も、オフィーリアをぎゅっと抱き締めて奥へ欲望を放った。
「あぁ……熱い……奥が熱いの……」
注がれる子種の熱に、腰がはねて何度か軽く達した。押さえつけられて動けず、やがて二人の間を温かなものが流れていく。
まだ、中にあるペニスは固く滾っていた。
案の定、ゆるやかに抽挿が再開されオフィーリアは震える。
「あ、ン……だめ、もう……」
「私はまだまだ満足していないよ。正午の休憩まで、まだ時間がある」
それまで子作りをしようというのだろうか?
目を向けると、すぐにヴィクトルの熱い眼差しとぶつかった。どこか獣のような強さを宿した美しいシトリンの瞳に、乱れたオフィーリアが映っている。
「君のここもそうだ。まだまだ私を求めている」
ぐちゅりとペニスで中をかき混ぜられて、奥が強く疼く。
「ああ……は、ぁ」
気持ち良くて蕩けそうだ。
熱のこもったヴィクトルの目に、もしかしたら本当に求められているのかと錯覚を受けて、一層感じてしまった。
彼が欲情しているのは、獣人族の発情期のせいなのに。
「なんとも愛らしい、私だけの番」
「あっ――んんっ」
唇を重ね合わされ、彼が治まらない剛直で膣奥を打ってきた。
途端に何も考えられなくなる。先程二人で果てたばかりのはずなのに、すぐにまた新たな快楽の波が襲ってきた。
「オフィーリア」
キスの合間に、求めるように名を呼ばれる。
ヴィクトルが迫ってきて、気付けば押し倒されていた。
「ふぁっ、んっ、ん、んんっ」
服の胸元を開かれて、乳房を直に強く揉みしだかれながら激しく膣奥を突き上げられた。
指で固くなった先端を刺激されて、また知らない快感が起こる。異性に胸を見られ、触られている驚きと恥じらいは、快楽の波に攫われる。
――そして、またしてもオフィーリアは彼の精を受けた。
◇◇◇
それからも、ヴィクトルは毎日訪ねてきた。
王としての仕事の合間を縫ってきているのだろう。顔を出すと、あの欲情した目で短い時間オフィーリアを抱いた。
そして毎回、彼はオフィーリアの中に子種を熱く注ぎ込んだ。
いつかパタリと途切れるだろうと思っていたのに、あれからもう一週間。
「……このままじゃいけない、わよね」
オフィーリアは思い悩んでいた。
目が合うと、もうだめだった。獅子王が望めば拒めない……そして、あの目にオフィーリアは抗えなかった。
きっと今日も、ヴィクトルは来るだろう。
まさか獅子王は、私に特別な思いを……?
「いいえ、そんなはずはないわ」
もう何度目かの幻想を、オフィーリアは脳裏から振り払った。
恐らくは、みんなが望んでいた発情期が来た。それだけなのだ。
でも……オフィーリアは、獣人族のことを詳しくは知らない。
発情期に巻き込まれてしまったのですが、なんて繊細なことを相談できる先輩の女性だっていない。それが悩みどころだった。
掃除を進めながら、オフィーリアは考える。
「もう一週間だもの。ひとまず、知らなくては」
まずは、獣人族の発情期がどのくらいで収まるかを尋ねてみよう。
ただ初日以来放っておかれているので、ここでのマナーもよく分からない状態だ。
王城の使用人は、所属だけでなく階級も色々とある。
失礼になってはいけない。そう思って、まずは近くの兵に、誰に尋ねた方がいいか聞いてみることにした。
「何か確認したいことがあれば、コルネイユ様に尋ねるといいと思う」
裏口の番をしていた兵達は、悩むことなく答えてきた。
「王室や軍、お城に関わることならなんでもご存知のお方だ」
「コルネイユ様って……使用人を統括されているお方ですよね?」
予想してもいなかった身分の高い男性の名前が出て、オフィーリアは戸惑った。
王城に到着した際、一通り説明は受けた。その中で、王城の使用人達の司令塔、トップであると覚えている。
「確か、そういうことなら採用担当のアドリーヌ侍女長様にお尋ねするように、とお話を聞いた気がするのですが……」
この第三棟を管轄している第三侍女長、アドリーヌ・シャルルロット。
名家、シャルルロット伯爵の妻だ。臨時メイドの第一責任者で、王城での説明と面接でも気品に溢れた雰囲気が印象的だった。
てっきりオフィーリアは、彼女の名前が出てくると思っていた。
三人の兵達が、見つめる彼女の前で顔を見合わせる。
「実質、メイド達の教育全般を第三侍女長がみている感じかな。臨時メイドは、分からないことがあれば彼女に取り次ぐようルールもある」
「そんなルールがあるんですね。なら」
「ただ、とくに臨時メイドなら避けた方がいいお方かな、とも思うわけなんだ」
どういうことだろう。
そう思ってオフィーリアが見つめると、兵達は心配そうな顔を向けてくる。
「アドリーヌ様は、町の娘達まで城に上げるのを反対していたんだ。臨時メイドの件も、わざと教育しないつもりで引き受けたんじゃないか、て」
「ただの噂だけど、自分の娘達を王の妻に、と考えているところもあるみたいだ」
「平民にはとくに厳しいとか。オフィーリアさんも、気を付けた方がいい」
王城で他の女性達と説明を聞いた際、そんな風には感じなかった。
受け付けで事前説明を担当していた貴族の男性と違って、仕事に誠実そうな様子が印象的だった。キリリとしていて、姿勢もとても綺麗な女性だ。
けれど……、兵達にそう言われれば親切を無下にできない。
平民のオフィーリアには、かなりハードルの高い相手だが、ひとまずここはコルネイユに尋ねてみることにした。
〈第五話へ続く〉