偽りの令嬢~親友の代行で婚活したら御曹司に気に入られちゃいました!?~【第一話配信】

【第一話】

 

著者:有允ひろみ イラスト:蘭 蒼史

 

プロローグ

 

「諒一(りょういち)さんっ……。ひぁんっ! あんっ……!」

柔らかな朝日が差し込む高層マンションのリビングで、珠美(たまみ)はラグの上に仰向けに寝そべった状態で声を上げる。

「いい声だね、珠美。僕は珠美の啼き声が大好きだ。……ほら、もっと聞かせてくれ」

テーブルの上には、ひんやりと甘いチョコレートムースが載った皿が置かれている。諒一がスプーンでそれをすくい、珠美の口の中に入れてくれた。

珠美は、身体には何ひとつ身に着けておらず、そばにいる諒一も一緒だ。

「美味しい?」

「はい、とっても美味し……ん、んっ……」

返事を終える前に唇にキスをされ、舌で口腔の中を丹念にまさぐられる。それが済むと、今度は多めにすくったそれを乳房の上に、たっぷりと盛られた。

「きゃっ!」

思わず上体を起こしそうになったけれど、せっかく諒一が買って来てくれたチョコレートムースを、床に落とすわけにはいかない。

珠美は、頬を染めながら自分の胸元を見つめた。そうしているうちに、体温のせいで、チョコレートムースがだんだんと形を崩し、とろとろに溶け始める。

「あっ……ムースが――」

珠美がそう言うが早いか、諒一が乳房を伝うそれを舌で舐めとった。そして、微かに頷きながら、満足そうな表情を浮かべる。

「うん、確かにとても美味しいな」

そう囁くと同時に、諒一が乳房にかぶりつき、先端を舌で捏ね回す。彼の淫靡な舌遣いに、珠美は背中を仰け反らせて喘いだ。

「あんっ……諒一さん……。あ……ああああんっ!」

諒一が珠美の上に覆いかぶさり、本格的に乳房を愛撫し始める。

「珠美の胸は、本当に可愛いね――」

ピンと硬くなった乳先を甘噛みされ、音を立てて吸われる。

「すべすべした肌も、柔らかなお腹も可愛い。どこもかしこも可愛くて、大好きだよ」

辺りにチョコレートムースの香りが漂う中、諒一が甘い声でそう囁いてくる。彼の唇が徐々に下半身に向かって下がっていき、臍の下で止まった。

「珠美は僕にとって、世界一甘くておいしいスイーツだよ。いくら食べても食べたりないし、四六時中口の中に含んで、舌で転がしていたいな」

話している間に、諒一の唇が徐々に下半身に向かって下がっていく。

珠美は彼の声に聞き惚れながら、うっとりと目を閉じて腰を捻る。彼の唇が両方の骨盤を巡り、左脚の付け根で止まった。

「特に、ここ――僕のものを待ちかねて、すぐに濡れる珠美のここが本当に大好きだ」

諒一に両方の足首を掴まれ、そっと左右に広げられる。彼の目前に秘部を晒す格好になり、珠美は恥じ入りつつも悦びに唇を震わせた。

「あっ……ああああっ!」

硬く尖った彼の舌が、珠美の蜜窟の中に沈んだ。僅かばかりの挿入なのに、全身がとろけそうなほど気持ちがいい。

「珠美、中がヒクヒクしてるね。すごくいやらしいよ……。ほら、もっと淫らな格好をしてごらん。珠美ならできるだろう?」

「は……はい」

諒一に促され、珠美は頬を赤く染めながら両方の膝を腕で抱え上げる。そして、さらに深い挿入を期待して、瞳を潤ませながら指でしっとりと濡れた花房を押し広げた。

「珠美のここは、本当に素直だな。ほら、ここも、こんなに腫れてピンク色に染まってるよ」

彼の舌が勃起した花芽の先を、ちょんと突いた。

「あんっ!」

ふいにやって来た強い快楽に、珠美は小さく叫び声を上げた。膝を抱える手に力が入り、自然と秘所が上向きになる。

ものすごく淫らだし、まるで愛撫をねだっているみたいだ。

恥ずかしくてたまらないのに、珠美は今の姿勢を保ちながら自分を見る諒一の顔を見つめた。

それを見た彼が、にっこりと微笑んで、ペロリと上唇の端を舐めた。

「もっと舐めてほしいんだね? そうなら、正直にそう言えばいい。僕にどんなふうにしてほしいのかな? ちゃんと言ってくれれば、望みどおりの事をしてあげられるよ」

話し終えた諒一の口元に、魅惑的な微笑みが浮かぶ。薄く開いた唇の間から、濡れた舌先がチロチロと蠢いているのがわかる。

珠美は、その動きに魅入られたようになり、小さく頷きながら思ったままの言葉を口にした。

「も……もっといっぱい舐めてほしいです。わ……私、諒一さんに、いろいろな事をされたいです。もっと……もっと――」

諒一に、すべて暴かれてしまいたい。

トロトロに溶かして、ぜんぶ奪ってほしい――そう思うのに、何をどうしてもらえばいいのかがわからない。

今の気持ちを、どんな風に言い表せばいいのだろう?

珠美が自分自身をじれったく思っているのに気づいたのか、諒一が目を細めながら「そうか」と言った。

「珠美は、僕に自分のすべてを晒したいんだね? 僕に、ありとあらゆる淫らな事をされて、ぐちゃぐちゃになるまで抱かれたい――これで合ってるかな?」

そう口にする諒一の顔が、たまらなくいやらしい。

珠美は繰り返し大きく頷くと同時に、そんな事を願う自分を恥じて唇を噛み締める。

「いいよ。珠美が望むとおり、もっといろいろな事をして、珠美を悦ばせてあげるからね」

諒一が、そう言いながら珠美の太ももの内側を緩く齧った。

「あっ……」

珠美は小さく声を上げると、全身を弛緩させて諒一に身も心も委ねるのだった。

 

第一章 噓つきは恋の始まり

 

六月最初の金曜日、保坂(ほさか)珠美は電車を乗り継いで都心にある外資系のシティホテルに到着した。

時刻は午後七時。

一度立ち止まって軽く深呼吸をしたあと、エントランスを通り抜けて広々としたロビーに入る。

ハイヒールの踵が床を滑り、危うく転びそうになってしまった。なんとか踏ん張って体勢を整えたが、すれ違ったカップルに見咎められてクスクスと笑われてしまう。

(ヒールの高い靴に慣れてないんだから仕方ないでしょ!)

珠美は頭の中で言い訳をして、唇を尖らせた。そして、気を取り直して広々としたフロアを突っ切り、まっすぐにエレベーターホールに向かう。

目指すレストランは建物の三十階にある。しかし、六機あるエレベーターの、どれに乗ればいいのかがわからない。

仕方なく一番人が多く乗り込んだエレベーターに乗るも、すぐに二十七階までしか行かない事がわかった。焦って途中の階で降りたが、上に行くエレベーターを見つけられず、一人右往左往する。

たっぷり十分間ほど迷子になり、結局一度一階に戻って通りすがりの客室係に途中まで道案内をしてもらった。

(ふぅ……やっと三十階まで行ける。あ~あ、行きつくまでに疲れちゃった)

今の時点で、もうかなりふくらはぎが痛い。それでもどうにか目的階に到着して、ホッと安堵の息を吐く。天井まで続くガラス窓からは、煌びやかな都会の夜景が望める。

しかし、それを見ても珠美のテンションは、いっこうに上がらない。

(うう……緊張するっ。だけど、理沙(りさ)のためだもの。よし、行くか!)

珠美は背筋をシャンと伸ばし、自分に気合を入れた。

今日ここに来たのは、親友である榎田(えのきだ)理沙の代わりに、富裕層向けの見合いパーティに出席するためだ。

珠美と理沙は同い年で、幼稚園時代から仲がよく、今でも頻繁に連絡を取り合っている。

大手アパレルメーカーを経営する父親を持つ理沙は、根っからのお嬢さまだ。スタイルがよく美人の彼女は、数年前に街中でスカウトされ、現在はとある女性ファッション誌で読者モデルを務めている。

かたや珠美は一般のサラリーマン家庭の出身だ。

勤務先は老舗和菓子店「鷹虎屋(たかとらや)」で、入社以来「帝都百貨店」地下一階の食品売り場で販売を担当している。当然ながら富裕層向けの見合いパーティに行く資格なんかないし、場違いもいいところだ。

しかし、つい二日前に「本命の彼氏ができた」という理沙に懇願され、彼女の代理で見合いパーティに参加する事になってしまった。

『そのパーティに出席しなければ、無理矢理お見合いをさせられちゃうのよ』

『だけど、大好きな彼氏がいるのに、お見合いパーティになんか行けないでしょ?』

『お願い! 一生感謝するから、私に成りすまして出席してきて~!』

そんな風に言われては、助け船を出さない訳にはいかなかった。

たまたま明日の土曜日が休みだった事もあり、珠美は渋々ながら理沙の依頼を受けて、今こうしてここに来ているわけだ。

(理沙は、会場には知り合いはいないはずだからバレないって言ってたけど、本当に大丈夫かな?)

珠美が今日着ているのは、バタフライ模様の切り替えワンピースだ。色はシックなボルドー色で、持っているバッグも同じ色合いをしている。

身に着けているものはぜんぶ理沙から借りたものであり、いずれも海外のハイブランドショップで購入したものらしい。

理沙は背が高く、珠美よりもスマートで脚だって十センチ近く長い。しかし、二人とも普段Mサイズを着ており、種類を選べばあまり違和感なく着る事ができるのは幸いだった。

靴のサイズも同じだが、珠美が普段履いているのは三センチ以内のローヒールだ。しかし、今履いているのは八センチのハイヒールで、しかもヒール部分がやたらと細く歩きにくい。

それでも何とか目的のレストランの前に到着し、「榎田理沙」として受付を済ませた。あとは、会場に入り、確かにパーティに参加したという証拠を残すのみだ。

一度中に入ろうとしたが、急に化粧室に行きたくなり、回れ右をする。

周りに誰もいない洗面台の前に立ち、鏡に映る自分自身を眺めた。

丸っこい目鼻立ちに、肩までのナチュラルヘア。

いつもはシュシュやバレッタでひとまとめにしているが、今日は朝一で訪れたヘアサロンで緩いウェービーヘアにしてもらった。同時にメイクもしてもらい、全体的に淡いオレンジ色を基調とした優しい印象に仕上がっている。

(うーん、馬子にも衣装ってやつかな。やっぱりプロのヘアメイクは違うなぁ。これなら、もしかして読モって言ってもギリギリ信じてもらえるかな?)

見違えるほど美人になった――とまではいかないが、普段よりも確実にランクアップしている。

(なぁんて、激甘な採点をしてどうするのよ。……さて、とりあえず行きますか!)

化粧直しなどを済ませ、再度パーティ会場に向かう。

『別に、はじめから最後までいなくてもいいからね。途中から参加して、適当に食べて飲んで、「はい、さようなら」って感じでオッケー。みんなそうしてるから、気にしなくていいわよ』

理沙がそう言ってくれたから、はじめから参加するのはやめておいた。

店内は小学校の体育館ほどの広さがあり、フロアの真ん中にはいくつもの丸テーブルが並んでいる。壁際には飲み物や各種料理が置かれており、一流ホテルのレストランにふさわしく並んでいる料理はどれをとっても豪華で美味しそうだ。

(うわぁ……料理もすごいけど、皆さんおしゃれだし煌びやか~!)

パーティは一時間ほど前にスタートしており、会場にはおよそ五十人の男女がそれぞれ席に着いたり、立ったまま話したりしている。

「よろしければ、どうぞ」

通りすがりのウェイターが、カクテルグラスに入った飲み物を勧めてくれた。

「ど、どうもありがとうございます」

珠美は丁寧に礼を言って、トレイからグラスを取った。一口飲むと、すっきりとした甘さが口の中に広がる。

(これ、なんだろう? お酒? ソフトドリンクかな?)

すごく飲みやすいが、カクテルに関する知識を持たない珠美には、それがなんなのかよくわからない。

とりあえず、それを持ちながらフロアの奥に移動し、なるべく目立たずに済む場所を物色する。

(あっ、あそこがいい)

見つけた場所は、ちょうどレストランの一番奥まった場所で、司会者用の演壇が据えられている。そこは天井からカーテンが下がっており、それを引けば演壇をまるごと隠す事ができる作りになっていた。幸い、その周りには誰もおらず、壁際にはいくつかの丸椅子が置かれている。

上には適度に明るい照明もあるし、上手くすれば恰好の隠れ場所になりそうだった。

そうと決まれば、善は急げだ。

珠美は壁際を素早く移動し、大皿の上に料理を盛って、そそくさと演壇の陰に入った。

誰にも気づかれないように、ゆっくりと時間をかけてカーテンを引く。準備万端整ったところで、演壇の上に皿とグラスを置き、丸椅子をその横に据える。

「は~、これでよしっと……。さっさと飲み食いして、帰ろ――っと、ぅわわっ!」

座った位置が悪かったのか、椅子に腰を下ろした途端、身体がぐらりと横に傾いた。

あわてて演壇のほうに手を伸ばそうとしたが、更にバランスが悪くなっただけに終わる。

このままだと、倒れる!

珠美が転倒を覚悟して肩を窄めると、突然背後から伸びてきた腕に背中を支えられた。

「おっと、危ない!」

くるりと身体が反転し、そのまま助けてくれた腕の中に抱え込まれる。

 

〈第二話へ続く〉

偽りの令嬢~親友の代行で婚活したら御曹司に気に入られちゃいました!?~【第二話配信】

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