蜜愛の牢獄~メイドは反逆の宰相に乱される~

『蜜愛の牢獄~メイドは反逆の宰相に乱される~』番外編 公開中!


5月27日から配信されている『蜜愛の牢獄~メイドは反逆の宰相に乱される~』の番外編を限定公開!
下記よりお楽しみください!!

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『蜜愛の牢獄~メイドは反逆の宰相に乱される~』番外編
著作:ただふみ

オデットは指示されたとおりにティーセットを持って王妃の間の前に立っていた。
やっぱり、この趣味は理解できない……。
大きくため息をついて項垂れれば、肩口で切り揃えられている銀髪が前方へと流れてくる。両手がふさがっているのですぐには髪を直せないが、それはそれで構わなかった。オデットは首を左右に軽く振って気持ちを切り替える。
この場所に戻ってきてからいくらか時間が経っていた。メイドとしての仕事ながら、オデットがお茶が冷めてしまうのを承知で立っていたのには理由がある。
先に進まねばと、まずはティーセットの持つ位置を変える。そして勇気を振り絞って豪奢な扉をノックする。
「オデットです。紅茶をお持ちいたしました」
中から返事があればと思って声をかけるが反応はない。
だが、これは想定の範囲内だ。
「……はあ」
憂鬱な気分だ。思わずため息をついてしまって、オデットは自分で自分が嫌になった。だが、これに慣れろと言われるほうがおかしい。何度も経験していても、その思考は消えてはくれなかった。
繰り返しノックしたところでどうせ反応は期待できないからと、オデットは王妃の間に足を踏み入れた。できるだけ音を立てないように意識して、テーブルを目指す。
なぜなら、敬愛する二人の邪魔をするわけにはいかなかったからだ。
「そ、そこはっ……やっ……んっ、シルベストルさまぁっ」
「ロゼリーヌ、貴女は本当に可愛らしいですね」
甘く鳴くロゼリーヌ王妃の声と、彼女を愛でるシルベストル陛下の声が隣室から聞こえてくる。二人はベッドで睦まじい時間を過ごしているところだ。
唇を貪る音とベッドが軋む音が耳に入って、オデットはへその下あたりが甘く疼くのを感じた。
やだ、また反応しちゃってる……。
身体があの甘く痺れる感覚を求めているのを自覚した。シルベストルの弟君によって教え込まれた甘美で背徳的な行為を、身体が思い出している。
だから、嫌なのに。
ロゼリーヌの側仕えメイドであるオデットは、二人から仕事を命じられれば断ることはできない。それに、こんな場面にほかのメイドを遭遇させるのはいろいろと憚れる。
シルベストルさまの趣味だとしても、ほかの人たちに拡まるのも考えものだもの。ロゼリーヌさまは気づいていないみたいだし。あたしさえ我慢すればいいんだから。頑張れ、あたし。
シルベストルが王妃の間を訪ねてきたときは、二人を部屋に残して一度退室する。その後、二人きりの部屋にお茶を運ぶようにと、シルベストルに頼まれているのだ。
運動後に水分を補給するのは理にかなっていると考えているので、オデットは最初は素直に応じた。初めて二人の睦ごとを聞かされたときはかなり動揺したが、これが陛下によって仕組まれたことだと理解したあとは割り切っていたつもりだ。
しかし、あの《事件》のあとは少し違う。
とにかく、さっさと仕事を片付けてしまおう。
薄闇の中、テーブルにティーセットを置く。あとは彼らにお任せだ。朝の支度のために部屋に入るまで、オデットが触れる必要はない。
音を立てず、無事に仕事を終えて部屋を出るべく歩き出す。そこで、ベッドルームから聞こえるのが話し声だけになっているのに気づいた。
「え……あの……胸で、ですか?」
ロゼリーヌの戸惑う声が珍しくて、オデットは自然と立ち止まる。思わず耳をそばだてた。
「えぇ。貴女の胸で挟んでしごいて欲しいのです。できるでしょう?」
一方のシルベストルの声は楽しげだ。
胸で挟む?
オデットは自分の胸元に手を当てる。それなりに質のいいブラウスの下には、控えめな二つの乳房があった。何を挟もうというのかはわからないが、自分の胸が何かを挟めるほど膨らんでいないことは明白だ。豊満な胸を持つロゼリーヌならなんでも挟めそうな気がするが、根性で寄せて上げて膨らみを強調させているオデットには厳しい気がした。
そういえば、少しは大きくなったのかしら?
ふとそんな疑問が浮かんで、オデットは早足で王妃の間を去った。自分だけでは確認できないと考えたから。

人目を気にしながら塔をのぼるのにもいくらか慣れてきた。
使用人たちのほとんどが寝る準備をしているか休んでいるかと思われる夜間。そんな時間帯にオデットが忍んで向かう先は、ある人物が幽閉されている牢だった。
見張りがいないっていうのもどうなのかしら。体調が急に悪くなったときなんかは困るでしょうに。
オデットは目的の牢の前までやってきて、ふとそんなことを思う。幽閉中であるはずの人物が見張りを追い出すように手配していることは知っているが、少し気になった。
ああ。あたしが来ることを前提にしているからいいのか。
真冬の夜はとても冷える。かじかんだ指先に息を吹きかけて温めると、質素な扉を軽くノックした。
「今夜は遅かったのですね」
鍵がかかっていなければならないはずの扉がゆっくりと開く。シルベストル陛下の弟君であり、幽閉中の前宰相――ジェルトリュドが顔を出した。
少し伸びた艶やかな黒髪を後ろで一つにまとめているので、精悍な顔立ちがしっかりと見える。特に今は不機嫌らしく、冷たい印象を与える表情をしていた。それはオデットがよく知る幽閉前の雰囲気に近い。軽蔑するように見下ろす緑色の瞳は、その当時以上に冷ややかだ。
幽閉されている身なので、今はドレスシャツにトラウザーズという軽装にガウンを羽織っている。前よりも質素に過ごしているはずだが、王族という身分を剥奪されたわけではないからか生地は上質だ。そんな彼を見て、出会った頃の彼はもっと華やかだったなとオデットは思い出す。
とりあえず、顔色はよさそうね。
王宮から少し離れた場所にある塔は、この時季は特に凍える。風邪をひいて体調を崩してもおかしくはないのだが、今のところその心配はなさそうだ。
「シルベストルさまのお使いがありましたので」
オデットがよそ行きの笑顔で返事をする。彼のこういうひんやりとした態度にはある種の安堵感があった。優しくされたほうが、むしろ奇妙に感じられるのがオデットである。
「お使い? ――ああ、あの趣味ですか」
なんのことを言っているのか理解できたらしい。氷の表情がふっとやわらいで、オデットの手を引いた。抵抗することなく牢の中に引き込まれる。
扉が閉まり、牢の中で二人きりになった。
オデットの身体は壁にそっと押しつけられ、逃げ道をふさぐようにジェルトリュドは立って見下ろす。緑色の瞳に熱が宿り、オデットの顔を映したかと思ったときには唇を塞がれていた。
「んっ……」
抵抗しようかなどと考えていたのは触れられた瞬間だけで、オデットは自然と唇を開いて彼の舌を招き入れた。互いの舌を擦り合わせれば、クチュクチュと音が鳴る。
ああ、熱い……。
ここまでの道のりは寒く、身体はすっかり冷えていたはずだったが、口づけだけで芯から熱が広がっていくのがわかった。へその下あたりがじんと疼く。
「……お使いのあとの君はいつも情熱的ですね」
互いの唇を繋ぐ唾液の糸を名残惜しく見つめていたオデットは、ジェルトリュドの言葉に首を少しかしげた。
「そうですか?」
「見せつけられて、僕を求めたくなるのでしょう?」
忘れられていたわけではないとわかったからか、ジェルトリュドが機嫌をよくしている気がする。サラサラの銀髪を右手が愛でて、そのまま頬を、首筋を、そして胸元を撫でる。
「別に、そういうわけでは。ただ、あなたがあたしに刻んだことを、勝手に身体が思い出しているだけで」
彼を恋しいと思ったわけじゃない。ただ、あの刺激を思い出してしまっただけ。
誤解されたくなくて、オデットは感じたままを正直に言う。すると彼の手のひらが胸の先端をこねるように動いた。
硬くなっていた胸の頂から甘い痺れが全身に波及して、オデットは腰をくねらせた。
「それならそれで構いませんよ。……しかし、兄様によってこんなにさせられたとなると、悔しいものですね」
ブラウスの上から凝り始めた乳首を見つけ出して優しく摘む。ピクッと肩が震え、その様子をジェルトリュドはじっくりと観察していた。
「あ、あたし、何かされたわけじゃないんですけど、……やっ」
ロゼリーヌとシルベストルが行為にふけっているのを聞いてしまっただけ。聞かされたのも同然ではああるけれども。
乳首を指の間に挟み、しごくようにして胸を揉まれる。熱がどんどんと生まれてくるのがわかった。身体が熱い。
「君に触れたのだったら、こんなものじゃ済みませんよ」
貪るようなキスをされて、オデットの意識は溶けていく。
「……はぁ……ジェルトリュドさま……」
気持ちがいい。でも、物足りない。もっと直に触れてほしいし、もっと深いところで繋がりたい。
たとえ、そこに愛がなくても。

ベッドに移動して肌を重ねる。凍えるほどの冷気が部屋に入り込んでいるはずだが、それがかえって気持ちよく感じられるほどには互いの身体に熱を宿していた。
「ジェルトリュド、さまぁっ、んっ……ふぅっ」
「……オデット」
名を呼び合って、口づけをして。身体を何度も貫かれながら、悦びを感じる。激しく、それでいながら丁寧な抽挿の果てに、オデットの最奥に熱が放たれた。
「あぁっ!」
全身がガクガクと震える。甘い倦怠感に襲われて、オデットは汗や蜜でびしょびしょになったシーツに身体を投げ出した。
どうしてこんなに気持ちがいいのだろう……。
横になって呼吸を整えていると、隣に寝転んだジェルトリュドが華奢なオデットの身体を抱き寄せた。
「少しは発散できましたか?」
体力が余っているのか、ジェルトリュドの呼吸は乱れていない。それがなんとなく悔しくて、オデットは小さく膨れた。
「発散させるために、ここに来たわけじゃ、ないんですけど」
息が乱れたままなので途切れ途切れに文句をつける。
ジェルトリュドはふっと小さく笑って、オデットの耳たぶを甘噛みした。
「ひゃうっ」
達したあとのためか肌が敏感だ。いつもならそんなに感じないはずなのに、ぞくっとして想定以上に大きな声が出た。
「では、なんのためなんです?」
問われて、オデットは聞きたかったことを思い出した。くるりと身体の向きを変えて向き合う。上目遣いにジェルトリュドを見れば、不思議そうな顔で見つめ返された。
「……あの。胸で何を挟むんですか?」
ジェルトリュドの問いの答えになっていないのは承知で、率直に疑問を口にする。本題はこのあとだ。
オデットの問いに彼は目を瞬かせ、ぷっと吹き出した。
「何を言い出すかと思えば」
「挟んでしごくそうですけど」
覚えていた台詞を口にして、オデットははたと気づく。
あたしにはなくて、男性にはあるもの、だわ。
するとジェルトリュドは片目を細めて、冷たく笑った。
「へえ。兄様がロゼリーヌにそんな要求を。確かにあの豊満で肉欲的な身体ならさぞかし愉しいでしょうね」
そんな言葉に、オデットはますます不機嫌になった。
「どうせあたしは貧相ですよ」
ロゼリーヌを見ていると、自分の身体がより貧相に思える。食事をたくさん摂っても太りにくい体質らしく、かろうじて掴める程度の肉が胸と臀部についている程度。ジェルトリュドがそんな発言をすれば、ロゼリーヌのようなプロポーションのほうがよいに違いないと確信する。
あたしはあたしだからそれでいいって言っていたくせに。
ジェルトリュドに喜んでもらいたいわけでは決してないけれども、悔しいと感じてしまう気持ちは抑えられない。
「そうですね……確かに君の胸では僕を挟めそうにはありませんね」
オデットの台詞を肯定すると、ジェルトリュドは小さな膨らみに手のひらを被せて揉みしだく。
「んんっ……」
気持ちのよい場所を的確に責められている。自然と腰がくねった。
「ちょっ、ジェルトリュドさま、ずるいっ、あんっ」
離れようとすればさらに抱き寄せられて、首筋に吸いつかれた。続いて、汗ばむ肌に舌を這わされ、快感に震える。
「僕の手でこうして感じてもらえるなら、どんな体格だろうとそれで充分ですが。君はいつもロゼリーヌに嫉妬しますね。親友なんでしょう?」
「嫉妬なんかじゃ……あっ」
胸をいじっていない手が、股間を隠す茂みを滑って割れ目に触れる。しっとりとしてぐしゃぐしゃにぬかるんだそこを、指先がかき回す。
「ああっ、ダメ、やんっ」
「もっと高みに連れて行って差し上げましょう」
「ああっ」
次々と湧き上がる快感に、オデットは言葉を失う。自然とすべてを受け入れて、彼の手で再び達した。
「はぁっ……はぁっ……」
恨めしい気持ちでジェルトリュドを見つめると、彼は優しげに微笑んでいた。おそらくオデットしか知らない、心を溶かすのに充分な表情。
「君は胸が小さいことをかなり気にしているようですが、心配いりませんよ」
「それは、あたしはあたしでしかないからでしょう?」
そんな慰めの言葉がほしいわけではない。ジェルトリュドに言われたところで、この劣等感が消えるわけではないのだから。
すると、彼は首を小さく横に振った。
「ちゃんと大きくなっていますよ。ですから、心配無用だと思います」
「!」
オデットは目を瞬かせる。言葉が出ない。
「胸を育てるお手伝いならできると言ったではありませんか。ですから、このまま僕に抱かれ続けてくださいね」
チュッと口づけをされる。騙された気がするが、その口づけで騙されたままでいいような気になってしまった。
ジェルトリュドさまはずるい。
「さてと。ここからが本番です。気絶するほどの愛を刻みつけて差し上げましょうか。ロゼリーヌなどに嫉妬せずとも済むように」
眩むような色気を孕んだ笑みを浮かべたのを見て、どくどくと蜜が溢れ出したのを感じた。倦怠感も疲労感もあるというのに、ジェルトリュドを欲してしまう己の身体をオデットは浅ましいと思う。でも、やめられない。
ってか、なんであたしが、胸が大きくなっているかどうかを気にしているってわかったんだろう。
尋ねる前に組み敷かれ、深く口づけられる。するともう、問いのことなどどうでもよくなった。オデットは彼から与えられる快楽にすべての意識を注ぐ。 《了》

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