書籍情報

上海蜜愛オークション【書下ろし・イラスト10枚入り】

上海蜜愛オークション【書下ろし・イラスト10枚入り】

著者:燈花

イラスト:花綵いおり

発売年月日:2017年4月28日

定価:972円(900円+税)

美耶の、ここに入りたいな。おれたち、二人で。
上海の富豪に嫁ぎ、二十歳で未亡人となった前嶋美耶(まえじまみや)は、義姉に誘われて男性が出品されるオークションに参加する。そこで美しいバイセクシャルのカップル、没落貴族の子息アレクセイと元京劇役者の玉祥に出会い、心を奪われる。彼らを買った罪悪感に苦しみながらも三人での愛の行為に溺れていき、深みへとはまっていく美耶、しかし第一次上海事変をきっかけに運命は狂い始める。二人のために美耶は別れを決意するが……。

お取扱店

登場人物

黎玉祥(リー ユイシャン)
元京劇の俳優。少しクセのある黒髪に二重の目をしている。意志が強く細かい事は気にしない性格で基本的にクール。バイセクシャルだが男はアレクセイのみと決めている。
前嶋美耶(まえじま みや)
西洋風美人の日本人。黒髪のロングヘア。おっとりした雰囲気だが、芯は強い。亡くなった夫の影響で恋やセックスを楽しめなくなっているが、心の底では人を愛したいと思っている。
アレクセイ・スロヴァーク
没落した子爵家の子息。眼は澄んだ蒼色で、灰色がかった金髪。責任感が強く紳士的。家の復興のため恋人の玉祥と共にオークションに参加する。バイセクシャルだが男は玉祥のみと決めている。

立ち読み

一九三一年(昭和六年)―――。
九月が終わろうとしている上海(シャンハイ)は、いまだ夏のなごりをとどめていた。
濁った水路(クリーク)から立ちのぼる腐った魚のにおいを、湿った熱風が運ぶ。
そのにおいは食物や香辛料、雨に濡れた泥や排泄物のにおいと混じりあい、悪臭となって街をおおっていく。上海の、悪名高い夏の風物詩だ。
蘇州河口に渡された外白渡橋(ガーデン・ブリッジ)の上を路面電車が走り、ひっきりなしに車や人が行きかう。
横断歩道も信号もない路上は、完全な無法地帯だ。
馬車や人力車、荷車が道路をふさいであふれ、徒歩で移動する人々は好き勝手に道を横断する。
その雑踏のなかを、クラクションを鳴らしながら走りぬけていく一台の白いロールス・ロイスがあった。
後部座席に、三つの人影が見える。
まんなかに座っているのは、黒い旗袍(チーパオ)を着た美貌の女性だった。
流行(はや)りの、チャイナドレスともいわれるチーパオの裾には深いスリットが入り、あでやかな揚羽(あげは)蝶の刺繍(ししゅう)で飾られている。
胸にとどくまっすぐな黒髪に、濃い茶色の瞳、卵形の小さな顔――一見すると中国人のようだ。
ふっくらした艶(つや)やかな唇と丸みのある形のいい鼻が、きりりとした奥二重の、やや男性的な印象をやわらげている。
小ぶりな胸ときゃしゃな肢体は、清楚さといまだ花開いていない淫靡(いんび)な色気をただよわせ、言葉ではあらわせない不思議な魅力をたたえていた。
タキシード姿の若い男性がふたり、彼女をはさんで両側に座っている。
ひとりは東洋人。もうひとりは、金髪碧眼(へきがん)の白人だ。
純白の瀟洒(しょうしゃ)な自動車はガーデン・ブリッジを通過して、西洋風のいかめしい建物――銀行、商社、官庁、新聞社や高級ホテルが河ぞいに建ちならぶ外灘(バンド)に入った。

(けっきょく、いきおいで連れてきてしまったけれど……わたしの手におえるのかしら……?)
二十一歳になったばかりの前嶋(まえしま)美耶(みや)は、ロールス・ロイスの後部座席でおじけづいていた。身体の側面を密着させた状態で、ふたりの男にはさまれている。
『身の置き場に困る』とは、こういう状況なのだろう。
東欧の小国、ドゥハーチェクの貴族であるアレクセイ・スロヴァークと、京劇の二枚目スターだった黎(リー・) 玉(ユイ)祥(シャン)――。
彼らふたりは、哀しくなるくらいに美しい。

車窓を流れてゆく街の風景をながめるアレクセイは、精巧な生き人形だ。胸がしめつけられるように切なくなるのに、いつまでも彼を見つめていたいと思ってしまう。
象牙色のなめらかな肌と、肉感的な唇がなまめかしい。
まなじりのあがったアーモンド型の眼は、澄んだ蒼(あお)色だ。顎のラインで無造作に切られた金髪は少しくすんでいて、やわらかく波打っている。
猫を連想させるしなやかな肢体は、優美で中性的だった。
彼が二十四歳という年齢よりも幼く見えるのは、親に置き去りにされた子供のような、さびしそうな表情のせいなのだろう。
対する二十六歳の黎玉祥は、アレクセイにくらべると男性的な容貌をしていた。
座っていても、美耶の頭ひとつぶん上の位置にある貌(かお)は、端整でやさしげだ。
少しめくれた厚めの上唇やしっかりした顎のライン、高い鼻梁からは、頼りがいのある男の色気が香る。
玉祥がこちらを向いてほほ笑んだ瞬間、車窓から吹き込む風に黒髪が乱され、涼しい二重の眼にかかった。
美耶は、眼をすがめて髪をふりはらう彼の、その一瞬の表情に心を奪われてしまう。

「……だめよ。場所をわきまえて、玉祥」
美耶は運転手に気づかれないよう、玉祥の手を押さえた。
けれど彼は、美耶の困惑なぞどこ吹く風とばかりに、鼠蹊部(そけいぶ)に手を進める。
「どうして? あなたはこれが欲しくて、高い代償を払っておれたちを買ったはずだ。身も心も満足させる、専属の愛人として……」
『おれたちを買った』――その言葉は、するどい棘となって美耶の胸に突き刺さった。
(こんなの、やっぱりまちがっている。人間を、お金でもてあそぶなんて――)
美耶は迷った。
自分はすでに、彼らの魅力に取りつかれてしまっている。このまま、ふたりを手放すことは、したくない。けれど――。
ためらう隙も与えずに、玉祥の遠慮のない指先は、下着のなかに入ってくる。
恥骨の上をくすぐられた美耶は、思わず膝を固く閉じあわせ、身体をよじった。
身をよじった方向にはアレクセイがいて、ほほ笑みながら、美耶の腰から胸のふくらみへと手を滑らせる。
「こんなふうに触れられるのは、好きじゃないみたいだね」
アレクセイに甘い声でささやかれ、美耶の身体は緊張でこわばった。
「……いえ、そうじゃなくて――」
(初対面の人といきなりなんて、無理よ……それも、車のなかでなんて……)
そう言おうとしても、声にならない。
「ほかのご婦人たちとおなじように、あなたも、僕たちがしているのを見たいのかな? いいよ。いくらでも見せてあげる」
アレクセイの言っている意味が、美耶にはよくわからない。
「――え? 僕たちって……どういうこと――?」
驚いて訊(き)きかえすと、玉祥が言う。
「どうして驚くの? それを見たくて、おれとアレクセイを買ったんだろう? おれたちが男色の関係だってことは、はじめから知っていたはずだ」
「もちろん、知っているわ……でも」
言い終わらないうちに、美耶の眼の前でふたりの顔が近づき、唇が重なった。
信じられない光景だった。
息を呑(の)んで声を殺した美耶の、鼻先に触れそうな位置で、アレクセイと玉祥が深い口づけをかわしている。
ふたりの四枚の唇は、まるで薔薇色の蝶の翅(はね)だ。
ひらいたり、閉じたり、重なったり、離れたりをくり返し、淫らな水音を立てながら絡みあう。
美耶には、彼らの口を出入りする赤い舌の動きが見えた。歯と歯がぶつかりあう、かすかな音すらも、はっきりと聞こえた。
アレクセイの手が玉祥の頬に触れ、耳たぶをいじる。
玉祥の長い指は、アレクセイのやわらかい金髪をいとおしげにかき乱す。
「……ふ、うぅん……」
甘くうめいているのは、どちらなのか――。
とまどいながらも、うっとりとふたりを見つめていた美耶の首筋に、玉祥が顔をうずめてきた。軽く歯を立てられ、甘噛みされると、背中にぞくぞくとゆるい電流が走る。
「――震えているね。おれたちを見て、興奮した?」
玉祥(ユイシャン)が耳もとでささやき、アレクセイが「くん」と鼻を鳴らした。
「ねぇ、玉祥……牝(めす)の、いい匂いがするよ」
アレクセイの白い指がドレスのスリットのなかへ滑り込んだ。
「いや――」
制止しようとする美耶の手をつかんで、玉祥がじゃまをする。そのあいだに、アレクセイの指先は、やわらかい割れ目にたどりついた。
「ほら、やっぱり。濡れてる……」
下着のレース地の上から花芯をなぞられると、ため息まじりのうめき声がもれる。
美耶の声に反応した指は、こんどは爪の先で花芯の尖(とが)りをつついてきた。
「これが好き――?」
アレクセイが、蒼い眼をいたずらっぽく輝かせ、美耶の顔をのぞき込んだ。彼は美耶の耳たぶを喰(は)みながら秘所をいじり続け、玉祥は獣のように美耶のうなじに噛みつく。
彼らの汗と流れる水のようなさわやかな香水の匂いが混ざりあい、嗅覚を通して美耶の性感を刺激した。ふたりは、おなじ香りを身にまとっている。
玉祥はチャイナドレスのボタンをはずし、片手を美耶の胸に差し入れた。
大きな手は、美耶のかたちのいい胸をすっぽりとおおう。ゆっくりと揉みしだかれると、彼の指のあいだで乳首が固く立ちあがっていくのがわかる。
いつのまにか足もとにうずくまっていたアレクセイが、美耶のドレスの裾をめくり、膝の裏をつかんだ。
「――ああっ……!」
あらがう間もなく、美耶の脚は大きくひらかれる。その脚のあいだに、アレクセイは顔をうずめ、下着の上から秘所に口づけてくる。
「そんなこと……だめよ! しないで――」
アレクセイの鼻の先が、花芯に触れる。
彼は舌で下着のレースのふちを何度もなぞり、さんざんじらしたあと、秘所のくぼみに尖らせた舌先を押し込んだ。さらに膨らんだ花芯を歯でこすり、美耶の欲望をあおる。
玉祥が乳首を指でつまむと同時に、アレクセイが花芯を吸いあげた。
たまらなくなった美耶は、するどい快感の声をあげ、背中を弓なりにそらせる。
「まだ脱がせちゃダメだよ、アレクセイ。彼女が泣いてせがむまで、待つんだ」
小声でアレクセイに命じると、玉祥はドレスの胸元をひらく。
はじめに胸のあいだに口づけ、徐々に左乳房のほうに舌を這わせて口にふくんだ。はしたない音を立てて乳首を吸い、歯ではさんだまま、舌先を動かしてなぶる。
玉祥は美耶のもう一方の乳首も、指のあいだで転がして固く尖らせた。
甘いため息をついて下を見おろすと、ひらいた腿(もも)のあいだで奉仕するアレクセイの視線とぶつかる。彼は眼で笑うと、口を大きくあけ、美耶の秘所をおおった。
「あっ……あぁん――」
美耶は思わず顎をあげ、淫らにあえいだ。
足に力が入り、つま先が靴のなかで内側に丸まる。ふくらはぎは痙攣(けいれん)をおこしそうだ。
下着のレース一枚へだてているとはいえ、舌全体を使ってくり返し舐めあげられる感触は強烈だった。きっと、パンティの薄い布地はアレクセイの唾液で濡れ、ぐしゃぐしゃになっているにちがいない。
「……もう、やめて――お願い……」
懇願する美耶の声は、聞きとどけてはもらえなかった。
さらに訴えようとする口を、玉祥の唇がふさぎ、厚みのある舌がするりと忍び入ってくる。
重なった唇が、湿った音を立てた。
彼の舌は上顎をこすり、歯の裏側をなぞった。奥に入り込み、美耶の舌の表面を舐め、舌先をとらえて絡ませる。
巧みに口のなかを犯しながら、ドレスのなかにある指先は美耶の乳首をつまみ、ひねり、こすり立てる。
玉祥の愛撫と同時に、腿のあいだにある敏感な肉芽を吸われ、固く尖らせた舌の先でなぶられた美耶は、思わずアレクセイの髪を両手で強くつかんだ。
「ふっ、ううぅっ――」
いまや肉芽とアレクセイの舌をへだてる薄い布地の存在が、じゃまでしかたなかった。
(いっそ、剥(は)ぎとってくれればいいのに――)
彼の舌の感触を、唇の愛撫を、じかに粘膜で感じたい。
もっと、もっと、激しく、淫らに愛して欲しかった。
男と女の秘めごとが、こんなにすばらしい快楽を生みだすものだったとは――。
「――あっ、あっ、あああっ!」
乳首と秘所に、同時に歯を立てられた瞬間――美耶は絶頂をきわめた。
下肢が強くつっぱり、震え、糸のような細いあえぎが止まらない。
全身がねばついた粘膜のかたまりになり、崩れてなくなってしまいそうだった。
「……達したんだね。うれしいよ、美耶」
耳もとで、玉祥がささやいた。
アレクセイのきれいな指先が、レースの上から美耶の秘めた蜜口に触れる。
「つぎは、ここに入りたいな――」
「おれたち、ふたりで――」
(ふたりで……)
その言葉が意味する行為を想像すると、美耶はおそろしくなった。


(このあとは製品版でお楽しみください)

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